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韓国企業を悩ますチャイナハラスメント
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8767
2017年2月1日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
1月6日付の英フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、貿易と安全保障を絡めるのは危険であり、ミサイル防衛システム配備を止めさせるために韓国企業に圧力をかける中国を批判しています。社説の主要点は次の通りです。
先週韓国を訪問した中国外務省の陳海氏は、韓国政府が米国のミサイル防衛を配備したら中国での韓国ビジネスは以前通りには行かなくなろうと警告した。この脅しが功を奏したとしても、中国のやり方は中国の経済と地域の安定に損害を与えることになるだろう。間もなくトランプ政権が発足するが、国際経済取引の政治化は世界が決して望むことではない。
経済と政治戦略を混合することは中国にとり目新しいことではない。過去何十年と中国は世界中の途上国で台湾の国連追放等と引き換えにインフラ建設支援を行ってきた。米国も同様に同盟国には貿易上の利益を与えてきた。
しかし、海外企業を直接脅かすことによって当該外国政府に圧力をかけることは制裁と同様に重大なことだ。それがTHAADのような問題に関係すれば尚更である。中国はシステムの配備により中国の核抑止力が影響を受け、米国による対中諜報活動が可能となると主張する。しかしそれは韓国企業の活動とは何ら関係のないことだ。韓国企業は影響力を持っているが、韓国政府ではない。また、中国が追求する目的ややり方如何によっては国際貿易法に違反する可能性がある。
長年、東アジアの国々は、米国との戦略関係を維持しながら中国との貿易を拡大し、政経分離を行ってきた。それが繁栄を支えてきたが、中国が米国の勢力圏縮小のために経済を使うのであれば、アジアの繁栄は衰え、不安定な地域になるだろう。
THAAD配備を止めさせたいのなら、中国は、韓国を脅迫するのではなく、北朝鮮に影響力を行使し韓国に対する核攻撃の危険を下げ、以て韓国がTHAADを受け入れる必要がないようにすべきだ。ならず者国家の脅威が減れば東アジアは安全になり、お互いが自由に交易出来るようになる。
もし中国が引き続き経済と政治を絡めるのであれば、中国と交易する世界は難しい相手国とみなし、最も悪影響を受けるのは中国自身である。中国にとっても自国防衛は正当な懸念事項であるが、東アジアの安全確保の中で役割を果たすことによって解決すべきであり、短期的な利益のためにその時々に脅迫を使って解決を図ろうとするべきではない。
出 典:Financial Times ‘Beijing’s dangerous mix of trade and security’ (January 6, 2017)
https://www.ft.com/content/a5627b0c-d35a-11e6-9341-7393bb2e1b51
上記社説は全くの正論です。恐らく中国軍部が外交部にTHAAD配備を止めさせるよう厳命し、外交部が必死でやっているのでしょう。残念ながら国際社会のルールと作法を無視する懲りない中国を見る思いがします。そのようなやり方が最終的に中国の利益にならないとの指摘もその通りです。
■韓国の閉そく感、自信喪失感
2016年7月の米THAAD配備決定以降、中国は徐々に対韓圧力を強めています。中国は先ず韓流活動を制限し、その後年末には中国人の韓国観光渡航を制限し、韓国製品や企業を狙い撃ちしたアンチ・ダンピングやセーフガード調査などを強め、韓国企業人へのビザ発給を厳格すること等によって貿易にブレーキをかけてきています。韓国メディアはこれらの措置に対し悲鳴を上げています。韓国の世論は中国に厳しくなっています。そして、年末には、この論評が言う通り陳海中国外務省アジア局副局長が訪韓を強行し、サムソンなど韓国財界に公然と働きかけを行い、また、韓国野党関係者と会いました。このような対中関係は政治介入スキャンダルや経済の低迷と相俟って、今の韓国の閉そく感、自信喪失感になっています。最近の韓国メディアには自己批判の強い論評が多くみられます。
韓国自身が確固としていることが一番大事だと思われます。韓国の政治外交の早期の安定を期待したいです。朴槿恵が対中関係を謳歌し、数少ない外国要人の一人としてカリモフやシシ、潘基文等と共に天安門の鐘楼の上に習近平と並んで立っていたのはたった一年半前のことです。米韓関係を強固にし、対日関係も合意事項は確実に実施する等が重要です。
1月20日にトランプ新政権が発足します。中国の手法を見ると、トランプの手法と共通点があるように思われます。行動の原則は存在せず、とにかく個別事案に注目し、脅かしであろうと二者間の取り引きであろうと問題が自己の利益になるように解決すればよい、そのために力任せに動くという手法です。キャリア、フォードなど米企業は続いてメキシコ進出計画の中止に追い込まれています。1月5日にはトヨタのメキシコ工場新設についてトランプは自分のツイッターに「ありえない!高い関税を払え」と投稿したといいます。世界は今年から数年は大変荒い時代に入る可能性があります。その間、米国との緊密な関係、協議を維持しつつ、有志の国々の間で国際秩序を守り、国際機関を守っていくことが益々重要となります。日本の役割も重要です。
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