http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/668.html
Tweet |
原発利権に斬りこめ! 知られざる「国税局内偵班」の戦い 「最後の砦」はあきらめが悪い
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51078
2017.03.03 上田二郎 現代ビジネス
確定申告シーズンに話題沸騰の書『国税局査察部24時』を執筆した、元国税査察官の上田二郎氏。過去の著作『国税局直轄 トクチョウの事件簿』(ダイヤモンド社)を題材にしたサスペンスドラマ『トクチョウの女〜国税局特別調査部』が3月4日15時5分より放送される(フジテレビ系)。
「トクチョウ」とはいったい何なのか。上田氏がこっそり明かした――。
■トクチョウ、その特徴
トクチョウ班――税務署の案内板にも職員名簿にも、それについての記載はない。調査部門の一つあるいは調査部門の中に、班として存在する税務署のシークレット部隊だ。
彼らのテリトリーはずばり、タブロイド判の夕刊紙が紹介するピンクゾーン。繁華街で流行っている店をいち早く見つけ、潜入調査などで脱税の証拠を集めたうえで踏み込んでいく。
ターゲットは、申告納税制度に背を向けた脱税者。繁華街の風俗店や裏商売では特に、短期間で信じられないほど高い利益を上げながら、確定申告をしていない不届き者もいるが、店の回転(開業から廃業までの期間をいう)が早く、税務調査が追いつかない。
繁華街を掌握し、大口の申告漏れがありそうな店を継続的に監視するのが彼らの任務。そのため、別名「ピンク担当」と呼ばれている。
マルサ(査察部)やリョウチョウ(資料調査課)の経験者の中から選ばれた統括官が調査の指揮を執り、税務署内から選抜された優秀な調査官を配置して調査にあたらせる。
若い調査官にとっては、トクチョウ班で調査技法を磨いた後に、マルサやリョウチョウに配属される登竜門にもなっている。そして彼らは、マルサやリョウチョウで更に経験を積み、統括官となってトクチョウ班を率いるために再び税務署へ戻るのである。
トクチョウ部門の編成は、統括官1名と調査官4〜6名。調査は上席調査官と調査官がペアとなって進めるのだが、風俗店をターゲットにすることも多く、女性調査官の配属は極めて少ない。
しかし、エステやネイルサロン、ホストクラブなど女性にしかできない潜入調査もあって、女性調査官が大きな力を発揮することも多い。
『トクチョウの女』(第一話)に登場するターゲットは、美術商だ。デパートが主催する特別展示会を通じて現代アートを販売している美術商の売り上げは、基本的には振り込み入金されるため、ガラス張りで正しく税務申告されているように見えた。実際、過去の調査は「申告額は正しかった」と結論づけて終了していた。
ところが調査を進めていくうちに、一定期間、現代アートを購入していた上顧客が突如取引を止めるケースが散見された。その理由を尋ねに行くと(反面調査)、「単に飽きただけ」と納得できない答えが返ってきた。
さらに調査を進めると、デパートを介さずに顧客と直接取引をする「簿外取引」の疑いが強くなっていくのだが、肝心の絵画を販売するための展示場が見つからない。調査が徐々に核心に迫ると、美術商が政財界を通じて調査妨害の圧力をかけ、ついに税務署長から調査中止が指示される――。
脱税を煽る内容や、元国税調査官を名乗りながら調査経験に乏しい者が書いた書籍が巷に氾濫し、それを鵜呑みにして手痛い目に遭う事業者も沢山いる。
脱税は、7年前まで遡って調査されていることをご存じだろうか。悪さをした申告書を提出した瞬間から、トクチョウやリョウチョウ、そしてマルサの影におびえて暮らさなければならないということなのだ。
確定申告書の提出前に、自分の申告をもう一度見直す絶好の機会ともなるだろうから、是非ご覧いただきたいドラマだ。
(なおドラマでは、トクチョウ部門の統括官としてマルサから税務署に戻った国広統括官を高田純次が、また彼を慕い一緒にトクチョウ班に戻った財前円香上席を名取裕子が熱演している)
■原発利権をめぐるナサケとミの大激論
ところで、マルサには政治家の介入や大物OB税理士の横やりなどの調査の圧力は存在しない。内偵班の最大の関門は、実際に強制調査に入る実施班と侃々諤々の議論を交わす情報検討会だ。
映画やドラマでははっきりと描かれないが、マルサには内偵調査を専門に活動する内偵班(通称、ナサケ)と内偵調査の結果を受けて強制調査に入る実施班(通称、ミ)が存在する。ナサケは情報の「情」を表し、ミは実施の「実」を表す隠語で業務は完全分業制だ。
内偵班は脱税者を見つけて強制調査に着手するまでを受け持ち、実施班は強制調査に着手して、脱税の事実や脱税額を確定し検察に告発するまでを受け持つ。
実施班は実際にターゲットと対峙して強制調査を行い、それに失敗した場合は全責任を負わなければならない。
一方の内偵班は、ターゲットに察知されることなく、帳簿を見ることも話を聞くこともなく秘密裡に進めなければならない。そのため、内偵調査には限界がある。目標が違う部隊が互いのプライドをかけて激論を交わす検討会が時に紛糾するのは、当たり前のことだ。
検討会の一コマをこれから紹介しよう。事案は建設業界にはびこるキックバックの事例である。
実施幹部「架空外注費は分かった。しかし、お前ら少し汗のかき方が足りない(努力が足りない)んじゃないか? 踏み込んでからキックバックした相手を解明して
も遅い。裁判官から追加令状をもらってからでは、証拠は消されてしまう。真
のターゲットを解明してから強制調査を行うのが筋だろう?」
上田 「しかし張り込みにも限界があります。不正加担している会社の社長が口座から現金を引き出して、カネをバックした事実は確認しています。しかし、カネが持ち込まれてしまうと、誰が運び出すのかが分かりません。二度張り込みをしましたが、同じ動きをしています」
実施幹部「二度では足りない。三度も四度もやって、毎日の動きを追っかけて真実を確認しろ。この事案を受け取る実施班の苦労も考えろ。内偵班でやれることを全部やって、その結果を見てから着手するかどうかを判断する」
情報幹部「何日間、張り込めば納得してくれます?」
実施幹部「……少なくとも1ヵ月だな。毎日、1ヵ月間徹底して張り込めば、何かが見えてくるかもしれないね」
情報幹部「分かりました。1ヵ月間、張り込みをさせましょう」
真実を追う手段として強制調査に入り、そこから脱税の果実を享受した者(真の帰属者と呼ぶ)を焙りだしたい内偵班と、真の帰属者がターゲットでないことが分かっているため、解明してから強制調査をしたい実施班が鋭く対立し、長期間の張り込みが命じられた。
原発の建設・運営には利権が複雑に絡み、近隣対策費などの裏金が必要な場合がある。だが、会社にとって必要不可欠な支出であるにもかかわらず、社会通念上の理由から会社の費用として認められないばかりか、制裁的なペナルティーが課されるため、様々な手段で裏金を作ろうと画策する。
使途秘匿金としてペナルティーさえ支払っておけば、強制調査をされずに済んだかもしれない。にもかかわらず、尻尾を掴まれて強制調査をされた挙げ句、その後10年以上も監視される結果になった。この執念、あきらめの悪さこそが「国税最後の砦」マルサの特徴である。
■査察総括第一課長への直訴
畠中チーフ 「下請け会社に架空外注費を払ってバックさせていることは間違いないのですが、カネが戻ってしまうとそこから先が見えません」
統括官 「もうやめろ! この事案は無理だ。実施が受けない。カネが川上(元請会社)に戻ってしまえばタマリはない」
担当統括官はマルサ歴25年を超えるベテランで実施班の経験もあった。
上田 「こんな脱税をみすみす見逃すのですか? 税務署の過去の調査では解明できていません。マルサ以外に調査できる部署はありません」
統括官 「そうは言っても実施は受けない。脱税ではあるが、所詮は会社から流出した(使っている)カネだ。マルサが狙う私腹を肥やしたヤツとは本質的に違う」
上田 「そうですがカネをもらっているヤツがいるわけですよね。強制調査に入れば、そこにたどり着けるかもしれません」
統括官 「『かもしれない』事案を誰がやるんだ? かもしれない事案に何人の査察官を投入するんだ? 結果的に分からなかったらどうするんだ!」
統括官の言い分はごもっとも。だが――。
上田 「原発利権に絡む裏金なら面白い方々を焙り出せるかもしれません」
統括官 「査察官ごときが考えるような話ではない。やめろと言ったらやめろ!」
統括官にこれだけ反対されれば、引き下がらざるを得ない。この日は部門全員の応援をもらって3回目の徹夜の張り込みを終え、国税局に戻ってきた。
上田 「どうしても納得がいきません。架空取引は間違いありませんので、何とか強制調査に結び付けられませんか?」
畠中チーフ 「あれだけ反対されるとな……。統括は実施班の経験もあるし、実施が受けないと言っている話も分かる」
上田 「せめて内偵調査報告書だけでも書かせてください。検討会にかければ
チャンスがあるかもしれません」
畠中チーフ 「一課長(いっかちょう:査察総括第一課長)に相談してみるか?」
上田 「直訴ですか? 統括にはどのように説明します?」
畠中チーフ 「黙っている。統括はどうせ7月10日で転勤だ。一課長から許可さえ
貰えば何を言われても知らんぷりだ!」
■国税は手ぐすね引いてFXの申告を待っている
内偵班は査察第1〜17部門に配属されているが、内偵の一切を取り仕切るのは査察総括第一課だ。統括官を飛び超えての直訴はご法度だが、人事異動が近づいていたため、統括官に遠慮しなくても良い時期に差し掛かっていた。
そして、統括官は年齢的に今回が最後の人事異動で、マルサに再び戻ってくることはないと分かっていたことも、事案が日の目を見た大きな原因だ。検討会を通過するにはある程度のツキも必要なのだ。
畠中チーフ 「概略は以上です。いかがでしょうか?」
総括一課長 「難しい事案を良くここまで解明したね。しかし、実施を説得するのは難しいだろうな。バックしたカネは更に川上の会社(元請け)に戻されるのだろうが、誰がどうやって運ぶのかが分かっていない」
畠中チーフ 「しかし、元請けにカネが戻ると会社に出入りする全ての人間をマークしなければなりません」
総括一課長 「そうだろうね。しかし、そこが分からず強制調査に入っても、解明できなければ調査展開ができない。説得は難しいだろうな」
上田 「やはり無理ですか……」
総括一課長 「とりあえず内偵調査報告書を書いてみな。検討会で実施がどんな反応をするのか? どんな補完調査をしたら着手してくれるのか? などを聞いてみるのも一手だ。面白い事案であることは間違いない」
こうして「原発から流れ出すカネ」を解明する道が開けていったのだ――。
このほか、『国税局査察部24時』では、マルサが初めて強制調査に着手したFX事案を掲載し、当時、法定調書の提出義務がなかったFXをどのように取り締まっていったのかも明かしている。
昨年はブレグジットやトランプ大統領の当選によって為替相場が大きく動いたため、国税は手ぐすね引いてFXの申告を待っている。
FXは儲けた場合の申告は当然だが、損した場合の確定申告が重要なことはあまり知られていない。
申告期限が3月15日に迫っている。期限前に是非、ご一読いただきたい。
上田 二郎
1964年生まれ。東京都出身の税理士(上田二郎は筆名)。83年、東京国税局採用。千葉県内および東京都内の税務署勤務を経て、88年に東京国税局査察部に配属。その後、2007年に千葉県内の税務署の統括国税調査官として配属されるまでの合計17年間(途中、2年間の税務署勤務をはさむ)を、マルサの内偵調査部門で勤務した。09年、東京国税局を退職したが、再び税理士として税務の世界につながっている。著書に『マルサの視界 国税局査察部の内偵調査』(法令出版)、『国税局直轄 トクチョウの事件簿』(ダイヤモンド社)、『税理士の坊さんが書いた宗教法人の税務と会計入門』(国書刊行会)がある。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民119掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。