http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/437.html
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【第143回】 2017年3月24日
アマゾンのクラウドサービスが独走している理由
――アンディ・ジャシー アマゾン・ウェブ・サービスCEOに聞く
アマゾン・ドットコムの子会社である「アマゾン・ウェブ・サービス」(AWS)は、世界最大のビジネス向けコンピュータインフラ事業である。2006年にこのサービスを立ち上げたアンディ・ジャシーCEOが3月に来日し、日本の顧客企業、パートナー企業を訪問。日本市場のさらなる拡大にも手ごたえを感じている。なぜAWSは強いのか、そして今後の注力分野を聞いた。
クラウドという“重力”には
誰も逆らえない
アンディ・ジャシー(Andy Jassy) アマゾン・ウェブ・サービスCEO、アマゾン・インフラストラクチャーCEO。AWSだけでなくアマゾン・ドットコムのインフラ部門を統括する。1997年アマゾン・ドットコム入社。ジェフ・ベゾスCEOのテクニカルアシスタントを務めたこともある。2002年からアマゾンのシニア・エグゼクティブチームのメンバー。2006年AWSサービスを立ち上げる
――まず、AWSの現状についてお聞かせください。
アンディ・ジャシーCEO(以下・黒文字)AWSの売上高は今期のランレート(通期予想)が140億ドル(=約1兆5000億円)に達すると見ています。すでに非常に大きいだけでなく、毎年50%の成長を遂げています。クラウドインフラ事業の分野でAWSは、2位以下のベンダーすべてを足し合わせても、その数倍の売り上げ規模となっています。
すでに世界中で、多くの企業がすでに採用いただいているのですが、実は、世界各国の政府をはじめ、まだこれからAWSを採用するという企業や機関が非常に多いということを忘れてはいけません。つまり成長はまだまだこれから加速するのです。
――2004〜2005年ごろ、アマゾンが自社のECサービスのインフラを短時間で構築できるように作った仕組みがAWSの原点だということですが、なぜ、このサービスでAWSが先行できたのでしょうか。
大手ITベンダーをはじめ他社でも、こうしたサービスは検討していたはずです。ただ、他社はこの市場はそれほど大きくならないだろうと懐疑的に思っていた時に、我々が本格的にスタートを切り、一貫して投資を拡大してきました。現状で他社より6〜7年先行しているという認識ですが、私自身、ここまで差をつけることができるとは思っていませんでした。
――どうして他社は、出遅れただけでなく、追いつけないのでしょうか。
AWSと他のプロバイダーとの間には、かなり大きな違いがあります。まず、多と比べて我々はすでに非常に多くのサービスと機能を持っています。同時に、他社に先駆けて急速にイノベーションを遂げています。昨年、我々は1016個もの新しい重要な機能をAWSに追加しました。それはすべて、顧客からの要望に応えていくためです。1日平均3つの機能が新たに用意され、選択可能です。
機能の追加は日々加速しており、ますます他社との差は開いていくと思います。これによってあらゆる企業は、現在のビジネスアプリケーションをクラウドに移すだけでなく、新しい付加価値を得ることができます。
2つ目のアドバンテージは、AWSにはすでに非常に大きな「エコシステム」ができています。具体的には、開発パートナー、アプリケーション開発会社、そして顧客企業のユーザーのネットワークです。多くの主要な開発パートナー企業がAWSへの知識を深めていただいているおかげで、クラウドへの移行という大きな転換期に、顧客企業が既存の開発会社に安心して相談できる状況が生まれています。
3つ目は、AWSは先行しているため成熟度が最も高いことです。我々は他社よりも大きなスケールで仕事をするノウハウを持っています。
2015年からAWS単体の業績を開示
――AWSは、なぜこれほど安くインフラを提供できるのですか。
我々はアマゾンという流通業が母体で、基本は「ローマージン・ハイボリューム」のビジネス文化です。一方の伝統的なIT企業は非常にマージンが高いモデルでずっとやってきました。ですから、利益の薄い事業にわざわざ切り替えるのは難しかったのだと思います。
ところが、2015年にAWSのビジネスを初めて決算で明らかにしたとき、それがいかに大きなビジネスなのかということを示すことができました。かつ、彼らが思っていたよりもクラウドへの移行は早く進んでいるということも明らかになったのだと思います。
既存のIT企業がやってきたことは、既存の企業の顧客に対するサービスでした。AWSがやろうとしてきたこととは大きく違いました。ビジネスインフラにクラウドが使えるという発想は、既存のITに集中していると見えてこなかったのだろうと思います。我々は新鮮な目で、顧客にとって何が一番ハッピーなのかを検討することができました。既存のビジネスに深く入り込んで、うまくいっている中では、確かにローマージンのビジネスを始める意義は見いだせなかったのだと思います。
クラウドが注目されてきた中で、おそらく既存のIT企業は、従来のソフトウェア・パッケージをクラウドとしてリパッケージできないかと考えていたのだと思います。ですが、それは全く考え方が間違っていることに気が付くのが遅れてしまったのです。日々顧客のワークロードが増えていく中で、そうした既存の方法論を拡大していくことは、例えて言うなら“重力”に対して戦いを挑むようなものです。
大企業がクラウド化することは
最初からわかっていた
――AWSは新しいビジネスアイデアを実現し、それをスケールアップさせるインフラとして使い勝手がいいものと認識していました。しかし今では多くの伝統的な大企業もAWSを事業基盤として採用し、また検討しています。大企業がクラウド化を真剣に検討するようになったきっかけはあるのでしょうか。
AWSは開始当初から、多くのスタートアップがスクラッチ(プログラムを独自にコードから作ること)で開発していました。Airbnb、Pitarest、Slackといった企業です。日本でも、gumi、sansan、freeeをはじめとする多くの企業が使っています。
そして、5年ほど前から、さまざまな業界で大企業がビジネスインフラにAWSを採用すると発表しています。
日本での最新の事例は、世界で活動する銀行グループのBTMU(三菱東京UFJ銀行)です。ごく最近AWSを広く採用することを決めていただきました。数多くのアプリケーションをAWSに移行する計画で、その目的はビジネスのスピードアップ、そしてコスト削減です。75%のスピードアップ、30〜40%のコストダウンを目指しています。つまり、5年間で1億ドルものコストをセーブできる計算です。
またNTTドコモは、すでに非常に多くのアプリケーションをAWS上で動かしており、約8ペタバイト(8000テラバイト)ものデータを日々やり取りしています。ほかにもローソン、ファーストリテイリング、日本通運など日本の代表的な企業が、あらゆるアプリケーションをAWSへ移行する作業を進めています。
米CIAもAWSを使っている
――大企業からの引き合いが増えたという5年前に、何かがあったのでしょうか。
AWSは開始当初、スタートアップをターゲットとしていたものの、いずれ最も大きな顧客が大企業や政府になるだろうということはわかっていました。ですが、彼らがクラウドに事業基盤を移すにはかなりの時間、5年程度はかかることもわかっていました。非常に大きなアプリケーションのインフラを移行するには、それぐらいの検討時間が必要だったのです。
大企業は大きな転換には保守的で、移行を決めてからも慎重に検討していくのは当然のことです。既存の事業基盤を維持しながら変革することが必要だからです。
もう一つ重要なことは、大口の顧客が検討を進める間、我々は非常に高いパフォーマンス、高いセキュリティをもって運用してきたということです。その結果、先行して大規模な導入を決める企業が現れ始めました。
たとえば、それまで自社のサーバでアプリケーションを開発していたネットフリックスが、全アプリAWSに移行することを発表したように、それが実際に可能だということを示したことがシグナルになり、大企業もいよいよ移行できるということを認識しました。さらに米国の情報機関であるCIAがAWSをビジネスに使うということを発表したことで、セキュリティの高さも証明されました。多くの企業が、CIAも使うのなら、確かなものだというお墨付きを得ました。
セキュリティやデータガバナンスでも
世界最大規模の管理体制を敷く
――クラウドが社会インフラとしての重要性が増す中、AWSのセキュリティに関して新たな取り組みはありますか。
開始当初からセキュリティはAWSの最重要課題のひとつでした。その考えは今も変わっていません。常に新しい機能を追加し、信頼性も向上させています。したがって、現在の規模のセキュリティチームを他社で抱えるのはもはや難しいほど、体制は拡大し増強しています。
厳格なセキュリティを維持するためのアプローチとしては、過去30年間の企業たちがやってきたアプローチと同じ方針でやっています。物理的なデータセンターへのアクセスも厳しくしています。また顧客がAWSを解約したあと、そのデータをクリーンにワイプすることも行っています。顧客が選択できる追加のセキュリティの機能も提供しています。
またデータ処理の記録も、非常に粒度の細かいアクセス管理をしています。個人がどこでなにを操作したのかを把握できるほどの厳格な管理が可能です。また暗号化のキーを確保する方法は何通りか用意しています。すべてのサービスを暗号化することもできます。コンプライアンス対応も行っています。「クラウドトレイル」というサービスを開始しました。これはユーザーのアクセスログを得ることができます。AWSにデータを預けておけば、どんなに昔にさかのぼっても詳細なログデータを取り出すことができます。これは大きなメリットです。
また、CISOの心配事は、社内のどこかで悪いサーバが動いているのではないかということです。AWSなら1つのAPI(プリケーション・プログラム・インターフェース)で、どこにいてもアクセス状況やデータの動きを取り出して一元管理できます。オンプレミス(自社運用のシステム)に比べて、クラウドの可視化のレベルは全く違うのです。
――来年GDPR(EUの個人データ保護規則)が施行されますが、対応はできますか。
これらの情報管理機能で、GDPRにも対応できると確信しています。GDPRに限らず、我々はこれからもすべての国や地域の法律に完全に準拠していきます。
――毎年50%の成長率は、今後も続けられますか。そしてどこまで成長するのでしょうか。
将来を予測することはできませんが、これからも意味ある形で成長を続けていけると楽観視しています。なぜなら今日お話したように、大企業や政府の大規模なクラウド移行は今後本格化するからです。
(取材・文/ダイヤモンドIT&ビジネス 指田昌夫)
http://diamond.jp/articles/-/121905
2017年3月24日 生地雅之 [株式会社オチマーケティングオフィス代表]
百貨店のプライベートブランドはなぜ上手く行かないのか
写真はイメージです
百貨店のPBは
徐々に広がっているのだが…
ブランドは、ショップブランドとグッズブランドに大別されます。ショップブランドには歴史のある老舗ブランドが多く、百貨店で言えば三越、高島屋、伊勢丹、大丸、松坂屋、東急、東武、西武、小田急等、歴史と伝統のある呉服系百貨店、電鉄系百貨店がその代表です。また、GMS(総合スーパー)においてもイトーヨーカドー、イオン、ユニー、イズミヤ等、そうそうたる規模を誇る小売業が名を連ねます。
一方グッズブランドとは、バーバリーやラコステ、トロージャン(大丸松坂屋)やナンバートゥエンティワン(三越伊勢丹)、ラクチンシリーズ(マルイ)のような、商品に名前を付けているブランドです。ただし、バーバリーやラコステはともかく、総合小売業が作ったブランドは認知度が低く、企業名やアイテムすら消費者に知られていないケースがほとんどです。つまりブランディング(ブランドの育成)ができていないのです。
直近の百貨店の売上は低迷しています。百貨店は売上回復のために自主開発商品(プライベートブランド商品、PB商品)を展開していますが、上手く行っているとはいえない状況です。
確かに、百貨店のPB商品は徐々に広がりつつありますが、そもそも百貨店は委託・消化取引に慣れているので、その中では低いシェアにとどまっています。例外的にそごう・西武のPB商品の売上は1000億円あり、それなりに評価できるのですが、中核の衣料品トータルPBである「リミテッド エディション」のシェアはまだまだ低い状態です。
百貨店は総合小売業
テイストの絞り込みができない
なぜ、百貨店のPBは上手く行かないのでしょうか。
百貨店の強みは“総合”小売業です。つまり、店名イコール一つのテイストという絞り込みができません。その代わりに、様々なテイストを包含し、幅広いお客様に対応しています。
その結果、お客様は「お気に入り」を見つけられないのです。テイスト志向の強いお客様はグレードを変えないで、テイストの明確なセレクトショップや、1ショップ1ブランドのSPA(製造小売業)型専門店に移行してしまっているのです。
では、百貨店がPBで成功するのはどうしたらいいでしょうか。ヒントは「1ショップ1ブランド」「1テイスト」です。
例えば、良品計画。PBの「MUJI」を、テイスト軸で括ったライフスタイル型(衣・食・住)ブランドとして1ショップ1ブランド展開し、テイストを気に入っていただいたお客様のライフスタイル(タ―ゲットとなる消費者の、日常生活の朝から夜まで)をすべて包含しているのです。
衣料品でいえば、SPAを標榜するZARA、GAP、H&M、FOREVER21等は、1ショップ1ブランドを貫き、1テイストを軸にした提案で、店舗数による規模の拡大を図る戦略です(ただし、ZARA-HOMEはZARA を着る人が好むテイストにはなっておらず、別のテイストのお客様を狙っているので、各々はともかくトータルでの相乗効果を発揮しての成功は覚束ないと思われます)。
彼らの強みは1ショップ1ブランドによるコーディネイトが可能であり、百貨店やGMSのように、お店の中の多様なテイストの中から、自らか、またはアドバイスを受けながら、コーディネイトをセレクトする必要がないのです(もっとも、ユニクロの場合は、日常(コモディティ)を全て包含する戦略であり、多テイスト混載なので多少事情は異なります)。
要するに百貨店であっても、お客様の気に入ったテイストのブランド売場であれば、「そこに行けば、お気に入りがすべて、迷わずそろう」ように提案すべきなのです。
バーニーズやユナイテッドアローズ、ビームス等はバイヤーの考えるコンセプトによるセレクトショップであり、現在でこそオリジナル比率を高めてはいるものの、SPAではありません。彼らは自分の考えるコンセプトの編集を第一義に置き、意思を表現してお客様に提案し続けている企業なのです。だから平均的に営業利益率も高い企業が多いのです。
ヴィトンやエルメス、シャネルも、ある意味ファクトリーやアトリエから派生した、1テイストのコンセプトを軸にしたグッズブランドです。中でも成功しているのがラグジュアリーブランド。ブランドエクイティを高めて利益は後で付いてくるといったビジネスにまで進化しているので、営業利益は2ケタ台まで到達しています。
百貨店に必要不可欠な
テイスト軸のライフスタイル売場の構築
これからの百貨店にはテイスト軸のライフスタイル売場構築が必要不可欠ですが、まだまだ緒にも付いていません。その上、このライフスタイル売場構築に欠かせない、テイスト軸のライフスタイルPB開発(衣食住共通の1ブランド)もなく、単品PBしかできていないのが現状です。テイスト軸のライフスタイルを提案可能にできるショップ&グッズブランドを、プライベートブランドとして開発すべきなのです。前述のMUJIの考え方は、ターゲットを置き換えれば十分に百貨店、GMSにおいても通用します。
百貨店においては、多テイストを包含したアイテム売場が多いのですが、アイテム売場からテイスト軸の売場に転換させ、自分の気に入ったテイストはこの「○○○ブランド売場」を訪れさえすれば他には行かずに済むように、衣、食(カフェレストラン程度でも)、住までテイスト別に売場を構築をすべきでしょう。要はテイスト別に多ブランド化(当初は2つ程度ででも)が必要なのです。
まずは現状からどうするか、ではありません。それ以前に将来像が明確に定められていないので、テイスト軸のライフスタイル売場やテイスト軸のライフスタイルPBのコンセプトすら見いだせていないのです。
ゴ―ルに向けた通過点としての、近いテイストでセレクトされた自主編集売場が増えてきています。それをいち早く、他社では展開していない、自店のお客様にカスタマイズされたプライベートブランドに進化させて行くべきでしょう。
(株式会社オチマーケティングオフィス代表 生地雅之)
http://diamond.jp/articles/-/122341
2017年3月24日 プレスラボ
「意識高い系学生」が会社をすぐに辞めてしまう理由
「意識高い系の学生」という表現がすっかり定着しているが、そういった学生たちは、社会人となって実際に活躍できているのだろうか。口先だけで終わるケースもあれば、有言実行のケースもあるだろう。かつて意識高い系だった学生が、その後どんな社会人になったのか。実際のエピソードを交えて紹介する。(取材・文/有井太郎、編集協力/プレスラボ)
4月を前に知っておきたい
意識高い系の「その後」
まもなく訪れる4月は、新入社員が各職場に配属されるシーズンだ。フレッシュな人材の中には、高い目標を掲げ、勉強熱心な新卒社員もいることだろう。
2000年代から「意識高い系の学生」という言葉が頻繁に使われるようになった。どちらかといえば、最近は学生を揶揄するような、ネガティブなニュアンスの強い表現といえよう。ただ、高い目標を掲げること、意識が高いこと自体は決して悪いものではない。就活市場では、間違いなく意識の低い学生よりも、意識の高い学生が求められるのではないか。
問題は、彼らの入社後である。意識の高い学生は、社会人になってから実際に活躍できているのだろうか。「口先だけだった」というパターンや「理屈ばかりで行動を伴わなかった」なんてケースもあるのではないだろうか。
ということで、新卒社員が入社する4月を前に、意識の高い学生の「その後」を調べた。そしてこの記事で紹介した事例が、ほんのわずかでも、4月から新入社員を育てていく現役ビジネスパーソンの参考になれば幸いである。
実は早期退職が多い?
意識高い系でチェックすべきこと
意識高い系の学生が、社会人となってどんな働きぶりを見せたのか。さまざまなビジネスパーソンに話を聞いたところ、意外なのか予想通りなのか、「早期離脱してしまった」というケースが多く聞かれた。それらの声をいくつか紹介しよう。
まずは、ある企業にトップの成績で入社した新卒社員について、こんな実例が聞かれた。
「ある年、新入社員の代表挨拶を務めた新卒社員は、まさに理想的なタイプでした。頭も良く知識もあって、コミュニケーション能力も高い。先輩の中に溶け込むのも早かったし、とにかくこの会社の仕事で『多くの人の力になりたい』と常に話していました」(35歳男性/イベント企画)
しかし、その期待の新入社員は「6ヵ月で会社を辞めてしまった」という。
「精神的にパンクしてしまったんです。同期の中で最初の退職者でした。いくら意識が高い彼でも、この会社は1年目の仕事がハードで、先輩にも厳しく言われるケースが多々ありました。加えて、1年目の彼はそこまで素晴らしい活躍ができませんでした。彼は意識が高く学生時代も優秀だったからこそ、これまで挫折したり叱られたりした経験が少なかったのでは。それで、立ち直れなかったのかもしれません。もちろん、彼をそこまで追い詰めた上司にも責任があると思います」(同)
「意識の高さ」と「精神的な打たれ強さ」は比例しない。そしてそれが、キャリアの舵を大きく転換させてしまう可能性もある。
他には、こんな早期離脱のケースがあった。
「優秀な大学を出て、大卒時点でかなり知識力の高かった新卒社員。ただ、実際に働かせてみると融通が利きませんでした。現場の状況に合わせて臨機応変に対応できなかったり、ムダな部分で仕事が遅くなったり。何より、自分が納得するアドバイス以外は『はあ…』と気のない返事をして聞かなかったんです。彼は結局、入社から半年で退社。『昔から夢だった』という学校の先生を目指しました」(40歳女性/商社)
「入社初日から先輩に堂々と自分の目標を語り、『3年後には月間ナンバーワンの売上を記録します』と言っていた女性社員は、3ヵ月で辞めてしまいました。働き始めると仕事の覚えが悪く、最初は高く評価していた上司が『あんまりだな』と言い始めた頃に辞めてしまいましたね。高い目標を掲げるのはいいのですが、その達成に向けて少しでも暗雲が立ち込めたり、苦しんだりした時にすぐ逃げる。今までそういう生き方をしてきたのかもしれません。意識の高さはアテにならないと思いました」(29歳男性/販売)
高い目標を掲げたり、理想を持ったりするのはいいが、そのイメージと実際の働きぶりが噛み合わないと、すぐに離脱する人も多いようだ。よく言えば「切り替えが早い」とも言えるが……。もし意識の高い新入社員と接する機会があったら、失敗した後の「粘り強さ」や「気持ちの切り替え方」など、逆境への対応力をチェックしておくのも大切かもしれない。
有能な意識高い系は去っていく?
会社にとっては悩ましい存在
前項で取り上げたのは、どちらかといえば仕事ができなかった意識の高い学生だが、仕事ができる若者も当然いる。ただし、その人たちも行き着く先は「退職」というケースが珍しくないようだ。
「エリート大学を出て入社した新人は、1年目でプロジェクトのメイン担当に抜擢されるなど、素晴らしい活躍を見せていました。自分から案件のメイン担当に立候補するほどで、まさに有言実行の意識高い系でした。
入社時から会社の将来を考えているタイプで、飲み会でも彼だけは会社の不満を言いませんでした。毎日楽しそうに働いていましたが、入社から4年ほどで辞めてしまったんです。1年くらい前から色々な勉強会に出ていたようですが、そこで同年代の大企業社員の話を聞いて、さらに高いステップを目指したくなったのでしょう。私の会社は中小企業なので、できることには限界があります。上を目指すには当然の決断でした。でも、会社としては大きな痛手ですね」(36歳男性/IT)
意識が高くて仕事ができる。そんな人材が入ってくれれば上司としても嬉しいが、意識が高いからこそ、転職などでさらなるステップアップを目指すのは自然な流れ。意識が高い学生は、全般的に見て、退職してしまうリスクが高いともいえる。
ここである人の意見を紹介したい。大手メーカーで働く35歳のDさん(男性)だ。彼も新卒当時かなり意識の高いタイプで、同様に意識の高い若手の人たちと積極的に交流していた。
意識の高い若者と数多く触れ合ってきた彼は、自身の経験も踏まえこんな話をした。
「意識の高い人は、『必要なスキルをこの会社で身につけたら、数年で起業しよう』と考えていることが多いと思います。自分もそうでしたし、自分が話を聞いた人はほとんどがそういう考えでした。たとえ最初から起業などのビジョンを持っていなくても、本当に意識が高ければ、次第に『自分で会社を起こそう』とか、『転職して自分の仕事領域を広めよう』と考えがちです」
そして実際、Dさんの周りでは何人かの若手が起業したという。あるいは、会社の仕事をこなしながら常にSNSなどで外へ向けた発信をして、外資系の企業にヘッドハンティングされたケースもあるという。「今の時代、意識の高い学生で『新卒入社の会社でずっとやりたい』なんて本気で考える人はいないのでは」と語る。
意識高い系にとって
「挫折」の乗り越え方がカギ
とはいえ、意識の高い新卒社員がみな自分の望み通り起業できたり、さらなる上の企業に転職できたりするわけではない。そんな人はどうなるのか。先述した早期離脱のパターン以外にもあるはずだ。
先ほど登場したDさんも、若い頃は意識が高く「起業しよう」と考えていた。だが、起業せず今もずっと同じ会社で働いている。
「社会人になって3年くらい経った時に、完全に挫折しました。自分の能力の限界を感じたというか。現実に打ちのめされましたね(笑)。起業するとか、別の企業にヘッドハンティングされるなんて、自分には無理だとわかったんです。しばらくは目標を失いましたが、次第に『それならこの会社で少しでも大きな仕事をやろう』と考え直しました。それからは、とにかく会社のために身を捧げてます」
若い頃は起業のことばかり話していたDさんが、今は会社に献身的な人材となっている。同期の社員からは「まさかこんなに人が変わるなんて」と驚かれるという。
意識高い系の学生が挫折しても、なかにはDさんのように切り替えて、そのエネルギーを「今の会社で頑張ろう」という方向に替えるケースもあるのだ。
ちなみに、Dさんの同僚に話を聞くと、やはり彼の評価は社内でも高く、仕事も率先してやっていると評判のようだ。意識の高い学生の「その後」を考える上では、参考にすべきパターンではないだろうか。
ただし、意識の高さを会社に向けたものの、それが社員の不満を招いたケースとして、こんな例もある。新卒社員の話ではないが、一例として挙げておきたい。
「ウチはサービス業で、新たに管理人としてやってきた人が『お客様のためになるサービスで、東京トップをとる』と熱弁してました。語り口もピュアで、若い社員も感動していたのですが、実際に働き出すとその意識の高さはお客様よりも『会社からの評価』に向いていることがわかりました。つまり、お客様の気持ちを気にせず利益ばかりを優先したり、必要最低限の接客しかしなかったり。その意識の高さは会社にとってプラスかもしれないけど、下で働く社員は幻滅。誰も管理人を支持しなくなりました」(29歳女性/サービス業)
それが本心ならば
意識高い系は貴重な人材
意識高い系のその後を聞いてみると、実際に活躍できるかどうかのポイントは「意識の高さが本物かどうか」に行き着く気がしてならない。
たとえばIT系の人事を務めるMさん(39歳女性)は、意識が高い若者と接する時に、こんなポイントを見るという。
「意識が高い人において見極めるべきは、それが本心なのか戦略なのか。自分を良く見せようと意識が高いフリをする人はたくさんいますし、そのような戦略の人は、ちょっと挫折した時にすぐ諦めたり環境を変えたりしようとしがちです」
反対に、本心で言っている人は「環境や状況、会社の文化にかかわらず、自分の考えをはっきり言います。そういった人は、最終的に活躍することが多いですね」と話す。
なお、他のビジネスパーソンからはこんな意見もあった。
「本当に意識の高い人は、もし仮に一つの職場で燃え尽きたり挫折したりしても、仕事に一所懸命向き合ってきているので、そこで大きな経験が蓄えられると思います。そしてそれは次の仕事に生きますし、どこへ行ってもある程度は通用するはず。こう考えると、やはり意識を高く持つに越したことはない気がします」(35歳男性/広告)
意識高い系の学生が、入社時に掲げた目標を達成し、有言実行を証明していく――。そういったケースは、全体で見れば少数だろう。また、そんなことができるような有望な人材は、すぐに起業や転職などをして会社からいなくなる可能性がある。
ただし、最初の言葉通りには活躍できなかった意識の高い若者たちも、挫折をうまく乗り越えられれば、会社にとってはとても大切な人材になっていく。また、本当に意識が高い若者ならば、真剣に仕事と向き合う分、失敗からもいろいろなものを吸収していくはずだ。
「意識高い系」という言葉はどうも皮肉交じりのニュアンスになりつつあるが、いろいろトータルで見ると、やはり意識の高い若者は貴重ではないだろうか。彼らはキャリアの積み方や環境次第で、大きな可能性を秘めているからだ。
http://diamond.jp/articles/-/122337
2017年3月24日 安藤広大 [識学代表取締役社長]
上司は新入社員に「頑張る理由」を与えてはいけない
4月になれば、新入社員が入ってくる。そこで、新入社員に対して、「どうしたら、やる気を出してもらえるか」などと考え、「やる気を出させる教育」などをしていないだろうか。このように、仕事に対して「頑張る理由」を与えることは、本人の人生のためにも絶対にしてはならない。(株式会社識学代表取締役社長、組織コンサルタント 安藤広大)
新入社員に対して
会社が絶対にしてはならないこと
もうすぐ4月。新入社員が社会人デビューをする。多くの新入社員たちは、不安を胸に抱えながらも、少なからず未来に希望を抱きながら新生活をスタートさせることだろう。
そして、新入社員を迎える多くの会社は、新たな活気ある戦力を迎え、会社がいい方向に変わっていくことに大いなる期待をしていると思う。
しかし、現実を見れば、入社後3年での離職が、3〜4割とも言われている。未来に希望を抱いた新入社員は、数年後には会社に不満を持ったり、未来に希望を持てなくなって去って行き、新戦力に期待した会社側は「人事が採用をミスったな」と、また来年の新入社員に期待を寄せるというケースが、残念ながら多く見られるのが実態だ。
その一方、新入社員が一定数、離職していくのは、自然なことであるともいえる。というのも、入社試験でお互いが100%理解し合うことは不可能だからだ。入社後にアンマッチが発生する事態を完璧に防ぐということはできない。大学生と社会人になってからでは、接触する人間も情報も大きく変わるものだ。だから、社会人になってから、新たな人生の目標ができる。それを入社した会社では「実現できない」と判断することも出てくるからだ。
なので、一定割合で離職が発生するのは致し方がない。ただし、新入社員を受け入れた会社としては、彼ら彼女らの人生に対し、大きなマイナスとなることはしてはならない。その責任が会社側にはあるはずだ。
頑張る「理由」は
会社が与えてはならない
その「大きなマイナスとなること」とは、何か。
それは新入社員に「勘違い」させてしまうということに他ならない。「勘違い」したまま転職し他の会社に入っても、周りから評価を得る事はできない。そして、また次の会社も去る事になる。その「勘違い」は更に強固なものになっていく。新入社員の時に始まった「勘違い」がキッカケで、どんどん社会人として「生きる力」を失っていく事になるのだ。
さて、その「勘違い」とはどのようなものだろうか。
それは「仕事を頑張る“理由”は会社が与えてくれるものだ」というものだ。会社は、社員が発揮する有益性に対して給与という対価を支払っている。対価が発生している以上、社員は成果という有益性を発揮しなければならない。つまり、そもそも社員は無条件で「頑張らないと」いけない存在なのである。
「仕事を頑張る“理由”は会社が与えてくれるものだ」という「勘違い」をしてしまった社員はどうなるか。
「やる気が出ないのは、会社がやりがいのある仕事を与えてくれないからだ」
「もっと上司が盛り上げてくれたら、私たちも一生懸命働くのに」
「会社のビジョンを聞いてもワクワクしないので頑張れない」
「上司が話を聞いてくれないのでモチベーションが上がらない」
などと、自らの「頑張っていない」ことや、業績が悪いのを、会社や上司のせいにし始めてしまう。つまり、「他責の思考」を強く持つようになってしまうのである。
「他責の思考」を持てば
成長できない
他責の思考を持つ人は、成長することもできない。なぜなら、うまくいかないことは全て他人の責任にしてしまうからである。
ただし、いくら本人が他責の思考を持っていたとしても、周りからの評価は残念ながら、そんなこととは無関係に下される。どれだけ「自分の責任ではない」「会社が悪い」「上司が悪い」と認識をしていたとしても、周りが上司の言い分や評価を尊重するのである。そして、それが会社から下される評価となるのだ。
これは、紛れもない事実だ。そして、どこの組織に行こうが、この事実は変わらない。そして、会社から下された評価をもとに、対価が、待遇が決定されるのである。「仕事を頑張る理由を会社が自分に与えてくれたか」どうかとは無関係に進行していくのである。
しかし、「勘違い」をした社員は、この事実から目を背け、最後まで他責にしたまま会社を去ってしまう。そして、また、高い確率で次の会社でも同じことを繰り返してしまうのだ。
この「勘違い」した社員を作らないこと、そして、このような社員を世の中に放出しないことは、新卒社員を採用する会社の大きな責任だ。
前述したような種々の理由で、一定割合で離職が発生することは致し方ない。しかし、新入社員に「勘違い」をさせること、そして、「勘違い」をさせたまま離職させる会社側の罪は大きい。なぜなら、その社員は「勘違い」が原因で一向に活躍できず、社会全体では、有効な若い戦力が活用されないまま燻り続けるからである。
優しい良い上司ほど
「勘違い」を生み出しやすい
それでは、どのような会社、上司の言動が新入社員の「勘違い」を生み出すのか。
あなたは、以下のようなことを考えたりしていないだろうか。
「どうすれば部下はモチベーションを上げてくれるだろうか」
「どういう言葉が部下のやる気スイッチを押すのかな」
「部下を頑張る気にさせるのが上司の仕事だ」
これらは、すべて新入社員を「勘違い」させる大きな要因となる。
「常に上司が自分の“頑張る”理由を与えてくれるものだ」と。そして、だんだんと「他責の思考」を強く持つようになるのである。
安藤広大さんの『伸びる会社は「これ」をやらない!』(すばる舎)が好評発売中。224ページ、1620円(税込み)
一見、優しくて良い上司に見える言動が、実は部下の「勘違い」を誘発する。そして、部下の人生に大きなマイナスを与えることになるのだ。
では、上司は「頑張る理由」を与えなくていいのだろうか。
答えはイエスで、「頑張る理由」は与えなくていい。むしろ、与えてはならない。なぜなら、「頑張る理由」を他人から与えてもらえなければ「頑張れない人」になってしまうからだ。「頑張る理由」は与えられた環境下で、自分で見出すものだ。
上司がやるべきことは
部下が迷わないようにすること
上司がやるべきことは、明白である。「部下が迷わないようにすること」だ。迷わせてしまうことは完全に上司の責任だ。なぜなら、業務上、目標設定する機能は上司にしかないからだ。そして、部下が「迷った」先に混乱があり、そこにストレスがかかり離職をしてしまう。この離職は上司が完全に悪いし、これだけは避けなくてはならない。
部下は迷うことさえなければ、いずれ成長する。そして、勝手に自ら「頑張る理由」を見つけ出す。仮に、離職したとしても、それは新たなチャレンジをするための前向きな離職だろう。そして、過去を振り返った時に、自分が去った会社に対して、成長させてくれたことに感謝することはあっても、恨むことはないだろう。
これから入ってくる新入社員たちが「勘違い」をして、辛い人生にならないためにも、社会にとって貴重な戦力を無力化させないためにも、受け入れる会社の方々には、くれぐれも新入社員に、こちらから「頑張る理由」を与えないでいただきたい。
http://diamond.jp/articles/-/122149
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