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「働き方改革」の明暗 ヤマト値上げで個人消費はどうなる
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/201845
2017年3月19日 日刊ゲンダイ 文字お越し
政・使・労が自画自賛(C)日刊ゲンダイ
安倍首相が「政権最大のチャレンジ」と豪語した「働き方改革」。その最大の焦点、残業時間の上限規制の決着は、やはり政治パフォーマンスに利用された。
繁忙期の上限について、経団連と連合が互いの主張を譲らず、最後は安倍が労使トップを官邸に呼び込み、直談判。行司役を買って出た政治的演出で、「月100時間未満」で合意した。
経団連も連合も安倍官邸も「歴史的大改革」と自画自賛だが、「過労死ライン」ぎりぎりまで働くことを合法化すれば、むしろ過労死のリスクは増す。法制化後に科される罰則を恐れ、労使が上限をきっちり守り、働き手の残業時間を減らせば人手が足りなくなる。
新たな人材を雇う余裕があればいいが、中小企業の多くは深刻な人手不足。早くも現場からは「仕事が回らなくなる」との不安が漏れる。
■どこも好きで残業をやっているわけではない
「働く『時間』に規制をかけ、罰則を科すのはナンセンス」と言うのは、経済評論家の斎藤満氏だ。こう続ける。
「実は米国でも長時間労働が問題化していますが、決して労働時間は規制しません。大事なのは企業に快適な労働環環をつくらせること。残業を減らしても、劣悪な環境が続けば人材流出と人手不足は止まらないためです。日本企業の内部留保は過去最高額の約375兆円に達しています。働き手の福利厚生や環境改善に内部留保を切り崩した企業の税制を優遇するなど、“働き手を大事にする”企業を後押しすべきです。罰則を強化しても、企業側の意識が変わらなければ、長時間労働はなくなりません。実態に見向きもしない“お上”が、杓子定規にルールを厳格に当てはめると、現場は混乱するだけです」
大体、よほどのブラック企業でない限り、どこの経営者も働き手も好き好んで“サービス残業”をやっているわけではない。経営者は長時間労働に賃金で報いたいだろうし、働く側も人手が増えて仕事が楽に回るのを望んでいる。そんな至極当然の願いを拒んでいるのが、長引くデフレ不況であり、その泥沼からの脱却を誓ったはずのアベノミクスの頓挫である。
本気で働き手を思った「最大のチャレンジ」ならば、安倍は「机上の空論」にかまけている余裕はないはずだ。
現場はますます疲弊していく(C)日刊ゲンダイ
■お坊ちゃま首相に労働者の悲哀は分かるまい
安倍首相が経団連企業に直接「賃上げせよ」と迫る「官製春闘」も4年目。先週15日の一斉回答はパッとしない数字が並んだ。経営側は4年連続で「ベア」に応じたが、引き上げ幅は年々尻すぼみ。
過去4年間で最低水準となり、早くも「ベアは今年で最後」との声が聞こえてくる。
大手が息切れすれば、中小企業は推して知るべし。あらためて実感するのは、大企業が毎年ベアを実施しても、消費の広がる気配が全く見えないこと。大企業の賃上げで消費を刺激し、「トリクルダウン」の好循環を生み出す安倍政権のシナリオは完全に崩壊したのだ。
結局、官製春闘の恩恵が及んだのは大企業勤務の正規雇用者のみ。中小企業や非正規雇用者が蚊帳の外では、全体の購買意欲が高まらないのは必然だ。もはやアベノミクスの失敗は火を見るよりも明らかだが、とりわけ非正規雇用の増加は深刻である。
安倍が胸を張る新規雇用の増大だって内訳を知ると、ギョッとする。総務省の労働力調査によると、安倍政権発足前の2012年から昨年(いずれも平均)の間に正規雇用は15万人増にとどまったのに、非正規雇用は203万人も増えた。特に35〜44歳の層に限ると、正規雇用は41万人減、非正規雇用は15万人増だ。
正規から非正規への入れ替えが若者層から中年層をもむしばみつつあり、“ワーキングプア”の裾野がどんどん広がっているのだ。
「非正規雇用の割合が、あっという間に約4割を占めつつある中、長時間労働に法の網をかければ、人手不足解消の“調整弁”として、ますます非正規雇用が増える。身分が不安定で低収入の人々を拡大させる政策は極めて危うい」(エコノミスト・高橋乗宣氏)
■許しがたい行き当たりばったり策の連続
そもそも、安倍が「働き方改革」を急いだのは、世論を意識した政治パフォーマンスだ。電通の新入社員の過労自殺問題に乗じた人気取りである。「保育園落ちた」ブログが話題を呼んだ際も、安倍は待機児童ゼロに乗り出したが、成果は乏しい。
前出の高橋乗宣氏も、「国のトップが行き当たりばったりの弥縫策の連続で、抜本策に乗り出さないのですから、デフレ脱却は遠のくばかりです」と嘆くのだ。
これでは消費の拡大なぞ夢の夢。さらに追い打ちをかけるのが、ヤマト運輸の運賃値上げだ。
宅配業界はネット通販の急拡大に伴って荷物量が急増。慢性的なドライバー不足とサービス残業の常態化で現場は疲弊しきっている。そのため、値上げによる収入アップ分を待遇改善に回す予定だが、最大手・ヤマトの値上げは確実に同業他社に波及していく。
「ネット通販業者側も、宅配料の値上げ分を価格転嫁しないと、経営は苦しい。従来の『送料無料』などのサービスは廃止され、宅配コスト上昇のシワ寄せは消費者に向かう。今やお年寄りから若者まで何でもかんでもネットショッピングに頼る時代ですが、消費者の負担増により、個人消費の大動脈と化したネット通販に急ブレーキがかかるのは間違いありません」(高橋乗宣氏=前出)
花見が近づく季節とは裏腹に、個人消費は間もなく真冬に戻りかねないのに、この政権と官僚たちは「プレミアムフライデーで消費喚起」という“バブル気分”の能天気とバカさ加減である。
「『給料も増えないのに“消費しろ”と言われても』が働く人々のホンネで、金曜午後で解放されるなら、バイトを探して所得を増やしたい人も多いはず。この政権の思い付き政策と実態との乖離は、救い難いレベルに達しています」(斎藤満氏=前出)
“プレ金”なんかより、せめて3連休明けの朝くらいは出勤を2時間遅らせて、もっと寝かせて――。こんなサラリーマンの切実な気持ち、お坊ちゃま首相には永久に理解できまい。
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