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金融庁が置かれている中央合同庁舎第四号館(「Wikipedia」より/っ)
上場企業が戦々恐々…証取委、企業の情報開示の審査厳格化=業務の進め方や企業体質面も
http://biz-journal.jp/2017/02/post_18083.html
2017.02.21 文=山口義正/ジャーナリスト Business Journal
証券取引等監視委員会(SESC)が、上場企業の情報開示の審査を厳格化する構えだ。有価証券報告書の定性要因についての記述のうち、業績にかかわる部分に虚偽記載がないか厳格に見極め、不正があれば摘発する方針。近年、上場企業の粉飾決算やデータ偽装などが相次ぎ、その根本的な理由にさかのぼって改善を促すのが目的だ。
企業の強みや弱みにつながる要因は、主に定量要因と定性要因に分けられる。定量要因は、損益計算書や貸借対照表のように数字で表せる要因を指すのに対して、定性要因は数字には表しにくい要因を指す。経営陣の資質、弁護士や会計士との良好な関係、市場での価格支配力、参入障壁の有無、金融機関とのパイプ、優良顧客との関係など多岐にわたる。
有価証券報告書の「事業等のリスク」「対処すべき課題」「コーポレート・ガバナンスの状況等」の項目で触れられているものもあり、適切な業務の進め方や法令を軽視する企業カルチャーが潜みやすい部分でもある。何か不祥事が持ち上がるたびに、有価証券報告書に記載されている内容と、実際の業務の進め方が大きく食い違っていることもしばしばだ。
有価証券報告書だけでなく、内部統制報告書の虚偽記載を問題視する専門家も少なくない。内部統制とは、(1)業務の効率性と有効性、(2)財務報告の信頼性、(3)事業活動にかかわる法令遵守、(4)資産保全の4つを確保するための仕組み。最近では財務報告のもとになる事業活動に違法行為があったのに、内部統制報告書に「内部統制は有効である」と記されていて、のちに訂正内部統制報告書が提出された例が少なくない。
内部統制報告書は紙2枚分ほどのわずかな分量でしかないが、定性要因のかたまりのようなもの。有価証券報告書と同様に、内部統制報告書も虚偽記載があれば、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」と定められている。
■企業に緊張を求める画期的取り組み
法律上は従来でも定性要因の虚偽記載を摘発することができたが、実際には「赤字を黒字に見せかけかけた」とか「債務超過を資産超過と装った」といった数字にまつわる部分、つまり定量要因の虚偽記載がほとんど。
これまで定性要因についての虚偽記載があったとして摘発し、課徴金を勧告した例もあるが、それは市場の健全な発展を阻害する反市場勢力が株式市場から資金を不正に吸い上げるために経営を支配する“ハコ企業”に限られてきた。
しかしこうした特殊な例を除けば、名の通った一般の企業の有価証券報告書の定性要因に虚偽記載があったとして摘発された例は「聞いたことがない」(証券市場に詳しい有識者)。これが摘発されるようになれば、企業に緊張を求める画期的なことであり、有価証券報告書や内部統制報告書の定性要因に関する記述は、体裁を整えるだけの空文ではいられなくなる。
SESCの関係者は、データ偽装の発覚で経営トップが引責辞任したり、経営の根幹が揺らいだ企業の名前を挙げており、これらが定性要因の虚偽記載になる可能性を見極めようとしているようだ。
(文=山口義正/ジャーナリスト)
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