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パソコンやテレビなどの製造拠点だった青梅事業所(東京都青梅市)は3月、閉鎖する。最大4千人もの労働者が働いた。周辺飲食店への影響も大きい(撮影/編集部・澤田晃宏)
東芝「社外取締役」大物ぞろいも罠見抜けず…行く手に待つのは“原発アリ地獄”〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170220-00000086-sasahi-bus_all
AERA 2017年2月27日号
“虎の子”売却でも出血が止まらない東芝。米企業を買収して大やけどを負ったのだが、この悲運、どうも偶然ではなさそうだ。なぜ見抜けなかったのか。
「東芝は完璧にハメられたね」と外資系ファンドのトップは言う。昨年末になって突然公表した「数千億円規模」の米原子力事業での損失。2月14日、その額が7125億円に達するという見通しを発表した。
ところが、その日発表予定だった2016年4〜12月期の連結決算は最大1カ月延期。最終赤字4999億円、12月末の株主資本1912億円の債務超過という決算数値も一応は公表したが、「当社の責任において当社としての見通し及び見解を記述したもの」とし、さらに下方修正する可能性があることを示唆した。損失が確定できず、決算ができない異例の事態なのだ。
巨額損失の原因は原発建設・サービス会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)。米国の規制強化などで原発建設のコストが膨らむ中、電力会社やS&W、東芝の原発子会社ウェスチングハウス(WH)の間で費用をなすりつけ合う事態になっていた。そんな中、WHがS&Wを買収。それからわずか1年で巨額損失が表面化し、東芝が抱え込む羽目に陥った。
●「体制一新」を示した
東芝がWHによるS&Wの買収方針を発表したのは15年10月28日。その直前に取締役会で承認されたようだ。当時の東芝は不正会計問題に揺れ、歴代3社長らが引責辞任。9月末の臨時株主総会で新経営体制が発足したばかりで、取締役11人中7人を社外取締役にして、「体制一新」を示そうとしていた頃だ。昨年6月の綱川智社長体制でも6人の社外取締役がいるが、いずれも15年9月末に就任した人たち。それも大物ぞろいである。
まず経営者が3人。小林喜光氏は三菱ケミカルホールディングス会長で経済同友会の代表幹事を務める。もう一人は前田新造氏。資生堂の社長、会長を務めて今も相談役。池田弘一氏はアサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)の社長、会長を務めて今も相談役だ。
加えて弁護士1人と公認会計士が2人。古田佑紀氏は検察官出身で05年から12年まで最高裁判事を務めた。会計士の佐藤良二氏は監査法人トーマツでCEO(包括代表)を務めた人物。野田晃子氏は中央青山監査法人の代表社員だった会計士で、証券取引等監視委員会の委員も務めた。いずれも名だたる経営者、専門家たちである。
そんな大物たちはS&Wについて、一体どんな説明を受け、何を質し、WHによる買収を承認したのか。その年の12月に買収を完了するが、巨額の損失が発生する可能性をまったく考えずに承認していたのか。
1年後の16年12月に巨額損失の可能性を知らされると、取締役会は大騒ぎになったという。社長の綱川氏ですら12月中旬に初めて報告を受けたようだ。
WHがS&Wを買収しなければ、原発建設の遅れに伴うコスト増は発注電力側の負担になっていた、という指摘も東芝社内にある。つまり、巨額損失を抱えたS&WをわざわざWHが買収する理由とは何だったのか。
●「親会社保証」という罠
問題が東芝にとって深刻なのは、WHが抱えることになった巨額損失を、いつの間にか東芝が背負う事態となったことだ。WHを切り離して“損切り”することができないのである。
14日の発表資料の中にWHに対する「親会社保証」という資料がある。16年3月末の「偶発債務及び保証類似行為」が7934億円とあり、米原発工事に関わる「客先に対する支払保証が90%弱」を占めるとする。さらに「支払保証の概要」として「(WHの)客先への支払義務(プロジェクトを完工できなかった場合の損害賠償請求を含む)を履行できなかった場合」、東芝がWHの「親会社として、客先にこれを支払うことが要求されている」とある。
本来は東芝を立て直すために社外取締役になったはずの経営の専門家たちは、結果的に東芝を“アリ地獄”にハメる役割を担ってしまったことになる。(ジャーナリスト・磯山友幸)
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