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米国の損失危機に気付かなかった東芝は、脆弱なガバナンスが再びあらわになった。Photo by Reiji Murai
東芝を再転落させた「リスク管理不在経営」のDNA
http://diamond.jp/articles/-/116785
2017年2月6日 週刊ダイヤモンド編集部
不正会計問題で一斉退陣した旧経営陣に代わり、新生東芝として船出したはずの綱川智社長ら新経営陣。原発のずさんな危機管理が露呈し、再び脆弱なガバナンスを曝け出した。
「これで債務超過を回避します」。1月27日午前に開かれた東芝取締役会で、半導体事業の分社化が粛々と決議されたが、その直後の対策会議で東芝の社外取締役は、経営陣の説明に声を荒らげた。
「そもそも、危機を招いた原発をどうするつもりなのか!」。詰め寄る社外取締役に、うつむくばかりの経営陣。社外取締役たちの底なしの不安がついに爆発した。
最大で7000億円に膨らむ損失──。米国で建設する原発4基の「コスト超過」が一気に表面化した。東芝の米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)が2015年12月31日に、米建設エンジニアリング大手CB&Iから建設子会社のCB&Iストーン&ウェブスター(S&W)を買収したのが引き金だ。
WHが巨額損失のリスクに気付いたのは、昨年10月初旬で、S&Wの工事を引き継いだ下請けの米フルアー社から、原発4基の工事費用が大幅に増えるとの通知がWHに届いたためだった。
慌てたWH側は、見積もりの分析に入ったが、この時点で東芝本社の役員には何も知らされていない。遠い米国で発生した巨額損失の火種を東京の綱川智社長が初めて認識したのは、何と2カ月以上もたった12月中旬。エネルギー部門トップのダニー・ロデリック氏からの報告に言葉を失ったが、その後に報告を受けた社外取締役も絶句した。
15年7月の不正会計問題発覚で旧経営陣が一斉退陣し、同年9月に発足した東芝の新経営陣。綱川社長、志賀重範会長を大物財界人ら社外取締役が監督する新ガバナンス体制は、全く機能していないことが露呈し、再建に向かった矢先につまずいた。
■社長は原発を「丸投げ」
S&W買収合意は15年10月で、買収を決議したのは、今の経営陣だ。綱川社長は昨年12月27日の緊急会見で「あのときは適正な資料を基にした適正な経営判断だった」と強弁したが、当時の綱川氏が、米原発のリスクを理解できていたとは考えにくい。
もともと医療畑一筋に歩んできた綱川社長は当時、旧経営陣の一斉退陣で、ヘルスケア部門の担当役員から15年9月に本社副社長に抜てきされたばかりだった。
16年6月に社長に昇格したが経歴は「傍流」。経営企画担当副社長として、自ら育てた東芝メディカルシステムズを経営再建のために売却する苦渋の決断で評価を高めたとはいえ、「消去法」的に社長に選ばれた感は否めない。
そして、その結果としてできたのが、社内に出身部門の足場がないままグループのかじ取りを担う不安定な体制だ。
就任当初のインタビューで綱川社長は、原発に素人だと認めた上で「志賀とロデリックがいるので、必ずしも私が詳細なところまで知る必要はない」と語った。縦割り意識が根強い東芝で、原子力事業は2人に「丸投げ」されて一段と聖域化していった。
志賀会長は、原子力畑を一貫して歩んだ原発の専門家だ。06年のWH買収当初から統括部門を担当し、10年からWH会長を務め、14年に東芝のエネルギー部門のトップに就任した。ロデリック氏は、志賀会長がWH会長時代の12年にWH社長に招聘され、16年6月から、川崎市に本拠を構える東芝エネルギーシステムソリューション社のトップに就いている。
両者とも、米国原発のコスト超過やS&W買収のリスクを知り得る立場にありながら、巨額損失の危機を防げなかった。
志賀会長とロデリック氏は、昨年12月の最終週に慌てて米国のWHに飛んで調査に入ったが、何の実態把握もできないまま帰国した。年明け1月5日に業界団体の賀詞交歓会で記者に囲まれた志賀会長は「(損失の可能性は)12月中ごろになって知った。10月初旬にWHに見積もりが届いた時点で全く知らされていなかった」とお粗末な実情を明かした。
ロデリック氏は、30年度までに45基の原発新設が可能と強気の発言を繰り返してきたが「原発の建設現場のコストなど実務に関心を示さない」(東芝内部)と評され、リスクをどこまで把握していたのか疑問視される。エネルギー部門の担当役員の志賀会長は、ロデリック氏の暴走を制御できず、WHのガバナンスが全く効いていなかったことがはっきりした。
また本来なら、こうした原子力事業のリスクに目を光らせていなければいけないのが、最高財務責任者(CFO)の平田政善専務だ。平田CFOは志賀会長と同時期にWHの経営に携わり、その後子会社の東芝テックに転じていたが、旧経営陣が一斉退陣したのを受けて志賀会長に突如呼び戻された。いわば志賀会長の“手下”。それでもWHの損失リスクを見逃した。
原発に素人の綱川社長を、WH人脈がぐるりと取り囲むいびつな経営体制は危機意識を欠き、原発のリスクを管理できないまま事態を悪化させたのだった。
■志賀会長残した社外取の罪
さらに言えば、傍流の綱川社長を選任し、志賀会長との「2頭体制」を作ったのは、社外取締役だ。
指名委員会委員長を務める小林喜光氏(三菱ケミカルホールディングス会長)は16年5月9日の記者会見で、志賀会長について「若干グレーだが、原子力という国策的な事業をやる上で、余人をもって替え難い」と述べ、名誉職としての会長ではなく、原子力事業を担当する執行役の役割を期待して選任したと狙いを明らかにした。
「グレー」とは、志賀会長がWH時代に、WH単体の減損の事実を隠蔽した疑いが持たれていたためだが、原子力の経験ばかりを重視して、その疑惑にはフタをした曖昧な判断が、東芝の脆弱なガバナンスを助長したのだ。
志賀会長とロデリック氏は、原子力事業の損失の責任を取って退任する方向だ。
ある経産省幹部は「綱川社長には、しっかりグリップを握ってガバナンスをきちんと構築してほしいと伝えている」とくぎを刺す。
ガバナンス不在を糾弾された旧経営陣とは決別したものの、脆弱なガバナンスという負の「DNA」はまだ断ち切れていない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 )
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