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日本は、金持ちの国なのか?
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8950
2017年2月20日 塚崎公義 (久留米大学商学部教授) WEDGE Infinity
「日本は金持ち国だから」と言われることもありますが、「日本政府は借金漬けで破産しそうだ」とも言われます。果たして日本は金持ちなのでしょうか、違うのでしょうか。今回は、この問題について考えてみましょう。
■金持ちって、どんな人?
日常会話で、「あの人は金持ちだ」という時、どんな人をイメージするでしょうか? 失業者だけれど親からの遺産で優雅に暮らしている人でしょうか? 年収3000万円の外資系金融マンだけれども、金遣いが荒くて貯金がゼロの人でしょうか? 年収400万円だけれども毎年150万円で生活し、40年間で1億円を貯めた人でしょうか?
国の場合、遺産を相続することはありませんが、たとえばアラブの産油国は石油を掘れば豊かに暮らせるので、遺産を相続した人のようなものでしょう。残念ながら、日本は天然資源に恵まれていませんので、必死に働くことになります。
■生活水準を見るには、一人当たりGDPを他国と比較
日本人(厳密には日本にいる人や企業)が働いてどれくらい稼いだのかを見るのは、GDP統計です。どれだけの財やサービスが産み出されたのか、という統計なので、日本人がどれだけ稼いだのかがわかります。産み出されたものは、大体が国内で消費されますから、これが日本人の生活水準を表すと考えても良いでしょう。輸出と輸入がありますので、作ったものをそのまま使っているわけではありませんが、輸出入が概ね同額ですから、「作ったものと同じ価値のものを使っている」と言って良いでしょう。
日本の一人当たりGDPは、かつては世界最高水準に近い水準でした。バブル崩壊後にゼロ成長が続いていた間に、多くの国に抜かれてしまいましたが、今でも世界平均と比べれば遥かに高い水準となっています。「日本は先進国だから豊かに暮らしている」ということは今でも変わりありません。
ちなみに、GDPを他国と比較する際に気をつけるべきことは、一人当たりで比べるということです。中国のGDPは日本より大きいですが、人口が遥かに多いので、一人当たりで比べれば日本の方が遥かに豊かに暮らしていることがわかります。
今ひとつ、為替レートの影響も考慮する必要があります。為替レートが割高な国は、日本と同じ生活水準でもGDPが大きくなります。その分物価も高いので、実体としては豊かではないのですが、統計を見ると豊かに暮らしているように見えるので、注意が必要です。反対に、途上国は一般に為替レートが割安なことが多いので、途上国の人が「1日1ドルで暮らしている」と聞いても、驚くことはありません。そうした国では、物価も安いからです。単純化すれば、「1人が1日1ドルで暮らしているということは、人を1人雇うのに1ドル払えば良いのだから、物が安く作れるはずだ」ということになるわけです。
国連などでは、こうした為替レートの問題を緩和するため、「各国の物価水準が等しくなるための為替レート」を発表し、これを用いて各国の生活水準を比較しています。それによると、既に中国のGDPは米国を抜いています。もっとも、中国の方が米国よりも遥かに人口が多いので、一人当たりGDPでは中国の方が圧倒的に少ないわけで、中国人が米国人より豊かに暮らしているということでは決してありませんが。
■貯金があるか否かを示す「対外純資産」は日本が世界一
「家計に貯金があるか否か」と似た概念としては、対外純資産が挙げられます。毎年の経常収支黒字が海外への貸出として積み上がって来たことから、日本は対外純資産が世界一の大きさになっています。
その意味では、日本は世界一の金持ちだと言えないことはありません。勤勉に働いて倹約に勤めて来た結果、貯金が貯まった、というわけですから、他人から羨ましく思われたり妬まれたりする筋のものではありません。
「そんなにガツガツ働いて、楽しいことも我慢して、金だけ貯めて、人生楽しいか?」と聞かれてどう答えるかは、人それぞれですが、海外からそう見られている可能性は高いかも知れませんね。
余談ですが、米国は日本より一人あたりGDPが大きいので、日本人より「稼いでいる」わけですが、それでは飽き足らずに日本などから巨額の借金をして優雅に暮らしています。米国が破産するとは誰も思っていませんから、皆が安心して金を貸していますが、実は米国は超借金漬けなのです。
■日本政府は赤字で巨額の借金があるが……
日本政府は、赤字です。巨額の借金を抱えて、将来は破産するかも知れないと心配している人が大勢います。それと「日本人は金持ちだ」ということと、どういう関係にあるのでしょうか。それは、日本の民間部門が金持ちで、政府に金を貸していて、余った分を海外に貸している、ということなのです。
「我々が毎年、給料の中から貯金をして老後に備えている。その貯金が銀行から政府に貸し出されているが、銀行に集まる貯金は政府が借りたい額よりも多いので、銀行が海外の銀行や政府に余った分の金を貸している」といったイメージです。
銀行が毎年海外に貸しているので、海外に対する貸出残高が積み上がっています。これが上記の対外純資産です。銀行が政府に毎年貸している金額が政府の財政赤字で、毎年の貸出額が積み上がった金額が政府の借金総額となります。
イメージは以上なのですが、正確に言えば、少し違います。現役世代の家計は老後に備えて貯金をしていますが、高齢者世帯は貯金を取り崩して生活しているので、家計部門全体としては、毎年貯金が増えているというわけではありません。一方で、企業は、利益が出ても設備投資をせずに銀行への借金返済を優先しているので、銀行には企業から戻って来た金が貯まっています。それを政府に貸したり外国に貸したりしているわけです。
日本企業が、もっと積極的に設備投資をして、新しい工場などを建ててくれれば、日本経済が元気になるのに、残念なことです。一方で、日本企業が設備投資を頑張ると、銀行に返す金がなくなり、銀行が海外に貸す金がなくなりますが、そんなことよりも日本経済が元気になってくれることの方が重要です。その意味では、対外純資産が大きいということは、あまり喜べることではなさそうですね。
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