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朝から晩まで。「全力」で取り組めば、やることに際限はない(撮影/写真部・松永卓也)
アマゾンが“主婦・主夫”になる日 「家事革命」はすぐそこに〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170206-00000051-sasahi-life
AERA 2017年2月13日号
家事は生きること──だが今の日本では時に“苦役”だ。家事をやらない男、やらないことにうしろめたさを感じる女。情報化社会に長時間労働が、家事負担をメタボに膨らませる。自分たちの手元に家事を取り戻そう。まずは、いまのメタボ家事から逃げてみよう。
* * *
「Add tomato!(トマトが欲しい)」
そうつぶやいてから数時間後、あなたの手には、トマトがある。家から一歩も出ることなく。
今年1月、米ラスベガスで開催された最新家電・テクノロジーの見本市・CESでひときわ注目を集めたのが、この音声認識機能つき冷蔵庫だ。韓国の大手家電メーカー・LG電子とアマゾンが共同開発した。人間の声を認識し、その指示に従う音声アシスタント機能を開発したのは、なんとLGではなくアマゾンだ。その名も「Alexa(アレクサ)」。冷蔵庫とショッピングが直結することで、私たちは買い忘れのストレスやレジに並ぶ時間から解放されるのだ。
●お米がなくならない?
アマゾンは今、家事の現場を大きく変えようとしている。
その一つが日本では昨年12月に発売された、日用品を1クリックで注文することができる「Amazon Dash Button(アマゾン ダッシュ ボタン)」だ。あまりの斬新さのためか、2015年3月末に米国で発売された当時は「エイプリルフールか?」と騒がれたが、米ユーザーは拡大し続け、商品も200種類以上にまで増えている。
さらに「Amazon Dash Replenishment(アマゾン ダッシュ リプレニッシュメント)」に至っては、1クリックさえ必要としない。商品がなくなりかけると自動で再注文する魔法のようなクラウドサービスだ。米国ではブラザーと提携し、インクを自動発注するプリンターを販売、人気を博している。こうしたサービスが威力をより発揮するのが、消費量を忘れがちな商品だろう。日本ではアイリスオーヤマが、炊飯回数や量を検知しコメが払底する前に自動で発注する炊飯器を開発中だ。
他にも三菱レイヨン・クリンスイでは、フィルターを通った水の量をもとに、これまで分かりづらかったカートリッジの交換時期をスマートフォンのアプリに通知し、購入できる浄水器を年内に販売予定だ。
生活必需品など、消費者が購入に思い入れをあまり持たない品を「低関与商材」という。ダッシュボタンやダッシュリプレニッシュメントは、カートリッジや洗剤などの低関与商材を1クリックや自動再発注でより「無意識に」購入させる仕組みなのだ。書評サイトHONZ代表の成毛眞さんは、これらのサービスが生まれたのは当然だという。
●家事も低関与生活へ
「消費者が低関与商材を買うかどうかは広告、特にテレビCMによって決まると言われています。テレビ離れが進んだことで、マーケティングに惑わされない人が増えてきたんですよ。すると気づくんです、洗剤の種類によって洗い上がりに差なんか出ない、洗剤はわざわざ選ぶべきものじゃないって」
これは米国ではすでに起きている現象だ。テレビから日用品や消耗品のCMが減り、店舗で商品を選ぶ楽しみを見いださなくなった消費者は、家でボタンを「ポチる」。ボタンの電池が切れた後も自社製品を選んでもらうため、メーカーはアマゾンに広告を出し続けるだろう。すべてがアマゾンのプラットフォーム上で繰り広げられる「ダッシュボタン戦争」が起きるのは5年後だと成毛さんは予測する。
そしてこの消費行動の変化は、買い物だけではなく家事全体の、いやライフスタイルそのものの価値観を変えるという。
「どうでもいいや、という低関与の閾値が上がって、消耗品の買い物だけじゃなく家事全体を適当で良しとする“低関与生活”に移行していくはずです」(成毛さん)
乾燥機NGの洋服は買わない。昼食はコンビニのおにぎりやカップ麺で済まそう(低関与)、その代わりに週末のディナーはじっくり時間もお金もかけよう(高関与)、という具合だ。
●「家の中」の技術革新
そんな私たちの価値観の変化を後押しするように、アマゾンをはじめ、グーグル、マイクロソフト、フェイスブック……世界をリードする企業が競って「家の中」でイノベーションを起こそうとしている。特に注目されるのが前述した音声コマンド「アレクサ」だ。冒頭のCESでは冷蔵庫のほか、声で作動する洗濯機やテレビなどアレクサを塔載した700もの製品が発表され、家電を声で操作する時代の到来を印象づけた。音声コマンドは前出の企業をはじめ、日本でもLINE、ヤフーとソフトバンクなどが開発中だが、アマゾンが一頭地を抜くのは、アレクサを公開して企業に提供していることだ。iPhoneが他社制作のアプリによって急成長を遂げたように、アレクサには今も日々新しい機能が生まれ続けている。
アレクサの機能をシンプルな筒型デバイスに閉じ込めたのが「Amazon Echo(アマゾン エコー)」だ。寝室、リビング、玄関など部屋ごとに置いている人も多いそうだが、最も利用率が高いのがキッチンだという。食材の注文はもちろん、タイマーをセットしたり、レシピを読み上げてもらったり、手がふさがりがちな料理中もアシストしてくれる。調査によれば、最近は女性の購入者が増えており、IT機器に不慣れな50代以上にも支持されている。もはや音声アシスタント非対応家電=アマゾン非対応家電は売れなくなるとさえ言われている。
エコーは日本でも年内に発売されると噂される。しかし前出の成毛さんは、iPhoneのSiriのような音声アシスタント機能が日常になじんでいない日本で普及するのか疑問視する。
そもそも日本の家電は海外のそれとは異なる発展の仕方をしてきた。アマゾンダッシュボタン担当ディレクターのダニエル・ラウシュさんは、開発の目的を「顧客の手間や時間を省くこと」だと言い切る。確かにダッシュボタンもアレクサを搭載した家電もすべて“家事からの解放”、つまり時間の短縮や効率化を目指しているように見える。
一方、日本で愛される家電は“高クオリティー”に仕上げてくれるものだ。冷蔵庫に求めるのは音声認識機能なんかじゃなく、鮮度が落ちない野菜室や、解凍せずに食材を切れる冷凍室なのだ。炊飯器だって、コメが自動発注されるものより、土鍋でふっくら炊いたような仕上がりに惹かれるし、何より備蓄をデータで管理されるより、自分でやりくりしたいという人が多い。家電で経済発展を遂げてきた日本から、ルンバが生まれなかった一因には、こうした背景もあるだろう。
●「手放せない」日本人
「日本の消費者はかなり特徴的」
米国在住の投資家でIoTに詳しいスクラムベンチャーズ代表の宮田拓弥さんが分析するように、欧米と日本には、こうした家事文化の違いがある。
宮田さんは「将来は消耗品の補充が必要なすべてのデバイスにダッシュリプレニッシュメントが搭載されるようになる」と予測するが、日本向けには、再発注の際にいくつか選択肢を設けるなどのアレンジが必要なのでは、と見る。日本の消費者は、家事を自分の手に残しておきたいという気持ちが強いのだ。
記事中で紹介したデバイスはAI技術の賜物だ。しかし一方で、アマゾンはさらにその先まで見据えている。いま本拠地の米国で最も力を入れているといわれるのが「Amazon Home&Business Services(アマゾン ホームアンドビジネス サービス)」だ。部屋の掃除など一般的な家事代行からバスケットゴールの組み立てなど米国らしいものまで幅広いサービスがある。テクノロジーではなく、「人」の力で家事を助けるのがポイントだ。
「アマゾンが蓄積してきたビッグデータをオンラインやAIなどバーチャルではなく、リアルにも活用しているのが肝。日本的にいえばサザエさんに登場する三河屋のサブちゃんが『こんなこと困っているでしょう? あれもついでに持ってきましたよ』というイメージ。ウェブ上のレコメンド機能のようなことが現実でもできるようになるのではないでしょうか」(宮田さん)
アマゾンが見るのはテクノロジーから出発し人によるサービスを補完して、家事から永久解放される未来。だが、日本には家事に対する「高関与」文化が根強く残る。この“黒船”襲来が、私たちの家事観にどんな変化をもたらしていくのだろうか。(編集部・竹下郁子)
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