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トランプ大統領の初の議会演説は、具体的な内容には乏しかったものの、失点もなく、市場は好感した Photo:REUTERS/アフロ
トランプ演説でNY株上昇も依然消えない景気後退懸念
http://diamond.jp/articles/-/120137
2017.3.7 週刊ダイヤモンド編集部
トランプ米大統領による初の議会演説が2月28日の夜(米国時間)に行われた。市場は演説を好感して翌日のニューヨークダウは上昇し、初の2万1000ドル超えとなった。
演説の中身は、インフラ投資や減税といったこれまでの主張が盛られたものの、財源などの具体的な内容はなく、新味には乏しかった。にもかかわらず、議会演説であらためて言及されたことで「市場の期待をつなぐのには十分だった」(石原哲夫・米国みずほ証券マクロストラテジスト)と受け止められている。
いつもの罵詈雑言を控え、ネクタイもよく着ける赤ではなく紺と白のストライプという落ち着いた色調のものにした。これまで“行儀の悪さ”が目立っていただけに、普通に振る舞うだけで評価が高くなったといえなくもないが、辛口の「ニューヨーク・タイムズ」紙でさえ、「原稿をきちんと読んだ。落ち着いて真面目だった」と一定の評価をした。
今後、予算教書演説に加え、債務上限の引き上げ期限を迎える。そのため、大統領と予算権限を握る議会との協調は不可欠であり、トランプ大統領もそれを意識せざるを得なかった面もあるだろう。
日本の市場関係者が警戒していたのは、演説への失望またはトランプ大統領の為替相場への言及からリスクオフ(円などの比較的安全な資産を選ぶ投資行動)となり、円高が進む流れだった。しかし、市場は演説を好感し、むしろ円の対ドルレートは1ドル=114円台へと円安に振れた。
2月28日にニューヨーク連邦準備銀行のダドリー総裁がテレビで「利上げの必要性はかなり切迫している」と発言したこともあり、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ観測が強まっている。それも円安の流れを加速させた。その結果、日経平均株価も3月1、2日と連騰し、2万円に迫る動きを見せている。
■依然高いトランプリスク
ただ、トランプ大統領の経済政策のリスクは依然高い。主張通りに政策が実行された場合には、防衛費拡大も加わり財政が急速に悪化する公算が大きい。そうなれば金利が急上昇し、米国景気を冷え込ませるだろう。
そもそも財務省幹部などの主要スタッフの任命も遅れていることに加え、市場が好感するインフラ投資や減税について議会との調整が進むのかも不透明だ。目玉の政策実現が後ろ倒しになり、それを市場が嫌えば、株価が下落する可能性もある。
米国経済は2009年6月以降、景気拡大局面が続いており、成長は鈍化してきた。保護主義的政策の実施やトランプ大統領の失言などで市場が混乱するなど経済的ショックが起きれば、いつ後退局面入りしてもおかしくない。期待先行のトランプ相場の先行きは決して楽観できない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)
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