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コラム:日米中銀悩ますシムズ案とトランプ政策
永井靖敏大和証券 チーフエコノミスト
[東京 2日] - 今週実施された日米の金融政策決定会合は、どちらも現状維持が確実視されていた。日銀は2016年9月に「新たな枠組み」を導入してからまだ半年も経っておらず、米連邦公開市場委員会(FOMC)は前回利上げを行ったばかりだったためだ。
市場の関心は政策判断ではなく、日銀についてはイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の運営方針に加え、現状打開策としての「物価水準の財政理論(FTPL)」適用の可否、米連邦準備理事会(FRB)については次のステップとしての保有資産の償還金再投資停止に移っているようだ。
<FTPLは偽薬ではなく毒薬になり得る>
2016年9月に導入した「新しい枠組み」により、日銀の金融政策は、新たなステージに入ったが、依然として効果は確認できない。市場の注目は、長期金利操作目標の許容変動幅、量のめどの許容かい離額に集まっている。
将来の出口のパスや、日銀のバランスシート拡大により生じる問題についても、「今、議論するのは時期尚早」と黒田東彦日銀総裁は回答を避け続けている。市場との対話拒否が、現行の政策運営に対する不信感の高まりにもつながっているようだ。
こうしたなか、打開策としてFTPLに注目する向きもある。FTPL自体は、1990年代から議論されているが、2016年夏のジャクソンホール会議(米カンザスシティー地区連銀主催のシンポジウム)で、ノーベル経済賞を受賞したクリストファー・シムズ・米プリンストン大学教授が講演を行い、その後、浜田宏一内閣官房参与が「目から鱗(うろこ)が落ちた」と絶賛したことで、改めてスポットライトを浴びている。
今回の金融政策会合後の会見でも、記者から、これまで金融政策でデフレ脱却できると主張していた浜田参与が、金融政策だけではデフレから脱却できないため財政拡大が必要と宗旨替えした点に関する質問が出た。黒田総裁は、「浜田先生にお聞きいただくのがよい」とした上で、金融政策が有効である点、バランスの取れた政策運営が重要な点を指摘している。
金融政策の有効性については議論の余地はあるが、バランスの取れた政策運営は極めて重要なポイントであると今更ながら筆者は考えている。すなわち、量的緩和は、長期金利の水準引き下げを通じて、経済・物価を押し上げる効果はあっても、量を増やすことによる直接的な物価押し上げ効果はないと考える。
「総括的な検証」も、量による物価押し上げ効果は定量的に示していない。積極的な金融緩和姿勢を示すことで期待の抜本的な転換を狙うという意味で、プラセボ(偽薬)効果はあったかもしれないが、効果が少ない分、副作用も市場機能の低下など一部に限られた。
これに対して、FTPLはポイズン(毒薬)になり得るため、メリットとの比較考量を十分行う必要がある。すなわち、財政赤字の拡大は、短期的には景気を押し上げるが、中長期的には、将来の増税不安の高まりが景気下押し要因になること、世代間不平等につながること、不適切な資源配分につながりやすいことなどの明確なデメリットがある。
将来の増税不安の高まりについては、政府の財政健全化目標をコントロールすることで解消できるという考え方もあるが、すでに国民は、財政健全化目標を信じていないと思われる。その意味で、FTPLに基づいた政策運営が明示的ではないが実質的には実施されていると考えると、導入するメリットについても懐疑的にならざるを得ない。
確かにシムズ教授は、「FTPLを根拠に物価が2%に上昇するまで、消費税増税を延期するというルールを作り、このルールを国民に信じ込ませる」という案を紹介している。ただ、筆者は、シムズ教授から直接話を聞く機会を得たが、教授自身、自分は日本の財政政策の専門家ではないと言及した点が印象に残った。
つまり、シムズ教授の案は、経済理論に基づいたアイデアであって、政策提言を行う意図はなかったように感じた。FTPLは理論としては興味深いが、理論の世界にとどめるべき話と筆者は考えている。
<再投資停止論の背景にトランプ政策の不透明性>
FOMCについては、12月の議事録で、償還金再投資停止が利上げのパスに影響を与える可能性が議論されたことが明らかになった。また、その後も多くのFRB高官が、再投資停止の是非に関する発言をしていることから、今回のFOMCでもこれに関する議論が行われたと考えられる。
FOMC声明文では、関連部分に関する表記に変更はなかったが、記者会見のない今会合で変更すると、市場の憶測を招く恐れがあるため、当然の対応と言えよう。
イエレンFRB議長は、再投資停止などで最終的にバランスシートを圧縮するアプローチを取れば、10年債利回りが0.15%上昇するとした分析を紹介している。分析通りなら、急きょ再投資停止を発表すると、市場の混乱を招く恐れがあるため、緩やかに織り込ませる必要がある。議論の概要は、15日に予定されているイエレン議長の定例議会証言や22日に発表される議事録で徐々に明らかになりそうだ。
停止時期については、「正常化」がキーワードになる。声明文では、再投資を「フェデラルファンド(FF)レートの水準が十分に正常化されるまで」維持するとしている。FOMC参加者の長期的なFFレートの適正値を正常化と捉えると、3%程度になるが、すでに停止に関する議論が行われている。利下げ余地が必要という「のりしろ」論もあり、早急な再投資停止は考え難いが、FOMCメンバーの目線は、意外と低い可能性がある。
筆者は、FFレート1%程度が正常化の目安と考えている。根拠は、銀行の預金に上昇余地が生まれることだ。すでにFRBは利上げを2回行ったが、米銀が預金金利を引き上げる動きは出ていない。日本の銀行と同様、預金金利の下限制約により、これまで預金金利を、収益を無視した水準に設定していたためで、引き上げに至るまでには、ある程度の金利上昇が必要だ。
複数の米銀が、FFレートが1%程度まで上昇すれば、預金金利を引き上げるとコメントしている。預金金利が引き上げ可能な状況になれば、銀行の金融仲介機能も正常化したと言えそうだ。
最近、再投資停止の議論が活発化している背景には、トランプ政権の動向が読めないこともありそうだ。現在、FFレートの誘導水準引き上げは、銀行に対する付利引き上げにより行われている。このため、利上げはFRBから銀行に対する資金供与の増加を意味する。
本来、FRBのバランスシートの正常化は、経済・物価・市場動向をにらみ、総合的に判断すべきだが、FRBとしても、一部のコスト負担増加に焦点が当たり、無用な批判を受けることは避けたいと考えているのではないか。今後、再投資停止論が、米債券相場の重しになる恐れがありそうだ。
*永井靖敏氏は、大和証券金融市場調査部のチーフエコノミスト。山一証券経済研究所、日本経済研究センター、大和総研、財務省で経済、市場動向を分析。1986年東京大学教養学部卒。2012年10月より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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入国禁止令の次は?身構える米経営者たち
不透明感が強まる中、企業は勤務地や採用方法のあり方を見直し
ロサンゼルス国際空港でトランプ氏の入国禁止令に抗議する人たち
ロサンゼルス国際空港でトランプ氏の入国禁止令に抗議する人たち PHOTO: REUTERS
By RACHEL FEINTZEIG AND ROBERT MCMILLAN
2017 年 2 月 2 日 16:59 JST
ドナルド・トランプ米大統領が一部外国人の入国を禁止したことを受け、多くの米企業経営者が海外事業や出張業務のあり方など再考し始めている。
大統領令は、イスラム圏7カ国の出身者が米国に入国することを90日間禁止。これを受け、企業側は自社の従業員にどのような影響が生じるのか確認作業を進める。アルファベット傘下のグーグルでは海外に滞在するある従業員を緊急帰国させ、禁止令の影響を受ける可能性がある約200人に関しては移動を制限したと関係者は明かす。
製薬会社のスパーク・セラピューティクスも一部従業員に対し、今週欧州で開かれる業界の会議について欠席を検討するよう指示。大統領令はイラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの中東・アフリカ7カ国の市民が対象だが、アマゾン・ドット・コムはこれら国の出身者を米国内で49人雇用している。同社は英国を拠点に働くリビア出身の弁護士に対し、今月予定されていた訪米を中止するように指示を出している。
新たな状況の中で、企業経営者側は対応を急ぐ。経営者の多くは、米国で行う予定であった外国出身者との面接や研修を中止することも検討。アマゾンなどはこれら国々の出身者を雇用する場合、米国外の拠点で業務を遂行できるよう準備をしているという。
入国禁止令は寝耳に水
大統領令はテロリストが米国に入国するのを阻止するためのものだとトランプ氏は説明するが、世界各地で事業を展開する企業側とすれば、急な海外出張でも従業員が対応できるよ環境は不可欠だ。その中で、入国禁止令は寝耳に水だった。
企業側は、入国禁止令に影響を受ける従業員はごく少数だとしている。しかし、ホワイトハウスの関係者は他の国も入国禁止リストに加わる可能性があるとほのめかす。外国人向けの就労ビザも規定が改正されるとのうわさもあり、雇用主にとっては不確定要素が多い状況が続く。
「米国のビジネス環境が悪化する可能性がある中で、企業側はそれに順応しようと体制を整えている」と話すのは、従業員の海外移転などを支援するムーブ・ガイズのブリン・ケネディ最高経営責任者(CEO)だ。
ケネディ氏は大統領令が署名された後、数十にも及ぶクライアントから問い合わせを受けたと話す。多国籍の従業員を雇う米企業に対しては、会議の場や事業拠点をトロントやロンドンなどに移転するよう助言をしているという。
本人確認ソフトの新興企業オンフィドでCEOを務めるフサイン・カッサイ氏は、拠点があるサンフランシスコとロンドンを行き来する生活を続ける。しかし今は英国とイランの国籍を持つため、近々予定されていたロンドンへの出張は中止することも考えていると話す。訪英後に再び入国できるかがどうかが不透明だからだ。
オンフィドのカッサイCEO
オンフィドのカッサイCEO PHOTO: ONFIDO
カッサイ氏はイラン出身のスタッフ2人についても弁護士と数日間にわたり協議をしていると話す。2人には解雇するようなことはないと説明してあるものの、今後はロンドンに転勤をする必要が出てくる可能性もある。カッサイ氏もイラン出身の同僚も政局に左右される中で生活することには慣れていると話すが、「まさか米国内でこのようなことになるとは思っていなかった」と言う。
入国禁止国追加への懸念
コーポレート・トラベル・エグゼキュティブ協会が260人の出張管理担当者に先月調査を行った結果、39%の企業が大統領令を受けて業務上の移動を制限すると答えている。また20%程度の企業は、すでに出張業務に支障が生じているとしている。
移動や入国管理に関して今後さらにルールが制定されれば、グーグルのようなハイテク企業は大きな影響を受ける。同社の従業員7万2000人のうち、約1万人は米国のビザを取得して働いていると内情に詳しい関係者は話す。
入国管理について企業クライアントに助言をするアンドリュー・グリーンフィールド弁護士は、移動の制限だけが問題ではないと指摘。海外出身者に対するスクリーニングが今後強化されれば、彼らを雇いにくくなると企業側は危惧しているという。厳しい規制が加われば、企業としても米国で働く従業員の数を減らすことを検討するだろうと同氏は話す。
実験的遺伝子治療事業を行うスパーク・セラピューティクスは、「採用予定者をフィラデルフィアの本部に招くことを中止するかもしれない」と話す。候補者が入国禁止令に含まれる国の出身者であるため、同社のジェフリー・マラッツォCEOはテレビ電話での面談を検討中だ。また入国禁止令に含まれる国が今後さらに追加される可能性があるため、欧州で行われる会議には不要な社員を参加させない予定だという。マラッツォ氏は「彼らが戻ってこれなくなるような状況は避けたい」と話す。
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ギリシャ危機の悪夢再び、債務不安で国債に投げ売り
ギリシャ国債のデフォルト懸念が高まっている。写真はギリシャのチプラス首相(左)とドイツのメルケル首相
By TASOS VOSSOS AND NEKTARIA STAMOULI
2017 年 2 月 2 日 18:05 JST
ギリシャの国債が再び投げ売りされている。今夏に満期を迎える国債を償還できないのではとの懸念が高まっているからだ。
背景には、ギリシャ政府と、ユーロ圏諸国および国際通貨基金(IMF)から成る債権団との交渉が再び暗礁に乗り上げていることがある。同政府は、7月に約60億ユーロ(約7300億円)の国債の償還期限が来る前に、こうした状況を打開し、追加支援を確保する必要がある。
問題を複雑にしているのは、来週、IMFの理事会が予定されていることと、IMFでの議決権比率が最も高い米国がトランプ政権下でどのような態度をとるか見通せないことだ。
7月に満期を迎えるギリシャ国債の一部は民間債権者が保有している。この国債の利回りは先週、6%を下回る水準で推移していたが、ここ数日でその2倍以上に跳ね上がった。デフォルト(債務不履行)に陥る可能性が極めて高いと投資家がみていることがうかがえる。2月1日にはトレードウェブでギリシャ国債のビッドレートが一時15%を超え、結局9.5%で取引を終えた。
ギリシャは7月までは追加支援を受けなくても持ちこたえられるが、その先の道筋をはっきりさせることが急務となっている。今年は3月15日のオランダ総選挙を皮切りに、欧州では選挙がめじろ押しで、欧州の政治家の目はギリシャ救済に向かなくなりかねない。
交渉が行き詰まるのはこれが初めてではない。IMFは、ギリシャが融資の形で追加支援を受けるには債務が多すぎると指摘。ドイツをはじめとするユーロ圏の債権国は大規模な債務免除を約束しようとはしない。ギリシャにはまだ予算削減の余地がある。ドイツは、IMFと一緒でなければ、ギリシャへの支援を続けない意向を示している。IMFはこれまでのところ、直近のギリシャ救済措置に加わっていない。
ギリシャの与党・急進左派連合(SYRIZA)の国会議員が1月31日に、同国のユーロ圏離脱に関する議論をタブー視すべきではないと述べたことも、地合いをさらに悪化させた。ギリシャがユーロ圏から離脱したら、ユーロ建てのギリシャ国債の保有者はほぼ確実に巨額の損失を被る。
SYRIZA政権の元閣僚は「この7年間で行われたことがないような政治的・国民的議論があってしかるべきだと思う」と述べたが、後日、ギリシャのユーロ圏残留支持を改めて表明し、態度を明確にした。
その前にドイツメディアは、ドイツ政府がギリシャのユーロ圏離脱の考えに共感を寄せていることを示唆していた。
ここにきて、再びギリシャの財政状態を巡る緊張が高まっている。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは昨年12月、ギリシャ救済措置の審査の遅れは「17年7月に満期を迎える国債が償還不能になるリスクを高める」と警告した。
ドイツ銀行は今週、投資家向けリポートで、欧州当局者らが来週開く会合で、交渉に進展が見られなかった場合、オランダ総選挙の後まで膠着(こうちゃく)状態が続くとの見方を示した。
ギリシャとその債権団は、7年に及ぶギリシャ救済で何度も期限に直面した。国債利回りは交渉の進捗(しんちょく)状況に応じて大きく上下している。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiH0Oai7_HRAhVKvbwKHYkUDHgQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11303642310634324165204582596861406800808&usg=AFQjCNFSVlHDxaoeCnVHCUL-K81Tz1eCFw
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