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2017年3月23日 森山真二
ユニクロとセブンが目指す「消費者を信じない商品開発」
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは衣料品の製造から販売で革命を起こせるか――。これまでの日本の流通はメーカー、卸、小売業と明確な縦割りが存在した。しかし、ユニクロは製造小売業という製造から販売まで一気通貫の業態を定着させた。そしてこの先は「情報製造小売業」に変わるというのである。片やセブン-イレブンも、プライベートブランドに力を入れメーカーと流通業の垣根を崩し、「工場を持たないメーカー」になりつつある。(流通ジャーナリスト 森山真二)
ショッピングサイトでは
AIのコンシェルジュサービスを導入
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は東京・有明の新本部披露で集まった報道陣を前に意気軒高だった。柳井氏は「服を作る人と着る人の境をなくす」、「一人ひとりに寄り添う」、「次の世代に繋がるサスティナブルな社会を作る」というテーマを掲げた。
今までのユニクロといえば「俺たちがこんなに安くていい服をつくったのだから、買うのは当たり前でしょ」という売り方だったといえる。つまり、消費者をどっぷり信じ切った売り方ともいえるが、「寄り添う」ということは移り気な消費者の痒い所に手を届かせるという発想への転換だ。この発言に、ファッション商品だけではない、これからの流通のあり方が集約されている。
今後、刷新するユニクロのショッピングサイトではAIのコンシェルジュサービス(UNIQLO IQ)を導入、チャットするように欲しい商品を探すサービスを展開する。とくに、春夏アイテムだけで2万種類超をそろえ、体型に合わせセミオーダーで選べる商品を増やすという。
柳井社長はさらに、あるインタビューで今後、RFID(非接触でデータの読み書きを行う自動認識システム)の導入で商品の企画・生産を週単位から1日単位にシフトし、究極的にはリアルタイムで商品企画・生産をやるという見通しを立てている。この結果、店頭の商品が毎日入れ替わるような態勢の構築を目指す。「シーズン」というくくり方で企画や生産する考え方をやめるともいう。
衣料品は企画から生産まで時間が必要だ。このため、まだ寒く冬が去っていないのに、店頭は春夏物に切り替わり、まだ暑く夏が去っていないのに、秋冬物に切り替わってしまう。衣料品ではこんなギャップが当たり前になっていた。
毎日商品が入れ替わるようにできれば、こうしたギャップを解消でき、欲しいときに欲しい商品があるという、つまり「売る人」と「着る人」の境をなくせるというわけである。
翻って、国内の生活必需品のメーカーは本当に「消費者に寄り添った」商品づくりをしているのだろうか。いまだ、メーカーは「俺たちがこんなにいいものを作ったのだから、君たちは買うのは当たり前でしょ」という発想を持っているところが多いのではないか。もはやユニクロのように、その転換が必要だろう。
「セブンプレミアム」で
1兆5000億円を計画
消費者はすでに既成の商品では飽き足らなくなっている。新しい商品でないと財布の紐を緩めない。新しい発想が生まれない一つの理由としてメーカーと流通業に厳然とした「垣根」があるからだ。メーカーと流通側はその垣根を崩さないと新しい世界は開けない。
セブン&アイ・ホールディングスが約1兆1500億円の売上高のあるプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」を2019年度に1兆5000億円の売上高まで引き上げる計画を打ち出している。
しかし、1兆5000億円の目標はそれほど下駄をはかせた数字ではないだろう。1兆5000億円のメーカーといったら、それなりの規模である。食品メーカーでは味の素や、明治ホールディングスなど数えるほどしかない。
セブン&アイにはセブン-イレブンという全国2万店近い強力な販路があるから、それくらい売れるのは当たり前ではないかという指摘はあるかもしれない。しかしそうでもなさそうだ。
2007年にPB「セブンプレミアム」の販売を始めて約10年、鈴木敏文セブン&アイ名誉顧問は会長を辞任する前に「セブンプレミアムを作りたいというメーカーが列をなしている」と言っていた。
セブン-イレブンはメーカーなどが参加したチームマーチャンダイジング(商品化計画)で、徹底的に商品の市場を調査する。食品だったら繰り返し味覚を検証する。それも何度も作り直す。
メーカーにとってはPBの出現によって、セブン-イレブンから自らの商品の"売り場"がなくなることに対する"防衛"の意味もあるだろうが、その半面自ら「作らせてほしい」というほど、セブン-イレブンは消費者の嗜好を的確につかんでいるといえる。裏を返せばメーカーは消費者の嗜好を的確に掴んでいなかったともいえる。
未来を予見した発言をしていた
ダイエー創業者の故中内功氏
ダイエーを創業した故中内功氏は「流通業は工場を持たないメーカーになるべきだ」と説いた。まったく未来を予見したかのような発言だったが、ダイエーも実際、その言葉を信じ愚直に商品開発をやり、不動産や異業種に投資しなければ経営不振に陥らず、イオンの傘下に入ることもなかったと思う。
だが、それを代わって成し遂げようとしているのがセブン&アイであり、同社はすでに「工場を持たないメーカー」の域に近づいているといっていい。
ユニクロ柳井社長は「作る人と着る人の境をなくす」という。元々ユニクロのような製造小売業は自分で製造し販売する仕組みだ。このため、柳井社長は「販売した際のデータは次の製造に生かされ、消費者のニーズが鮮明になっていく」と話している。
だが、まさにセブン&アイのPBも同じ。消費者に近い位置にいるセブン-イレブンが消費者のニーズをすくいとり、そのニーズを愚直に反映させた商品を作っている。まさに、メーカーと流通の境を低くしている。
消費者を信じないで
寄り添って徹底的に調べる
では、なぜセブン&アイが流通業のなかで1兆円超を達成できたのか。実は、こんな話がある。
セブン&アイのセブン-イレブンは数年前から、ローソンの牙城だった関西攻略に乗り出している。ローソンに比べ店舗数で劣っていたが、今では上回っている。その巻き返し策はなんのことはない、愚直に関西地区の味覚を調べのである。
セブン-イレブンでは元来、一部のおでんなど以外の商品では地域差はなかった。だが、関西地区の攻略にあたって外食店100店以上、商店街数ヵ所で、食べ歩きをして味覚を詳しく調査した。その上でメーカーとチームを組み関西仕様の商品を作ったというから、その徹底力が違う。
16年2月期には、売上高900億円近くに達したい入れたてコーヒーにしても、過去4回ほど失敗している。しかし諦めなかった。一度「これだ」と思った商品は成功するまで味覚や販売方法を検証して徹底して取り組むのである。下手に妥協はしないのだ。
消費者を信じないで、消費者に寄り添って徹底して調べる――。それを商品開発に生かす。今後、ITがそれを加速していくだろう。製造、流通の垣根をなくした「消費者を信じないマーケティング」がますます必要になるかもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/122159
2017年3月23日 加藤 出 [東短リサーチ取締役]
インフレ2%の達成は程遠いヤマトの値上げが話題のお国柄
宅配便の運賃引き上げを検討しているヤマト運輸。値上げは、消費税率の引き上げ時を除くと27年ぶりだという?Photo:Rodrigo Reyes Marin/Aflo
宅配便最大手のヤマト運輸が、宅配便の運賃引き上げを検討しているというニュースが大きな話題となっている。1面トップで報じた全国紙もあった。
しかし、米国人がこの話を聞いたとしたら、「なぜそんな話題が新聞の1面に載るのか」と驚くと思われる。なぜなら、米国では荷物の配送料の値上げは日常茶飯事だからだ。
日米の消費者物価指数(CPI)における「配送料」の動きを比較してみよう。
20年前となる1997年1月の価格を100とすると、日本の今年1月は98だ。非常に硬直的である。ヤマト運輸が検討している今回の値上げは、消費税率引き上げ時を除くと、実に27年ぶり(バブル期以来)だという。
対照的に、米国の「配送料」は持続的な上昇を示してきた。20年前の価格を100としたときに、今年1月は153だ。米企業は日本企業と違って、人件費などのコスト増加分をサービス価格に自然体で転嫁してきた。
ただし、過去のこのコラムで触れてきたように、米国でもモノの多くは長期デフレに陥っており、耐久消費財の価格は20年前に比べて18%も下落している。
それでも米国のコアCPI(食料やエネルギー等を除いた総合指数)が、この20年間で一度もデフレになっていない理由は、サービス価格が大きく上昇してきたことにある。
今回のヤマト運輸の値上げは、インフレ2%を目指している日本銀行にとって朗報ではある。だが、CPIにおける配送料のウェイト(全体に対する比率)は、たったの1万分の15にすぎない。
そのため、今回の値上げが他業種におけるサービス価格の引き上げを誘発するかどうかが、まずは注目となる。
また、より重要なのは、安定的なインフレ2%が実現するためには、米国のようにサービスの値上げと賃金上昇が毎年続けて発生する必要があるという点だ。配送員が疲弊している実情を世間に訴えて、ヤマト運輸が何とか値上げを実現しても、次の値上げが10年後ということでは、日銀としては困るのだ。
そう考えると、日本におけるインフレ目標2%を達成するまでの道のりはまだ遠いことがあらためて実感される。
値上げしづらい空気、またはそれを招いている人々の行動規範を「ゼロ・インフレ・ノルム」と呼ぶ。それを打ち壊すまで、日銀は超低金利政策を粘り強く続けようとしている。
しかし、日本経済は先行き伸びていくという予想(成長期待)が人々の間に存在しなければ、たとえ融資の金利が低かったとしても資金需要は湧いてこない。人口問題を含む構造改革に着手しなければ、日銀が実施している超低金利政策の景気刺激効果は限られてしまう。
また、最近気になるのは、「人手不足→賃上げ→消費拡大→値上げ」という循環の拡大は緩やかな一方で、人件費の増加をサービス価格に転嫁しないで済むように、営業時間の短縮やIT化推進を含めた工夫によって、価格上昇を抑える動きが各所で広がりつつある点である。
現在の人手不足は労働年齢人口の減少が主因であり、消費の過熱に起因するものではない。それだけに、「ゼロ・インフレ・ノルム」を克服することは容易ではないといえそうだ。
http://diamond.jp/articles/-/121807
【第9回】 2017年3月23日 坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]
「全部自分でやってしまう人」の生産性が低い理由
「人に任せられない人は、仕事ができない」とよく言われるが、本当なのだろうか。元・週刊ダイヤモンド編集長で、『会社に入る前に知っておきたい これだけ経済学』の著者・坪井賢一氏に、経済学の視点からこの通説について解説してもらった。
生産性を高める「比較優位」の思考法
坪井賢一(つぼい・けんいち)
ダイヤモンド社取締役、論説委員。 1954年生まれ、早稲田大学政治経済学部卒業。78年にダイヤモンド社入社。「週刊ダイヤモンド」編集部に配属後、初めて経済学の専門書を読み始める。編集長などを経て現職。桐蔭横浜大学非常勤講師、早稲田大学政治経済学部招聘講師。主な著書に『複雑系の選択』(共著、1997年)、『めちゃくちゃわかるよ!金融』(2009年)、『改訂4版めちゃくちゃわかるよ!経済学』(2012年)、『これならわかるよ!経済思想史』(2015年)、『シュンペーターは何度でもよみがえる』(電子書籍、2016年)(以上ダイヤモンド社刊)など。 最新刊は『会社に入る前に知っておきたい これだけ経済学』
人に仕事を任せられない、全部自分でやってしまう……そんな人は「仕事ができない」「労働生産性が低い」とよく言われる。実はこれ、経済学的にも正しい。経済学には「比較優位の原理」という言葉がある。比較優位の原理とは、労働生産性の高い財に特化して交易することが相互に利益となることを証明した理論だ。つまり、得意な分野を見極め、生産性を高めるための考え方である。国や会社から個人のレベルにまで使える思考法だ。
比較優位の原理は、イギリスの経済学者デイヴィッド・リカード(1772〜1823)が、1817年に出版した著書で明らかにしたものだ。リカードは、イギリスとポルトガルの貿易を例にとって議論を進める。ポイントは労働生産性の比較だ。次の式によれば、2者を比較して、分母の労働投入量が少ないほうが、同じ産出量の場合は労働生産性が高いことになる。
労働生産性=産出量÷労働投入量
リカードは、イギリスとポルトガルのワイン、毛織物の貿易で比較優位を説明した。まず、両国のワインと毛織物の労働生産性を検討する。1年間で一定量のワインと毛織物の生産に必要な両国の労働者数は、以下の通りだ。
イギリス:毛織物=100人、ワイン=120人
ポルトガル:毛織物=90人、ワイン=80人
産出量をすべて100とすると、双方の労働生産性は以下のようになる。
◆イギリス
毛織物 100÷100=1
ワイン 100÷120=0.83
◆ポルトガル
毛織物 100÷90=1.11
ワイン 100÷80=1.25
このとき、ポルトガルが毛織物の生産を増やすとすると、その分、ワイン生産の労働量を減らさなければならない。しかしそれでは、ワインの労働生産性が毛織物より高いので、ワインを生産すれば得られる利益を逃すことになる。このように、ある行動を選択すると失われる、他の選択可能な行動の最大利益を機会費用という。法律用語では、逸失利益(本来得られるべきだったのに、得られなくなった利益)というが、こちらのほうがわかりやすい。
ポルトガルでは、毛織物の生産を増やせば増やすほどワインの逸失利益が増大する。毛織物の自国生産にこだわってワインの機会費用を忘れてはいけない、ということだ。イギリスは毛織物の労働生産性のほうが高いから、ワイン生産を増やそうとすると、毛織物に投じている労働量を減らす結果となり、毛織物に大きな逸失利益が出る。
したがって、ポルトガルはワインに、イギリスは毛織物に比較優位があることになる。これがリカードの解説だ。こうしてポルトガルとイギリスがそれぞれ特意技に特化して交易すると、両国全体の利益が増加することになる。
なぜ、全部自分でやってしまう人は仕事ができないのか?
話を戻そう。「仕事を任せられない人」「全部自分でやってしまう人」の労働生産性が低い理由については、比較優位の原理を仕事に置き換えるとよくわかる。
第2回ノーベル経済学賞(1970年)受賞者ポール・A・サミュエルソン(1915〜2009)は、弁護士と秘書の関係で比較優位の原理を説明している。
ある弁護士は秘書業務にも精通していて、文書作成も秘書より早い。しかし、秘書業務まで弁護士がやると、その時間でこなせる弁護士業務の利益を逃す(逸失利益)。すると弁護士業務の報酬が減り、事務所の経営がうまくいかなくなる。つまり、秘書には秘書業務に比較優位があるわけだ。このように、仕事においてもそれぞれの比較優位を意識することが、個人、そして組織全体の生産性を上げることになるのである。それゆえ、すべて自分でやってしまう、人に任せられない人は、全体の労働生産性を低くしてしまい、売上も利益も落としてしまうことになる。
比較優位の原理のように、知っておくと仕事の考え方や質に影響を与える経済学思考は、他にもいくつもある。ビジネスマンとして最小限の経済学の知識は身につけておきたいという方は、ぜひ拙著『会社に入る前に知っておきたい これだけ経済学』を参考にしていただけると幸いだ。
http://diamond.jp/articles/-/120944
2017年3月23日 中島 恵 [フリージャーナリスト]
中国人訪日客の「春節の爆買い」が減った意外な理由
中国人観光客といえば、春節と国慶節の大型連休に大挙して来日し、土産物を友人や親戚のために大量に購入する「爆買い」のイメージが日本では根強い。しかし、中国社会は急速に成熟しつつあり、自分の楽しみやプチ贅沢のために旅行を楽しむ人々が増えている。(ジャーナリスト 中島 恵)
大型連休を外して
来日する中国人観光客
目下、日本企業や役所は年度末の慌ただしい時期。子どもがいる家庭では学校が春休み中という人も多いだろう。さて、中国は? というと、2月の春節を一つの区切りとして、新しい年が始まって2ヵ月。学校も今は通常通りだ。外国なので日本の暦と異なるのは当たり前だが、日本人の間には「中国人が日本観光に大挙してやってくるのは春節と国慶節(10月1日の建国記念日)の大型連休のとき」という刷り込みがないだろうか?
だが、そんな中国のカレンダー通りの行動パターンは早くも崩れ去っている。カレンダー通りに行動するのは、カレンダー通りにしか休暇が取れない人々であり、最近ではプチ富裕層や洗練された層が「えっ?そんな時期にも?」と驚かされるような「違う時期の日本」をめがけて、わざわざやってきているのだ。
「今月末に東京に買い物に行く予定なんですよ。新しい『マロニエゲート銀座』をチェックしてみようと思って。目黒川のあたりでお花見もできたらいいな〜と思っています。中島さん、窓から桜が眺められるおしゃれなカフェとか知っていますか?」
杭州在住の中国人女性(35歳)は3月上旬、中国版ツイッターの微信(ウィーチャット)からこんなメッセージを送ってきた。その女性は自身も杭州でレストランとセレクトショップを経営。以前来日したときには東京・大手町の『星のや東京』にも宿泊し、合羽橋や目黒、自由が丘などをくまなく散策していただけに、ヘタな回答はできない。私自身はおしゃれなカフェやスポットを知らないので、友人に聞いて紹介してあげた。
彼女が日本情報をよく知っているのは日本に関する情報だけを紹介するSNSのサイトを常にチェックしているからだ。そこで日本の最新ファッション、新規オープンの専門店やカフェ、トレンドの情報を得る。さらに日本に行った友だちや日本在住の中国人からの生情報をプラスして、自分の仕事のスケジュールをやりくりした上で来日する。だから、春節と国慶節の大型連休はまったく関係がない。「春節は仕事が休みなので、家族で静かに過ごす大事な時間」だし、「国慶節は自分の店の書き入れ時で忙しい」からだ。
バーゲンセール初日や
お花見を狙って来日
では、そんな流行に敏感で先端を行く彼女たち中国のアラサーは、具体的にはいつ日本にやってくるのか?
一つは日本の百貨店や専門店のバーゲンセールの時期だ。夏物のセールなら7月。冬物のセールなら1月。とくに有名百貨店の特定のブランドのセールは日本在住の中国人の友人や店から直接連絡をしてもらい、セール初日をめがけて来日する。
以前、拙著『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』の執筆のために取材した伊勢丹の担当者は「中国のお客様は最初から日本の百貨店にやってくる"明確な動機"を持っていて、欧米ブランドよりも日本ブランドに興味があります。それに、日本人もまだあまり知らないような新進気鋭のクリエーターズ・ブランドも買っています。各百貨店やブランドのセール時期も熟知していますね」と話していた。
ふだんからファッション専門のサイトなどをチェックし、品番まで調べ上げていて“指名買い”もする。バーゲン時期だけでなく、3ヵ月に1回、定期的に新作を買いにやってくる常連客もいるというから、おのぼりさんで混雑する大型連休はむしろ避ける傾向にあるのは当然だ。セールの行列に並んでいるのが「中国人」だとわからないのは、彼らの外見や雰囲気が日本人とまったく見分けがつかないからであり、単独行動か、あるいは多くても2〜3人だけで静かに行動しているからだ。
次に増えているのは、日本ならではの季節を楽しめる時期。たとえば3月末〜4月上旬のお花見だ。桜のシーズンに大勢の中国人が観光にやってくることは今や珍しくないが、意外と増えているのは2月に静岡県で見ごろを迎える河津桜のお花見。
日本人でも関東地方の人にしか馴染みがない早咲きの桜だが、流行に敏感な中国人の中にはすでに河津桜の存在を知り、わざわざこの時期にぶつけて来日するという“お花見マニア”もいるほどだ。「普通の団体観光客がするお花見よりも“ワンランク上”のお花見を静かに楽しんでみたい」(前述の杭州在住の女性)のだという。
上海在住の別の女性の友人は「たまたまネットで尾瀬の水芭蕉の花を見ました。水がきれいな日本だからこそ、あんなにきれいな花が咲くのですね。開花時期が短いから、ぜひ日程を合わせて見に行ってみたいですね。水芭蕉を観賞しながらハイキングをするのも楽しそう」と話していたが、まさに「日本のこの時期にしかない○○を見たいから」とピンポイントでわざわざ日程を組む成熟層も増えている。
夏祭りや紅葉
アイドルコンサートなども目的
夏祭りや秋の紅葉シーズン狙って来日したいという声も高まっている。夏祭りは日本全国各地で行われているが、東北3大祭の「ねぶた祭」「竿灯」「仙台七夕祭」のほか、博多どんたく、京都の祇園祭などにも興味津々だ。何度か外国を訪れてその国の「通」になってくると、首都ではなく地方都市にこそ魅力を感じるという日本人がいるのとまったく同じ現象だ。
北京在住のキャリアウーマンの女性は「日本の主な観光地はほとんど回りましたが、お祭りはその時期にしかやらない特別なもの。地方のホテルや旅館も予約が取りにくくなるので、かなり前から計画を立てるんです。浴衣や着物を着て見に行くのが夢」と話していた。
『AKB48』や『嵐』などのアイドル、人気声優などのコンサート、B級グルメやご当地ラーメン、お弁当などの全国グルメフェスティバル、東京ドームで毎年開催している世界らん展なども同様で、「ほとんど日本でしか開催していない限定もの、そこに行けば一堂に揃っていて味わえる料理、お祭り気分のライブ感なんかが魅力ですね。計画を立ててその時期に合わせて航空券のチケットを取ります。だから、春節とか国慶節なんて、まったく関係がないんです」(上海の20代の会社員)という。日本では春節や国慶節になると中国人を意識した「熱烈歓迎」という赤や黄色の看板や横断幕を見かけるが、成熟層はそんなありきたりの団体さん向けのものには見向きもしないのだ。
中国社会は急激に成熟化
「メンツ消費」は減少している
中島恵さんの『中国人エリートは日本をめざす なぜ東大は中国人だらけなのか?』(中公新書ラクレ)が好評発売中。238ページ、842円(税込み)
爆買いが終わったといわれて久しい。むろん、まだ団体観光客は来日する全中国人観光客の半数ほどはいるし、免税店に行くのが目当てという人が消滅したわけではない。春節や国慶節でなければまとまった休暇が取れないという人もまだ多いだろう。中国は分母が巨大なだけに、それが完全になくなることなどありえないし、それを否定するものではない。
だが、一つのものを大量買いするステレオタイプの中国人が徐々に減少している背景には、中国社会の急激な成熟化があり「メンツ消費の減少」も関係している。同僚や友だち、親戚に買う(買わなければならない)大量のお土産のために時間を費やすより、自分の楽しみやプチ贅沢のために旅行を楽しむ人々が急速に増えてきていることは確かだ。それが「春節離れ」「国慶節離れ」という現象として表面に出てきているのではないだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/122163?
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