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トランプ政権の「弱いドル」政策がはらむ矛盾
国家通商会議のナバロ委員長(右)は、ドイツが「ひどく過小評価されている」ユーロを利用して米国や他のユーロ圏諸国を搾取していると非難した
By JAMES MACKINTOSH
2017 年 2 月 3 日 18:53 JST
――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
***
ドナルド・トランプ米大統領が有権者の心をつかんだ理由の一つは、その率直な物言いだ。ドルに関して言えば、米国の歴代財務長官が昔から繰り返してきた「強いドルは米国の国益にかなう」という妄言と決別するという新政権の意向は歓迎されよう。
残念ながら、発言をシンプルにするという新たな方針が逆に混乱を大きくしている。
トランプ大統領は今週、日本や中国など他の国々が通貨切り下げで競争力を得ようとしている間、米国は「ただ指をくわえて見ているだけ」だったと述べた。さらに、大統領に通商政策を助言する国家通商会議のピーター・ナバロ委員長が、ドイツは「ひどく過小評価されている」ユーロを利用して米国や他のユーロ圏諸国を搾取していると非難した。
これは米国にとって大きな方向転換と言える。なぜなら、ビル・クリントン政権のロバート・ルービン財務長官が「強いドルは米国の国益にかなう」と発言して以来、どの政権もこの見解を踏襲してきたからだ。主要通貨のバスケットに対するドルの実質価値は、米国が「強いドル」政策を維持していたとされる2002年?11年の間に、むしろ25%下落した。この政策は「#fakenews(偽ニュース)」というハッシュタグを付けた方が良さそうだ。
シンプルな言葉であればそれだけ為替市場に理解されやすい。今回は実際に一定の効果があった。トランプ大統領とナバロ委員長の発言が伝わった直後にドルは下落した。
率直な物言いには誠実な響きがある。事実による裏付けが少しでもあれば、なお良いだろう。中国が長年ドルに連動させる形で人民元を安値で維持してきたのは事実だが、中国はいま元安阻止に動いている。ドイツの場合は、製造業者が通貨安の恩恵を受けているのは確かだが、ドイツの重商主義政策がユーロ圏の近隣諸国に打撃を与えていることも事実だ。
そして、国レベルで消費から生産へのシフトを促す方法の一つが自国通貨の切り下げであることも事実だ。ナバロ委員長が英紙フィナンシャル・タイムズに対して語ったように、新政権は米国民が生活保護を受けるよりも自力で稼げるようになることを望んでいる。(新政権がドル高政策を放棄すれば)給料で買えるものは減るかもしれないが、通貨安によって単純労働者の雇用は増えるかもしれない。
シンプルな物言いを好む人には残念な話だが、通貨安を推進するというのは歴史的に矛盾がある上、トランプ大統領自身の政策とも相いれない。
まずは貿易面での重要な出来事を振り返ってみたい。中国は01年の世界貿易機関(WTO)加盟後、元相場を安値に誘導し、自国の輸出を支えていた。だがそれからの6年間で、為替操作による元安以上に、諸通貨に対するドル安が大きく進んでしまった。
全ては通貨次第というのなら、元安時に米製造業の雇用が中国に奪われた以上に、米国はドル安時により多くの製造業の雇用を他国から奪っていたはずだ。ところが、08年4月までにドルの実質実効相場が24%下落する中、米国では01年12月?08年4月の間に製造業の雇用者数が210万人減った。この雇用の落ち込みは、他に700万人の新規雇用が生まれたことで完全に相殺された。通貨が無関係というわけではないが、通貨は米製造業に影響を与えた最大の要因でもなければ、唯一の要因でもない。
次にイタリアだ。ユーロがドイツに過度な通貨安をもたらしているとすれば、同時に財政難のイタリアに過度な通貨高をもたらしている。だが、米国勢調査局の最新データによると、16年1?11月の米国のイタリアからの輸入額は同国向けの輸出額より260億ドル多かった。ドイツの貿易黒字は600億ドルと、イタリアの2倍強だった。ドイツに有利になるようなユーロ相場の不正操作は、イタリアには不利になる。それでも、イタリアの対米輸出額が米国からの輸入額を上回る状況は変わっていない。米国がドイツに対して貿易赤字を抱えている要因として、ユーロ相場はドイツの国内消費および投資の抑制ほど大きくない。
トランプ氏の経済政策も同氏の発言と矛盾している。トランプ氏が減税やインフラ投資の形で約束している、より緩和的な財政政策は(規模や速さには議論の余地があるものの)経済成長を後押しする一方でインフレ率も押し上げるだろう。経済成長率とインフレ率が上昇すれば、金利も上昇し、ひいてはドルも上昇する。
トランプ氏の通商政策もドル高の要因だ。米大統領選後、トランプ氏がメキシコに対して言葉で攻撃したり、関税引き上げをちらつかせたりしていることで、メキシコペソは過去最安値を更新した。皮肉なことに、これはメキシコの輸出競争力を高めている。また、トランプ氏の言葉通りに中国からの輸入品に関税が課されたら、同国への投資が鈍り、人民元相場は下落するだろう。さらに、中国からの資金流出に拍車がかかるだろう。
最後に、米議会共和党が推し進めている法人税減税案は、輸入よりも輸出に資し、ドル高を進行させるだろう。ただトランプ氏は先月のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、この案は「複雑すぎる」と述べていたため、その行方は依然不透明だ。
投資家が混乱するのも無理はない。もしこれらが全て、ドル相場を誘導するホワイトハウスの戦略の一環だとしたら、トランプ氏の政策がはっきりするまでの命だろう。自由貿易の支持者は、関税に関する脅しや言葉による攻撃が、中国やメキシコ、ドイツに米国製品をもっと買わせるための交渉戦略の一環にすぎないことを願っている。同様に、政治経験がほとんどない新政権の混乱ぶりを示しているだけかもしれない。いずれにしろ、ドルに対する米国のアプローチは聞こえるほど単純ではない。
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トランプ米大統領の発言と政策にドルが板挟み
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トランプ米大統領への対応、再考する中国
【寄稿】トランプ氏の通商政策、真の問題は「通貨」
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjg96CXmPTRAhUDyrwKHUxQB3wQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11303642310634324165204582598933776367176&usg=AFQjCNGSPZtgYkLQpEtMQjOIhooCZpL9PQ
トランプ氏とイエレン氏、成長予想の違いが平和の鍵か
トランプ米大統領は米国経済の年間成長率を4%に回復させることができると考えている
トランプ米大統領は米国経済の年間成長率を4%に回復させることができると考えている PHOTO: MICHAEL REYNOLDS/ZUMA PRESS
By GREG IP
2017 年 2 月 3 日 17:03 JST
――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
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ドナルド・トランプ米大統領は米国経済の年間成長率を4%に回復させることができると考えているが、連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長は2%強の成長を見込んでいる。
このことは、衝突を回避する方策のように見受けられる。つまり、経済成長に飢えたトランプ氏と、インフレを警戒するFRBの関係を平和に保つのに役立つ可能性がある。なぜなら、イエレン氏はトランプ氏ではなく自分の予測に基づいて金利を設定するからだ。イエレン氏の予測が正しければ、今後、金利が大幅に上昇することはないだろう。
FRBが1日に発表した連邦公開市場委員会(FOMC)声明はこれを明確に示した。FRBは予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.50?0.75%に据え置くことを決めた。それより重要なのは、追加利上げを急いでいることを示すような手掛かりを与えなかったことだ。FRB当局者らは昨年12月、今年は3回利上げすることを示唆したが、回数を増やすことを考えている様子は見られない。
FRB当局者らが当時示した2017年の経済成長率予想の中央値は2.1%だった。1日のFOMC声明では、昨年11月にトランプ氏が大統領選で勝利してから、企業および消費者の信頼感が大幅に上昇していると述べていた。しかし当局者らは、実際の行動が伴うか確認したいと考えており、これらの指標を深読みしないよう気を付けている。エバーコアISIの政策アナリスト、クリシュナ・グハ氏は「今回の景気拡大局面では、何度も夜明け前のかすかな光が見られている」と指摘した。
給与計算代行サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティックスが1日発表した1月の米民間部門雇用者数は、前月比24万6000人増加した。同様に、製造業の景況感を示す最新の指標も好調だ。それでも、「トランプフレーション(トランプとインフレーションを組み合わせた造語)」への投資家の賭けはピークに達したようだ。
株式市場と債券利回りは昨年12月半ば以降、ボックス圏で推移している。また、ドルは下落している。コーナーストーン・マクロのロベルト・ペルリ氏は、市場は今年のトランプ氏の財政計画による経済成長の押し上げ効果は小さいとみていると推測する。WSJ市場担当シニアコラムニストのジェームズ・マッキントッシュは、10年物国債の利回りの動きが30年物国債と異なっていることも同様の意味を持つと見なされる可能性があると指摘している。食品とエネルギーを除いたコアインフレ率はここ数カ月、FRBの目標の2%をやや下回る水準で安定している。
今のところ、財政政策がどのように展開していくのかについて、FRB当局者の見方は固まっていない。だが、この政策による経済成長の押し上げ効果は小さいという大方の予想が正しいと分かったら、FRBが計画を変更したり、相場が下落したりする理由を見いだしにくくなる。債券利回りはすでに、利上げを段階的に進めるFRBの計画を織り込んでいる。
他の最近の大統領と違い、トランプ氏は政治から独立したFRBについて、おそらく平気で意見を述べている。4%という経済成長率を実現できなかった場合、トランプ氏はイエレン氏のせいにするかもしれない。だがイエレン氏が、今考えている通りに冷淡に金融引き締めを行えば、トランプ氏をカッとさせるような経済や市場の混乱は起きにくい。
もし失業率が急低下し、経済成長が加速し始めたらどうなるだろう。言うまでもなく、FRBは引き締めペースを速めるだろう。だがトランプ氏は、好景気と株価上昇を自分の手柄にするのに忙しくて、わざわざ不満を言うことはないかもしれない。
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近年、FRBに対する政治的な逆風が強まっており、イエレン議長はそうした難題への対処に悪戦苦闘している PHOTO: GETTY IMAGES
By
KATE DAVIDSON
2017 年 2 月 3 日 15:20 JST
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は昨年、上院がFRBの政策判断への監査を求める法案の採決を控える中、議会に電話を掛けた。
議長の公務記録によると、議長はそれからの2日間で5人の共和党議員と話した。その中には、議長が就任後に1度も個別に面会したことがない議員もいた。この電話について詳しい関係者によると、議長はそれまでに何度も口にしていたセリフを繰り返し、「この法案はFRBの政策に政治家が介入することを許すものだ。中央銀行の独立性が守られている国はインフレ率が相対的に低いとの研究結果がある。FRBは既に監査対象となっている」と議員らに伝えた。
イエレン議長は共和党議員を説得することはできなかった。上院は同法案を否決し、FRBは一息つくことが出来たが、共和党議員54人のうち反対票を投じたのは1人だけだった。
近年、FRBに対する政治的な逆風が強まっており、イエレン議長はそうした難題への対処に悪戦苦闘している。
FRBはかつて米経済を支える陰の立役者と称賛されたが、今では政治の厳しい監視にさらされている。FRBに対する目がこれほど厳しくなったのは、ポール・ボルカー氏が議長を務めていた1980年代以来のことだ。
イエレン議長は政治家ではない。FRBや学界での経歴がキャリアの大半を占めるマクロ経済学者だ。しかし、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任したことで、今後はこれまでと違う技能を用いて課題を克服していく必要がありそうだ。トランプ氏は選挙期間中に痛烈な批判を浴びせることで、イエレン議長とFRBを国政という舞台に引っ張り上げた。そのトランプ氏が当選したことで、FRBの政策運営を制限する共和党法案が制定されるとの見方が強まった。
トランプ大統領は、イエレン議長の任期が満了する2018年2月には後任として別の人物を指名する考えも示している。つまり、夏の終わり頃までに次期議長を指名し、イエレン議長をレームダック(死に体)化に追い込む可能性がある。
金融危機以降はFRBの監視強化を求める法案の提出が「定番化」している。これにはオバマ政権が反対していたため、こうした法案が成立する見込みはほとんどなかった。いまやこうした後ろ盾は失われた。
そのため、イエレン議長は共和党主導の議会で「同盟」を作ろうとしてきた。だが、議長と特に親しい関係にあるのは民主党議員らだ。その筆頭がエリザベス・ウォーレン上院議員(民主、マサチューセッツ州)で、同議員は議長との会談回数がどの議員よりも多い。
FRBに対する改革措置を提案してきたビル・ハイゼンガ下院議員(共和、ミシガン州)はFRB関連の法案について、「われわれが本気であるのは今も昔も変わらない」と述べた。同議員は下院金融政策小委員会の委員長を務めていた。
共和党がFRBに求めているのは、ルールに基づく金融政策運営、緊急融資権限の制限、地区連銀への加盟銀行からの出資金のうち数十億ドルの返還などだ。こうした動きは米国以外でも顕著で、日本銀行や英イングランド銀行なども中央銀行の景気浮揚策に対する懐疑論への対応に苦慮している。
縦軸:FRBの政策金利、横軸上:米国の歴代大統領の在任期間、横軸下:FRBの歴代議長の在任期間
https://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BZ962_YELLEN_16U_20170201112108.jpg
イエレン議長はこうしたFRB改革に反対しており、それが実現すれば、労働市場の活性化を促しインフレを低位安定させるという職務の遂行に支障が出ると主張している。FRBとその支持派は、中銀当局は金融危機が迫っている兆候を見逃したものの、その後の対応によって不況がさらに深刻化するのを防ぐことができた、と考えている。
中銀は政治的な圧力から独立していなければならない、と中銀当局は長年主張してきた。こうした独立性があるからこそ、長い目で見れば経済に最適と考える不人気政策(利上げなど)を実行することができる、との理屈だ。
ところが、金融危機によってFRBの信頼は失墜した。その結果、多くの議員やエコノミストがFRBの政策運営や将来の政策見通しについてより多くの情報を求めるようになった。
下院金融サービス委員会のヘンサーリング委員長(共和、テキサス州)は共和党の法案について、「FRBが近年実施したその場しのぎの政策よりも強固な経済成長の基盤」となると語った。
トランプ大統領はそうした措置を支持するか明言していないが、選挙期間中の発言(イエレン議長が低金利政策を続けることで民主党を支えた、など)を踏まえると、FRB指導部とその政策を批判することなど少しもためらわないものと思われる。大統領はそうした問題に口出ししない、という最近の慣例が崩れることになりそうだ。
米独立地方銀行協会のカムデン・ファイン会長は「FRBが窮地に立たされているのは間違いない」と述べた。
連邦議会議員と定期的に朝食を共にしていた元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏はワシントンに広い人脈があった。後任のベン・バーナンキ前FRB議長は学界出身だったが、金融危機の際に民主・共和双方の議員と信頼関係を築いた。同氏は後日、こうした関係を築いていたおかげでFRBから銀行監督権限を奪う法案の成立を回避できた。
イエレン議長は、ビル・クリントン政権下の1997年〜99年に経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたが、任期中に多くの時間を費やして向き合っていたのは、金利と経済の関係だった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がイエレン議長の公務記録(2015年11月〜最新記録の16 年11月まで)を分析した結果、議長はこの1年、味方になってくれそうな議員への働き掛けを拡大し、議会からの支持拡大に努めてきたことが明らかになった。もっとも、その成果はまちまちだ。
議長は15年11月以降、連邦議会議員とFRB内や議会内で数十回会談したほか、電話での会談も十数回行った。
議長は、議会公聴会や記者会見といった公式行事に臨む場合、周到な準備をしておくことで知られる。非公開会合でもそれは変わらないと、会合出席者は述べている。その最大の目的は、FRBの政策と任務について議員を「教育」することにある。
また、議員の意見に耳を傾ける姿勢を示す狙いもあった。議員とお互いの家族の話をしたりすることもあったという。
昨年11月17日に開かれた上下両院合同経済委員会の公聴会では、自身最後の公聴会となったダン・コーツ委員長(共和、インディアナ州)がイエレン議長に対し、「あなたと一緒に仕事ができて楽しかった」と述べる場面があった。コーツ氏は現在、トランプ大統領から国家情報長官に指名されている。
一方、イエレン議長との会合の出席者によると、議長は準備していた話題から話がそれるのを嫌がることもあった。共和党からは、「イエレン議長が共和党議員よりもオバマ政権の高官や民主党議員とよく会合を開いている」とか、「FRBとその職員は議会対策に無関心」といった批判が出ている。
上院銀行委員会のメンバーであるティム・スコット上院議員(共和、サウスカロライナ州)は、昨年3月3日にイエレン議長と昼食を共にした。「議長はいい人だが、向こうから接触してきたことはない」と述べた。
イエレン議長は議会証言で、民主・共和両党の議員との会合を申し出ている。
ただ、ハイゼンガ議員は15年6月以降、イエレン議長に面会したことはない。ハイゼンガ議員はFRBに面会を要請すると必ず受けてくれると言うが、同議員としてはFRBから面会を求めてきて欲しいと考えている。
下院金融サービス委員会の公聴会でイエレン議長と握手するハイゼンガ議員 PHOTO:ZUMAPRESS.COM
イエレン議長の公務記録によると、議長がヘンサーリング委員長と非公開で会談したのは、昨年は1回しかない。16年1月に電話で30分話した。上院銀行委の委員長だったリチャード・シェルビー上院議員(共和、アラバマ州)とは、記録上は16年に1度も会っていないようだ。
対照的に、議長はFRBの監視を担当する民主党幹部とは15年11月〜16年11月の間に8回会っている。上院銀行委メンバーのシェロッド・ブラウン上院議員(民主、オハイオ州)と2回、下院金融サービス委メンバーのマキシン・ウォーターズ下院議員(民主、カリフォルニア州)と3回、さらにFRBの金融機関監督業務に批判的だが独立性の維持は支持するウォーレン議員と3回といった具合だ。
イエレン議長はまた、ボブ・コーカー上院議員(共和、テネシー州)と3回面会している。FRB支持を公言している数少ない共和党議員の1人で、議長の執務室に直接電話を掛け雑談する仲であることで知られる。
イエレン議長が共和党議員と非公開で会談したのは計19回だった。これに対し、民主党議員と直接ないし電話で話した回数は20回だった。議長が個別会談をもった回数は、民主党議員が16回、共和党議員が8回で、しかも民主党議員の方が会談時間は長くなることが多かった。
イエレン議長は一定の成果を上げている。FRB監査法案に関する投票後、議長は複数の共和党上院議員と面会した。同法案に賛成票を投じたジェフ・フレーク上院議員(共和、アリゾナ州)もその1人。フレーク議員は最近のインタビューで、この法案に対する考えを改めつつあると語った。
「この法案を支持してきたが、いま(FRBの独立性低下が心配されるなど)行き過ぎを懸念しているのは確かだ」と述べた。
現状をもっとよく言い表している出来事がある。議会が連邦政府によるハイウエー整備事業の財源の一部をFRBに負担させるか検討していた際、イエレン議長は危険な前例になると警告した。ところが、議会は当初案よりも多くの資金(FRBの資本勘定からの193億ドルなど)をFRBから徴収することを決めた。
調査会社コーナーストーン・マクロの政策アナリスト、アンディー・ラペリエール氏は「FRBは避雷針(身代わり)の様相を強めている」と述べた。
イエレン議長の公務記録からうかがえるのは、議長がこの1年に戦略性を強めたということだ。
議長は議員に面会するため議会まで足を運ぶことが多くなった。ミッチ・マコネル上院多数党院内総務(共和、ケンタッキー州)、ポール・ライアン下院議長(共和、ウィスコンシン州)、チャールズ・シューマー上院少数党院内総務(民主、ニューヨーク州)といった議会指導部との会談も増やすようにした。
さらに、下院のFRB改革に向けた動きに対してブレーキ役となっている上院の議員らと会合する機会も増やした。
イエレン議長が議員らの説得に成功すれば、新たなFRB改革法案が議会を通過する事態は避けられるだろう。法案の多くが審議入りするには上院で60票の賛成票を得る必要がある。現在、共和党の上院議席数は52議席と、改選前の54議席から2議席減った。
元FRB副議長のドナルド・コーン氏は「FRBが抱える問題の一つは、(中略)一般の人々にFRBの政策が自分たちの利益にもなるということを分かってもらうことだ」とし、「イエレン議長はそうした取り組みを続ける必要がある」と述べた。
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