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新国立競技場建設状況(「Wikipedia」より/江戸村のとくぞう)
「危険なゼネコン」大成建設…建築物で「あり得ない」大事故続出、新国立競技場への懸念
http://biz-journal.jp/2017/02/post_18016.html
2017.02.14 文=明石昇二郎/ジャーナリスト Business Journal
日本の土木建築技術が危うい。恐ろしいほど雑なのである。
1月20日夜、福井県高浜町にある関西電力高浜原発の構内で、長さ約113メートルの工事用大型クレーン1台が倒れ、同原発2号機の「原子炉補助建屋」と、核燃料を保管する「燃料取り扱い建屋」の屋根を、それぞれ破壊した。
事故発生を伝える当初の報道によれば、大型クレーンの倒壊時、周辺では秒速15メートルほどの風が吹いており、福井県内には暴風警報も出ていたのだという。大型クレーンの先端は、地面に置いている5トンの重りにワイヤーで固定していたというのだが、クレーンはその重りをぶち切って風下側に倒れた。なぜか。
1月22日付毎日新聞朝刊によれば、工事の元請け会社である大成建設の事前評価では、秒速42メートルまで耐えられるとしていたが、風向きについては検討していなかったのだという。一方、1月26日付福井新聞は、建機メーカーの大型クレーンマニュアルに記載されている「強風対策」が守られていなかったと報じている。
クレーンの重心は機材の後部にあり、マニュアルでは強風が予想される場合、後部が風上に向くようにして止めるよう指示。だが事故発生時は、風下側に機材の重心があったため、風の影響を受けやすかったのだという。
だが、「風向き」以前の問題もあるようだ。移動式クレーンは本来、強風時には畳んで地面に倒しておくのが基本である。やむを得ず立てたままにする場合でも、クレーンは風上側に向けておき、ワイヤーを使って双方向に地面と固定しておく必要がある。
だが、この強風対策は、長さが113メートルもある巨大クレーンには当てはまらない。つまり、畳んでおくしかない。畳んで地面に倒しておく目安は、秒速16メートル以上とされる。そして事故現場には、秒速15メートルほどの風が吹いていた――。
となれば、暴風警報が出ているなか、なぜ夜になっても巨大クレーンを立てたままにしておいたのか。原因を一言でいえば、風をナメていたからである。強風時に113メートルもの巨大クレーンを畳んでいないなど、論外なのだ。
案の定、関西電力は2月8日、「シミュレーションの結果、クレーン上空では平均風速30メートル/秒であり、最大瞬間風速は40メートル/秒を超えていた可能性がある」とする評価を公表した。
■博多駅前陥没
昨年11月8日には、福岡県福岡市のJR博多駅前で、道路が大規模に陥没する事故が発生した。現場の地下では、福岡市営地下鉄七隈線の延伸工事が行なわれていた。1月24日付朝日新聞朝刊によると、事故発生の前日から、陥没の兆候を示す数値がトンネル内部で計測されていながら、施工業者である大成建設JV(共同企業体)は、それを無視してトンネルを掘り続けていたのだという。
同地下鉄の工事では、硬い岩盤を持つ山岳などでのトンネル施工に適した「NATM(ナトム工法)」が採用されていた。だが、博多駅前周辺の地盤は砂質土。本来であれば、軟弱な地盤でも掘り進めることができる「シールド工法」(巨大な円筒形のシールドマシンを使った工法)で工事すべきところを、不向きなナトム工法で掘っていた。トンネル工事の専門家は語る。
「砂質である大都市の直下をシールド工法ではなく、ナトム工法で施工するなど論外です。博多の事故では、陥没した大量の土砂が土石泥流となって、一気にトンネルの中に流れ込んだということです。今回、地下でも地上でも人命が失われなかったのは、奇跡の中の奇跡というほかありません」
■笹子トンネル天井板崩落事故
そして、発生からすでに4年が経過した中央自動車道・笹子トンネル天井板崩落事故。この事故現場となったトンネル工事を請け負っていたのもまた、大成建設なのである。これは単なる“偶然の一致”だろうか。
笹子トンネルでは、140メートルにわたって落下したコンクリート製の天井板の上を、空気が通る構造になっていた。その天井板は、トンネルの天頂部(天端)から吊り下げられていたのだが、天端で固定していたのは、それまで使用実績のなかったケミカルアンカーボルト(接着剤で留めるタイプのボルト)だった。
国土交通省の事故調査委員会が出した報告書は、天井板が完成した1977年の時点で、すでに強度を得られていないボルトがあったと指摘。さらには、ボルトを留めていた接着剤の耐久性について、「現在まで、長期耐久性について十分な知見が得られているとは言えない」(同報告書39ページ)とまでいっている。科学的知見や工学的知見が得られていないものなら、同トンネルで9名もの犠牲者を出す大事故が起きるまで、接着剤の耐久性実験をしていたのと同じだ。
問題点はほかにもある。天井板は、その両隣の天井板と連結するかたちで設置されていた。もし連結させない構造で設計されていれば、天井板が一度に140メートルも落下することはなかった。天井板の「設計」そのものが、事故の規模を拡大させる方向に作用してしまったのである(同事故の詳細は、「週刊金曜日」(週刊金曜日/2015年12月18日号)に掲載された拙稿『中央道「笹子トンネル」事故から3年 最大の事故原因はトンネルの「設計ミス」だった』を参照)。
だが、筆者の取材に対し、大成建設は黙して語らない。博多駅前の道路陥没事故に関し、朝日新聞の取材に対しても、同社は「回答を控える」としている。
たとえ「スーパーゼネコン」といわれようが、土木の世界に「完璧な仕事」はあり得ないということなのか。ならば私たちは、大成建設がかつて手掛け、もしくは今後手掛ける建築物に用心しておくしかないのか。ちなみに物議を醸した「新国立競技場」をつくっているのもまた、大成建設のJVである。
(文=明石昇二郎/ジャーナリスト)
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