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格安旅行会社「てるみくらぶ」が、巨額の負債を抱えて破綻した。利用者が予兆を見抜くことはできなかったのか。実は、過去の同様の事例を考えると、それは非常に難しかったと言える Photo:読売新聞/アフロ
てるみくらぶ破綻に見る、賢い消費者も見抜けない「格安」の罠
http://diamond.jp/articles/-/122997
2017.3.31 鈴木貴博:百年コンサルティング代表 ダイヤモンド・オンライン
てるみくらぶ破綻で悲鳴噴出
予兆は見抜けなかったのか?
格安旅行会社「てるみくらぶ」が破綻した。約3万6000件、99億円分の旅行申し込みが利用不能になり、海外旅行中の2500名が現地でホテル代の支払いなど二重の出費を強いられている。これから出かけるところだった人たちは、支払った多額の旅行代金が無になるという事態に悲鳴をあげている。
破産申請の内容によれば負債額は約150億円。利用者への補償は業界団体の日本旅行業協会が1億2000万円を補償するものの、戻って来る金額は1%程度。海外旅行を楽しみにしていた消費者にとっては悲劇の結果となった。
私はダイヤモンド社の「ZAiオンライン」で「格安セレブ術」を連載している。それほどお金を使わずに優雅に暮らすことを主義とする格安術を駆使して、毎日を楽しく暮らしているつもりなのだが、ひょっとするとこのような破綻劇に巻き込まれてしまうこともあり得ると、今回は改めて考えさせられた。
実際に調べてみると、わが家でも2000年代の比較的早い時期に二度、てるみくらぶを利用して海外旅行に出かけていたことがわかった。インターネットで格安の旅行プランを検索した結果見つけて、何の疑問も抱かずに利用していたわけだ。
各社の報道を見ると、てるみくらぶが破綻するかもしれないという予兆は色々とあったという。2年前から業績を公表しなくなったとか、昨年グアムの事務所を閉じたとか、破綻の直前には旅行代金を現金で振り込めば1%引きになるなどと広告していたとか。どれも振り返って見れば予兆だったと言えるのだが、賢い消費者ならそれに気づくことができたのだろうか。
それを予兆と言うならば、たとえば誰でも知っている某ECモール大手企業も、1年半前から流通総額の公表を止めている。昨今、百貨店大手が地方の百貨店を閉じるという報道も多い。それなりに経営が苦しいからなのだが、だからと言ってそれが破綻の前兆かというとそれは違う。
あえて言えば、てるみくらぶの破綻直前に、広告でも窓口でもとにかく現金取引を促す行動をしていたという点くらいが、賢い消費者が異変に気づくことができた唯一の手がかりだったのではないかと私は思う。
これが航空会社やホテルチェーンのような大企業のてるみくらぶの取引先であれば、たとえば支払いが滞ってきたという情報も入るだろうし、東京商工リサーチなどの興信所情報を調べれば2年前に大幅な債務超過に陥っていたこともわかる。だが、一般の消費者にはそれをチェックするのは無理だ。
そのような状況の中で我々は、日常的に格安のサービスを使っている。いつかお金を支払った相手が破綻するリスクは常に抱えながら、大きな落とし穴の縁を歩いているのに気づかず、安さを楽しんでいるというのが実態かもしれない。そこで、私自身を振り返って実際にどんなリスクを踏んでいるのか、確認してみることにした。
今月、講演で福岡に出張した際には、別の中小の格安旅行会社を通じて航空券を手配していた。全日空の航空券を、スカイスキャナーという航空券検索サイトで調べて、一番安く表示されていた会社から買ったのだ。早割など料金は航空会社で直に購入しても同じなのだが、たまたまその日の早割の航空券が航空会社では売り切れなのに、なぜかその旅行代理店では残席があったからだった。
私は年間30回くらい出張しているが、たぶんいつもこんな感じだ。だから、いつかどこかで地雷を踏むことはあるかもしれない。
消費者が巻き込まれるリスクも
航空券や飲食店クーポンの死角
では航空会社から直で買うのなら格安料金でもいいのか。過去にはキャセイパシフィック航空の往復で2万円を切るキャンペーンや、LCCの2万9800円というキャンペーン価格の航空券で香港出張も行っている。
日本の航空会社なら経営破綻が表面化した後でもまず大丈夫かとは思うのだが、海外のLCCでは経営破綻した当日にすべてのフライトが運行停止になるという事例も存在している。取引先を待たせたまま私が到着できない、ないしは片道15万円の普通運賃を支払って、急遽別のエアラインで遅刻して香港に到着するなどという事態が起こるかもしれないわけだ。
業界を変えると、飲食業界では頻繁に閉店が起きる。私は取引先との会食にクーポンサイトの半額クーポンをよく使う。もともとクーポンサイトの登場時には、新規オープンしたお店が集客目的でとてもお得なクーポンを配るというのが半額クーポンの意味だった。私が普段使うのもそのようなクーポンが主で、比較的ハイエンド向けのクーポンサイトで、有名店で修業したシェフが新たに自分のお店を持った際に、集客目的で数量限定で売り出すクーポンを好んで使っている。
ところが、クーポンサイトに掲載されているお店の多くが、最近ではクーポンサイトの常連店になってきた。これは自転車操業の兆しである。クーポンサイトで前売りして先に現金収入を得て、それで食材の仕入れに使っているお店があると、業界関係者から聞いたこともある。
実際、クーポンを買ったお店がクーポン利用前に閉店するというケースに私も何度か直面している。しかし、クーポンサイトの利用規約でそのような場合は全額返金されるので、いまのところ消費者として実害はない。ただ肝に銘じておいたほうがいいのは、中小の飲食店が提供している格安なサービスの一部は、破綻直前の軋みの中から投げ売りされている場合があるということだろう。
大手だから安心とは言えない
ゴミと化したディレクTVチューナー
最後に、大手だから大丈夫ということはないという話もしておこう。私はこんな経験をしたことがある。今世紀のはじめ頃、家電量販店でディレクTVのチューナーを購入した。数万円のチューナーがキャッシュバックで実質1万円程度で手に入るというキャンペーンに乗ったのだ。ボーナスが出た直後で気分が大きくなっていたこともあり、当時加入していたスカパーでは見られないVシネマなどのチャンネルがあるからという理由から、新規にディレクTVにも加入した。
そのまさに翌月、ディレクTVがサービスを中止するというニュースが流れた。寝耳に水である。名だたる日本の大手企業が出資していたから、それなりに補償があるのかと思ったのだが、そうではなかった。
ディレクTVでしか見られなかったチャンネルはスカパーに委譲して、ディレクTVのチューナーしか持っていないユーザーにはスカパーのチューナーを無償提供するというのが、その補償内容だった。つまり、私が1万円で購入したばかりのディレクTVのチューナーとアンテナは、買い取ってもらえるわけでもなく、ゴミになったのだ。
「それはおかしいだろう」と思った私は抗議をしようと試みた。大企業がこのような事業撤退をする場合、数ヵ月前に経営が意思決定をしているのが経営の常識なので、撤退の前月までキャンペーンで新規加入者を募集するというのは、詐欺とまでは言わないが信義に反する企業行動であることは間違いない。
ところが、敵は見事な対応をした。抗議をする会社自体がなくなって、窓口は残務整理を担当するコールセンターに委託したのだ。「上を出せ」といってもコールセンターの上しか出てこず、その彼の権限はスカパーのチューナーを持っていない人にスカパーのチューナーを差し上げることしかできないという。責任者がいなくなったという消費者にとっては手詰まりな状況で、サービスは突然終わったのだ。
今回のてるみくらぶの教訓としては、「安物買いの銭失い」とはちょっと違うようだ。格安なものでも品質はちゃんとしている世の中なのだが、「格安買いは時として本体を失う」のだ。
我々消費者は、現代社会で様々な格安サービスを利用している。旅行会社しかり、居酒屋しかり。ところが、商品やサービスを買っている相手が疲弊しているのに気づいていないことも多いのかもしれない。消費者に格安サービスを提供している会社の裏側の、極限まで軋んだ実情までは決して見えない。だとすれば、そのリスクが嫌な消費者は、格安な業者からは購入しないというのが唯一現実的な自衛策なのかもしれない。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
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