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コラム:
ドルはなぜ年初来「最弱通貨」なのか
佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 23日] - 2017年もすでに2カ月が過ぎようとしているが、年初来の主要10通貨のパフォーマンスを見ると、最も強い通貨はオーストラリアドルとなっている。その強さは圧倒的で、2番目に強いニュージーランドドルに対しても2%超上昇している。ちなみに、円はノルウェークローネに次いで4番目に強い通貨だ。
一方、最も弱いのは米ドル(以下、ドル)である。9番目に弱いユーロとの差は縮まってきてはいるが、それでもほぼ一貫して年初来「最弱通貨」となっている。
当社は、米国がトランプ大統領の下で保護主義的なスタンスを強める結果、ドルは少なくとも円やユーロのような資本調達通貨に対しては下落すると予想しているが、今のところドルは全ての主要通貨に対して下落している。
筆者は、トランプ大統領の保護主義的なスタンスだけでなく、他にもいくつかドルが弱くなる要素があると見ており、それらの一部がすでに今年のドルの弱さにつながっているのではないかと思う。本稿では、そのいくつかの要因について指摘したい。
<米国から新興国へ、投資マネー回帰の可能性>
第1に、実際のパフォーマンスから指摘できる要因がある。ドルは2014年、2015年と2年連続で主要10通貨の中で最強通貨となった。それが、2016年は5番目まで順位を落としていた。
つまり、ドル上昇の勢いはすでに昨年から鈍化し始めていたのである。ドルは実質実効レートベースで2001年頃以来の水準まで上昇し、割高感も強まっており、勢いが続かないのもうなずける。
ドルが弱くなり始めている理由の2つ目として考えられるのは、新興国経済との関係だ。当社が集計している先進国と新興国の実質国内総生産(GDP)成長率を見ると、2014年から2015年にかけて、先進国が比較的高い成長を遂げた一方、新興国の成長が鈍化したため、両者の成長率の差が急速に縮小した。
具体的な数字で示すと、2012年、2013年は両者の差がそれぞれ3.8%ポイント、3.9%ポイントだったが、2014年は2.8%ポイント、2015年は2.1%ポイントまで縮小した。筆者はこの成長率の差の縮小が、2014年と2015年にドルが強くなった1つの要因だったと考えている。
つまり、成長率が鈍化し始めた新興国から投資資金が引き揚げられ、ドルに戻ってきた可能性があるのではないか。もちろん、2015年に米連邦準備理事会(FRB)がいち早く利上げに向かうとの見方が広がったこともドルへの資金還流を助長した面はあったと思うが、そもそもドルはすでに新興国経済の減速を受けて上昇基調にあったのだ。
その証拠に、2014年、2015年の2年間の主要国・新興国通貨のパフォーマンスを見ると、弱いのは軒並み新興国通貨であり、ロシアルーブルは対ドルで55%も下落して最下位、次に弱かったのがブラジルレアルで同40%下落、その後を南アフリカランドが同32%下落で続いている。
しかし、先進国と新興国の成長率の差は2015年をボトムに、再び拡大基調に入ったとみられ、2016年には2.4%ポイントまで広がった。当社のエコノミストは、今年はこの差が2.5%になり、来年は3.0%になると予想している。今後は、米国から新興国へ投資が戻っていく流れになるのではないかと見ている。
実際、年初来の主要国・新興国通貨のパフォーマンスを見ると、最強通貨はオーストラリアドルだが、その後に続くのは、韓国ウォン、ブラジルレアル、南アフリカランド、ロシアルーブル、メキシコペソと、軒並み新興国通貨となっている。
<債券市場はトランプ政策への失望を織り込み済みか>
ドルが弱いと見る3つ目の理由は、トランプ米政権に対する過剰な期待の後退だ。トランプ大統領は大幅な減税、インフラ投資拡大を掲げて当選したが、就任1カ月目にして、これらの政策実行に暗雲が立ち込めている。
輸入品に課税をすることによって、米国の貿易収支が改善するのでドルが買われるという期待は一時期、非常に強かったが、米国では今、こうした期待が徐々に後退し始めている。
そもそも、トランプ大統領が当初主張していたような、単純に輸入品に関税を課す「国境税」はすでに議論の中心ではなくなっているようだ。今、議論されているのは、共和党案の法人税制改革の1つとしての「国境調整」である。
しかし、この「国境調整」は1980年代のレーガン政権時代から考えられてきた大がかりな法人税制改革であり、概念としては簡単でも、実行に移すとなると相当大きな壁が待ち構えていると思われる。すでに輸入品を取り扱うことが多い小売業界は猛烈に反対しているが、問題はそれだけではなく多岐にわたる。
当社は、この「国境調整」が現状案のまま議会を通過する確率は非常に低いと見ている。28日に予定されている上下両院合同本会議でのトランプ大統領の演説でも具体案を伴う「驚異的な計画」は出てこないだろう。
さらに、米国議会はその前に医療保険制度改革法(オバマケア)の撤廃問題も扱わなければならない。加えて、3月15日には連邦債務上限引き上げの期限が切れ、何度も繰り返されているが、4月から5月頃になると、米国政府の資金繰りが厳しくなることが予想される。そうした中で、大がかりな法人税制改革に関する議論が短い期間で進捗(しんちょく)するとは思えない。
個人の所得税減税、インフラ投資については、議論がほとんど進んでいない。米国の税制改革やインフラ投資に対する期待が織り込まれたマーケットは早晩、「失望」に直面する可能性が高い。
ドルが弱いと見る4つ目の理由は米国の実質金利低下だ。5年物インフレ連動債から見た米国の実質金利はトランプ大統領当選後に大きく上昇したが、今では急速に反落し、上昇分のほとんどを失っている。今年に入ってからの実質金利急低下の原因は、期待インフレ率が上昇を続ける中、名目金利が上昇しなくなっているからである。
マーケットは現在、FRBが今年2回利上げを行うことを完全に織り込んでいる。しかし、それが、3回、4回といった回数に変わっていかないため、長期金利はあまり反応しない。
ちなみに、主要10カ国の10年国債利回りを年初来の動きで見ると、米10年債利回りの低下幅はニュージーランドに次いで大きい。債券市場はトランプ大統領に対する期待の高まりが失望に変わるのをすでに織り込んでいるのかもしれない。
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
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http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKBN1620ZE?sp=true
コラム:FRBバランスシート縮小議論の衝撃
井上哲也野村総合研究所 金融ITイノベーション研究部長
[東京 23日] - 米連邦準備理事会(FRB)は、政策金利の引き上げを開始した後も、かつて量的緩和で買い入れた米国債や住宅ローン担保債券(MBS)などの債券について、償還代り金で再投資を行うことによって資産規模を維持してきた。しかし、ここへきて再投資の見直しをめぐる議論が目立つようになっている。
直接の契機は、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨に利上げと再投資見直しを関連付けて考える議論がみられたことだった。また、FRB前議長であるバーナンキ氏も再投資戦略について論考を公表したことで、市場の関心は一段と高まった。
しかも、FRBが2017年中に3回の利上げを行った場合、年末の政策金利は1%台中盤となり、FOMCが長期的な政策金利と考える3%と、ゼロ金利との中間に達する点も「機は熟しつつある」との印象を与えている。
FOMCは金融政策の正常化に関する基本戦略を2014年9月に公表した。そこで示された方針は主に次の3つだ。
1)再投資は政策金利を十分引き上げた後に見直す
2)当初はMBSの売却は行わず、償還による減少に任せる
3)最終的には国債のみを保有する
しかし、そもそも政策金利はどこまで上昇すれば十分か検討が必要なことに加えて、上記3番目の方針(最終的には国債のみ保有)を実現するためには、MBSの扱いについて何らかの工夫が求められることになる。というのも、MBSは利回り次第で償還ペースが変化するからだ。
ちなみに、国債は現在2兆ドル強もの残高がある一方、ニューヨーク連銀のデータによれば残存4年未満の国債が約1.2兆ドルある。現時点で保有国債の再投資を止めれば、今後4年程度でFRBの保有国債はほぼ半分まで減少することになる。
<市場との対話怠れば無用の混乱招く恐れ>
では、FRBが保有資産の再投資見直しに踏み切った場合、どのような影響が予想されるのか。
まず、保有する国債やMBSの残存期間が徐々に短期化し、イールドカーブの幅広いゾーンに上昇圧力が生じるとみられる。実際、市場では、利上げとは比較にならないインパクトを与え得るとの見方が強い。影響の現れ方は国債管理政策の内容によるとしても、トランプ政権が拡張的財政政策を実施する下では、中長期金利全般の上昇に拍車をかけることになる。
それでも、利上げには慎重なFRBが保有資産の再投資見直しを進めるとすれば、その理由としては保有資産が無限に膨張するリスクを回避したいとの意向が考えられる。景気循環のピークでもかつての5%といった政策金利を望み難い現状では、景気後退期に「のりしろ」を使い果たし、ゼロ金利政策の下で量的緩和に戻る可能性は小さくなく、保有資産を減らせる時に減らしておかないと「根雪」のように増加し得る。
イエレン議長が先の議会証言で説明したようにFRBがバランスシートの構成変化を新たな政策手段と位置付けることに消極的である点も、こうした考え方と整合的である。
政治要因もFRBによる再投資見直しを促進するとみられることが多い。確かに、共和党も、次期FRB議長の有力候補であるウォーシュ元FRB理事も量的緩和にはかねて否定的だった。
しかも、FRBが利上げを進める下で保有債券のキャピタルロスが発生すれば、共和党によるFRBへの批判が強まる結果、議会による監査強化や金融政策のルール化などの「改革」に道を拓く可能性も高まる(もっとも、FRBが保有するMBSを早期に圧縮すれば、モーゲージ金利の上昇を通じて住宅投資を減速しかねないだけに、共和党が単純に要求するかどうかには不透明な面も残る)。
このように、FRBによる保有債券の再投資見直しには検討すべき点が多い。しかも、今年は、トランプ大統領の経済政策の時間軸や効果、独仏蘭などユーロ圏主要国の選挙の帰趨などそもそも不安定要素が多い中で、再投資見直しの議論が進むことに市場の異論も根強いようだ。
折しも、今般公表された1月FOMCの議事要旨によれば、今後のFOMCで再投資見直しの議論を進めることへの合意が形成された。不必要な市場の混乱を防ぐためにも、FOMCはこのテーマに関する議論の内容を適切かつタイムリーに市場と共有することが求められる。
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融ITイノベーション研究部長。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
コラム:ドル120円予想を支える2つの根拠=鈴木健吾氏 2017年 02月 20日
視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:円高予想の蔓延がもたらす投資機会=村上尚己氏 2017年 02月 16日
http://jp.reuters.com/article/column-tetsuya-inoue-idJPKBN1620WP?sp=true
税制改革、8月休会前の議会承認望ましい=米財務長官
[23日 ロイター] - ムニューシン米財務長官は23日、税制改革は「非常に重要」とした上で、議会が8月の休会前に承認することが望ましいとの考えを示した。トランプ政権として国境税の問題について検討を重ねていることも明らかにした。
長官はCNBCとのインタビューで「われわれは税制改革を公約に掲げている。8月の休会前に片を付けたい」と指摘。「これまで上下両院の指導部と緊密に協議しており、複合案を検討中だ」と語った。さらに、政権として中所得層への減税や法人課税の簡素化に重点を置いているとした。
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コラム:「ポスト真実」の統計で米国が食らうしっぺ返し
Peter Thal Larsen
[ロンドン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領の統計の扱い方は、最も良く表現したとしても、緩いとしか言いようがない。
就任してからの1カ月、トランプ大統領は、ほぼ毎日のように不都合な事実について攻撃することに時間を費やしてきた。したがって、トランプ政権がその矛先を経済データに向けるのも単に時間の問題だった。
しかし、統計への「ポスト真実」的なアプローチは大きなしっぺ返しを食うことになりかねない。
ウォールストリート・ジャーナル紙によると、貿易赤字の算出方法を変更することをトランプ政権が検討している。これはそれほど驚くことではない。トランプ氏は大統領戦の大半を使って、米国が輸出よりも多く輸入していることへの不満を訴えていたのだから。
とはいえ驚くべきは、提案されている新たな算出方法が、米国の貿易赤字をより大きく見せることだ。
論点となるのは、米国に輸入されてから他国へ輸送される自動車のようなモノの分類だ。これら製品は現在、米国に到着したときは輸入品として、米国を出るときには輸出品としてカウントされている。新たな算出方法では、こうした「再輸出品」を輸出データから除外することが検討されている。そうすると、昨年全体の貿易赤字は9600億ドル(約108兆8200億円)となり、現在の公式データよりも2240億ドル拡大することになる。
トランプ政権の動機は不明だ。米国内で生産された製品の輸出をより正確に反映する輸出データを望んでいるのかもしれない。だがその場合、米国内で消費されなくても輸入品としてカウントするというのはゆがんでいるように思える。
それよりもあり得る説明は、貿易障壁を主張する根拠を強化するために、誇張されたデータを使うというものだろう。修正された算出方法では、昨年の米国の対カナダ貿易赤字は120億ドルではなく580億ドルになる。また対メキシコ貿易赤字は、公式統計のほぼ2倍となる1170億ドルに達するとみられる。
政治家は自身の考えに合うように常にデータをかいつまんでいる。しかしデータをこねくり回すことは、トランプ政権が米統計の信頼性を損ねているという懸念を生むことになる。これは、貿易相手国やドル資産を保有する投資家、エコノミストの信頼をむしばむ動きだ。
もう1つのリスクは、トランプ大統領が貿易赤字を減らせると有権者が期待を膨らませるという政治的なものだ。だが貿易収支というのは、他の世界と比較して米国民がどれくらい消費しているかを主に示している。そのような基礎的な事実を変えるには、いくつかの関税や細工した統計以上のものが必要だろう。
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http://jp.reuters.com/article/column-post-truth-data-idJPKBN1610BG?sp=true
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