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最近、安倍政権の経済政策はほころびが目立つ。“安倍一強”で何事も官邸主導で独断的に決められチェック機能が働かないことも、その背景になっている。写真は日銀。
<アベノミクス>財界・官界が弱体化、政権のチェック機能働かず―“安倍一強”に独走許す
http://www.recordchina.co.jp/b173547-s0-c20.html
2017年3月28日(火) 5時50分
安倍政権の経済政策に、ほころびが目立つ。“安倍一強”で何事も官邸主導で独断的に決められチェック機能が効かないことも、その背景になっている。低成長にあえぐ日本経済は一向に浮上せず、成長戦略として期待した環太平洋連携協定(TPP)もとん挫。鳴り物入りでぶち上げたアベノミクスも大きな壁にぶち当たり、先行きは不安だらけ。人口減少社会の中で未曽有の財政赤字は膨らむ一方だ。
◆政官財のトライアングル
かつて「政官財のトライアングル」と言われ、互いにけん制し合い、バランスの良い内外政策が遂行されていた。安倍政権は官邸主導で賃上げを企業に強く求め、将来に禍根を残す日銀や年金基金による株買いを主導するなどの国家資本主義的な政策を推し進めているが弊害も多い。以前なら財界や中央官庁が反対した場面だが、もはやそのパワーはない。
1970年代後半から90年代まで、大蔵省(現・財務省)、通産省をはじめ多くの中央官庁を取材したが、どこも談論風発の機運に満ちていた。担当分野を熟知した現場の判断・企画が重視された。
ところが今、中央官庁では、既に人事が官邸に直結した「人事局」に一元化され、安倍首相や菅官房長官に従順な官僚ばかりが重用される。政権の威光にひれ伏し、異論を唱えにくく談論風発の美風は見る影もない。政権は世界最大の「シンクタンク」と言われた中央官庁情報を使い切っておらず、官邸に都合のよい情報や提案が採用される傾向にある。
近年「政治主導」が叫ばれ、今や大胆な企画力やチェック機能が働かなくなった。野党が弱体化し、“安倍一強”体制が長期化する中で、「決められる政治」の掛け声のもと、拙速政治が展開されている。
◆各省幹部人事、官邸に集中
中央官庁の存在感の低下の背景には、菅義偉官房長官を中心とした首相官邸が内閣人事局を通じて各省の幹部600人の人事を決めるようになったことがある。トップの局長に萩生田光一氏(自民党衆院議員)ら総裁特別補佐官が就任したことが大きい。かつて人事は基本的に各省庁に委ねられ、「霞が関の人事部長」は官房副長官(総務省などの事務次官経験者)が担う慣例になっていたが、それを官邸が動かすようになった。
この結果、官邸の特命チームがトップダウンで各官庁を差配するようになった。官僚も自分の人事を握る官邸の意向には逆らえない。人事権を握ったものが最大の権力を握る。問題ごとに特命チームが組織され、官邸が党をバイパスして意のままに官僚機構を直接コントロールする「政治主導」が実現した。
1970年代後半に大蔵省事務次官を務めた竹内道雄氏は当時、政治家について「永田町はやくざの世界。大蔵省にいた方が、国と国民にとっていい仕事ができる」と言うのが口癖。中堅大蔵官僚だった柿沢弘治氏(後に外相など)らが新自由クラブから出馬した際、「大蔵省にいた方が余程国民のためになる仕事ができるのに!」と強く叱っていた。
◆財界、「ご意見番」の役目果たさず
トライアングルの一角、財界は、経団連を中心に、政治団体献金を通じて財界は政界に睨みをきかし、時の政策について国民経済的に見て厳しく判断していた。既得権益の打破を声高に叫び、政権に厳しく苦言を呈し、変更させた。
行財政改革、国鉄民営化、一般消費税や経済摩擦問題解決などに率先して取り組んだ。土光敏夫経団連会長は「行革の土光」と言われ、「増税なき財政再建」「三公社(国鉄・専売公社・電電公社)民営化」などを提唱、中曽根康弘内閣を動かした。
その後の稲山嘉寛、斎藤英四郎、平岩外四ら歴代経団連会長や永野重雄、五島昇氏ら日本商工会議所会頭、石原俊経済同友会代表幹事、大槻文平日経連会長らも、大所高所から働きかけ、“ご意見番”として迫力があった。記者会見などでの大胆な“提言“意見”は大きな話題を呼び、予定調和的なポピュリズムに流れがちな政府や官僚を突き上げた。斎藤会長は国鉄民営化に伴うJR各社の首脳人事や日航人事などで指導力を発揮した。日本の企業や銀行が急成長し、勢いがあった時代で、「経済一流・政治三流」と揶揄されたこともある。
現在の榊原定征経団連会長は安倍政権の旗振り役の面が強く、チェック役にはほとんどなっていない。賃上げや投資など本来企業の専権事項まで国に指示されることも多く、「国家資本主義」と批判されることも多い。
◆大平正芳氏の戒め
内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」によれば、中長期的に実質2%以上の高い成長率を継続しても、国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)は2020年度に8兆円を超える赤字となる。日本の政府債務残高は財政危機が顕在化したギリシャなど南欧諸国より事態は深刻。しかも少子高齢化は急速に進み、今後も社会保障の給付が経済成長を上回って増大することが予想される。巨額財政赤字は潜在成長率アップや徹底した歳出削減、増税で解消するのが真っ当な方策だが、人口減少と景気低迷が続く日本ではハードルが高い。強い政治力も必要となるが、これも期待できない。
そこで為政者が誘惑に駆られるのが「インフレによる赤字解消」である。大平正芳元首相は蔵相時代の昭和50年、筆者に「増税も歳出削減もできない中、財政赤字をなくすために為政者が陥りやすい安易な方法はインフレ。インフレにすれば最大の借金を持つ国が最大の恩恵を受けるので誘惑に駆られやすい。ただ年金生活者や低所得者は困窮してしまう」としみじみと戒めの弁を語っていた。蔵相時代に初の赤字国債発行を余儀なくされた悔悟の念がからだろう。首相時代に「一般消費税導入」をぶち上げたが、道半ばで倒れた。
日銀の異次元金融緩和は、大平氏が懸念した「禁じ手」につながるのではないか。大戦後の日本や西独での超インフレなど国の巨額債務を帳消しにした例は多い。通貨の番人、日本銀行が「政治のツール」と化し、本来あるべき「独立性」が揺らいている。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の先導役として「バズーカ異次元緩和」や「マイナス金利」などを華々しくぶち上げ、事実上の国債引き受けや株式買いまで行っている。にもかかわらず「2%インフレ目標達成=デフレ脱却」には程遠く、金融政策の先行きに赤信号が灯っている。(八牧浩行)
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