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言動が物議を醸しているトランプ米大統領 (c)朝日新聞社
フジマキ氏「トランプ米大統領の“口撃”、円は危険通貨に」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170207-00000046-sasahi-bus_all
週刊朝日 2017年2月17日号
トランプ米大統領の影響を大きく受ける日本経済。“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、トランプ氏を説得できないと、円の大暴落もありうると危機感を募らせる。
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国会の議員会館のトイレに、「トイレットペーパーを盗まないでください」と貼り紙があり、驚いた。
「議員が盗むようならば、この国もおしまい」と思ったが、会館には陳情の方など議員以外も大勢出入りする。だれの仕業かわからないが、どんなところにも非常識な人はいるようだ。
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品がないとか、過激すぎるとか、トランプ米大統領の一挙一動に、日本中が大騒ぎだ。非常識な言動との批判もあるが、経済に関しては理にかなった発言も多い。「白い猫でも黒い猫でも、ネズミを捕まえる猫はよい猫」(ケ小平)との発想で、私は彼をみていた。トランプ氏のもとで、米国経済は一人勝ちするのではないかと感じていた。
しかし、1月31日の日本への「円安誘導批判」には身構えた。
2月1日付朝日新聞は「トランプ氏、金融緩和批判」の見出しの記事で、
〈他国は、通貨やマネーサプライ、通貨の切り下げを利用し、我々を出し抜いている。(中略)日本がこの数年でやってきたことをみてみろ。彼らは金融市場を利用している〉
との発言を伝えた。これを受け、急激に円高が進み、一時は昨年11月30日以来の円高ドル安水準の112.08円をつけた。
私が身構えた理由は、トランプ氏の思い通りに円高が進むと思ったからではない。当コラムで以前に書いたように、米大統領といえども口先介入だけで通貨を動かせない(円のように実力より強すぎる通貨の通貨安誘導はできると思う)。
金利を動かせば、為替も動く。トランプ氏が、異次元の量的緩和中止を本気で求めるならば、日本の緊急事態発生だ。トヨタ問題どころの騒ぎではない。
私は今まで、以下のようなシナリオを描いていた。
日米金利差の拡大で、ドル高円安が進行。消費者物価指数(CPI)の上昇率2%も実現する。すると、「公約達成だから量的緩和をやめる」と言う日銀と、「継続せよ」と言う政府とが対立する。やめると政府は資金繰りに窮するため、日銀は政府に屈して紙幣を刷り続ける。最後はハイパーインフレの到来……。
ところが、トランプ氏は「すぐにやめろ」と言いだした。政府は新発債と借換債で計約150兆円の国債を発行し、120兆円分を日銀が「異次元の緩和」と称して買っている。市場の8割をおさえる日銀が買わないと、市場は大崩れ。長期金利は暴騰する。利回り何十%もの国債を発行して予算を組めないため、財政は破綻の危機に陥る。
だから、政府は「異次元の量的緩和はデフレ脱却対策と言いながら、実は政府の資金繰り対策です。やめられません」と正直に伝え、批判取り下げを乞うしかないだろう。説得できないと資金繰り倒産の危機となるから、必死のはずだ。
安倍首相は2月1日の衆院予算委員会で「米国も我々がやった政策と同じ政策をやった」と答弁した。ただ、トランプ氏は納得しないだろう。FRB(米連邦準備制度理事会)は、資産規模がGDP(国内総生産)の24%の段階でテーパリング(量的緩和縮小)を始めた。日銀はGDPに匹敵する巨額な規模になっても、なお続けている。
トランプ氏の発言直後に円が買われたが、私は市場の反応を「のんきだなあ」と感じた。トランプ氏を説得できないと、円の大暴落もありうる。資金繰り倒産する国の通貨など、だれも欲しがらない。円は今や「危険通貨」になっている。
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