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IoTが変える半導体市況
(上) 価格下落で新たな需要
家電や車向け急拡大
あらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器が半導体の価格下落を契機に普及が進んでいる。技術を持つ人材や中古製造装置の引き合いも増え、周辺ビジネスを含めた半導体市況が変貌しつつある。
昨年秋に千葉市で開催された国内最大の家電見本市「CEATEC JAPAN」。利用者が「ニンジン3本入れて、タマゴ2個使う」などと食材の名前や出入庫数を声で伝えると、食べ時や献立を知らせる冷蔵庫が来場者の話題を集めた。
新技術活用進む
シャープが発売したこの冷蔵庫は保存する食材データをネット経由でやり取りし、利用者への助言に役立てる。東京都内の家電量販店の実勢価格は30万円前後で、収納量が同様の新モデル並みの価格になっている。
IoTを活用した家電や自動車向けの技術が国内外の展示会で相次いで披露され、この1〜2年で実用化は急速に進んだ。背景には日本や韓国を中心とした半導体メーカーの供給増と、パソコン向けを中心とした需要縮小による半導体部品の価格下落がある。
データ保存に必要なDRAMやNAND型フラッシュメモリーは16年春の直近安値で指標品はそれぞれ1個1.6ドル、2.2ドル強。中国家電メーカーなどの需要増で値下がりは一服したものの、3年間で半値以下になった。画像など認識用汎用センサーも年1〜2割程度下落している。
部品の値下がりで新製品の開発にも弾みが付いている。米半導体大手の日本法人で、アナログ集積回路を製造・販売するアナログ・デバイセズ(東京・港)は、食材の成分を手軽に分析できる機器をこのほど発売した。機器を食材に当てると、専用ソフトを通じてスマートフォン(スマホ)の画面にたんぱく質や脂質の含有量を表示する。価格は1個250〜300ドルに抑えた。「電子部品価格が安くなったため、実用化できた」(同社)という。
膨らむ国内市場
野村総合研究所は国内IoT市場が15年の5200億円から、20年には1兆9400億円、22年には3兆2000億円に拡大すると予測。世界的に拡大基調が続きそうだ。メモリー大手で、次世代品の開発投資を加速する東芝の成毛康雄副社長は「データ量の爆発的な増加に期待する」と力を込める。米IT(情報技術)企業のシスコシステムズは、世界のデータ量が20年には15年の7倍弱に拡大するとみる。
今後は需要の拡大局面入りに伴って、市況が本格的な上昇に転じるとの見方も出ている。半導体を搭載するシリコンウエハーでは需要増を背景に、国内大手は11年ぶりの本格値上げに踏み切った。メーカーからは「(付加価値を高めた)しっかりしたものを作る必要がある」(信越化学工業の轟正彦常務)。
かつて、半導体産業は過剰投資後の需要縮小から採算悪化に陥る悪循環を経験した。IoTが与える影響は多様な分野に及ぶ。市場投入後に一定期間が経過すると大きく下落する、半導体市況のこれまでの価格サイクルに変化を及ぼす可能性がある。
[日経新聞2月8日朝刊P.22]
(下) 中古の製造装置 争奪戦 技術者採用も急ピッチ
「中古の半導体製造装置は取り合いだ」。三井住友ファイナンス&リースの高田賢治・電子デバイス設備部長は驚きを隠さない。同社が扱う中古製造装置の相場は2008年のリーマン・ショック後の安値と比べ、2〜3割ほど上昇している。
あらゆるものがネットにつながるIoTの普及は半導体の周辺市場に波及している。製造装置の不足でリース会社やメーカーが売りに出す中古品に引き合いが殺到する。
新品並み価格も
日本半導体製造装置協会(SEAJ)がまとめた日本製半導体製造装置のBBレシオ(3カ月移動平均の受注額を同・販売額で割った値、速報値)は、16年12月に1.31。1を上回ると需要が供給よりも多いことを示す。15年12月以降、おおむね需要が供給を上回る。
電子部品各社は初期費用を抑えるため、高価な装置をリース契約で調達することが多い。リース会社が契約の終わった装置を中古市場に売り出すと、国内外のメーカーがただちに買い付ける。三菱UFJリースが扱う、ある半導体ウエハー切断装置の中古品は5年落ちで約1100万円と新品並みの価格だ。
IoT対応機器は安価な旧世代部品を使う場合が多い。中古市場では旧世代にあたる直径200ミリウエハー対応装置の流通が中心。ウエハー製造大手、SUMCOの橋本真幸会長は「IoTや自動車向けで200ミリを利用する裾野が広がった」と指摘する。
アジア各国の積極投資も追い風だ。国主導で半導体投資を進める中国の需要は「間違いなく増えている」(高田氏)。製造装置大手のディスコは自社製の中古装置の売り上げが、東南アジアの半導体受託製造会社(ファウンドリー)の引き合い増で、16年は前年比5倍の6億円に伸びた。
平均年収2%増
技術者の転職市場も争奪戦の様相を帯び、電子部品や製造装置の増産を担う人材採用が急ピッチで進む。リクルートワークス研究所(東京・中央)の調査によると、半導体や電子部品の分野で、17年度に中途採用が「増える」と回答した企業は16.7%。前年度から6.5ポイント増え、全製造業で最高となった。
リーマン・ショック後に中途採用を絞り続けていた反動に加え、市況好調による人手不足が重なった。「大手に負けないよう、給与制度を見直す中堅メーカーが増えている」(エン・ジャパン人材紹介事業部の松本雅裕氏)。インテリジェンスが調べた電子・電気部品・半導体メーカーの平均年収は16年、前年と比べ2.0%増えた。
かつて半導体分野で世界を席巻した日本には多くの技術者と製造装置の蓄積がある。IoT時代に「日の丸半導体」の遺産をいかに活用していくかが問われている。
高野壮一、龍元秀明が担当しました。
[日経新聞2月9日朝刊P.22]
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