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(回答先: トランプとAIがもたらす未来 −常設雇用税制と包括通商バランス− 投稿者 佐藤鴻全 日時 2017 年 3 月 18 日 21:37:51)
修正版です。
■トランプとAIがもたらす未来 −常設雇用税制と包括通商バランス−
●トランプが図る製造業の国内回帰策は、副作用としてロボット化とAI化を加速させ究極的には消費者の消滅をもたらす。
●これを防ぐためトランプは何れかの時点で、人を雇い賃金を払う事を奨励する「常設雇用税制」のようなものを導入せざるを得ない。
●こうして折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出し、激しい通商摩擦を引き起こす。
その争いの末、結果として「包括通商バランス」として、各国との折り合いをつけた何らかの新しい原則が形作られ、「常設雇用税制」と共に新たな世界標準となるだろう。
◆雇用!雇用!雇用!◆
Twitterでゼネラルモーターズを罵倒し、会議の場でトヨタに米国に新工場を作る事を強引に首肯させ、トランプは公約通り米国に雇用を呼び戻すことに突き進んでいる。
これによって雇用は戻り、選挙戦で吠えていた「BUY AMERICAN、HIRE AMERICAN」は、一定程度実現するだろう。
問題は、その規模と持続性である。
米国に新工場を建てさせられた各社は、株主の手前にも当然に利益を上げねばならなく、海外生産に比べ高コスト化した製造原価を下げるため、やがてトランプの目を盗み工場ではロボット化・AI化が進み、国内に戻った雇用はそれらに置き換えられて行く。
雇用の減少は、究極的には消費者の消滅を意味し、これを防ぐためトランプは何れかの時点で、人を雇い賃金を払う事を奨励する「常設雇用税制」のようなものを導入せざるを得ない。
それは、例えば次の式で出した控除額を、所得控除もしくは税額控除として連邦法人所得税を算定する事等が考えられる。
控除額 = 雇用人数の2乗 × 年間支払い給与額 × α
しかしこの税制によっても、従来型の製造業のロボット化、AI化はスローダウンするも不可逆的に進み、雇用はそれ以外の恐らくはサービス業を中心にした今後生み出されて行くであろう新機軸のビジネスにシフトして行くだろう。
なお、例えば日本では、雇用関係助成金や雇用促進税制、所得拡大促進税制等によって雇用と所得について一定の政策手当がなされている。
しかし、これらは規模が小さい上に、基本的に雇用と所得の増加に着目した恩典であり、時限的措置であるものも多い。
加えて、地方税である事業税には報酬給与額が増えると基本的に税額が一部上がり雇用に対する実質上のペナルティとなっている外形標準課税が導入されており、総務省等はこれを中小法人にまで広げようとしている。
大規模かつ、雇用の増加だけでなく維持に、かつ継続的に恩典を与える「常設雇用税制」は、各国にとっても必要なものになる。
◆「公正な」貿易協定◆
しかしこうして維持、増加した雇用による消費者、消費市場は、またしても海外製品に狙われる事になる。
折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出す。
しかし、この「公正な」はトランプの米国にとっての公正に過ぎない。
また、仮に相手国から見ても「公正な」協定での通商が行われるようになったとしたら、そこで米国が貿易収支、経常収支が黒字になるとは限らない。
否、むしろ米国の高賃金を維持するのが前提であるなら、赤字となると考える方が自然だ。
そのためトランプは、結局は通商に於いて実質的に「結果の平等」を求める事になるだろう。
折角維持した消費者を他国製品に奪われないためにも、トランプは関税、国境税調整、為替制度等による「公正な貿易協定」をより一層打ち出し、各国からの激しい反発による通商摩擦を引き起こす。
これまで、賃金と通貨の低い国には製造コスト安によって輸出ドライブが働き、やがて豊かになりコスト高になり、高賃金、通貨高の国と長期的に見て収支はバランスするとされてきた。
また、リカードの比較優位論によって、例えば精密機械の得意な国は精密機械を作り、コーヒー豆作りが得意な国はそうする事により、基本的に適材適所で世界経済は回り、各国の相互依存関係により戦争のリスクは減り、各国民はハッピーになるという大前提で、世界は貿易の自由化へ向けて進んできた。
しかしこれでは、低賃金、通貨安国に製造、輸出させるグローバル企業、国際資本が儲け、米国はじめ先進国の国内雇用が失われ、貧富の格差により国内が二極分化するという現象が起きた。
また、通貨操作、不当労働、特許侵害による下駄の効果も相まって、巨大な中国は貿易黒字によって蓄積した富を軍事に費やし覇権国になろうとしている事が顕在化した。
これまでの貿易自由化礼賛では、どうも世界は上手く回らないと言う事を、トランプは「王様は裸だ」とばかりに世界に向かって叫び、新たな通商戦争の口火を切った。
各国から保護主義と言われようが、WTO違反と言われようが突き進もうとしている。
◆ピケティと新たな世界標準◆
トランプが引き起こす激しい通商摩擦の争いの末には、トランプの米国も完全孤立主義を貫く訳に行かない以上、結果として「包括通商バランス」として、各国との折り合いをつけた何らかの新しい原則が形作られるだろう。
「包括通商バランス」原則がどんなものになるのかは分からない。
それは、関税、国境税調整、為替制度等が巧妙に組み合わさったものかも知れないし、全く新しい指標、仕組みによるものになるかも知れない。
「バランス」が2国間のものなのか、多国間のものなのかも読み切れない。
それは、実際にトランプと各国が激しくぶつかり合って後に、初めて形が見えてくるものだろう。
少し前にブームとなったフランスの経済学者のトマ・ピケティは、その著書の中で、貧富の格差是正とタックスヘイブンの回避ために国際累進富裕税の導入を主張した。
これは、基本的に富める者から取り貧しい者に配るという点で、形を変えた共産主義である。
対処療法としては一つのアイデアではあるが、本家の共産主義と同様、世界を縮小均衡に向かわせるものとなる。
これに対し、「常設雇用税制」と「包括通商バランス」の組み合わせは、筆者自身にもその姿は朧月に程にしか見えぬものの、各国民が雇用によりその糧と居場所を持続的に得る事を善とするならば、筆者は新たな世界標準の方向性であると考える。
http://blog.livedoor.jp/ksato123/archives/54720131.html
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