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トランプ大統領の当選直後の2016年12月に東芝の経営危機が表面化した(資料写真)。〔AFPBB News〕
東芝の経営危機は「第2のココム事件」か 不可解な巨額損失の影に見える軍事技術の競争
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49602
2017.3.31 池田 信夫 JBpress
経営危機に陥っている東芝は3月30日、臨時株主総会を開いて半導体部門の「分社化」を決議した。これに先立って日本時間29日には、東芝の子会社であるアメリカの原子炉メーカー、ウエスチングハウス社(WH)が連邦破産法の適用を申請し、東芝は今年3月期の連結決算で約1兆円の最終損失を計上する見通しとなった。
東芝の綱川智社長は「これで原子力事業のリスクを遮断して損失が確定した」とコメントしたが、東芝はWHに6500億円の債務保証をしており、今後も電力会社などからの訴訟リスクが残る。最大の謎は、なぜ昨年末から急に東芝の損失がふくらんだのかということである。
■原子力部門の抱える1兆円の「謎の損失」
東芝の「不正会計」の疑惑が浮上したのは、2015年2月に証券取引等監視委員会が東芝に立ち入り検査を行ったときだ。これは東芝社員の内部告発を受けたものとされるが、それが何者かは今も分からない。その後、半導体やコンピュータ部門で「バイセル取引」などの疑惑が取り沙汰されたが、決定的な証拠が出ず、検察も起訴しなかった。
ところが2016年12月末になって「原子力関連の損失は数千億円」という数字が発表され、9月期決算の発表が2度にわたって延期されたまま、1兆円を超える赤字が出ることになった。正式の四半期決算がまだ出てこないので、その内容も真偽も不明だ。これは東証一部上場企業としては異例の状況である。
東芝関係者の話を総合すると、問題の本丸は原子力部門に生じた巨額の偶発債務で、電機製品部門の「不正会計」はそこから派生したものだという。いまだに損失が確定しないのも、原子力部門に未解決の要因があるためと思われる。
その1つの原因は、いうまでもなく2011年3月11日の福島第一原発事故だが、東芝の経営陣はその直後には強気の発言をしていた。当時の佐々木則夫社長は「福島事故の影響は日本に限定され、世界の原子炉市場は成長している」と発言し、「2015年までに全世界で39基、原子力の売り上げは年間1兆円」という目標を変えなかった。
ところが世界各国の規制当局が福島事故を受けて規制を強化し、アメリカでは4基の原発の工事が止まってしまった。それが東芝の巨額損失の原因だといわれているが、そこにはもっと大きな問題が隠されているのではないか。
■ベストセラー原子炉「AP1000」をめぐる闘い
この背景には、東芝が原子力部門の目玉商品と位置づけていた加圧水型(PWR)原子炉「AP1000」の問題がある、というのが関係者の一致した見方だ。東芝が最後までAP1000を手放そうとしなかったのには、それなりの理由があるはずだ。
AP1000の完成予想図(ウェスチングハウス社ホームページより)
原発はビッグビジネスである。1基3000億〜5000億円だから、3基受注すれば1兆円の売り上げが立つ。その後も保守や燃料で多くの利益が見込めるので、東芝がWHを手放さなかったのも無理はない。
特に中国は大きな市場で、各国の企業がその争奪戦を繰り広げたが、フランス政府はアレバ(国営)の売り込みを禁止した。原子炉技術が核兵器に転用できるからだ。ところが東芝がWHを買収した直後の2006年12月に、中国政府はWHから原子炉を輸入することでアメリカ政府と合意した。
中国の国営企業は2007年7月にWHからAP1000を4基、輸入する契約を結び、中国は今後10年で、AP1000を60基建設するといわれている。これだけで20兆円以上の巨大な市場だ。その後、WHと中国企業の業務提携は合弁事業に発展し、この契約は2009年にライセンス供与に切り替えられた。
これによって中国の国営企業は原子力技術を「国産化」するばかりか、世界にAP1000を売り込み始めた。イラン政府は2015年に、中国企業がイランの原発2基を建設することを明らかにし、南アフリカやトルコでも中国企業とWHが原子炉を受注する見通しが強まっている。特にイランの原子炉は核兵器開発とからんでいる可能性があるが、東芝の経営陣はWHの動きをほとんど把握していなかったようだ。
これは推測だが、今回の問題がこじれた原因はこう考えられる──WHは世界にAP1000を売り込む予定で、東芝はその将来性を見込んで買収したが、WHは中国の国営企業にライセンス供与して技術を渡してしまった。その結果、中国が世界にAP1000の技術を売り込み始めた。これに怒ったアメリカ政府がWHを東芝から切り離し、中国の暴走を止めようとしたのではないか。
中国が原子炉をブラックボックスで輸入するのと、ライセンスを受けて「国産」で建設するのは大きな違いがある。中国政府は核武装を強化するために、プルトニウムを製造する軽水炉の技術が欲しいはずだ。東芝の「減損」のほとんどは規制当局の裁量によるもので、アメリカ政府の意向が働いていることは十分考えられる。
■原子力政策の見直しが必要だ
原子炉は発電技術であるだけでなく、軍事技術である。軽水炉でウランを燃やしてできるプルトニウムがあれば原爆がつくれるので、冷戦期にはココム(対共産圏輸出統制委員会)できびしく規制していた。今も核拡散防止条約で、非核保有国は使用ずみ核燃料を再処理してプルトニウムを製造することが禁じられている。日本はその唯一の例外である。
東芝は1987年に、工作機械の輸出がココム違反だとしてアメリカ政府に摘発され、警視庁は東芝機械の幹部を逮捕した。これが東芝機械ココム違反事件である。当時は日米貿易摩擦の最中で、これを理由にして連邦議会は日本の「不公正貿易」を指弾し、議員が東芝製のラジカセやTVをハンマーで壊す事件もあった。
東芝の経営危機が、技術ナショナリズムを掲げるトランプ大統領の当選直後の2016年12月に表面化したのも、偶然とは思えない。80年代に東芝が日米貿易摩擦のいけにえにされたように、トランプ政権が東芝を犠牲にしてアメリカの原子力技術を守ろうと考えたとしても不思議はない。
来年、日本だけに使用ずみ核燃料の再処理を認めた日米原子力協定が切れる。日本政府はアメリカが延長してくれると思っているが、プルトニウムを消費する高速増殖炉「もんじゅ」は事実上、廃炉になり、青森県六ヶ所村の再処理工場は行き詰まっている。プルトニウムをウランと混合して燃やすMOX燃料は、コストがかかるだけで意味がない。
唯一の理由は再処理すると使用ずみ核燃料の体積が小さくなることだが、これは意味がない。六ヶ所村には、300年分の使用ずみ核燃料を「中間貯蔵」できる場所があるからだ。日本の保有している48トン(原爆6000発分)のプルトニウムは、原子力協定が延長されなかったら宙に浮いてしまう。日本政府が核武装を決意しない限り、全量再処理という方針は見直すしかない。
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