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トランプ氏の為替批判、日中「共闘」の好機か(WSJ)
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/881.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 2 月 10 日 20:26:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

        トランプ大統領の通貨安批判を受け、日中の共闘機運が高まっている PHOTO: DREW ANGERER/GETTY IMAGES


トランプ氏の為替批判、日中「共闘」の好機か
http://jp.wsj.com/articles/SB10734999991334983926204582612774105763992
2017 年 2 月 10 日 16:02 JST WSJ


 中国の習近平国家主席と日本の安倍晋三首相は突如として共通の問題に直面している。それはドナルド・トランプ米大統領が為替関連の「偽ニュース」を偏好しているという問題だ。

 例えば、トランプ氏は近年、ツイッターを通じて中国を容赦なく批判してきた。中国はここにきてツイッターではなく為替市場を通じて反撃に出ている。為替トレーダーが政府の対応を試すように、中国政府は市場を試し、投資家とトランプ政権がどの程度の人民元安なら許容できるかを調べている。

 中国がこうした微妙な実験に出たのは、皮肉からというより、かつて大規模だった外貨準備高が3兆ドルの節目を割ったという経済事情によるところが大きい。中国の外貨準備高は、元相場を管理する上で最低限必要と国際通貨基金(IMF)が指摘する水準に迫る。市場関係者らが中国の債務・信用バブルは悲惨な結果に終わると警戒する中、中国の為替政策は限界に近づいている。中国政府は現実の厳しさを何とか和らげようと外貨準備を文字通り放出している。

 これはテレビのリアリティ番組の司会者から大統領に上り詰めたトランプ氏にも同じことが言える。元安を強く求める市場原理に従えば、何年も前から元安を容認するよう中国政府に働き掛けていたIMFから歓迎されるだろう。だが、市場原理に基づく元安を容認すれば、トランプ氏のツイッターで中国政府は格好の標的となり、貿易戦争に発展する確率も高まる。問題は、中国政府が為替市場を通じて米国の労働者に対する「レイプ」や「殺人」を続けている、というトランプ氏の誤った主張だ。

 これは2007年であれば一理あったかもしれないが、2017年の現在では誠実さを欠く主張と言える。中国はいま製造業の雇用をインド、インドネシア、フィリピン、ベトナムに奪われている。円安が米国の労働者に打撃を与えているとか、企業が日本に工場を移転しているという主張は、さらに真実味に乏しい。それは2017年ではなく1987年の話だ。トランプ氏の妄想にこの事実は届いていない。

 一方、安倍首相は10日から訪米を開始し、トランプ氏と会談する予定だ。トランプ氏と習主席の首脳会談は当分実現しそうにない。安倍首相がトランプ氏と会談するのはこれで2回目だ。昨年11月7日の米大統領選でトランプ氏が勝利した10日後にトランプ・タワーを訪れた際に続くものとなる。このニューヨーク訪問は、安倍首相がどんなに成果を強調したところで、失敗だったと言えそうだ。トランプ氏の長女イバンカさんが同席する中での会談は日本の保守派の反発を買った。その会談の後、トランプ氏は安倍首相がどうしても防ぎたいと考えていたことをやってのけた。環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明したのだ。さらに、トヨタ自動車をツイッター上で「口撃」したり、日本を中国と同列に「為替操作国」呼ばわりしたりした。

 言うまでもないが、安倍首相は今回の訪米でトランプ氏を懐柔させたい考えだ。トランプ氏も、フロリダ州の別荘に安倍首相を招待しゴルフをする考えを明らかにするなど、急に愛嬌(あいきょう)を振りまき始めた。日本の政府関係者の一部はこれに大喜びした。米大統領はこれまでにも、ジョージ・W・ブッシュ氏がロシアのウラジミール・プーチン大統領をテキサス州の自分の牧場に招いたり、バラク・オバマ氏が英国のデービッド・キャメロン首相(当時)と一緒にバスケットボールの試合を観戦したりすることがあった。トランプ氏は、米国のアジアにおける主要な同盟国に対し、従来の姿勢を軟化するとほのめかすかもしれない。

 ただ、円安を強く批判しているトランプ氏のせいで交渉が決裂する恐れがある。安倍首相は今回、4500億ドル規模の市場創出と米国での70万人の雇用創出を目指す政策パッケージ「日米成長雇用イニシアチブ」を手土産に米国を訪れる見通しだ。これらの政策がそんなに簡単に実現するのであれば、安倍首相は日本で同じことをするだろう。首相はさらに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金をトランプ政権のインフラ事業(トランプ一家の事業ではないもよう)に投じると表明する可能性もある。こうした提案の実態は「日本が円安政策を続けるための保険」だと言うべきだろう。

 安倍首相にとって本当の難題は、トランプ氏の妄想に幾つかの事実を潜り込ませることだ。具体的には「日本の自動車メーカーは約150万人の米国人を雇用している。トヨタ、ホンダ、日産自動車の品質は、ひいき目に見なくてもゼネラル・モーターズ(GM)に勝る。日本は中国と違って、米企業の機密情報を盗んだり労働力を搾取したりしていない。1980年はもう終わった」ことなどだ。

 だが、米政府が通貨安競争に参加する事態に備えて、安倍首相は習主席と秘密裏に交渉を始める(まだだとしたら)ことが賢明ではなかろうか。アジア諸国が待ち焦がれていた安倍首相と習主席の首脳会談の実現に向け、トランプ・ショックというリスクを利用しない手はないだろう。言うなれば、為替政策で敵と共闘すべきということだ。

 テンプル大学ジャパンキャンパスのロバート・デュジャリック教授は米オンライン誌「ザ・ディプロマット」で、「トランプ大統領は日本と中国のどちらにとっても好ましくない可能性がある」と指摘。「最終的に(日中どちらかの)経済が若干ながらもより悪化しそうだ。だが、相手の経済規模が75%縮小したとしても、自国の経済規模が50%縮小したのであれば、習主席も安倍首相も大してうれしくないだろう。その上、どちらの経済の方がより悪化するかは習主席にも安倍首相にも分からない。そのため、『宣戦布告なき戦い』を続ける日中が外交で想像力を働かせて一種の停戦で合意するチャンスが生まれている」と述べた。

 賢明な指導者ならチャンスはどこにでもある。米政府が何か騒動を起こしても、習主席と安倍首相が「敵の敵は味方」という対応に出れば、世界で第2位と第3位の経済大国は大きな利益を得る。そうしたレガシー(遺産)の方が、何年かすれば入れ替われる米国の指導者に日本がいい顔するよりも、世界にとってはプラスとなる。トランプ氏の言動やツイートの内容、さらに現実か妄想かといったことに関わりなく、トランプ氏が大統領を退任する時点でも21世紀がアジアの時代であることに変わりはないだろう。日本と中国はそれを踏まえた振る舞いを始めるかもしれない。
 

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