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記者会見で頭を下げる東芝の綱川智社長。名門企業の経営が迷走している (c)朝日新聞社
東芝「原発は安定事業」と誤判断 “寝たきり原発”にすがる悲惨な実態〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170308-00000018-sasahi-soci
週刊朝日 2017年3月17日号
半導体部門の売却など、東芝の解体が進む。一方で、捨てられないのが原発事業。海外で巨額損失を出しながらも、再稼働できない国内の“寝たきり原発”は稼ぎのタネ。支えるのは、消費者の電気料金だ。ジャーナリスト・山田厚史氏が取材した。
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腐っても鯛、ということか。東芝が半導体部門を売る、と言った途端、世界から買い手が殺到している。
「非常に真剣に検討している」。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長は3月1日、中国・広州市の工場起工式で記者団に意欲を語った。昨年買ったシャープの液晶パネル事業の次は、東芝の半導体。成長性ある分野を次々と手に入れようというのだ。
韓国のSKハイニックスも目を光らせる。東芝のNANDフラッシュメモリーを手に入れれば、韓国サムスンとの距離が縮まる。世界有数のハードディスクメーカー・米ウエスタンデジタルも虎視眈々とねらう。
「売りに出す半導体部門への出資比率は柔軟に考える、という綱川智社長の発言で買収合戦は熱を帯びた」
市場関係者はいう。4月に分社化される半導体事業は、2兆円もの破格の値。経営の主導権を残そうと、当初は株式の20%未満を売る方針だった。しかし、「少数株主では意味がない」と買い手は腰が引け、必要な資金が集まりそうにない。「全株売却もあり」と方針転換した途端、あちこちから触手が伸びた。今や、「100%譲るから、2.5兆円で」とプレミアム付きで売る算段まで浮上する。
一方で、団塊世代の東芝OBは納得できないという。
「事業への愛が感じられない。再建するなら、結果を出している事業を残して不採算部門を切る。これが常道ではないのか」
昨年、稼ぎ頭だった東芝メディカルシステムズを約7千億円でキヤノンに売った。医療機器事業は技術と販売の部門が結束し、CTで世界2位の会社に育てた。赤字解消のために泣く泣く売却し、当時は「まだ半導体がある」といわれた。今度は半導体まで売られる。口を開けて待つのは外資だ。
東芝労組は春闘の統一交渉から抜けた。ベアを要求できる状況にない、ということだろう。30代社員は「口には出さないけど、この会社はどうなるのだろうとみな不安です」という。
綱川社長が記者会見で配った資料には、今後軸とする事業が記されている。鉄道、車載機器、電池、ビル空調……。どれも小粒だ。「これぞ東芝」と納得いく分野は、見当たらない。
2006年、当時の西田厚聡社長は「選択と集中」を唱え「柱は半導体と原子力」と打ち出した。半導体は大儲けもするが、浮き沈みが激しい。原子力は投資がかさむが、安定した利益を見込める。この二つで盤石の経営基盤を築く、との戦略だ。そこで、米国のウェスチングハウス(WH)を破格の値で買った。
なぜ西田氏は「原発は安定事業」と思い込んだのか。2月の会見で示された「原子力事業の連結業績推移」という資料から、謎を読み取れる。
原発の稼ぎは、ほぼ「燃料・サービス」に頼っている。ウラン燃料の供給や、機器の修理など「原発のお守り」ともいえる事業だ。15年度の原子力事業の売上高7275億円の8割を稼いだ。営業利益はプラントの新設事業が66億円の赤字に対し、燃料・サービスは442億円の黒字だ。
「3.11以後、原発の新設は世界でぱったりと止まった。わずかにある仕事も安全基準の強化などで採算が合わない。やればやるだけ赤字。それが現実です」
東芝で格納容器の設計に携わった後藤政志さんはいう。WHは米国で建設中の原発4基の工事費が膨らんで費用負担を巡り裁判ざたとなった。窮余の一策で相手会社を買収し、訴訟は収まった。しかし、トラブルのタネをのみ込み、7千億円もの損失を生んでいる。
「建設工事はリスクが高いので撤退の方向で見直す。燃料・サービスは安定収益が期待できるので、続けたい」(綱川社長)
燃料・サービスは安定的に儲かっている。儲けすぎではないかと思うほどだ。
16年度の業績見通しを見よう。燃料・サービスの売上高は、東芝が1903億円。東芝の原発は休止中のため、「燃料の売上高は立っていない」(東芝広報)という。実質的には、保守・点検・修理などメンテナンスの売上高になる。
原発が動いているWHの3214億円の内訳は、燃料1414億円、サービス1853億円。両社のサービス事業は同規模といえる。
かかわる原発の数は大きく違う。WHは世界に92基あり、東芝は日本に21基。単純計算すると、WHは1基20億円、東芝は90億円。東芝は、メンテナンスでWHの4倍以上稼ぐ“効率経営”にみえる。
燃料・サービスの営業利益の見通しは、東芝が213億円とWHの175億円より多い。1基あたりの利益は東芝10億円に対し、WHは1.9億円。東芝は5倍も利益をあげている。
なぜ日本の原発事業は米国と比べて、こんなに儲かっているのか。答えは「原子力ムラ」にある。
総括原価方式という言葉をご記憶と思う。電力会社は「費用+適正利潤」の料金で電気を売る。保守するメーカーに高いカネを払っても、料金で回収できる。
WHの経営悪化が問題になって以降、東芝は「WHは燃料・サービスが高収益なので、問題ない」と繰り返した。東芝が国内でかかわる原発は、長期停止中の“寝たきり原発”。再稼働のめどがないのに、高収益がうたわれるWHの5倍のカネで“介護”している。
東芝は原発を「安定収益」だから続けるという。止まっていても、メーカーは破格の収益が保証されるからだろう。一方、消費者は電気代に上乗せされ、税金のごとく取り立てられる。
東芝だけではない。三菱重工業や日立製作所の原発でも同じこと。原発が動こうと動くまいと、メーカーは儲かる。こんなことは、米国では考えられない。
WHの買収時、当時の西田社長が「原発は安定事業」と考えたのは、原子力ムラの秩序が頭にこびりついていたからではないか。
米国では既に、原子力は儲からないビジネス。だから、WHが売りに出た。建設を担う大手ゼネコンも原発部門から撤退を模索し、現場で発生する膨大な損を、いかに相手に押し付けるかで暗闘が始まった。
日本では、納期やコストを巡って電力会社やゼネコンともめることはない。料金に上乗せして済ます、世界とかけ離れた構造だ。
「国内しか知らない経営者が世界の趨勢を見誤り、原発は海外でも儲かる、と思い込んだ。それが災いの始まり」と後藤さんはいう。
今なお原発を捨てることができない。「残すのは原発でなく半導体」という正論がかき消され、債務超過解消のために売れるものをすべて売る。そんな会社に、東芝はなった。
原発事業は売れない。買い手もいない。つかんだババを離せないまま、東芝は“寝たきり原発”に寄生して生きてゆく。
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