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資産1億円ぽっちでリタイアする人の末路
キーパーソンに聞く
コアプラス・アンド・アーキテクチャーズの玉川陽介社長に聞く
2017年3月23日(木)
鈴木 信行
減らぬ残業、上がらぬ給料。日本企業の労働環境の悪化に歯止めがかからない中、自分と家族のため、相応の資産を早めに貯めアーリーリタイアを狙おうとするビジネスパーソンも少なからずいるはず。そうした人達が「引退する当面の目安」として、古今東西、漠然と掲げているゴールが「資産が1億円を超えること」だ。
だが、「40〜50代で1億円程度の資産で引退すると、やがて苦境に立たされかねない」と警鐘を鳴らすマネーの専門家がいる。なぜ1億円もの資金がありながら、余裕を持ってアーリーリタイアできないのか。本当に安全に引退するには、いくらの資金が必要で、どのようなポートフォリオを組むべきなのか。資産運用のプロに話を聞いた。
聞き手は鈴木信行
人間には様々な「末路」があります。書籍『宝くじで1億円当たった人の末路』では、「宝くじで1億円当たった人」「事故物件借りちゃった人」「キラキラネームの人」「自分を探し続けた人(バックパッカー)」といった、やらかした人々の末路や、「友達ゼロの人」「子供を作らなかった人」「電車で『中ほど』まで進まない人」「8時間以上寝る人」「体が硬い人」といった気になる人々の末路まで、23編の多様な「末路」を1冊にまとめました。右の書影をクリックいただければ購入できます。是非ご覧ください。
「末路本」の詳細が気になる人は…
玉川 陽介(たまがわ・ようすけ)
1978年7月神奈川県大和市に生まれ。1997年12月、学習院大学1年時にジイズスタッフを創業。2002年3月学習院大学経済学部経営学科卒業。米国留学を経て、2010年8月コアプラス・アンド・アーキテクチャーズを創業。『勝者1%の超富裕層に学ぶ「海外投資」7つの方法』(ぱる出版)『海外ETFとREITで始める インカムゲイン投資の教科書』(日本実業出版社)など、著書多数。
「1億円程度では、余裕のあるアーリーリタイアは難しい」とのことですが、にわかには信じられません。まず、「仮に今、手元に1億円があり、そのカネを元手に投資商品を購入し、その分配金や配当だけで暮らせ」と言われたら、資産運用のプロとしてどういうポートフォリオを組むか、提示してもらえますか。
玉川:現物不動産はなしですよね。
できれば投資商品のみ、それも、ETFか投資信託でお願いします。
玉川:海外でしか購入できないものや、かなり専門的な商品を組み入れてもいいですか。
大丈夫です。こう見えても経済誌のデスクを何年も勤めていますし、略歴にも「資産運用は得意」と明記しています。オフショアでもヘッジファンドでもあらゆる金融商品をご活用ください。
玉川:分かりました。まずは1億円のうち3000万円はVXXのショートに使います。
?
恐るべき最新金融工学の世界
玉川:残りの7000万円のうち6000万円はPFFもしくはPGXなどハイイールド債のETFに入れます。
???
玉川:VXXとは「iPath S&P500 VIX Short Term Future ETN」のティッカーで、VIX指数と連動するETNです。PFFは「iShares U.S. Preferred Stock ETF」で、PGXは「PowerShares Financial Preferred」のことです。余った1000万円は、BDC業界最大の銘柄「Ares Capital Corporation」(ARCC)でも加えましょう。
??????
玉川:PFFなどは大体年率6%くらい出ていますからね。ARCCも9%近い配当が得られます。でも一番の柱はあくまでVXXのショートで、これは「Time decay」、つまり「オプション取引の時間的価値減少」を有効活用した戦略で…。
先生、ストップ、ストップ! 参りました。まずVXX、VIX指数から教えてください。
注:ここから先、少し難しい話になりますが、「働かず、投資信託の分配金でのんびり暮らしたいなあ」と思っている人には避けて通れない議論です。なお当面働く気がある読者の方は3ページまで飛ばして頂いても、人生に大きな支障は生じません。
玉川:分かりました。ではまずVIX指数ですが、これはボラティリティ・インデックスのことで「恐怖指数」と呼ばれるものです。市場が恐怖を感じた時に上昇するものです。
あ、それは聞いたことがあります。
玉川:VIXは指数ですから売買することはできません。このため、例えば「VIX指数が上昇した時に売って下落した時に買い戻す」という取引がしたければ、VIX先物を活用することになります。VIX先物とは、VIX指数が将来の時点でいくらになっているかを予想するもので、日経平均先物と同じ概念です。
分かる。ここまでは分かる。
玉川:シミュレーションでは1億円のうち3000万円をこのVIX先物を活用する投資戦略に投じるわけですが、VIX先物を直接取引するのでなく、VIX先物を詰め合わせたETNであるVXXを活用します。これがこの戦略の最大のポイントです。
先物を直接取引するのも、先物を詰め合わせたETNを取引するのも同じことでは?
玉川:それが違うんです。VXXは、VIX先物の期近が約60%、期先が約40%で構成されています。期近を100%保有して中身の入れ替えをしないと、期日になると保有銘柄の全てが現金化されてしまい、運用が終わってしまいます。だから、常に中身を入れ替えることが必要です。具体的には常に、期先を買ってきて期近を売ります。
まだ分かる。まだ大丈夫。
玉川:そしてここからがポイントですが、難しい話を省くと、VIX先物の中身は、S&P500先物オプションと非常に似ています。
難しいですが、とりあえず「VIX先物≒S&P500先物オプション」だと。となるとVXXは、「S&P500先物期先のオプションを買ってきて、先物期近のオプションを売り続けているETN」となります。あっ、なんか分かってきた気が…。
理論的には確実に結果を出す「魔法の商品」
玉川:そう、オプション価格は将来の不安に対する保険料の意味合いがありますから、期日が近づくと価値が落ちます。これがオプションの時間減衰効果です。
遠い将来は何が起きるか分からないから、保険料は高くなる。明日のことは何が起きるか大体分かるから、不測の事態に備えた保険料は安くなる、と。つまり、VXXは、高く買ったものを、安く売り続けているわけですから…。
玉川:何もなければ、“理論的には確実”に価値は減衰し、価格は下落して行きます。
おお。だとすれば、VXXを売るのは、株や為替がどうあろうと、“理論的には確実”に儲かる投資となる!
玉川:統計上は毎月5%、年率65%下がるとされています。そこまで行かなくても、年間5割は下がる、つまり売っておけば毎年5割は儲かる、というイメージでしょうか。
それって「夢の金融商品」じゃないですか! このVXXに3000万円入れるんですよね。とすると年間1500万円の利益。余裕のアーリーリタイアです。加えて7000万円分のハイイールド債などへの投資もあるから…。
玉川:3つの投資商品がすべて毎年想定どおりに利益を生むわけではありません。時には想定を大きく下回る時もあるでしょう。それを踏まえても、毎年、手取りで900万円程度は見込めるのではないでしょうか。
【これが最新版 1億円でアーリーリタイアするためのポートフォリオだ】
■ 3000万円 「iPath S&P500 VIX Short Term Future ETN」(VXX)のショート
■ 6000万円 「iShares U.S. Preferred Stock ETF」(PFF)
■ 1000万円 「Ares Capital Corporation」(ARCC)
少なくとも毎年、900万円ゲット!!!(の計算)
いずれも日本国内にいては簡単に買えないけど、通勤ラッシュやパワハラ・セクハラ地獄を抜け出し配当金で暮らせるなら、海外の証券会社に口座を開くことくらい楽勝、と思う人もいるはず。マネーフォワードの瀧さん! 1億円あれば、全然アーリーリタイア行けるじゃないですか(聞き手が何の脈絡もなく、フィンテックの雄、マネーフォワードの瀧俊雄取締役の名を出し、テンションが上がった理由は「宝くじで1億円以上当たった人の末路」参照)。
玉川:もちろん、あくまでこれは机上の計算で、本当にこのプランで引退すると、場合によっては、やがて苦境に陥りかねません。
え。
玉川:このポートフォリオの生命線であるVXXは、VIX指数(VIX先物)に連動するとされるETNです。そのVIX指数は、リーマンショックやチャイナショックなどの大きな経済変動があった時、暴騰することがあります。VXXを売っていると、そんな時、大きな損を出してしまいます。
無念、一回でも大きく毀損するとさようなら
そりゃ恐怖指数ですからね。恐怖が来ればそうなるでしょうよ。でも、統計的には毎年5割ずつ下がっていくわけですから、一時的にハプニングでVXXが暴騰して損をしても、中長期的には得するんじゃないですか。
玉川:そう思いますか。急騰によってロスカットされたらどうなります。売りは損失青天井です。VXXが暴騰していけば、売り手の損失は限りなく膨らんでいきます。証券会社に入れている金額次第ではあっさり強制ロスカットされる場合もあります。急なショックで暴騰しても、事件が落ち着けば急騰したVXX価格は急落しますから、ロスカットさえされなければ含み損が出ても元に戻ります。でも、ロスカットされてしまうとそうはなりませんし、ポジションがない間にVXX価格が急落し元の水準に戻ってしまうと、元本を回復する機会も失われてしまいます。
下手をすれば、3000万円が消えかねない、と。
玉川:投資商品のインカムゲインで食べていく戦略は、一度でも元本が大きく毀損すると回復不能になるリスクがあるんです。それに仮に900万円首尾よく利益が出ても問題があります。今の時代に40〜50代で1億円の資産を貯めるには、2000万円以上の年収を何年にも渡って続けなければ難しいと思います。そういう人たちは貯金額も多いですが、消費額も多い。「気分は富裕層」なんです。おそらく900万円程度ではいずれフラストレーションが溜まるはずです。
そんなもんでしょうか…。
玉川:そしてここが大事ですが、私が見ている限り、一度、アーリーリタイアした元会社員の多くは、二度と働こうと思わなくなります。そんな状況で元本が減っていったら…。
そこから先は言わなくても、分かります…。うーん、だったらそんな難しい金融商品ではなく、もっと単純な作戦で行ったらどうでしょう。日本の証券会社でも馬鹿みたいな高配当を出している投資信託はたくさんあります。名前は出せませんが、「海外リートに高金利通貨、後よく分かんないんですけどデリバティブ的な戦略を組み合わせたやつ」に、もうめんどくさいから1億全部でどうでしょう。VXXまで行かなくても30%ぐらい利回りが出ていますから、1億円入れたら3000万円、5000万円でも1500万円を超える分配金になるかと…。
【これが聞き手の妄想 1億円でアーリーリタイアするためのポートフォリオだ】
1億円 「海外リートに高金利通貨、後よく分かんないけどデリバティブ的な戦略を組み合わせたやつ」
毎年3000万円ゲット!!!(の計算)
玉川:全くお勧めできません。確かに米国REITに投資する投資信託などの中には、分配金利回りがとても高いものも少なくありません。しかしこれはおかしな話で、一般的に米国のREITは3〜6%の分配金しか出ていません。このような過剰配当は「タコ配」と呼ばれています。
「宝くじで1億円当たっても引退するな」は本当
タコが自分の足を食べているようなものだ、と。難しいですね。贅沢しなければ1億円でも何とかなるんでしょうけど、贅沢しない人はそもそも1億円を貯めていない、という話ですもんね。なら分配金でのんびり暮らすのはあきらめて、デイトレーダーならどうですか。
玉川:インカムゲインよりは可能性があるかもしれません。実際、私の周辺でも、株をやっている人の中には1億円程度の資産で、株取引しながら暮らせないかと検討する人はいます。ただ、株で成功し、今現在、1億円の資産を持っている人の大半は、アベノミクスに伴う株高で儲けた人で、その人が本当に株の実力があるかは未知数です。それにデイトレーダーとして十分な利益を上げ続けるには、会社情報を丸ごと暗記するくらいの気合と集中力が必要です。高齢になった時、その気合と集中力が持続できるかも心配です。
どうやら宝くじで1億円当たっても引退するなという話は本当なんですね。瀧さん、やっぱり瀧さんの言う通りでした…。
「末路本」の詳細が気になる人は…
このコラムについて
キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/032200245
失速の春闘、国内景気は維持できるか?
小宮一慶が読み解く経済の数字・企業の数字
2017年3月23日(木)
小宮 一慶
トランプ政権の動向、北朝鮮問題、森友学園問題などへの関心が高まる一方で、日本経済についての報道が全体に大幅に減っていると感じます。
経済指標を見渡すと、国内景気は比較的順調に回復しています。ただ、これが中長期的に続くかといえば、難しいのではないかと思います。短期的には、冒頭で話したように、賃金の上昇速度を物価の上昇速度が上回る可能性が高いこと。そして、もう少し中長期に見れば、成長を維持・拡大するためには金融政策でも財政出動でもなく「成長戦略」が必要です。しかし、最近は成長戦略の「せ」の字も聞かれなくなってしまいました。これは、国民にとっても日本経済にとっても大変危険なことです。
日本経済は、いつまで景気を維持できるのでしょうか。まず短期的な視点で考えましょう。その最大のポイントは「春闘の行方」です。
日本経済は順調に拡大している
まずは、日本経済の現状を見てみましょう。
出所:内閣府、経済産業省
国内総生産(GDP)は、名目・実質ともに4四半期連続でプラスとなっています。日本経済全体は比較的堅調に推移していると言えます。
続いてGDPを「生産面」から見てみます。GDPは付加価値の合計ですから、製造業の生産状況はGDPに大きく影響します。製造業の生産の動向を示す「鉱工業指数」の「生産指数」は、2010年度を100として、13年度、14年度、15年度とずっと100を切っていました。
経団連の榊原定征会長。連合との懇談会の席で(写真:毎日新聞社/アフロ)
皆さんはこの基準年の2010年という年がどんな年だったか覚えていますか。2008年9月にリーマンショックがあり、その後、世界同時不況に陥り、そこからやっと抜け出そうかという時期が2010年でした。決して良い年ではなかったわけです。その2010年を長く超えられない状況でしたが、ここにきてじわじわと上昇して16年12月に100.6に。17年1月は少し下がりましたが、それでも100.2と100を超えている状況です。
出荷に対する在庫の割合を示す「製品在庫率指数」にも良い傾向が見られます。16年3月のピーク118.3から徐々に減少していき、17年1月には111.1に低下。まだ満足できる水準ではありませんが、在庫が少しずつ捌けてきている様子も分かりますね。
製造業の生産設備がどれだけ稼働しているかを示す「稼働率指数製造工業」も、これも2010年を100とした数字です。上の表を見ていただくと分かるように、昨年の5月には95を切る水準まで落ちていたものが、16年12月、17年1月は101.6、101.7と順調に伸びています。つまり、生産が拡大し、在庫が減るという好循環が生まれつつあると言えます。
消費者物価はようやく上昇に転じた
ただ、今後の日本経済を見極める上で最も重要な「個人消費(家計の支出)」が伸びるかどうかは、非常に微妙なところなのです。個人消費は、消費面ではGDPの6割近くを支えていますからね。
出所:総務省、経済産業省
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/032200008/p2.png
その意味において「消費支出2人以上世帯」の数値の動きはとても重要です。日本の景気がよくなるかどうかは、この値が浮き上がってくるかどうかにかかっています。
残念ながら、今のところ「消費支出2人以上世帯」はずっと前年比マイナスが続いていますね。ただ、小売業の売れ行きを示す「小売業販売額」は昨年11月以降プラスが続いています。
これはなぜでしょうか。小売業の中でも目立って伸びたのは、自動車や燃料、家電、医薬品、化粧品などです。自動車の販売が回復したのは、かつて実施されたエコカー減税や補助金などによる「需要先食い」の反動が和らいできたからではないか、と言われています 。また、化粧品や医薬品などはインバウンド消費による伸びが大きいと思われます。
個人消費全体は依然として低迷が続いていますが、小売業については回復の兆しが見られるということですね。
個人消費とあわせて見ていただきたいのが、物価の動向です。
出所:総務省、日銀
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/032200008/p3.png
消費者物価指数は、昨年12月までは前年比マイナスが続いていましたが、17年1月に前年比プラス0.1%となりました。ようやく物価がプラスに転じ始めたのです。
この理由は、二つあります。一つは、上の表にある「輸入物価指数」が大幅に上昇していることです。米大統領選挙以降、円安に振れたことと、原油価格が1バレル=50ドル程度に落ち着いたことで、輸入物価が上昇しつつあります。その影響で、企業間で取り引きされるものの物価を示す「国内企業物価指数」も上昇していますね。
もう一つは、人手不足によって人件費が上昇し、「企業向けサービス価格指数」が上昇していることです。
私は以前から、夏前には消費者物価指数がプラスに転じると考えていましたが、早くも1月に前年比プラス0.1%となりました。インフレ率の上昇傾向は今後も長く続くのではないでしょうか。
物価上昇をカバーできるほどの賃金上昇は見込めるのか?
では、「個人消費は引き続き伸びていくのか?」という話に戻りましょう。
先にも触れましたが、個人消費が伸びるかどうかは、はっきり言って微妙です。「現金給与総額」の推移を見てください。
出所:厚生労働省
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/032200008/p4.png
現金給与総額は、一人あたりの給与の総額を平均したもの。16年6月以降は前年比プラスとなっていますね。給与は上昇しつつあると言えます。
そして、先にも触れた「消費者物価指数」は、16年12月までは前年比マイナスが続き、17年1月は同比プラス0.1%でしたから、「実質賃金」は増えていると言えます。
小売業販売額が若干ではあるもののプラスに転じているのは、先にも述べたように化粧品やドラッグなどのインバウンド消費が増加したとともに、実質賃金が上がっていることもあるのではないかと私は考えています。
しかし、問題はここからです。消費者物価指数が上がり始める中で、それをカバーするだけの賃金上昇は期待できるのでしょうか。
先にも少し触れましたが、今回の消費者物価指数の上昇は、需要が伸びて物価も上がる「ディマンドプル型」のインフレではありません。輸入物価の上昇による「コストプッシュ型」のインフレですから、良いインフレではありません。いずれは「化けの皮」が剥がれてしまいます。「デフレスパイラルに陥るよりはマシだ」というだけの話なのです。
インフレ分をカバーできるだけの賃金上昇が起こらなければ、再び景気が失速する可能性があります。日銀が目指す「物価目標2%」に近づくことはできても、消費が落ち込んでしまっては元も子もありません。
現金給与総額が増えていくかどうかのポイントは、今年の「春闘」でどこまでベースアップが見込めるかという点でしょう。
今年の春闘が始まる前、政府は大企業に「少なくとも昨年並みの水準の賃上げと4年連続のベアの実施を期待している」と言っていました。景気を維持するためには、何としても消費を伸ばさなければならず、そのためには賃上げ、中でも全員の賃金を底上げするベースアップが必須だからです。
大企業が賃金を上げること自体は難しいことではないと感じます。財務省が発表した16年10-12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の経常利益は前年同期比16.9%増の20兆7579億円となり、過去最高だったとのことです 。余力はあるのです。
ところが、今年の春闘は、大半の大企業でベースアップが前年割れとなりました 。政府が賃上げを促したにもかかわらず、大企業の経営者たちは慎重な姿勢を見せたのです。
なぜ、このような結果になったのでしょうか。理由はいくつかあります。一つは、上場企業が、賃上げよりも配当に利益を回したかったこと。
上場企業には、以前から「ROE8%以上を目指せ」というプレッシャーがかかっています。もちろん、配当や自社株買い入れなどの株主還元も強化しなければなりません。「物言う株主」にも気を配らなければならないのです。これらは「賃金を上げる」という戦略とは矛盾するものです。いくら政府に言われても、両方やれるものではないのです。
そうした中で、業績に連動させて賃金を「賞与」の形で一時的に増やすことは可能でしょうが、ベースアップまではなかなか難しいのです。今後ずっと人件費がかかることになりますし、退職金などにも影響しますから。
もう一つは、国際的に不確定要因が多すぎることです。米国のトランプ大統領がどのような政策をとっていくのか。今年4〜5月に控えるフランスの大統領選挙、秋に控えるドイツの連邦議会選挙、イタリア、ギリシャの情勢がどうなるのか。中国の長期的な景気減速ももちろん懸念材料です。円相場も気がかりです。
このような時期に企業は、内部留保を厚めにしながらも、株主還元だけは維持しようと考えがちです。株主への配当は「過去の利益」から配るもの。一方のベースアップは「この先の利益」に大きく依存します。不確定要因の多い現状では昨年並みのベースアップの実現は難しいでしょう。実際、トヨタは一昨年3000円、昨年1500円だったベースアップを、今年は1300円と回答しています。
では、企業が賃金を上げるためには何が必要なのか。もちろん、将来の業績が持続的に拡大することが必要。そして、そのベースとなるのは、政府が成長戦略にしっかり取り組み、将来的に日本経済が伸びていくことに確信をもてることです。もちろんグローバル企業の業績は日本の景気だけで決まるものではありませんが、日本で働く人の賃金は、日本での業績に大きく影響されます。
今、多くの日本企業は国内ではなく海外で稼いでいます。海外で稼げれば、海外で支払う給与は上げられます。海外での収益は日本での配当増加につながります。しかし、それが輸出による収益増でない限りは、国内での業績は上がらず、日本国内の給与を上げる理由にはなりません。国内の給与を上げたければ、国内の産業を活性化させ、国内での業績を向上させるしかないのです。日本経済が安定的に伸びていくことが分かれば、企業も賃金を上げやすいのです。
最近、「成長戦略」という言葉が全く耳に入らなくなりました。政府は、成長戦略なくして景気回復は続かないことを認識し、本物の成長戦略を策定すべきです。
(つづく)
このコラムについて
小宮一慶が読み解く経済の数字・企業の数字
2020年東京五輪に向けて日本経済は回復するのか? 日銀の金融緩和はなぜ効果を出せないのか? トランプ米大統領が就任した後、世界経済はどこに向かうのか? 英国の離脱は欧州経済は何をもたらすのか? 中国経済の減速が日本に与える影響は?
不確定要素が多く先行きが読みにくい今、確かな手がかりとなるのは「数字」です。経済指標を継続的に見ると、日本・世界経済の動きをつかむヒントが得られる。
企業の動きも同様。決算書の数字から、安全性、収益性、将来性を推し量ることができる。
本コラムでは、経営コンサルタントの小宮一慶氏が、「経済の数字」と「会社の数字」の読み解き方をやさしく解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/032200008/
2月米中古住宅販売:前月比3.7%減、在庫は前年比で減少−価格上昇
Patricia Laya
2017年3月23日 00:29 JST
2月の米中古住宅販売件数は前月比で減少した。前月は10年ぶりの高水準に増加していた。
全米不動産業界(NAR)が22日発表した2月の中古住宅販売件数は、季節調整済み年率で前月比3.7%減の548万戸。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は555万戸だった。
中古住宅価格(中央値)は前年同月比7.7%上昇して22万8400ドル。
在庫は前年同月比6.4%減の175万戸と、前年比では21カ月連続の減少。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ixVsQ3X8ZYzo/v2/-1x-1.png
NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は統計発表に伴う記者会見で「販売取引のスピードは非常に速く、われわれは在庫不足を認識している」と指摘。「購入意欲は引き続き非常に堅調で力強いが、抑制要因がある。購入意欲を満たす在庫が十分にないことだ」と述べた。
中古住宅販売は全米4地域のうち3地域で減少。南部では増加した。
販売に対する在庫比率は3.8カ月。前年同月は4.3カ月だった。NARは同比率が5カ月を下回ると供給タイトと認識している。
2月の一戸建て販売は3%減の年率489万戸。コンドミニアムなど集合住宅は9.2%減の59万戸だった。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Sales of Previously Owned U.S. Homes Fell 3.7% in February (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON81AO6TTDS301
総務省、18年1月から消費新指標公表 単身世帯の調査充実
2017/3/22 20:27
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総務省は22日、個人消費の全体像を把握するために新たに「消費動向指数」を作成し、2018年1月から公表を始めると発表した。現在の家計調査は2人以上の世帯が中心のため単身世帯向けの調査を新たに実施して補う。小売店や飲食店の販売動向を加味した指数も作る。消費の実態をより正確につかみ、国内総生産(GDP)の精度向上につなげる。
消費関連統計の見直しを議論してきた総務省の研究会が報告書をまとめた。単身世帯の調査は17年8月から2400世帯以上で始める。家計調査のほか、高額品などの動向を調べる家計消費状況調査の結果も統合して指数を算出する。
商業動態統計など、モノやサービスを販売する側の統計を使った指数も算出する。POS(販売時点情報管理)データなど民間が保有するビッグデータも活用する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H5F_S7A320C1EE8000/
総務省が消費の新指標に「消費動向指数」 2018年1月分から
産経新聞 3/22(水) 18:40配信
総務省は22日、消費を包括的にとらえる新指標として「消費動向指数(CTI)」を開発し、2018年1月分から公表することを決めた。家計調査の刷新とともに提供を始め、民間のビッグデータを順次、活用して速報性を強化する。
ミクロの消費動向を示す家計調査は2人以上の世帯が対象で、これを補完するために17年8月を目途に単身世帯を調べる「家計消費単身モニター調査」を始める。18年1月には家計調査もキャッシュレス化に対応するなど改善。これらを合わせて、世帯の消費動向を包括的に把握できる指標体系を構築するという。
マクロについても、GDP(国内総生産)統計の四半期別公表値では観測できない月次の値を推計し、両面から消費をみる。産学官連携の研究協議会を立ち上げ、ビッグデータの実用化を進めることも決めた。
消費関連指標のあり方について議論してきた有識者研究会の提言を受け、高市早苗総務相は「多くの人に利用いただける信頼性の高い指標になると確信している」と話した。
18年1月という提供開始時期について、研究会の構成員を務める大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは、「19年10月予定の消費税増税の判断にも参考になるタイミングだ」と、新指標の重要性を指摘した。
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最終更新:3/22(水) 18:40
http://www.sankei.com/economy/news/170322/ecn1703220028-n1.html
個人消費、「強めの数値になる」新指標追加へ
上栗崇2017年3月22日19時55分
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写真・図版
高市早苗総務相(右)に報告書を手渡す有識者会議の国友直人座長=22日、東京都千代田区
総務省は2018年1月分から、家計調査に基づく「家計支出」に代わって個人消費を示す統計として、新たに「消費動向指数(CTI)」を公表する。家計調査は麻生太郎財務相が「高齢者の消費動向が色濃く反映されている」と批判するなど、政権が見直しを求めていた。
麻生財務相が指摘も… 家計調査、補正後も「変化なし」
消費の新指標、19年度にも 単身世帯調査も取り入れへ
高市早苗総務相が主宰する有識者会議が22日、CTI導入の報告書をまとめた。政府は今後、「CTIマクロ消費動向」を個人消費の主な指標にする。各種小売業のデータを集めた「商業動態統計」や業界団体の統計から消費を推計。現状では「家計調査より強めの数値になる」(総務省幹部)という。
1953年に始まった家計調査のうち、毎月発表の速報値は2人以上世帯が対象。単身者が多い若者の消費が反映されにくく、時代に合わないとの指摘もあった。CTI開始後も家計調査は続けるが、単身世帯アンケートなどとともに、「CTIミクロ消費動向」の一材料になる。
ログイン前の続き家計調査を元に公表される「家計支出」は16年まで3年連続の前年割れで、金融緩和や財政出動で消費を拡大したいアベノミクスの不調を示しているとされてきた。総務省は「家計支出は1世帯の平均人数が減って下がっており、消費全体の動きを捉えていない」と説明。「意図的に高い数字が出る統計を作るわけではない」としている。
青山学院大経営学部の美添泰人プロジェクト教授(統計学)は「統計で最も重要なのは政治的中立性。政府推計に基づく新たな指数とともに、実際の調査結果である家計調査も引き続き注目する必要がある」という。(上栗崇)
◇
■消費動向指数(CTI)とは?
※CTIは“Consumption Trend Index”の頭文字
【CTIマクロ消費動向】
・個人消費を示す中心的統計
・商業動態統計、業界団体の統計、小売店の販売データなど主に供給側の数値から消費全体の動きを推計
・将来はビッグデータ活用で精度を向上
【CTIミクロ消費動向】
・補助的統計として世帯の消費動向を示す
・家計調査に単身世帯向けネットアンケートなどを加えて推計
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「捨てないパン屋」の挑戦 休みも増え売り上げもキープ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170322-00000561-san-bus_all
消費動向指数(CTI)の開発に向けて
http://www.soumu.go.jp/main_content/000473104.pdf
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