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川崎重工、哨戒機への執念実る
防衛装備品、三菱重工から50年ぶりに首位奪取
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/030800610/14-02.pn
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ニュースを斬る
2017年3月9日(木)
寺井 伸太郎
2015年度の防衛装備品契約額で、川崎重工業が三菱重工業を抜いてトップに立った。首位交代は半世紀ぶり。日本周辺海域の警戒・監視を担う哨戒機の開発が奏功した。川崎重工は民間機向け事業などで技術を磨き、かつての受注失敗の雪辱を果たした。
川崎重工業は日本周辺海域の潜水艦や不審船などを警戒・監視する哨戒機「P-1」を量産(写真提供=海上自衛隊)
神奈川県の海上自衛隊厚木航空基地。空色に塗装された哨戒機「P-1」が飛び立ち、日本周辺海域をうかがう潜水艦や不審船などの警戒にあたる拠点だ。2月下旬、砂ぼこりの舞う駐機場ではP-1のほか、プロペラが特徴的な現主力の哨戒機「P-3C」の姿もあった。
2016年6月に防衛装備庁が公表した15年度の装備品契約額で、川崎重工業は2778億円と前年度に比べ約5割増えた。三菱重工業は1998億円と24%減り、1965年度から死守してきた首位の座を明け渡した。
逆転劇の主役となったのが川崎重工の手掛けたP-1だ。防衛省は2015年度、20機のP-1を7年間の長期契約によって一括調達することで、川崎重工や部品会社と合意。総額約3400億円の大型案件で、主担当企業である川崎重工の契約額を約2000億円押し上げた。
従来、財政法で長期契約の上限は5年とされてきた。だが防衛装備品は高額で生産に時間もかかる。より長期のまとめ買いにした方がコストを抑えられるとして、特別措置法で上限を10年に延長。その第1弾がP-1だ。
防衛省によると、毎年分散発注するのに比べ、同じ20機にかかる金額を約400億円抑制できる。防衛産業からみれば、設備やヒトのやりくり、資材の調達などの計画を立てやすくなる。
川崎重工が首位を奪取できたのは、単に一括契約の波に乗ったからというだけではない。背景には継続的な航空機生産への取り組みがあり、P-1はその執念のたまものでもある。
哨戒機、一度は米企業に敗退
時代は1970年代にさかのぼる。当時運用していた哨戒機の後継機について、日本政府は当初、国産機の開発を志向。川崎重工も機体設計など着々と準備を進めていた。だが米国側の巻き返しで国産化路線は白紙撤回され、最終的に米ロッキード(現ロッキード・マーチン)製の哨戒機P-3Cの導入が決定。自主開発の機会を奪われた国内の防衛産業に衝撃が走った。
その後も、川崎重工はP-3Cのライセンス生産や米ボーイングの民間機の胴体生産などで航空機関連の技術を地道に磨き続けてきた。
雪辱の機会は2001年に巡ってきた。P-3Cの後継機として、川崎重工が主担当企業に選ばれて開発が始まったのがP-1だ。主翼や胴体部分を手掛ける三菱重工や富士重工業をはじめ、約3000社に上るサプライヤーが参画するプロジェクト。エンジンはIHIが生産し、ほぼ純国産の機種だ。
量産初号機を13年3月に納入、17年3月末までの生産は計10機を見込む。岐阜工場(岐阜県各務原市)では数本の生産ラインで複数機の組み立て作業を並行。搭載機器の点検作業の自動化や、職人の技に過度に依存しないための工程標準化など、これまでに培ってきた生産ノウハウをつぎ込んだ。
哨戒機は潜水艦などを探知するための音響センサーやレーダーなど電子機器の固まり。内部に張り巡らされた配線は4万本、計120kmに達する。川崎重工・航空宇宙カンパニーの飛永佳成営業本部長は「サプライヤーから集まった機器類を一つのシステムにまとめ上げるのに最も苦労した」と話す。
P-1は探知の精度や範囲など哨戒能力はもちろん、P-3Cとの比較で航続距離は1.2倍、飛行速度は1.3倍と、航空機としての性能も向上した。
今回の一括契約で受注した20機の納入は18年度から始まる。年5機ずつ、4年間かけて生産する計画だ。それでも約100機あるP-3Cの更新需要は尽きないとみられ、「さらに30〜40機の受注を目指す」(飛永氏)。従来の潜水艦やヘリコプターなどに加え、P-1を手に入れた川崎重工は装備品市場で収穫期を迎えつつある。
首位交代は50年ぶり
●川崎重工業と三菱重工業の装備品契約額推移
出所:防衛装備庁資料などから本誌作成
三菱重工、護衛艦受注に全力
対する三菱重工も黙ってはいない。戦車や艦艇、戦闘機など、幅広い装備品を担ってきた自負がある。反転攻勢に向け、大型案件に期待している。具体的には、島しょ部での有事などを想定し、従来よりコンパクトで機動性に優れた「新型護衛艦」、レーダーで探知されにくいステルス性を備えた「次期戦闘機」などだ。
三菱重工業は新型護衛艦の開発などで失地回復を図る(同社が近年建造した「てるづき」)(写真提供=海上自衛隊)
新型護衛艦は18年度以降の契約で複数隻の連続建造が見込まれる。三菱重工の防衛・宇宙ドメイン幹部は「当社が培ってきたエンジニアリング能力を結集して対応する」と受注に強い意気込みを示す。
同盟国の防衛力強化を求める米国のトランプ政権発足を受けて、日本でも防衛予算の拡大論議が起こりつつある。国内防衛産業の追い風にも映るが、「米国からの装備品の輸入圧力が高まる可能性もあり、市場環境は楽観できない」(大手メーカー)。
14年度に閣議決定された防衛装備移転三原則で、防衛装備品の輸出規制が事実上緩和された。目立った実績はまだないが、将来的には海外市場も含めた競争が活発化する可能性もありそうだ。
(日経ビジネス2017年3月13日号より転載)
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世界最大級の投資家が日本企業400社に送った書簡
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ブラックロックが突きつけた「ESG」
2017年3月9日(木)
杉原 淳一
世界最大級の資産運用会社・米ブラックロックが、投資先企業に「従業員の生活水準向上」を求めている。社員のやりがいや満足度を重視する投資姿勢は、日本の「働き方改革」とも一致する。「ESG(環境・社会・企業統治)」への取り組みが、企業経営の重要テーマとして注目を浴びそうだ。
フィンク氏は長期投資の重要性を訴え続けている(写真=AP/アフロ)
「企業が従業員の能力開発や生活水準の向上に積極的に投資しているかを注視している」──。3月上旬、ブラックロックのラリー・フィンク会長兼CEO(最高経営責任者)が、日本の有力企業約400社に向けて書簡を送った。1月ごろに欧米の投資先企業に送付した書簡の和訳版で、「ブラックロックが今、企業経営のどんな点に注目しているのか」を端的に示す内容だ。
同社はフィンク会長兼CEOが1988年に創設した。年金基金や機関投資家から資金を預かり、世界中の株式や債券などに投資している。運用資産は約600兆円(昨年末時点)で、日本のGDP(国内総生産)を上回る規模だ。
日本株だけでも20兆円以上を保有しており、大量保有報告書によると日立製作所や三菱ケミカルホールディングスなど有力企業の大株主に名を連ねている。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や日銀と並ぶ“日本株式会社の大株主”となっており、同社が「企業による従業員への投資」を重点項目に挙げたことは、日本企業の経営戦略に大きな影響を与える。
世界の有力企業に対し、社会的な役割や貢献の重要性を訴える
●フィンク会長兼CEOの書簡要旨
世界経済について
グローバル化と技術革新の果実が、都市部の人材に偏在している
ブレグジットや中東情勢の混乱の根底には、この現実への反発がある
投資先の企業経営者に対し、上記の環境変化をどう分析し、経営戦略にどう反映しているのか問いかける
ESGの重要性
従業員の能力開発や生活水準向上への積極的な投資を重視する
企業の持続的な成長にはESG(環境・社会・企業統治)が不可欠。グローバル企業は、進出先の地域に根ざした存在であるべきだ
短期的な経営視点へのけん制
安易な株主還元よりも、将来に向けた成長投資を優先するよう求める
対話による改善が見られず、企業の説明や対応が不十分な場合は、取締役の選任や不適切な役員報酬に反対票を投じる
「ESG」が示す、真の企業価値
書簡の中でフィンク氏が最も強調したのが、「ESG」の重要性だ。環境・社会・企業統治の頭文字を取った言葉で、企業経営を評価する際に、従業員の満足度やその企業が社会に与える影響などを重視する考え方を指す。
フィンク氏は長年、投資先企業がESGとどう向き合っているかを重視してきた。今回の書簡でも改めてその方針を示し、「グローバル企業は、事業を展開する各市場で地域に根ざした存在であるべきだ」と強調している。
投資家が企業を選ぶ際、元手となる資本を使ってどれだけ利益を稼いだかを示す指標であるROE(自己資本利益率)などが重視されてきた。ただ、表面的な利益指標だけでは、その企業が本当に長期投資の対象とする価値があるのか分かりにくい。
例えば、工場が環境汚染を引き起こせば、立地先の国や住民から訴訟を起こされる可能性が高まる。多くの従業員が慢性的に疲弊、もしくは退職していくような職場環境では、生産性を向上させるどころか維持することすら難しい。企業統治が機能しなければ経営陣が不正にはしりやすく、企業そのものが傾きかねないというリスクもある。
このように、短期的に大きな利益が出ていても、ESGを軽視する企業は投資対象としてふさわしくない、という考え方が欧米で急速に広まっている。
日本では「ESGはあくまで機関投資家による社会貢献の一環」と位置付けられてきた。しかし、電通の新入社員の自殺を機に「働き方改革」が叫ばれるようになり、短期的な利益の積み上げよりも、社会貢献や労働環境への配慮こそが企業を長期的に成長させるという認識が徐々に広まりつつある。
ブラックロック・ジャパンの井澤𠮷幸会長CEOは、「従業員が幸せに働いているかどうかが、企業の成長を左右するのは明白だ。政府が進める働き方改革は我々の方向性と一致しており、投資先企業との対話を通じて、その取り組み姿勢を問いたい」と話す。
グローバル化の負の現実
ブラックロックがESGの重要性を強調するのは、ブレグジットや中東情勢の混乱など、昨年から続く世界的な変化の根底に「グローバル化と技術革新が起こした影響への反発がある」(フィンク氏)と分析しているからだ。「グローバル化の果実が必ずしも公平に分配されず、高度なスキルを持った都市部の人材に偏っている」(同)という負の現実があり、熟練度の低い従業員の仕事を大量に奪ったと見ている。
今回の書簡では、企業の短期志向にくぎを刺したのも特徴だ。フィンク氏は2016年7〜9月期末までの12カ月間で、S&P500指数の構成企業による配当・自社株買いの総額が、同じ時期の営業利益の総額を上回っていると指摘。株主還元に偏り過ぎて成長投資がおろそかにならないよう、投資先企業に注文を付けた。
フィンク氏の問題意識は、「企業がとにかく短期的な利益を上げて、それを株主だけに還元していれば評価される時代が終わった」(井澤会長CEO)ということの表れだ。今年の株主総会は、日本企業が世界的な変化にどう向き合うのかを見極める重要な機会となりそうだ。
(杉原 淳一)
(日経ビジネス2017年3月13日号より転載)
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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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