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日米金融政策のギャップ、拡大後も円安進まぬ3つの理由 日銀総裁、世界経済「上振れリスクより下振れリスク大」機械的利上ない
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/243.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 3 月 16 日 18:54:08: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

Business | 2017年 03月 16日 18:39 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

 日米金融政策のギャップ、拡大後も円安進まぬ3つの理由

[東京 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利上げする一方、日銀は政策維持。日米で金融政策の「ギャップ」が広がっているにもかかわらず、ドル/円JPY=が下落している。政策決定内容が織り込み済みというだけではなく、円キャリートレードの拡大や米長期金利の上昇が見込みにくいことも要因だ。

日銀は依然として「出口戦略」を示さないが、それが緩和効果を減じるとの指摘もある。

<織り込ませ過ぎて逆反応>

タカ派のニュアンスを市場に織り込ませ過ぎたのかもしれない。15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定された後、金融市場では米金利低下、ドル安/円高、米株高が進行。利上げ後の通常の反応とは真逆な動きを示した。

「FRB幹部が、3月利上げを急に織り込ませ過ぎた。その裏には大きな変化があるのではと警戒されていたが、景気や物価の見通しはほとんど変わらず、ポジションの巻き戻しが入った」(三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏)という。

このため、ポジション調整が一巡すれば、2年物など金融政策に敏感に反応する米国債利回りが上昇する可能性はある。15日の米2年債US2YT=RR利回りは1.31%で引けたが、今回示されたドットチャートでのフェデラルファンド(FF)金利適正水準は18年末時点で2.125%。このペースでの利上げができるかはともかく、織り込む余地はまだ大きい。

しかし、素直にドル高/円安が進むとは限らない。第1に今のドル/円との連動性が高いのは、2年ではなく10年の日米金利差だ。長期金利に影響を与えるFRBの中立金利(Longer Run)は今回も3%で据え置かれたほか、経済や物価見通しもほとんど変わらなかった。

市場では「見通しが変わらない中で急いで利上げするのは、トランプノミクスが失敗したときに、利下げする余地を作るためではないか」(邦銀)との声も聞かれる。

<円キャリートレードは期待薄>

さらに、円を調達通貨として米債などに投資するキャリートレードが、今回の利上げによって増加する可能性も低い。

日米欧の中銀が、金融緩和を競い合った時代は過ぎ去り、FRBは金融引き締め方向に舵を切り始めた。今局面3度目の利上げでドルの短期金利が上昇(3カ月物はほぼゼロから0.7%台に)する一方、日本の短期金利は日銀のマイナス金利政策が影響し、依然としてゼロ%以下だ。

「ドルと円のどちらが調達金利かという議論は、すでに終止符が打たれている」とSMBC日興証券の為替・外債ストラテジスト、野地慎氏は指摘する。今さら25ベーシスポイントの利上げがあっても、ドルから円に調達金利を乗り換える動きは強まりそうにないという。

むしろ今のドルは投資通貨であり、10年米国債など長いゾーンの利回りがキャリートレードに影響を与える。しかし、今回のFOMCを受けて、米国債市場では10年債US10YT=Rや30年債US30YT=RRRの利回りは低下した。

為替スワップ取引では、1カ月物の円投/ドル転スワップによるドル調達コストが1.99%に上昇、1月2日以来の高水準に達した。経済状況が好調だからこそ、FRBは利上げに踏み切ったのであり、投資先として日米欧の中で最も魅力的ではあるが、コスト面では厳しい環境となっている。

<「出口戦略」にも日米差>

市場で根強いドル高/円安期待の背景は、日米金融政策の方向性の違いだ。片や正常化に向けて前進中。もう一方は、時期尚早として出口戦略に距離を置いている。

しかし、将来の出口への道筋を示すことが、今の金融緩和の効果を高めるという実証的な分析があると、ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏は話す。「出口戦略の不確実性が高いと、現在の消費や投資を控えてしまうからだ」という。

FRB幹部は、量的緩和政策の途中だった2010年ごろから、すでに正常化に関する発言を開始。FOMCでは、将来的な金利見通しを示すとともに、膨らんだバランスシートの縮小に関する議論にも着手している。

今回のFOMCでは、バランスシート縮小に関する文言に変更はなかったが、イエレン議長は15日の会見で、償還が到来する米債に関して、再投資の方針をいずれ変更することについて今回協議したと明らかにしている。「市場金利の上昇を恐れていない」(国内シンクタンクのFEDウオッチャー)スタンスは明確だ。

一方、日銀の黒田東彦総裁は16日の会見で、物価目標の2%にまだ距離があるとして、長期金利目標の引き上げを含め、出口政策に至る明確なヒントを与えなかった。

将来への不安から消費が伸びず、インフレ期待が高まらなければ、実質金利は低下せず、円安圧力も強まらない。日米金融政策の「ギャップ」を放置することにより、ネガティブな影響が出かねないことにも注意する必要がありそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

http://jp.reuters.com/article/boj-fed-cross-market-idJPKBN16N11A


 

 

News | 2017年 03月 16日 18:26 JST 関連トピックス: トップニュース
日銀総裁会見:識者はこうみる

[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、現在ゼロ%程度としている長期金利目標の引き上げは「物価上昇率が1%に達すれば引き上げるとは機械的に考えない」と明言し、米利上げなどを背景とした長期金利引き上げ観測をけん制した。市場関係者の見方は以下の通り。

<メリルリンチ日本証券・チーフ金利ストラテジスト 大崎秀一氏>

黒田東彦日銀総裁の会見は目新しさがなく、相場への影響は限定的だろう。

黒田総裁は現状について、物価2%目標に距離があるとして強力な金融緩和の推進が適切と強調し、市場にくすぶる長期金利の操作目標(ゼロ%)の引き上げ観測をけん制した。しかし、物価が1%を超えて2%への距離が近づいてきた段階で、その議論が出てきても不思議ではない。

物価2%達成がいつになるか分からず、それを待っていたら、出口論を議論する機会を逸することになりかねない。そこまでゼロ%を維持する必要もないだろう。また、円安が進行した場合、コストプッシュ型インフレにつながり、消費を落ち込ませる可能性がある。黒田総裁は、行き過ぎた金融緩和を修正した上で任期満了を迎えることになるのではないか。

<FPG証券 代表取締役社長 深谷幸司氏>

日銀は目下、マクロ経済からも金融面からも、金融政策を動かす必要性に駆られていないだろう。ただ、海外金利の上昇からくる国内長期金利の上昇圧力を警戒しているようだ。

今回は、米利上げと日米金利差拡大を市場が事前に織り込んで、115円半ばまでドルが買い進まれていたため、ドル/円は反落している。

さらに、今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)後はドル高要因がしばらくないとの見方も、ドル/円の重しとなっている。

ただ、米経済のファンダメンタルズに鑑みて、米10年金利は年末に2.8―3.0%まで上昇する余地があるとみており、ドル/円が110円台まで下落する理由も見当たらない。

足元で、ドル高の推進力がいまひとつ弱いのは、市場が米予算教書などの政治リスクを意識しているためだとみている。

トランプ大統領が16日に公表する2018会計年度の予算教書では、財政出動や減税などの景気刺激策について、具体的な財源や実施予定期日などが織り込まれない可能性があり、これまで膨らんできた市場に失望を招きかねない。

<岡三証券 シニアストラテジスト 小川佳紀氏>

大きなサプライズはなかったが、黒田総裁からは海外の金利が上昇しても国内金利を上げる必要はない、といった発言があった。FOMC(米連邦公開市場委員会)後の米金利の急低下は過剰反応で、かつ短期的な動きだと考えている。米金利の先高観がある中、ドル高/円安の流れが完全に変わったという訳でもない。

総裁からは、二国間の金利差だけでは予測も当たらないといった発言もあったが、それでも日米金利差は市場が意識する部分だ。ドル/円が115円を上抜けるような動きがないとしても、110円を割り込むような展開は見込みにくい。ただ森友学園と安倍政権を巡る問題に対しては注視が必要。為替が大きく乱高下する局面では業績予想を据え置く国内企業も出てくるが、本決算発表に先駆けて上方修正を発表する企業が相次げば、日本株にはプラスだ。

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Business | 2017年 03月 16日 17:54 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
物価1%達成でも機械的利上げ考えない=黒田日銀総裁

[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、現在ゼロ%程度としている長期金利目標の引き上げは「物価上昇率が1%に達すれば引き上げるとは機械的に考えない」と明言し、米利上げなどを背景とした長期金利引き上げ観測をけん制した。

為替は日米金利差のみでは決まらないとも指摘し、米トランプ政権による円安誘導批判にも反論した。

黒田総裁は「ある物価指標が、ある水準になれば機械的に変更するというものでない」とし、金利目標の引き上げは、あくまで複数の物価指標や、経済の潜在的な成長率のかい離を示す需給ギャップなどを総合的に考えて判断すると説明した。

日銀が政策の目安としている消費者物価指数で生鮮を除くコアCPIは、1月に前年比0.1%と1年1カ月ぶりにプラスに浮上している。今後も昨年との比較で高くなっているエネルギー価格によりプラス幅が拡大すると見られており、米連続利上げと並び、日銀の利上げ観測が広まる要因となっている。コアCPIが年後半にも1%程度に達するとの観測については黒田総裁は「そうかもしれない」と認めた。

15日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利の誘導目標を0.75━1.00%に引き上げ、年内3回の利上げを示唆した。市場では米利上げに伴い日本の長期金利も上昇すれば、日銀がゼロ%で抑えるのが難しくなり、引き上げざるを得なくなるとみられている。黒田総裁は「米金利が上がったから、日本も金利が上がることにはならない」と強調した。

(竹本能文 伊藤純夫)

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http://jp.reuters.com/article/kuroda-boj-press-idJPKBN16N0X9


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2017/3/16 16:09日本経済新聞 電子版
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日銀総裁、長短金利操作「十分機能しており今後も機能していく」
2017/3/16 17:00日本経済新聞 電子版
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 日銀の黒田東彦総裁は16日、金融政策決定会合後の記者会見で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和策(長短金利操作)について「十分機能しているし、今後も…


黒田総裁、緩和に伴う収益悪化「適切な考慮が必要」
2017/3/16 16:50
保存 印刷その他
 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、日銀が国債の大量購入を続けていることから将来の収益が悪化する可能性があることについて「財務状況は適切に考えていくことが必要」と述べた。日銀の目標は物価の安定であって日銀自身の財務健全性を保つことではないとしつつ「国庫への納付金が振れることも国民にとって望ましいことではない」と配慮する姿勢をにじませた。

 ただ、現在の日銀法では旧法にはあった、政府が損失を補填する条項が削除されている。新たに規定や制度を設ける可能性については「考えていない。必要もない」とした。

 会見は午後4時半ごろに終了した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H32_W7A310C1000000/

日銀総裁、金融政策「海外金利に左右されず」 物価力強さ欠くと説明  
2017/3/16 16:54
保存 印刷その他
 日銀の黒田東彦総裁は16日、政策の現状維持を決めた金融政策決定会合後に記者会見した。最近の消費者物価については「生鮮食品とエネルギーを除くベースでは一進一退となっている」との認識を示した。2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているとしつつ「力強さに欠けている」と指摘した。

金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日午後、日銀本店)
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金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日午後、日銀本店)
 日銀が重視する生鮮食品を除いた消費者物価指数は1月に1年1カ月ぶりに前年同月比で上昇に転じたが、伸び率は0.1%にとどまる。黒田氏は「(日銀が掲げる)2%の物価安定目標についてはまだ距離がある」と認めたうえで、早期に目標を実現するためには現在の強力な金融緩和の推進が適切との姿勢を改めて示した。一方で物価の先行きについては「マクロ的な需給バランスが改善して2%に向けて上昇率を高めていく」との見通しを述べた。

 現在、ゼロ%程度としている長期金利の操作目標をめぐり「何かの指標が特定の数字になったからといって機械的に変更することはない」と述べた。2%の物価安定目標の早期実現に向け、基調的な物価や経済動向を評価しながら、毎回の会合で適切に操作目標を判断するとの考えを示した。「海外の金利が上がったからといって国内の金利を引き上げることは考えていない」とも語った。

 為替相場については「金利格差に則しているように動くときがあれば、そうでないときもある」と語った。そのうえで「いろいろな要素が影響するもので、単なる2国間の金利格差だけで予測しても当たらない」との見方を示した。

 大手企業の回答が始まった春季労使交渉に関しては「(集中回答日だった)15日の結果をみると、多くの企業で4年連続のベア(ベースアップ)の実施が見込まれている」と述べ、経済の好循環の後押しにつながると評価した。賃上げの伸び率が前年に比べて減速していることについては「全体の賃金設定動向にはなお見極めが必要だ」と述べるにとどめた。

 米連邦準備理事会(FRB)が14〜15日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げに踏み切った点にも言及した。米国経済は雇用や所得環境が改善するなかで現状も先行きも堅調との見方を示した。「現時点で米国の利上げが新興国の経済に深刻な影響を与える状況にはない」とも語った。

 一方で「今後も国際金融情勢が新興国に与える影響については、注意深く見ていかなければいけない」と強調。足元で米国や中国の経済が堅調に推移している半面、世界経済は「依然として上振れリスクよりも下振れリスクが大きい」との認識を示した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL16HR7_W7A310C1000000/ 

 

 

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コメント
 
1. 2017年3月16日 18:54:55 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[688]
FX Forum | 2016年 08月 23日 08:44 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:黒田緩和検証、20の疑問(上)

河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長

[東京 22日] - 日銀は次回9月20―21日の金融政策決定会合で、2013年4月に開始した量的・質的金融緩和(QQE)、16年1月に開始したマイナス金利政策(マイナス金利付きQQE)の政策効果について総括的な検証を行う。当初、2年程度で2%インフレを達成するとしていたが、3年以上が経過しても、達成のめどがつかないためだ。

現在、日銀は2%インフレの達成時期を「17年度中」としている。この意味するところは、18年3月(黒田東彦総裁の任期満了は18年4月8日)には2%インフレが達成されるということだが、今では金融市場の多くの人が、それは単なる努力目標で、再度の先送りは不可避と考えている。

これには、政策手段はいくらでもあるという黒田総裁発言とは裏腹に、マイナス金利政策を含めQQEは限界に近づいていると多くの人が見なすようになっていることも影響している。

では、9月の検証で日銀はどこまで踏み込むのだろうか。量的ターゲットなどの操作目標の見直しやマイナス金利政策の撤回もあり得るのか。あるいは、2年で2%インフレ達成という政策目標自体に変更が施されるのだろうか。

以下、筆者のもとによく寄せられる質問に答える形で、上下2回に分けて、黒田緩和検証の行方を考察したい。

――関連記事:黒田緩和検証、20の疑問(下)=河野龍太郎氏

<明らかに矛盾する政策思想、操作目標見直しの必要性>

Q1)そもそも、なぜ検証を行うのか。

2015年5月には日銀企画局が「量的・質的金融緩和:2年間の効果の検証」というレポートを公表した。今回、当時と同じように、企画局のレポートだけで済ますことができないのは、金融市場では、黒田総裁の5年間の任期をかけても、目標達成が難しいと強く疑われるようになっているためである。

つまり、「2年程度で2%インフレの達成」という政策目標そのものの実行可能性、妥当性を検討せざるを得ない状況となっている。

Q2)量的ターゲットは限界なのか。

14年10月の追加緩和の直後から、筆者は早ければ16年末には年80兆円の長期国債購入はスムーズにいかなくなり、いずれ年80兆円増のマネタリーベース・ターゲットの達成そのものが難しくなると主張してきた。

16年1月末に追加緩和として日銀が打ち出したのは、予想していた通り、長期国債の購入増ではなく、マイナス金利政策の導入だった。日銀がマイナス金利政策を導入したのは、量的ターゲットが限界に近づいている何よりの証拠である。

Q3)操作目標の見直しが必要なのか。

問題は量的ターゲットが限界に近づいていることだけではない。その象徴であるマネタリーベース・ターゲットは、マイナス金利政策と本質的に矛盾するという問題も抱えている。

前者は、民間金融機関に超過準備の保有を促そうとするものだが、後者は増加した超過準備にペナルティを賦課する政策である。日銀は付利を三層構造とすることで取り繕おうとしているが、政策思想は明らかに矛盾している。

日銀は現在、マネタリーベース・ターゲットという「量」、長期国債・上場投資信託(ETF)・不動産投資信託(REIT)購入という「質」、マイナス金利という「金利」の三次元で対応しているが、操作目標について、整理し直す必要がある。

金融市場では、日銀の政策手段が底を尽きつつあるという懸念が広がっている。まず、マネタリーベース・ターゲットはオペレーション上、国債購入が限界に近づき、かつマイナス金利政策と矛盾するため継続が難しいと考えられ始めている。マイナス金利政策は物理的には深堀り余地はあるが、政治的には困難になったと考えられ始めている。

ETFについては、7月末の購入額の倍増で、市場を大きく歪め、これ以上の追求は難しいと懸念されている。全ての政策が何らかの理由で、限界に近いと考えられているのである。

現在は、経済が完全雇用にあるため、政策発動の必要性は小さいが、将来、総需要ショックが起こった時に、中央銀行が何ら有効な政策カードを有していないと見なされると、深刻な事態に陥る。操作目標を整理し、手立てが残っていることを内外に示す必要がある。

Q4)政府とのアコード(政策協定)も再検討されるのか。

QQEの前提には、13年1月に政府との間で結ばれたアコードがある。そこでは、日銀が2%インフレの達成に向け努力するとともに、政府は財政健全化を進めることが謳われていた。

しかし、現実には14年以降、経済が完全雇用にあるにもかかわらず、毎年、追加財政が打たれ、消費増税は2度も先送りされている。QQE導入段階から筆者が懸念していた通り、アグレッシブな金融緩和によって財政規律はすっかり弛緩している。

本来なら日銀は、アコードに沿って政府に財政健全化の推進を求める必要がある。放漫財政が続いたままでは、将来、出口が必要になった際に、日銀はテーパリング(国債購入の減額)すらできない。

とはいえ、「それぞれの組織が与えられた役割をこなすべき」というのが黒田総裁の信念であり、さらに自らが掲げた目標も達成できていないため、財政健全化が進んでいないことを口にはできない。残念ながら総括ではアコードまで議論が進まないと思われる。

Q5)完全雇用下でアグレッシブな金融緩和を続けることの妥当性は検討されないのか。

日銀も認める通り、14年年初以降、日本経済は完全雇用にある。今や有効求人倍率は1990年代初頭のバブル期並みの高さだ。本来、経済が完全雇用にあれば、財政にしろ、金融政策にしろ、追加的な景気刺激策は不要である。そうした政策を続けると、資源配分や所得分配を歪め、潜在成長率を悪化させる。

消費低迷が続いているのも、単に14年度の消費増税の後遺症が長引いているのではなく、15年は円安進展による家計の実質購買力の抑制、16年はマイナス金利による家計センチメントの悪化など、金融政策の副作用が強く現れているとも言える。しかし、「2年で2%インフレ」を掲げている以上、そうした副作用には目をつむらざるを得ない状況となっている。

本来ならQQEの効果だけでなく、副作用についても幅広く検証すべきだが、そうすると政策目標そのものも否定することになりかねないため、そこまでは踏み込めない可能性がある。

Q6)将来の出口戦略について語る可能性は。

黒田総裁は、出口戦略を語るのは時期尚早と繰り返してきた。もちろん、インフレ上昇が始まっても、結局、財政従属が不可避となるため、実際の出口を規定するのは財政当局で、黒田総裁は主体性を持って出口戦略を語れない可能性は十分あり得る。

しかし、そうした事態を避けるためにも、長期国債の市中発行額のほぼ全てを購入する日銀は、将来、どのような道筋で国債市場から手を引くことができるのか、明確にすべきである。

また、国債発行残高に占める日銀のシェアは3割を超え、QQEの終了時には、大規模な損失が日銀に発生する恐れがある。出口でのコストが莫大なものになるという懸念も、金融政策限界論の根拠の1つであり、日銀はそれらについて明確に述べるべきだ。

とはいえ、2%インフレのめども立たないことから、出口戦略や出口の際の損失については、今回の総括でも、全く触れられないのだろうか。だとすると、大変残念である。

Q7)金融政策限界論の底流にある問題は何か。

政府は約40兆円の財政赤字(=新規国債発行)で財政を運営している。ゼロ金利政策やマイナス金利政策による長期金利の低下を活用し、可能な限り長期の資金調達にシフトしている。

一方、日銀はネットで80兆円という財政赤字の2倍の国債を購入し、代わりに80兆円の超過準備を民間に供給している。民間にとり、当座預金は短期国債と性質が全く変わらない。つまり、統合政府で見ると、40兆円の財政赤字を短期国債で調達しているだけでなく、毎年、40兆円相当額の既発の長期国債についても短期国債と交換していることになる。

統合政府の財務状況は、短期の資金調達に極端に偏ったものとなっている。すなわち、短期金利の上昇に極めて脆弱で、それゆえ、利上げができない構造になっているのだ。

金利が上昇すると政府の利払い費が急増することや民間金融機関に損失が発生する以前の問題として、日銀に大規模なロスが発生する。このため、利上げや国債売却どころか、国債購入の停止にも踏み切れない状況に陥る。少しでも状況を改善するため、国債購入ターゲットやマネタリーベース・ターゲットを修正する必要がある。この点については、後編で触れたい。

Q8)「日銀トレード」の問題点も検討されるのか。

日銀は現在、マネタリーベースの年80兆円増を達成するため、主に長期国債をネットで年率80兆円購入している。そのため、相当に高い値段で(つまり相当に低い金利で)、民間金融機関から国債を購入している。それは、国庫納付金の減少を通じ、つまり国民の税金を元に、民間金融機関に補助金を手渡していることと同じである。

とりわけ、マイナス金利導入後、長期金利は日銀が想定していたよりも、相当な勢いで低下した。日銀が高値でいくらでも買ってくれると見込む投機筋が、国債購入を活発化させているのである。このため、購入する国債の利回りがあまり極端に下がり過ぎることがないように、9月会合では、極端に低い利回りでは購入しないことを決定する可能性がある。あるいは金利上昇を恐れ、この問題には手を付けないのだろうか。

Q9)金融政策の有効性が低下していることは語られないのか。

そもそも金融政策の効果の本質は、金利低下によって、現在の支出を有利にすることで、将来の需要を前倒しすることだ。金利がゼロになれば、需要の前倒しは難しくなる。マイナス金利は、現在の支出を相対的に有利にはするが、資産が目減りするため、負の所得効果を考慮すると、現在の支出を刺激するのは難しい。

また、将来の支出は、所得を稼ぐ能力、つまり潜在成長率に大きく規定されるため、それがゼロ近傍まで低下している日本では、将来の需要を前倒しする効果も小さい。金利がゼロ近傍に達した段階で、金融政策の残る有効なチャネルは通貨安だが、グローバルではゼロサムである。

つまり、金融政策の有効性が大きく低下しているから、十分な効果が現れていないわけだが、そのことが分かった上で非伝統的な金融政策を行っているのであるから、残念ながら9月会合では、金融政策の有効性にかかわる本質的な問題については議論されないと思われる。

Q10)金融緩和は本当に効いているのか。

14年のマイナス成長は消費増税が大きく影響しているが、その影響が解消された15年第1四半期以降も日本経済は全く成長していない。15年第1四半期から16年第2四半期の成長率は年率で0.1%にも満たない状況である。

もちろん、経済が成長しないのは、潜在成長率がゼロ近傍まで低下していること、さらに経済が完全雇用に入っていることが大きく影響している。しかし、金融環境が相当に刺激的であるなら、トレンドを多少でも上回る成長が続き、需給ギャップはプラスの領域で改善しても不思議ではない。それでも、改善が止まっているとすれば、それは金融環境があまり緩和的になっていないからかもしれない。

要するに、確かに実質金利は低下したが、自然利子率もゼロあるいはマイナスの領域まで低下しているため、それほど景気刺激的にはなっていない可能性がある。残念ながら、9月会合ではこの問題についても議論されないと思われる。

*後編はこちらです。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-ryutaro-kono-idJPKCN10X0EV?rpc=188


コラム:黒田緩和検証、20の疑問(下)=河野龍太郎氏
河野龍太郎
河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 22日] - 黒田日銀は次回9月20―21日の金融政策決定会合で、2013年4月以降の政策効果について総括的な検証を行う。以下、前編に続き、疑問に答える形で、検証の行方を考察したい。

――関連記事:黒田緩和検証、20の疑問(上)=河野龍太郎氏

<マネタリーベース目標撤回の可能性>

Q11)「2年で2%」を撤回するのか。

サプライズを狙った金融政策のツケに他ならないが、日銀の政策反応関数をもはや誰も見通すことができない状況にある。それゆえ、景気が良かろうと、悪かろうと、「2年で2%」を撤回しない以上、インフレ達成時期が先送りされるなら、何らかの政策変更に日銀が動くと市場参加者は考えざるを得ないのである。

需給ギャップが悪化していないのなら、インフレ達成時期が先送りされても、必ずしも追加緩和は必要とはならないはずだが、市場にはそれが全く伝わらない。こうした事態を改善するため、コミュニケーション戦略を立て直すと同時に、インフレ目標の達期時期についても、「2年」を完全に撤回し、特定の期間とはリンクさせない形で、「早期に」あるいは「できるだけ早く」という文言にし、本来のフレキシブル・インフレーション・ターゲットに近づける可能性がある。

ただし、日銀にとって、喫緊の課題は、操作目標の軌道修正であると考えられるため、今回、政策目標にまで手を付けるかどうか、筆者は確信が持てない。9月の決定会合で「2年2%」が撤回される可能性は5分5分である。

Q12)サプライズ戦略撤回の可能性は。

ほとんどの日銀関係者が認めているのは、コミュニケーション戦略の再構築の必要性である。14年10月に追加緩和を行った際、直前まで黒田総裁は景気、物価に対して強気の発言を続けていた。15年10月には、14年10月と同じ状況であったにもかかわらず、金融緩和は見送られた。しかし、その3カ月後には、導入しないと繰り返していたはずのマイナス金利の採用に踏み切った。

サプライズを狙った金融政策を繰り返した結果、日銀の政策変更に関する思惑自体が、金融市場を不安定化させる要因になっている。そのことは、実体経済には決して良い効果をもたらさない。予見可能性を高めることで、政策効果を最大化させるというのが本来の金融政策のあり方であり、サプライズ戦略とは真逆である。

執行部批判となるため、具体的には検討課題には上がらないかもしれないが、9月の決定会合を機に、サプライズ戦略は事実上、封印される可能性がある。すでに黒田総裁の発言からは軌道修正の兆しが見られる。

Q13)長期国債購入ターゲットはレンジとするのか。

日銀は今後、総需要ショックが訪れた場合でも、可能な対応策が残存し、金融政策はまだ限界に達したわけではないことを明確に示す必要がある。本来、金融緩和は、長期金利の低下を通じて、貸出金利の低下や円安・株高をもたらし、総需要を刺激する。このため、量的ターゲットの拡大そのものに意味があるわけではない。大量の長期国債を買っているから長期金利が低下しているのは事実だが、現状の長期金利水準を維持するために、現在のように大量の長期国債を購入する必要はない。

一方で、現在、市中発行額のほとんどを日銀が購入しているため、オペレーション上のコスト、出口の際のコストは相当に高まっており、政策の持続性が危ぶまれる状況となっている。9月会合では、長期金利が低位で安定しているのなら、国債購入ターゲットの厳格な達成にこだわる必要がないことを示し、年率80兆円の長期国債の購入ターゲットを、例えば70―90兆円のレンジ(あるいは60―100兆円)とする可能性がある。

Q14)マネタリーベース・ターゲットもレンジとするのか。

操作目標のマネタリーベース・ターゲットの主たる操作手段である長期国債の購入ターゲットに幅を持たせるのなら、本来、マネタリーベース・ターゲットにも幅を持たせることになる。

ただ、中央銀行の負債であるマネタリーベースの拡大にはそもそも理論的な意味がない。金利がゼロになると、経済・物価とマネタリーベースとの間の関係が遮断され、「マネーを増やせば物価が上昇する」という貨幣数量説が成り立たなくなるためだ。

現実に、量的緩和を行っている国で、マネタリーベース目標を掲げるのは日本だけである。他の国では、国債や社債など資産の購入額に目標が設けられている。さらに、マネタリーベース・ターゲットはもう1つの操作目標であるマイナス金利と矛盾する。マネタリーベースの拡大を促すことと、超過準備にマイナス金利のペナルティを賦課することは理屈上、相容れない。

このため、9月会合では、マネタリーベース・ターゲットについては、撤回ないし事実上棚上げされる可能性がある。あるいはマネタリーベース・ターゲットを撤回するものの、量の追求を止めるわけではないことを示すため、メニューの拡大として社債や地方債の購入を決定するのだろうか(マネタリーベース・ターゲットの限界を補うものとはなり得ないが)。

Q15)マネタリーベース・ターゲットの棚上げは、長期国債ターゲットの延命につながるか。

答えはイエスだ。例えば、日銀は保有する短期国債を売却し、同額の長期国債を購入するツイストオペを行えば、長期金利を引き下げることが可能となる。

短期国債の金利は、超過準備預金金利(IOER)に左右されるため、日銀が売却しても、短期金利は上昇しない。一方で、長期国債の購入量を増やせば、タームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)が潰れ、長期金利を引き下げることができる。長期国債ターゲット限界説の根拠の1つは、金融取引の担保として国債が不足するため、金融機関が売却を渋るというものだった。マネタリーベース・ターゲットを止めればツイストオペを行うことで、長期国債購入額を拡大することが可能となる。

なお、マネタリーベース・ターゲットが棚上げされても、象徴的な「量・質・マイナス金利」の3次元という言葉は維持されるだろう。新たな量の象徴として、レンジ化された長期国債購入ターゲットがしばらく用いられると思われる。

Q16)評判の悪いマイナス金利は撤回しないのか。

事実上の銀行課税であるマイナス金利政策は確かに評判が悪い。本来、金融緩和とは、金融機関の資本コストを引き下げ、企業や家計の借入金利が低下することで、消費や設備投資を刺激することである。金融機関の資本コストが引き上げられれば、金融機関はむしろ貸し出しに抑制的になる可能性がある。

ただ、大幅な総需要ショックが訪れた際、マイナス金利を深掘りすることで、円安に誘導できれば、大幅な株安も避けられ、ショックを和らげることが可能となるかもしれない。とりわけ、景気拡大局面が8年目に入った米国が、それほど遠くない将来、不況に陥れば、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和をきっかけに大幅な円高・ドル安が進む可能性がある。

このため、評判は悪いものの、将来の金融緩和の一手段として、マイナス金利が撤回されることはないと思われる。中国人民元の大幅切り下げ観測がくすぶり、それに伴う円高リスクが残ることへの対抗手段ともなり得る。

また、マイナス金利政策を撤回しないのは米大統領選挙も影響している。まず、ドナルド・トランプ大統領が誕生すればドル安政策が採用され、大幅な円高・ドル安が訪れる可能性があるからだ。

16年1月以降、FRBや米財務省の通貨政策のスタンスが変わったのは、米国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領選の共和党候補になる可能性が高まったためだろう。オバマ政権にとり、日本に配慮して円安を容認することは、民主党候補のヒラリー・クリントン氏の足を引っ張ることになる。このため、日本の財務省は、いかに円高が進もうとも、実弾での為替介入は難しい。大幅円高に備え、日銀はマイナス金利政策を準備しておく必要がある。

さらに、ヒラリー・クリントン氏が勝利した場合でも、米国の製造業をサポートするため、ビル・クリントン政権の当初のドル安政策にならう可能性がある。民主党候補、共和党候補のいずれが勝利しても、大幅な円高回避のため、日銀はマイナス金利政策を手放すことができない。

Q17)9月会合でマイナス金利政策は深掘りされるか。

日銀が円高回避に敏感になっていたのは、円高が株安をもたらすためだ。完全雇用にあるため、一国の経済厚生を考えれば、家計の実質購買力を引き上げる円高が望ましい。

しかし、輸出企業優遇の円安誘導政策を続けてきた副作用で、日経平均に占める輸出企業のウエイトが実態以上に膨らみ、円高になると株価が大幅に下落し、政治的な金融緩和圧力が高まっていた。7月末の決定会合でETF購入額が倍増され、円高が多少進んでも、株価は以前ほど下落しなくなっている。日々のマーケットでは1ドル100円割れより、日銀の買い出動のタイミングが強く意識されるようになった。フォーカルポイントが為替から日銀にシフトしているのだ。

引き続き円高次第ではあるが、株価が大幅に下がることがなければ、9月会合でマイナス金利の深掘りが行われることはないと思われる。米国の利上げ観測が高まり、ドル高が進んでいれば、マイナス金利政策が深掘りされる可能性はさらに低下する。

むろん、大幅な円高になった時、それを回避するためマイナス金利が一時的に大きく拡大される可能性はあり得るが、継続的には0.5―0.7%がマイナス金利の限界だと考える。9月会合では、マイナス金利政策の限界に関する議論は行われないと思われる。

Q18)マイナス金利以外に有効な政策ツールはないのか。

量的ターゲットが困難になっているとすれば、残る手段はマイナス金利の深掘りと、長期金利ターゲットだ。欧州中銀(ECB)がマイナス金利をスタートするまで、マイナス金利は筆者の選択肢には入っておらず、量的ターゲットが限界に達した後の選択肢は、長期金利ターゲットだと考えていた。

そもそもマイナス金利を深掘りするのも、長期金利を引き下げるためだ。長期金利の低下を通じ、円安や株高、貸出金利の低下が進む。このため、マイナス金利政策の弊害が大きいということになれば、いずれ長期金利ターゲットに移行する可能性がある(インフレの上昇が始まった際には、長期金利の急騰を避けるため、ほぼ間違いなく必要となる)。

あくまで将来の政策ツールであり、9月会合では、議論されないと考える。ただし、9月会合でマネタリーベース・ターゲットを撤回し、長期国債購入ターゲットをレンジ化する際、長期金利の上昇を避けるため、長期金利のキャップを金融市場に対して日銀が暗示し始め、事実上の長期金利ターゲットがスタートする可能性も排除できない。

なお、ETFについては、当面の増額はないと思われるが、将来、大きな総需要ショックが訪れた場合、それを吸収する手段として買い入れを一段と増やすことはあり得る。7月会合で倍増したことで、株式市場のプライシングを大きく歪める問題について、日銀はあまり気にしていないことが明らかになった。ただ、日銀の大量購入によって株価がサポートされても、実体経済とのかい離が広がるばかりで、最後には支えられなくなる。

Q19)マイナス金利での資金供給を開始するか。

日銀は貸出支援基金オペにおいて、マイナス金利で資金供給し、その倍額をゼロ金利で当座預金に受け入れる可能性がある。金融機関にとり、資金調達コストが限界的に低下するため、貸し出しの増加には多少つながる。ただ、そもそも資金需要が低いため、マクロ経済的には大きな効果は期待できない。

Q20)ヘリコプターマネーの可能性は。

財政調整だけではもはや公的債務の圧縮が困難になっているという意味では、ヘリコプターマネーに片足を突っ込んでいると言えるが、もし、言葉の定義通り、政府が公的債務を増税や歳出削減で返済しないことを前提に追加財政を開始すれば、人々は将来の増税や歳出削減を気にせず支出を増やすため、景気刺激効果やインフレ醸成効果はより大きなものとなる。

ただ、ヘリコプターマネー政策は、常習性が強く、高率のインフレのみならず、資源配分の歪みから潜在成長率のさらなる低下をもたらす。そうした問題が認識されているため、財政法、日銀法でも禁じられており、9月会合で検討されることはまずないと思われる。

*前編はこちらです。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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