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「スマホで開ける鍵」が未来社会の重要なインフラになる(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/844.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 3 月 09 日 09:29:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 



「スマホで開ける鍵」が未来社会の重要なインフラになる
http://diamond.jp/articles/-/120553
2017.3.9 野口悠紀雄:早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問 ダイヤモンド・オンライン


 ブロックチェーンで運営されるスマートロック(電子的な錠)は、シェアリングエコノミーで相手と直接に取引することを可能にする。それは、現在、UberやAirbnbなどによって中央集権的に行なわれているシェアリングエコノミーを分散化し、未来社会の重要なインフラになるだろう。

■民泊、部屋の鍵もネット上で受け渡し
相手と直接、取引が可能に

「スマートロック」とは、スマートフォンなどを用いて、ドアなどの開閉を行なうシステムのことだ。日本でも、2015年に多くの製品が出荷された。

 民泊で貸し出す部屋の施錠は、スマートロックで行なうのがよい。

 なぜなら、従来の物理的なロックだと、つぎのような問題があるからだ。

 第1に、ゲストと会ってキーを手渡す必要があるが、これには手間がかかる(ドアマットの下や植木鉢に鍵を置くという方法が取られることもあるようだが、まったく不用心なことだ)。

 遠隔地の物件の場合には、そもそも手渡しすることが難しい。

 また、ゲストが約束の時間にチェックインしてこないこともある。

 第2に、物理的なキーでは、複製されたり、盗難されたりする危険がある。

 第3に、鍵の受け渡しサービスを利用することも考えられるが、利用料金が負担になる。

 スマートロックを用いれば、以上の問題を解決できる。なぜなら、権限の付与と取り消しが容易だからだ。宿泊期間が過ぎたら鍵を使えないようにすることなどが簡単にできる。キーの紛失や閉め忘れの心配もない。

 また、掃除やシーツの取り替えなどをしてもらう人に、メールなどでキーを送っておけば、ホストがいなくても家の中に入り、出るときは鍵を閉められる。

■課題は情報処理コストの高さ
ハッキング被害の報告も

 ところが、これまでの情報技術を用いるスマートロックには、いくつかの問題がある。

 第1は、コストの問題だ。中央集権的な情報処理システムを用いると、コストが高くなる。シェアリングエコノミーでは、1件当たりの利益の額はそれほど大きくないので、情報処理のコストが高くては、実用にならない。

 第2は、セキュリティの問題だ。多くのスマートロックは、Bluetoothによる通信を採用している。これは、Bluetoothのセキュリティ性能が高いためだとされる。しかし、このシステムも、実際には安全度がさほど高くなく、簡単なハッキングによって破られたとの報告がある。

 以上の問題を克服するには、ブロックチェーンを用いるスマートロックが必要になる。

■ブロックチェーンを使えば仲介者は不要に
企業はなくなってもサービスは提供

 ドイツのスタートアップ企業であるSlock.it社は、ブロックチェーン上のスマートコントラクト(コンピュータが理解できる形で書かれた契約)で運営されるスマートロックSlockの開発を行なっている。

 ブロックチェーンとしては、エセリウム(ブロックチェーンを多用なサービスに利用できるようにしたプラットフォーム)のものを使用する。

 ドイツ・ザクセン州に本社を置き、2015年9月に創業した。17年に事業開始の予定。

 Slock.it社のスマートロックは分散化されたシェアリングエコノミーを支えるようになる。Slock.itのウェブサイトには、つぎのように書いてある。

 https://blog.slock.it/slock-it-decentralizing-the-emerging-sharing-economy-cf19ce09b957#.pszk4oa28

 UberやAirbnbは、シェアリングエコノミーに対する関心を高めた点で評価される。しかし、このような中央集権的な仕組みがシェアリングエコノミーの最終形とは思えない。第三者の仲介なしに、直接に部屋や車の所有者と取引できるシステムのほうが望ましい。

 ただし、その場合の問題は、信頼できる第三者なしに、取引の相手が信頼できるかどうかを、どうやって確かめるかだ。

 Slockでは、それはつぎのように実現される。

 誰かがSlockを購入すると、ブロックチェーンで運営されるスマートコントラクトによって、「誰がいつからいつまで何を利用できるか」を管理できるようになる。

 ユーザーが仮想通貨によって保証金を支払うと、車や家に対する権利を獲得する。

 たとえば、ドアの鍵を開ける場合、スマ―トフォンのアプリで保証金を支払い、ブロックチェーン上で鍵へのアクセス要求が確定するのを待つ。この処理が確定すると、ブロックチェーン上でこの鍵のアクセスコントロールを獲得したことになる。

 ドアの開閉にはスマ―トフォンのアプリなどを用いて、各ユーザーが持つ秘密鍵で署名し開閉要求を送ると、鍵がブロックチェーンを参照して公開鍵に合致するかを比較し、処理を決める。

 保証金はレンタル料金を差し引かれてユーザーに返還され、レンタル料金は自動的にSlockのオーナーに送られる。以上の契約は、自動的に実行される。

 これらはすべて第三者の介入なしに行なわれる。したがって、Slock.it社はサーバーを持ったり、取引を処理したりするわけではない。

 Slockはブロックチェーンによってコントロールされ、スマートコントラクトによって運用されるため、たとえ企業がなくなったとしても、サービス自体は提供され続けていく。

■UberやAirbnbなくても貸し借り可能
シェアリングエコノミーの分散化

 ブロックチェーンを用いるスマートロック技術は、家、車、洗濯機、自転車、芝刈り機、保管庫など、鍵をかけられるものであればどんなものでも、第三者の仲介なしで、簡単に貸したりシェアしたりすることを可能にする。

 そして、個人や企業がその資産を収入に変えることを可能にする。

 Slock.it社のウェブサイトでは、部屋の貸し借りの完全な自動化、オンデマンドでのWi-Fiの利用、使用していないオフィススペースのリースといった例を挙げ、スマートロックはシェアリングエコノミーに革命をもたらし、未来のインフラとなるとしている。

 自動車の自動運転ができるようになると、スマートロックの重要性はさらに増す。現在のタクシーでは人間が運転手として乗車しているから、自動的なロックは必要ない。しかし、無人自動車ではスマートロックの存在は不可欠だ。

 自動車は、つぎの顧客を待つ間、駐車しているが、時間単位で貸し出され、使用が終われば自動的に駐車場を探してまた駐車する。また、ガソリンがなくなれば、給油所に行って給油する。

 こうして、UberやAirbnbのような第三者の介入なしに、所有者と直接に取引できるシステムが確立されることになる。つまり、シェアリングエコノミーが分散化され、中央の管理なしに行なえるようになる。

 スマートロックは、UberやAirbnbのような中央集権的な仲介業によって運営されているシェアリングエコノミーの姿を、大きく変えていくことになるだろう。

(早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問 野口悠紀雄)
 

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