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45万円のイヤホンが完売した理由
記者の眼
2017年2月22日(水)
西 雄大
4320万円の希少な木を使ったテーブル、30万円のウォークマンーー。日経ビジネス2月13日号特集「凄い値付け」のために、価格設定で工夫した企業ばかりを取材した。冒頭はその一例だ。価格だけを聞くと驚いてしまった。だがこれらは決して奇をてらったものでなく、綿密に考えたうえで販売価格を決めていた。特集で紹介した事例以外でも、まだまだ凄い値付けはある。市場価格の100倍以上であったり、新しい市場価値を作り出したりといったことに取り組んでいる。
これらの企業が凄いのは値付けだけでなく、市場に受け入れられるために売り方も工夫していることだ。
45万円のイヤホンでも富裕層狙わず
まず販売価格を高額に設定し、狙う顧客層を明確にしたのが、エスネクスト(神奈川県川崎市、細尾満社長)だ。45万円のイヤホン「LABII」を200本限定で売り出したところ、即完売となった。イヤホンは2000円も出せば、必要十分な性能の商品が手に入る。「LABII」は200倍以上も高いが、想定を上回る反響だったため、追加生産を検討しているほどの人気だ。
45万円のイヤホンを開発したエスネクストの細尾満社長。あっという間に完売したため追加生産を検討中(写真:北山宏一)
45万円のイヤホンは、NTTデータと技術提携し三次元CAD技術で高精度な駆動部を作り、ケーブルはスーパーコンピューターのデータ伝送にも使われる素材を採用した。不要な振動を抑えられる形状としたことで、臨場感ある音楽再生ができるようになった。エスネクストは「LABII」以外にも、25万円のイヤホンを販売するなど高級品を専門に扱っている。
独特の形状をした駆動部。三次元CAD技術によって実現した(同)
どれも高額品なので「富裕層を狙って販売戦略を立てているのか」と細尾社長に聞いてみたが、意外な答えが返ってきた。「違う。あえて富裕層は狙っていない。たとえ月収20万円の方でも音楽好きな人を狙った」(細尾社長)。
富裕層に狙いを定めると、良い商品だということを継続してアピールするために広告宣伝費が欠かせない。一方で、音楽好きに狙いを定めれば、巨額な広告宣伝費をかけることなく確実に欲しい人だけに届けられる。凄い値付けの裏には緻密な販売戦略があった。
マーケティングに力を入れない代わりに、顧客との対話する時間を大切にしている。同社は工場上にショールームを設置した。その場所は川崎の武蔵小杉駅から徒歩20分ほどかかる。
わざわざ来てくれた見込み客であるため、じっくりと好きな音を納得いくまで聞いてもらう。「こんな不便な場所に冷やかしの方は来られない。だから我々も何時間でもお付き合いする」(細尾社長)。閉店時間が過ぎても試聴に付き合うこともあるという。
販路開拓も高級オーディオを扱う専門店の担当者に的を絞り、気に入ってもらえた店とだけ取引する営業手法を採用している。「販売員の頭のなかには、見込み客が数人浮かんでいることが多い。彼らに丁寧に説明すれば売れる」(細尾社長)。
エスネクストのように対象顧客がはっきりすれば、営業にかける人員も最小限で済む。人員に限りがある中小企業でも大手と対等に張り合える戦術といえそうだ。
日本のマンガの新しい輸出モデル
エスネクストのように徹底的に顧客を絞り込んで戦う土俵を変えてしまう方法もあれば、販売先を海外に移すやり方もある。それを実践するのがアニメなどのコンテンツ管理や配信を手がけるダブルエル(東京・品川、保手濱彰人社長)だ。収入が減っている漫画家に新しい稼ぎ方を提案している。
それが海外の原作を元に、日本人の漫画家が描くモデルだ。現地で人気がある原作を日本人の漫画家が描く。漫画家がアイデアを考えても、ヒットする確率は不透明。しかも海外となると好みが異なり、成功のハードルはあがってしまう。その点、原作があれば大きくはずしてしまうことは少ない。
このモデルでダブルエルが目指すのは漫画家の収入の安定だ。漫画家はヒット作品を生み出せば高額な報酬を得られるが、ヒット作に恵まれないと収入がないといったように安定性に欠けていた。「漫画家に1ページ1万円以上は支払え、日本での仕事よりも高い報酬を払える。仕事量が一定になり、収入もぶれなくなる」(保手濱社長)。
国内の漫画市場は15年ほど前まで5000億円ほどあったものの、年々縮小傾向にある。漫画家が活躍できる場は減っている。ダブルエルによると、漫画家に支払う単価も下落する一方だという。保手濱社長は「デジタル配信で作品を公開する場は増えているが、漫画家として生活できる人はひと握りしかいない」と指摘する。
日本の漫画家は決して売れっ子でなくても技術力が高いという。「週刊誌の連載のように、何週にもわたって飽きさせないストーリーを考える能力はほかの国の漫画家と比べて長けている」(保手濱社長)。海外でのアニメや漫画の需要は大きい。漫画家の業務を分解して強みだけ残したことで、新しい市場を開拓しようとしている。
この2つのケースのように戦う土俵を変えれば、従来とは異なる市場に挑める。既存の顧客層と異なり、収益も確保しやすい環境が整う可能性がある。
ただし、土俵を変えるには大きな決断が不可欠だ。競争相手が多く収益が厳しいとはいえ、一定の需要を捨てる勇気が必要となる。ただし価格設定を大きく変えれば、対象顧客をがらりと変えられる。この変化対応力はイヤホンや漫画に限らず、多くの業界で求められている考えではないかと感じた。
このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/022000413
予備校の「裏メニュー」にすがる悲しい大学
行きたい大学がない
「たくさん来ます。入学試験を作ってほしいという依頼が」
2017年2月22日(水)
松浦 龍夫
日経ビジネス2月20日号の特集「行きたい大学がない」では、大学という組織の弱体化が、想像を超えるペースで進んでいることを浮き彫りにした。その証左として、大学の授業など「本業」ともいえる業務まで受験産業にアウトーシングしている実態が明らかになった。極端な例としては、入試問題の作成まで外部委託するケースがある。国からの予算が減らされるなど、大学の経営が厳しさを増す中で、試験問題を独自に作る人材さえもが、不足しているのだ。将来の日本を背負う若者の教育を、「空洞化」が進む大学に任せることに不安を感じざるを得ない。
大学の中には、入試問題の作成まで外部委託するケースがある(写真は本文とは関係ありません:Photoshot/アフロ)
ある有力予備校担当者の告白
「来ますよ。毎年たくさん来ます。入学試験を作ってくれないか、という依頼が」
ある有力予備校の担当者は、うんざりとした表情でこう告白する。この予備校は大学の業務の外部委託を引き受けてはいるが、入試問題の作成は、受けないことにしており、大学側にもそう伝えている。それでも毎年大学から依頼が来るという。
問題の作成が難しいなら、大学が作成した問題の事前チェックをお願いできないか、と頼まれる場合もあるが、それも事前に入学試験の問題を見てしまうことには変わりない。同予備校は「問題が漏えいした場合のリスクが大きすぎる」として断っている。「先日は『問題を10問作ってほしい。そこからこちらが勝手に3問選ぶ。それなら事前に知る確率も減るでしょ』と粘られたが、それでも断った」(担当者)。
問題作成を請け負っていることを明言している企業もある。著名な予備校講師だった古藤晃氏が設立した古藤事務所だ。同社のホームページには「おかげさまで、毎年受注数は増え続け、2015年度には、サンプル問題作成24大学159本のご依頼を受けました」と明記してある。古藤氏によると、「入試回数の増加を背景に、毎年依頼される数は増えている」という。
大手予備校も作成をしているところがあるが「大学向けの裏メニューだ」(受験産業大手のある幹部)として、その存在を公にすることはほとんどない。高校生に教えたり、模擬試験を実施したりする受験産業として、問題の流出など機密性に疑問をもたれ、いらぬ嫌疑をかけられたくはないからだ。
先ほどの古藤事務所は、2016年2月に明光義塾などで知られる明光ネットワークジャパン(明光)の傘下になった。高校生への指導を行う企業の傘下入りで問題が生じないのだろうか。それについて古藤氏は、日経ビジネスの取材に答えて、「明光の人を古藤事務所に派遣せず、問題の情報のやり取りは一切しない約束で傘下入りした。独立資本でやっていたときと体制は変わらない」と述べた。
なぜ大学が任せてしまうのか
いずれにしても、問題作成の依頼は、一般には知られていないが、大学関係者間では当たり前といった雰囲気さえある。文部科学省も「問題作成を外部委託している大学があるのは承知している」(高等教育企画課)とその存在を認識しているが、強い指導を行うこともなく半ば黙認している状況だ。
どんな人材を大学に入れて育てるのかを左右する「魂」とも言える入試問題を、どうして大学は外部へ作成依頼するのか。ある私立大学の入試責任者は、「大学に金がないことが根本的な原因だ」と話す。
少子化が進む中で、大学が増え続け経営が厳しくなっていることに加え、国からの補助金も減っている。大学経営が厳しくなる中、大学教授が退職しても新たな常勤の教員は補充しないといった手段で、教員数を削減する動きが広がる。結果として、正しく高校の学習内容の範囲で問題を作れる教員がいなくなった。いたとしても少数であるため、「推薦やAO入試など、多様な入学方式を自分たちが作ったがために、試験の種類が数倍に膨れ上がり、自分たちで作成できなくなった」(予備校関係者)面もある。
では大学は、入試の種類を減らして単純化するのが合理的なのではないか。しかし、それは難しいという。「大学は定員割れすると、4年間欠員分の収入が入ってこない。大幅な定員割れを避けるために、一般入試前に一定数を合格させて“基礎票”を固める必要がある」のだ。「受験料も貴重な収入源で手離せない」という事情もある。大学は自縄自縛の状態に陥ってしまっている。
授業など多様な業務も委託も進む
大学が受験産業へアウトソーシングしているのは入試関連業務だけではない。中核業務である「授業」の関連でも、外部委託が拡大している。
ベネッセコーポレーションや河合塾グループのKEIアドバンス、代々木ゼミナールの高宮学園、駿台予備学校の駿河台学園などの著名な受験産業大手が、受け皿になっている。例えば、AOや推薦で合格した高校生は、一般入試の学生よりも、基礎学力が低い場合もあり、入学前に学力を補う補習授業を提供することもある。大学1年生が授業についていけるように補習授業を担う例や、「大学教員に対して、効果的な教え方を伝授するサービスもある」(河合塾グループのKEIアドバンス)。
最近では一部の授業だけでなく、学部のあり方全体もコンサルティングする例も出てきている。例えば教育産業大手が、私立大学が新設する国際学部についてプログラム内容や留学先の選定などで全面協力する例もある。
関係者によると、大学の業務委託は、規制緩和の流れの中で、1990年代以降増えた。ただ10年ほど前にも、過剰なアウトソーシングが問題視されたことがあった。このため、文部科学省は2007年に大学設置基準を改正。「大学が授業科目を自ら開設する」などと明確にして、いわゆる「丸投げ」を禁じた。最近の多様な業務の受託について、ベネッセの担当者に聞くと「あくまで大学が判断し、その指示のもとに提供しているもの。大学による丸投げではない」と反論する。
2000年代頃、多くの企業がコスト削減、本業集中の掛け声の中で、IT(情報技術)部門の業務をアウトソーシングした。もちろん、うまく業務を効率化できた企業もあるが、時間の経過とともに自社の業務内容を横断的に理解する社員が減り、支障をきたす例も頻出した。
まして大学は、教育・学問という効率性だけで処理するべきではない任務を担っている。コストや時間の節約を優先して、安易にアウトソーシングを続けていくと、「大学」といえるような中身が伴わない、空虚な存在になってしまう。そのときは、本当に学生や親から見捨てられることにもなりかねない。
このコラムについて
行きたい大学がない
大学の空洞化が静かに進んでいる。さまざまな世界ランキングでも、軒並み地盤沈下する日本の大学。東京大学はもう眼中にない。そう言い切る高校生も増えている。アジア各地の大学も力を付け、日本に留学する意義が薄れてきた。将来を担う若者に対する教育の劣化は、日本にとって致命傷となりかねない。大学改革は今度こそ離陸するのか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021700112/022100003/
ロボット化が問う、人間が発揮すべき価値とは
日本企業で進むRPA革命の本質
2017年2月22日(水)
安部 慶喜、金弘 潤一郎、大石 直子、澤井 秀俊、北村 尚子
(写真:Javier Pierini/Getty Images)
これまで3回にわたり、企業の飛躍的な生産性向上を実現する手法として広まりつつあるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とはどういうものなのかを解説してきた。今回はRPA時代を迎えるにあたり、人の働き方や求められる人材はどのように変わるのか、あるいはどのような準備が必要なのかという視点で深掘りしていきたい。
RPAが人間の仕事を奪って、人間の仕事が無くなってしまうというのは誤解であると第2回に述べた。RPAが働き方をどのように変えるかを考える前提として、今後予想される日本の就労人口の構造変化とその影響について押さえておきたい。
(作成:アビームコンサルティング)
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2016年4月に経済産業省が発表した「新産業構造ビジョン 中間整理」では、2015年現在の日本の就労人口6334万人が、2030年には5599万人と735万人も減少すると予測している(現在の性・年齢階級別の労働力率が将来も変わらないとする労働参加現状放置シナリオの場合)。
一方で、今後の第4次産業革命をリードすることで日本経済の成長を促し、国内総生産(GDP)を532兆円から846兆円へと約1.6倍増大させるビジョンを掲げている。
これを実現するためには、就労人口1人あたりGDPを2倍近く引き上げなければならない。そのためには、人は今とは異なる、付加価値の高い働き方にシフトする必要がある。その解決の1つがロボット化の導入だ。
日本経済は潜在成長率の天井にぶつかり、企業はビジネスチャンスはあるのに実現する人が居ないという事態に陥りかねない。ロボット化を進めないと人が足りない時代がやってくるのだ。
RPA時代に求められる人材とは
RPAの活用が進んだとき、ホワイトカラー業務はどの様な姿になっていくだろうか。ロボットが得意な定型的な業務や、非定型で専門的な業務もロボットが代替するようになるとき、ロボット活用を前提とした新たな役割分担が進むと予想される。
まず、現在は比較的定型的な業務を行っている人の多くは、商品企画、顧客と接する提案型の営業といった人間ならではの知恵・感性やコミュニケーションが必須となる役割にシフトせざるを得ない。
商品ライフサイクルの短期化が指摘されるようになって久しい。これは個人にも置き換えられる。自分に合った新しい価値を求めるユーザー欲求は飽和することがなく、今後も加速するだろう。作業レベルの仕事はロボットが担ってくれるようになる反面、人間の感性や知恵により、顧客が求める新しい価値を継続的に生み出すことが企業継続の必須要件になる。この領域で活躍する「クリエイティブな事業推進者」の役割を担う人が増加するのではないだろうか。
一方、企業内の各種機能(経理・人事・総務・法務・監査・工場管理等)はどうだろう。RPAやAIの活用によって人間の仕事が「壊滅」するのかというとそうではない。RPAやAIが処理した内容や出した答えを確認し、各機能としての意思決定をするのは今後も人間だからだ。
また、環境変化を認識して新たな仕組みに変え、その手法を取り込むといった構造改革を行うのも人間の役目になる。RPA時代における各機能の専門家は、より専門性を研ぎ澄まして、ロボットやAIを部下として使いながらしなやかに会社機能の舵を取る「高度な機能スペシャリスト」へと変化する。
新たに求められるのが、RPA・AIの活用を推進する役割である。RPA・AIは全てのホワイトカラーに身近な手段へと浸透していくが、その技術自体は日々進歩し、活用度合いが競争力に直結する時代となる。それら技術の特性を幅広く理解し、最適な活用方法を横断的に進める役割=「RPA・AIによるプロセスイノベーター」だ。
(作成:アビームコンサルティング)
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現在、RPA導入を進めるある鉄道会社のプロジェクトリーダーは「どうやったらロボット化できるかを考えるうえで、業務の標準化やルール化を推し進めることができた」と打ち明ける。まさに将来のRPA・AIベースのプロセスイノベーターが誕生した瞬間と言えるだろう。
RPA導入の現場に関わっていると、この様に進取の気性を持ったRPA時代を切り開く方々に出会う反面、RPAを新たな黒船襲来のようにとらえ、遠ざけて関わらない人もいる。スタンスの違いはRPA時代の到来とともに、活躍度合いに大きな格差を生む可能性が高い。
RPA・AIが何を出来るかという最新状況を知ることを心がける。新たな役割分担に照らした自らの方向性を意識して、RPA・AI活用に積極的に関わる人材こそが今後、活躍する人材となっていくだろう。
先日、ある大手建設企業でRPA(Robotic Process Automation)導入プロジェクトの第1フェーズが完了し、プロジェクトメンバーで打ち上げをした。その宴席でのこと。ロボット化の効果は良好で、和やかな雰囲気で杯を重ねていたが、リーダーを務めた部長がふと神妙な面持ちで次のように語っていた。
「日本の多くのホワイトカラーは、自分も含めて作業を忙しくやって、仕事をした気になっている割合が多いのかもしれない。ロボット化は我々が人間として発揮すべき価値を再考する機会になる」
ロボット化で企業や組織が受けられる恩恵は、効率化だけではない。人間としての価値をさらに拡大させるための好機となるのだ。
RPA経営の浸透に向けた3つの共通項
ロボット活用を前提とした「RPA経営」の導入に向けて、先進企業はどのような手順で準備を進めているのか。各社の動きを俯瞰すると、必要な準備の共通項が見えてくる。
(1)全社戦略としてのRPA・AI活用の打ち出し
現場からのボトムアップ的なRPA検討の例もあるが、先進企業では全社方針としてRPA検討を決定し、推進している。経営層がRPAの可能性に着目し指示することで検討スピードは格段に向上することから、新たな経営課題として捉え、重点的に進める戦略として打ち出すことが望ましい。
最近、ある大手精密機械製造業の企業に訪問した際、「ロボット・AI経営への進化」という方針が大書されたポスターが社内の各所に掲げられていた。現場はこの方針を受けて具現化に向けた検討を活発化していた。この例のように、多くの企業で経営方針にロボット・AI活用が反映されようとしている。
(2)RPA活用体制の構築・人材育成の推進
RPAは今までのITと違い、現場と一体となって「ロボットの部下」として協働すべきものだ。全ての社員の身近なものとなっていく。つまり、ロボットというインフラが企業を支える時代になる。その状態を見据えたとき、ロボットの状況を横串で管理し、ロボットの効率的な使い方を伝播する機能が必要となってくる。
あるメガバンクは、RPAを生産性向上の基盤として全社活用することを決定した。単にロボット開発を進めるだけでない。質の高いロボットが生み出される運用体制や、上司が居ないロボットが発生しないような管理の仕組みを策定するなど、ロボット活用の拡大に向けた動きが活発化している。
(3)段階的拡大アプローチ
RPAという新たな手法を導入するうえでは、先進企業といえども、まずトライアル導入というステップを踏んでいる。従来の情報システム導入の様に数千万円〜数億円の投資が伴うもの比べ、数百万円レベルの投資で範囲を絞った導入を柔軟に実施可能であることもRPAの特徴だ。まずロボットと付き合ってみることでロボットとはどういう存在かを実感し、現実的な活用を拡大していく進め方は先進企業に共通する定石と言える。
このように、ホワイトカラー人材の各個人と企業レベルでの変革への準備が必要だ。両者が噛み合って積極的なRPA活用が進んだ企業が、次世代のRPA経営を実現する企業としての地位を得ていくだろう。
これまで4回にわたり、日本企業のRPA導入を支援する立場から、RPAという新たな手法がもたらす変革の持つ意義について解説してきた。今後益々日本企業のRPAへの期待は大きくなり、それに応える形でRPA技術も進化し生産性改革を支える重要な手法へと進化すると確信している。
このコラムについて
日本企業で進むRPA革命の本質
AIやIoTに続くキーワードとして、RPA(Robotic Process Automation)に注目が集まっている。顧客対応や秘書業務などの企業事務を、ロボットを使って自動化することで効率化を図るのがRPAだ。欧米の企業を中心に導入が始まり、日本でも大手金融機関や製造業での導入が進んでいる。人間はロボットとどう協働すればいいのか。RPA時代のこれからを、専門家が解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012300104/022100007
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