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進むも地獄、退くも地獄だ(※写真はイメージ)
売るものがなくなった東芝 原発とともに心中か〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170301-00000027-sasahi-bus_all
週刊朝日 2017年3月10日号
タケノコのように皮を剥いでいったら身がなくなった──。名門・東芝は、そんな状態に陥りつつある。
東芝は2月24日、取締役会で半導体事業の大部分を売ることを決めた。発表文に明記された「マジョリティ譲渡」。これは、年間1千億円以上を稼ぐ事業を失うことを意味する。
すでに資産はあらかた整理した。豪華な迎賓施設「東芝山口記念会館」(東京・高輪)は昨年手放し、東芝病院(東京・品川)の売却も検討中。家電や医療機器事業は切り離され、従業員は2016年9月末までの1年半で約3万人が去り、約16万7千人に。半導体事業の売却で、さらに約9千人減るとみられ、若手の人材流出も懸念されている。
個人投資家向け情報サービス「ロンジン」の和泉美治アナリストは指摘する。
「銀行が資金繰りを支えているので当面は経営は続けられるが、収益力や将来性はかなり厳しい。株式市場的には存在価値がない企業になってしまう」
こんな状況に至っても、会社を傾かせた“元凶”の原発事業に、経営資源を集中させる方針だ。米国の原発子会社ウェスチングハウス(WH)に絡み、15年度、16年度で計1兆円近い損失が出る見通し。「(WHの買収は)正しいとは言いにくい」(綱川智社長)と過去の経営判断の誤りを認めており、社内からも疑問の声があがるが、全面撤退できない事情があるという。
東芝がWHを買収したのは06年。約41億ドル(約5千億円)でWHの株式の大半を握った。現在、東芝の出資比率は87%だ。
実は東芝も、事実上1社で担うことに大きなリスクが伴うのは、買収時から気づいていた。しかし、お金を出してくれるはずだった総合商社「丸紅」がドタキャン。東芝の西田厚聡社長(当時)は「突如、投資できないと連絡を受けた」と不快感を示していた。
11年の福島の事故で原発をめぐる環境は一変。軌道修正できないまま、13年に米エンジニアリング大手ショー・グループから、WHの株式20%分を約1250億円で買い取った。同グループはいち早く、買い取りを求める権利を行使して、手を引いたのだ。
そして、今回の経営危機。
「ご興味を持ってくださるパートナーがいれば……」
綱川社長は2月14日の会見で、出資比率を下げてリスクを減らしたい考えを示したが、現実は逆の方向に進みつつある。
WHに3%出資するIHIから株式の買い取りを求められたのだ。IHIは東芝に発電用機器などを納入。原発事業で協力関係にあり、いわば「盟友」だ。
「福島の事故後もWHへの出資を続けてきたが、これ以上株式を持ち続けると損失が生じる恐れがあり、売却に踏み切ったのでしょう」(原発メーカー幹部)
東芝は5月に約189億円で買い取り、出資比率は90%まで高まる。残る株主は、カザフスタン共和国の国営企業である「カザトムプロム」(出資比率10%)。そこにも、同様に買い取りを求める権利がある。
「いまWHの株を引き取ってくれる企業はない。東芝が100%抱えるしかない」(同)
原発関係の採算を少しでも改善すべく、ライバルの日立製作所や三菱重工業と交渉している核燃料事業の統合も、足踏みしている。
原発建設をWHが完了できなかった場合、親会社として米国の電力会社側などに約7千億円を支払わなければいけない。全面撤退すれば巨額の追加損失は避けられない。中国や英国の原発建設で追加の損失が生じる危険もはらむ。
「WHを法的に整理し、原発事業の大幅縮小も選択肢となる。そうした場合、半導体も原発も失い、後には何も残らないこともあるでしょう」(金融関係者)
進むも地獄、退くも地獄だ。
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