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あと5年で銀行は半分以下に? 銀行大淘汰の時代がやってくる
あと5年で銀行は半分以下に? 銀行大淘汰の時代がやってくる
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170328-00010001-php_s-bus_all
PHP Online 衆知 3/28(火) 21:10配信
■あと5年で銀行は半分以下になる
いま、銀行のあり方が世界で問われている。2017年1月4日、麻生太郎金融担当大臣は、「金貸しが金を貸さないで、どう商売をするのか」「目利きはいなくなったのではないか」「手数料ではなく、リスクを取ることに銀行の目が向かないと企業はうまくいかない」と、全国銀行協会の賀詞交換会で日本全国の銀行幹部を前にして挨拶した。
これは日本の金融当局の銀行に対する強い不満の表れであり、今後の金融の指導方針と銀行との対決姿勢を明確にしたものである。
少子高齢化社会と過疎地域の増大予測、そして、世界の金融競争を生き抜くには銀行が多すぎるのだ。また、インターネットバンキングやクレジットカード決済、コンビニATMの拡大により、銀行の役割と必要性がすでに大きく変質しているのである。銀行のために銀行があるのではなく、日本のためになくてはいけないわけである。
「お金は経済の血液であり、銀行はそれを送り出すポンプである」とよく言われるが、かつて日本のバブル崩壊やリーマン・ショック、ギリシャ危機、欧州ソブリン危機などのさまざまな金融危機において、銀行の不健全化により金融のポンプ機能が停止し、それが結果的に経済全体を悪化させるに至った。
日本のバブル崩壊がハードランディングに至ったのも、銀行による貸しはがしや貸し渋りに加え、銀行の不良債権処理と資産価格の下落の負の連鎖によって起きる「バランスシート不況」による部分が大きかったことは間違いない。
また近年、世界を席巻してきたグローバル資本による欧米型の金融モデルも、リーマン・ショックを機に瓦解した。
これはまさしく金融のポンプ役である銀行の仲介のもとに、先進国が新興国に対して投資を行い、そこで上がった利益を配当や金利というかたちで自国に持ち帰るモデルだったわけである。
そこから持ち帰った資金によって、先進国はサービス業に代表される第3次産業を拡大させることにより、経済をプラス方向に成長させてきた。
ところがリーマン・ショックの結果、先進国が新興国から利益を吸い上げるというビジネスモデルが瓦解し、現在では逆に資本不足に陥った先進国の銀行が、新興国の資金に依存するような状況にまでなっているのである。
このような状況のなかで、いま銀行のあり方は大きく変わらざるを得ないところに来ている。
日本でも、少子高齢化の時代を迎え、地方の過疎化も急速に進んでいるなかで、20年後には、現在1700余りを数える地方自治体の三分の一程度しか維持できないと言われている。
地方人口の減少は、地方銀行をはじめとする地域金融機関の存在の前提となる顧客の減少を意味するだけに、これから銀行というもののあり方が改めて強く問われることになるだろう。
バブル崩壊後に実施された大規模な金融制度改革、いわゆる日本版金融ビッグバン以降、日本の金融機関は、もともと全国区で営業ができた都市銀行、営業範囲が都道府県内に限られていた地方銀行、相互銀行から転換した第二地銀という構図になっていた。
さらに銀行に類する金融機関として、町村などの一定地域に営業範囲が限定されている信用組合や信用金庫、農協や漁協といった業界の協同組織的な金融機関も存在し、預金ではなく貯金を扱う郵便局もある。
郵政民営化により、かつての郵政三事業の一つだった郵便貯金はゆうちょ銀行が継承したが、いわゆる財投改革が実施された2001年までは、旧大蔵省の資金運用部が郵便貯金と年金積立金を政府関係機関や特殊法人などの財投機関に融資する「財政投融資」が行われていた。
かつては、この財政投融資で調達された低利・長期の資金が高速道路や空港などのインフラ構築や中小企業金融などに使われて、日本の発展に寄与してきたことも確かである。
ところが財投機関が自ら財投機関債を発行し、市場から資金を調達するようになっているいま、郵便貯金がどれだけ必要とされているのかについて、議論の余地が大いにあると思われる。
一方、日本政府および金融庁は、銀行に資金がだぶついているにもかかわらず、銀行自らがリスクを取ってお金を貸そうとしないこと、また少子高齢化や過疎化が進む地方で、銀行が余剰な状態になりつつあることに対して強い危機感を持っており、銀行再編を後押ししようとしている。
ところが地方銀行をはじめとする地域金融機関の反発も根強く、再編がなかなかうまく進んでこなかったのが一つの現実だ。
■日本は、リーマン・ショック以降、世界で起こった金融危機の影響を最も受け
なかった国の一つ、ということにはなるのだが、それは日本の銀行が他国の銀行に比べて、銀行本来の機能(金融仲介機能、信用創造機能、決済機能)を十分に果たしてこなかったことの裏返しでもある。
なかでも銀行が担保や保証に依存し、リスクをともなう融資をあまり引き受けてこなかったため、外資金融機関が日本市場を闊歩し、「おいしい」ところを持っていかれている現状もあるわけだ。
しかもいま、その外資金融機関が日本市場で活動する原資を供給しているのが、じつは日本の金融機関であったりするから皮肉なものである。
つまり、日本の金融機関が外資の金融商品を顧客に売りつけ、結果的に日本人が日本人を食い物にすることで、外資金融機関が手数料収入を持っていくという歪んだ構造になっているわけだ。こうした状況を変えなくてはならないことに、反論の余地はないだろう。
もう一つ重要なのは、いまの日本の金融機関のあり方に、日本経済のデフレ脱却を阻害している一面があると言わざるを得ないということだ。
「四半期別GDP(国内総生産)速報」などの統計を見て、民間需要が伸びないのは「企業の資金需要がない」からだとよく言われたりするが、融資が銀行の主たる業務の一つである以上、資金需要があるところを見つけるのも銀行にとって不可欠な仕事であることは言うまでもない。
にもかかわらず銀行は、融資先の開拓に対する努力は十分とは言えず、それどころか日銀の当座預金に資金を預けることで、0.1%の金利収入をノーリスクで得ている(銀行が日銀当座預金に預け入れることを義務づけられている法定準備預金額〈所要準備額〉を超える「基礎残高」部分の約210兆円に対して)。
本来、当座預金に金利はつかないので、これは形を変えた補助金と言ってよいものだが、リスクを取って融資を行わず、こうした不労所得とも呼べるような金利収入および手数料収入で、銀行が食べてきたことも事実なのである。
銀行がお金を貸さないのか、企業の資金需要がないのか─これは鶏が先か、卵が先かという話ではあるが、日銀が市場に供給する通貨量であるマネタリーベースを年間80兆円増やすという量的金融緩和政策を採っても、銀行が融資にあまり積極的には見えないことと、デフレ脱却が進まないなかで、企業の設備投資に対する意欲がなかなか高まらないことが相互作用を及ぼし、日本の発展を大きく阻害していることは間違いない。
これを危惧した日本の金融当局は、銀行が日銀当座預金に預けている資金の一部(「政策金利残高」部分と呼ばれる約21兆円分)に対してマイナス0.1%の金利をかける「マイナス金利政策」を2016年2月に実施した。
このマイナス金利政策は、銀行の政策準備残高にマイナス0.1%の金利を付与するものであり、すべての日銀当座預金にマイナス金利を適用するものではない。しかし、それでも銀行の収益モデルが成り立たず、経営を圧迫するといった批判や不平不満が噴出し、それがメディアのミスリードを助長している面がある。
ところがいまも説明したとおり、銀行が日銀の当座預金に預け入れた資金がすべてマイナス金利になっているわけではない。銀行の日銀当座預金の一部から「預かり料」を徴収するということは、「資金をこれ以上、中央銀行に預けず、銀行本来の業務である融資を行いなさい」という、金融当局による一つの示唆なのである。
また銀行の問題として、預金に対する貸出の割合を示す「預貸率」も挙げられる。国内金融機関の預貸率は低迷したままである。
銀行は、さまざまな人からお金を集めた預金を貸し出すことで利益を得ているわけだが、預貸率が下がるということは余剰資金が発生していることを意味する。預金として集めた資金が融資されていないようであれば、銀行が銀行として成立するはずもない。
そのため、本来の機能や役割を果たすことをやめた銀行を、より望ましいかたちで再起動させないかぎり、日本経済の復活は望むべくもないし、逆に日本経済全体を停滞させる要因にもなりかねない。だからこそいま、旧態依然とした銀行のあり方にメスが入ろうとしているのである。
こうしたなか注目されるのは、都道府県などの本来の営業エリアをまたぐ、地方銀行(第一地銀)および第二地銀の経営統合だ。
2016年だけでも、4月に横浜銀行(本店・神奈川県横浜市)と第二地銀の東日本銀行(本店・東京都中央区)が合併し、コンコルディア・フィナンシャルグループ(本店・東京都中央区)が設立されたのを皮切りに、めぶきフィナンシャルグループ(本店・東京都中央区/常陽銀行と足利ホールディングス〈足利銀行〉が経営統合)、トモニホールディングス(本店・香川県高松市/いずれも第二地銀である徳島銀行、香川銀行、大正銀行が経営統合)などが新たに設立されている。
2017年1月5日には、三重県四日市市に本店を置く地方銀行の三重銀行と、同松阪市の第二地方銀行である第三銀行が経営統合に向けて交渉に入ったことが、メディアで報じられた。
今後、こうした地方銀行の再編はさらに加速する。このままでいけば5年後には、地方銀行および第二地銀の数は半分以下になるだろう。
※本記事は渡邉哲也著『あと5年で銀行は半分以下になる』(PHP研究所刊)より一部を抜粋編集したものです。
渡邉哲也(経済評論家)
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