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日本の水素関連見本市で中国企業の出展が目立つ Photo by Kenji Momota
燃料電池車で日本が中国に負ける日
http://diamond.jp/articles/-/121250
2017.3.15 桃田健史:ジャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
■「日本詣で」する
中国人の多さにビックリ
「どうしてここに、こんなに大勢の中国人がいるんだ?」
3月上旬、東京ビッグサイト(東京・台場)の次世代エネルギー関連の見本市会場で、筆者のみならず来場者の多くが感じたことだ。
確かに、太陽光パネルや二次電池、そしてスマートグリッドといった分野では過去10年ほどで中国メーカーが急伸したが、日本国内での需要は頭打ちの状況。このタイミングで、中国からの売り込みが増えるとは思えない。
実は、今回、中国からの来場者のお目当ては燃料電池車(FCV)なのだ。
会場内の最も奥に新設された展示会場が、水素関連の専門コーナー。これまでも、こうした次世代エネルギー関連見本市では水素関連の出展があったが、二次電池コーナーの脇に数社いる程度の小さな規模だった。また、本連載でも何度か紹介しているように、九州大学が主導する福岡水素戦略会議が日本における水素研究の総本山であり、これまで博多や小倉などで水素関連の展示会が開催されてきた。
中国企業製の燃料スタック。構成部品の多くがアメリカ、カナダ、欧州メーカー製と見られる
トヨタの燃料電池スタック Photo by Kenji Momota
そうした過去の水素関連の各種展示会の中でも、今回は最大級と思えるような盛り上がりを見せていたのだ。
会場内のホンダブースで、知り合いの同社関係者と意見交換した際にも「出展者も来場者も、我々の想定以上でかなり多い」と驚いた様子だ。
会場内の中国企業ブースには、中国製の燃料電池スタックが展示されている。また日本の大手商社のブースでは、欧米の水素タンクや高圧バルブの展示品の前で、中国人エンジニアが通訳を介して欧米人エンジニアと技術に関する詳細な会話を交わしている。こうした中国人関係者の表情は“時間を惜しんで必死に情報を吸収している”雰囲気に満ち溢れている。
一方で、日本企業のブースはのんびりムード。日本政府は2015年を「水素元年」と銘打ち、トヨタ「MIRAI」、ホンダ「クラリティ・フューエルセル」という2台の燃料電池車の市場導入をきっかけに、水素社会に向けたロードマップを描いた。政府や地方自治体からの各種補助金によって、水素ステーションは全国92ヵ所まで広がっており、2017年もさらに新設ステーションが増える計画だ。日本の企業や自治体は、こうした国の施策に乗っかりながら、または水素スターションに関する技術的な規制緩和を待ちながら、燃料電池車の事業を徐々に進めようとしている。
トヨタ「MIRAI」のカットモデル。車体後部には、トヨタ内製の水素タンク Photo by Kenji Momota
■中国も「新エネルギー車」に本腰
2020年までに燃料電池車1万台普及
では、どうして中国人がこのタイミングで燃料電池車や水素関連技術へ興味を持ち始めているのか?
その理由は、中国政府が2016年10月26日に通達した、2016年〜2030年までのエネルギー節約とNEV(ニュー・エナジー・ヴィークル:新エネルギー車)に関する技術開発と普及ロードマップの影響だ。
精華大学の資料によると、このロードマップでは、ハイブリッド車、EV(電気自動車)、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、バッテリーなど、次世代車の技術開発を7つの領域に分けて、大学など政府機関による基礎研究と企業による量産技術について、各種技術の達成目標年や普及台数を定めた。
具体的には、燃料電池車を2020年までに1万台(乗用車5000台、商用車5000台)、2025年までに10万台、そして2030年までに100万台の普及を目指す。水素ステーションについては、現時点で3ヵ所のみだが2030年には世界最大級となる1000ヵ所を目指すとした。
そもそも、中国での次世代車開発の歴史は古く、ケ小平氏が1986年3月に立案したといわれる「863計画」が主体だった。中国での自動車開発の生産が急伸した2000年代に入ってから、中国各地で開催された次世代車に関するカンファレンスを取材してきたが、中国政府の説明はいつも「863計画」ありきだった。
そうした中、2009年〜2012年にかけて中国全土で実施された「十城千両」が、中国における次世代車開発に関する大きな転機となった。当初は10都市(十城)それぞれで1000台(千両)、つまり計1万台というイメージだったが、都市の数は段階的に引き上げられ最終的には25都市まで拡大。車両総数は5万2623台となった。しかしその大半はプラグインハイブリッド車と電気自動車(EVE)で、FCVはごくわずかだった。
十城千両が始まった2009年、深センで開催された電動車に関する国際カンファレンス「EVS」は、大型EVバスやリチウムイオン二次電池など、中国全土から企業が出展し、EVバブルの様相を呈していた。ここでは、トヨタが小型車「iQ」を改良したEVの「eQ」が世界初公開となった。
中国サンライズ社は、燃料電池バスの主力メーカー Photo by Kenji Momota
ところが、十城千両は2012年にいきなり中止される。これについて、中国の次世代車を専門とする中国人メディア関係者は「地方自治体の事務処理が追い付かず、中央政府が中止と決めた」と話す。
その後、PM2.5の悪化への対策として、再び電動化による次世代車に注目が集まり、中央政府はEVやプラグインハイブリッド車に対する販売奨励金(インセンティブ)を再開した。
その結果、中国自動車工業会の発表によると、2016年のNEV(新エネルギー車)の生産総数は約51万7000台。内訳は、乗用車約34.4万台(EV:26.3万台、プラグインハイブリッド車:8.1万台)で、商用車が約17.2万台(15.4万台、1.8万台)となった。
■プラグイン燃料電池車の
普及を当面は目指す
今回発表された、新エネルギー車に関するロードマップでは、ケ小平以来の「863計画」からの転換を示唆するものだ。
中央政府はNEV(新エネルギー車)に関して、EVとプラグインハイブリッド車を重視してきたこのような支援方法を見直す。
EVに対する販売奨励金を徐々に減額して2020年には終了する一方で、燃料電池車については販売奨励金を継続。乗用車で20万元(約34万円)、商用バンで30万元(約51万円)、そしてバスが50万元(85万円)となる。
また、技術的には当面、プラグイン型の燃料電池車(FCPHEV)の開発を重視する。中国では、燃料電池車の技術の中核である燃料電池スタック分野では、カナダの大手企業バラード社に出資するなど欧米企業との技術提携を強化しているが、各種の部品の量産技術が確立されていな状況だ。
そのため、燃料電池車の開発で世界をリードしている日系企業に対しても、量産技術での連携を打診している。それによって中国が早期の量産化を目指しているのが、FCPHEVというわけだ。搭載する電池容量を増やして外部からの充電を行うことで、燃料電池のサイズを小型化し、車両全体のコストを下げる狙いがある。2020年頃まではFCPHEVを重視し、2020年以降に燃料電池車(FCV)へ移行するという。
水素社会を目指す日本はこれから、中国とどのように付き合っていくべきか。果たして、日中両国にとって「WIN−WIN」の関係を実現することは可能なのか。今後の動向を注視していきたい。
(ジャーナリスト 桃田健史)
本連載の著者、桃田健史さんの新刊「100歳までクルマを運転する」(洋泉社、価格1512円)が好評発売中。近年、高齢ドライバーによる交通事故の増加がメディアでも大きく取り上げら れている中で、高齢ドライバーの実態と、何歳になってもクルマを運転し続けるためのクルマの未来を解説しています。
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