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金融関係者が注目するシムズ理論とは 安倍にも? 物価水準の財政理論 シムズの理論の内容と意味するところ
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/529.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 31 日 22:35:20: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

2017年01月31日第244回 金融関係者が注目するシムズ理論とは
【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

明日2月1日水曜日午前に都内で開催される、クリストファー・シムズ教授の講演が一部金融関係者の間で話題です。2011年にノーベル経済学賞を受賞したシムズ教授は、物価水準を決めるのは金融政策だけではなく、財政政策も必要であるという「物価水準の財政理論(FTPL)」を提唱しています。安倍内閣のブレーンである浜田内閣官房参与がシムズ教授を招聘、明日の講演でもパネルディスカッションで討論される予定となっていますが、シムズ教授が安倍首相にもお会いになるのでは?と注目されているのです。

2016年、ジョセフ・スティグリッツ教授やポール・クルーグマン教授が来日、安倍首相と会談しましたが、この後2016年8月、総額28兆円超に及ぶ経済対策が打ち出され消費税10%への引き上げの延期が決められたことが記憶に新しいですね。シムズ教授の来日は、新たな政策決定事項に係る何らかの伏線である可能性があるのでは?!と考える金融関係者がいても不思議はないでしょう。

金利がゼロ近辺まで下がると量的緩和は効かなくなってくるとの指摘がありますが、現実にゼロ金利政策下でのインフレターゲット達成は困難であり、日銀は非伝統的金融政策を打ち出し、国債やETFを購入しています。こうした異次元の量的緩和政策にも限界論が囁かれ始めた2016年1月、日銀はマイナス金利政策を導入したものの、逆に円高進行となり、金融株下落が日本株市場全般のセンチメントを悪化させてしまいました。

マイナス金利政策を導入したことで、マイナス金利を深堀り(マイナス幅を拡大)するという新たな緩和カードを切ったかに見えましたが、マーケットはマイナス金利政策で金融機関の収益が悪化しバランスシートを損ねてしまうとして、円高株安へと反応。資産上昇圧力も期待できなかったばかりか、預金者らはその言葉におびえ、銀行からキャッシュを引き出してタンスの奥深くにしまい込むという、思わぬ副作用も出てしまったのです。こうした経験則から浜田内閣官房参与は「デフレはマネタリー(貨幣的)な現象」との考えを改め、インフレが起こらないのは金融政策を「財政政策とセットで行っていないからだ」と述べていますが、要するに財政政策に踏み込むということは、増税はもってのほか、むしろ減税が必要であり財政の拡大が必要であるということになります。

政府債務が拡大すると、一般的に政府は財政赤字を減らそうと増税や緊縮に走りますが、これは金利低下を招く一因でもあります。将来、政府債務が減るとなると金利が下がりますね。(トランプ大統領は財政拡大路線であるため、金利が上昇し出したのです)金利が下がれば、資金需要が減ってデフレ的になっていきます。

ということで、金融政策のみでは物価を上昇させることはできないという理論が、シムズ教授の唱える「物価水準の財政理論(FTPL)」、金融関係者は「シムズ理論」と呼んでいます。週明け30日にはロイターの取材に応じ、アベノミクスは「2014年の消費増税がなければ、もっとうまくいっていた」と述べ、20年間続くデフレから脱却するためには「財政政策を物価目標の達成と連関付けるべきだ」とし、財政・金融政策の一体運営の重要性に言及していました。

インフレターゲット達成のために、日本もトランプ政権型の財政拡大に踏み切る可能性が?!30日時点で安倍首相と会う予定はないとしていますが、もし、安倍首相にお会いになることがあり、それがメディアで報じられることがあれば、ドル円相場は大きく動くかもしれません。足元ではトランプ大統領の保護主義に対する反発と警戒が強まっており、ドル安基調となってきていますが、シムズ教授の発言には注目しておきたい局面です。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount@hirokoFR
前の記事:第93回 「残業規制」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】 −2017年01月30日
http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2017/01/31.html


 

物価水準の財政理論についてのまとめ
2017年01月30日 12:01





池田 信夫
日経新聞にシムズのインタビューが載って、いろいろ反響を呼んでいるようだ。2月1日に来日すると日本のマスコミも物価水準の財政理論(FTPL)に興味をもつと思われるので、これまで書いた記事をまとめておこう。
まず中村仁さんの批判するようにFTPLが「財政膨張策」だというのは誤解である。シムズはこう語っている。
物価引き上げに必要なのは、日本政府が政府債務の一部を、増税ではなくインフレで帳消しにすると宣言することだ。政府が2%の物価上昇率目標を掲げ、達成するまでは消費税増税を延期する。
これを彼の論文では実質債務のデフォルトと呼んでいる。名目債務はデフォルトできないが、実質債務はインフレで踏み倒せるという意味だ。彼は「インフレ税」で政府債務を縮小せよと提言しているのだ。そのしくみは、理論的には単純だ。FTPLは、コクランの書いた次の均衡条件に要約できる。
 実質政府債務=名目政府債務/物価水準=財政黒字の現在価値 (1)
これは直観的にも明らかだろう。実質債務は名目債務を物価で割ったものだから、インフレになると分母の物価が上がって左辺の実質債務を減らすことができ、それは長期均衡では財政黒字(正確にはプライマリー黒字)の現在価値に等しくないといけない。これは必要十分条件なので逆も成り立ち、
 物価水準=名目政府債務/財政黒字の現在価値 (2)
だから財政黒字が増えると右辺の分母が大きくなり、物価が下がってデフレになる。つまり(名目政府債務を一定とすると)財政を健全化するとデフレになるのだ。これがFTPLが財政タカ派にきらわれる理由だが、この式は数学的にはトートロジーであり、20年前から確立された理論だ。
(1)式で分母の物価が下がってデフレになると、財政黒字の現在価値が大きくなって国債の収益率が上がる。だからシムズのいうように、投資家にとって国債の魅力が強すぎるため、銀行が国債に投資して民間投資が増えない。これが日本経済の長期停滞の原因だ。
したがってインフレにすると、(1)式の財政黒字が減って国債のリターンが下がり、銀行は国債を売って民間に投資(融資)するだろう。問題はここである。日銀がいくら「インフレ期待」をあおっても何も起こらないが、政府はインフレを起こせる。たとえば安倍首相が「無限にお札を印刷して政府が不動産を買う」と宣言すれば、国債は暴落し、金利が上がってインフレになるだろう。
シムズはこれよりマイルドなインフレを考えているが、それは可能だろうか。政府が2%のインフレ目標を宣言する程度では、今のように何も起こらない。逆に「インフレが5%になるまで消費税をゼロにする」といえば、急激なインフレが起こって資本が海外逃避し、円安でさらにインフレが加速する…というスパイラルに入るおそれが強い。
それを途中で止めることはできるだろうか。理論的には均衡財政で安定するのは例外で、ほとんどの場合は発散する。シムズのいう「準備預金に付ける金利を操作して政策金利を一定の範囲で保つ」という程度の手段では、インフレは止まらない。金融政策は短期の手段で、長期の物価水準には影響しないからだ。彼のシミュレーションでも、次の図のように25倍以上のハイパーインフレになるおそれが強い。

金利上昇のシミュレーション(縦軸はインフレ率)
http://livedoor.blogimg.jp/ikeda_nobuo/imgs/6/f/6f19e620-s.jpg

究極の問題は、ハイパーインフレになったら何が困るのかということだ。インフレ率は上がるが、物価水準は天井に突き当たって止まり、終戦直後のように5倍程度で収まるだろう。もちろん日本経済は大混乱になり、金融資産は大幅に減価するが、政府債務も社会保障債務も削減され、世代間の所得分配は平等化する。これは緊縮財政では不可能な荒療治だ。
いずれにせよ10年以内に、金利上昇とインフレは起こるだろう。そのとき金融機関の破綻は避けられない。日銀も債務超過になるが、それ自体は問題ではない。むしろ地方銀行などの破綻をどう防ぐかが重要で、そのとき日銀が緊急融資する最後の貸し手(LLR)機能が本質的な(唯一の)中央銀行の役割だ。
それに備えて日銀法を改正し、政府と日銀のバランスシートを統合して緊急時の日銀への資本注入を可能にし、LLR機能を強化する必要がある。これはシムズがジャクソンホール論文で提案していることだが、FTPLの専門家は一致して賛成している。

http://agora-web.jp/archives/2024173.html

 


 

2017.01.31
<経済政策大全>第3回
物価水準の財政理論 その1〜シムズの理論の内容と意味するところ
小幡 績


「物価水準の財政理論」というものが話題になっている。これは、要は、「物価水準は金融政策では決まらず、財政政策によって決まる」という理論である。
 この理論は1990年代前半に登場したのだが、今、急に話題になっているのは、この理論の有力提唱者の一人であるノーベル経済学賞受賞者のクリストファー・シムズが、昨年夏、米国ジャクソンホールにおける中央銀行関係者の会議でのスピーチで強く主張したことからだ。わが国で特に注目されているのは、安倍政権のブレーンといわれている浜田宏一氏が、シムズの話は目からうろこだった、インフレはマネタリーな(お金の、貨幣的な)現象だと思っていたのは間違いだった、とコメントして、リフレ政策の誤りを認めた、アベノミクスは失敗だった、とメディアが騒いだからである。
 ここでは、冷静にこの理論とその意味するところを考えてみよう。
 そもそも、インフレはどうしたら起こるのか。
 物価水準とはものの値段であるから、人々がものを沢山買って、供給が不足すればそれは値上がりする。需要が少なければ値下がりするし、供給が多すぎても下がる。需要と供給のどちらが多いかで決まる。
 これは一見当たり前だが、インフレ率、物価水準とはひとつひとつのものの値段とは違うから、需給で決まるのではない、というややこしい話が出てくる。
 スマホが売れるようになれば、その分飲み代は減るから、前者が値上がりしても、後者(外食費など)が値下がりして、全体には影響しない、ということだ。
 それならば、全体に需要が増えればよいのでは?ということになる。それが景気がよい、ということであり、みんなが以前よりも多く支出をすればすべての値段が上がり、インフレになる、ということだ。
 じゃあ景気がよくなればインフレになるんだ、というのが、いわゆる学問でいうところのフィリップスカーブというやつなのだが、難しい話はともかく、景気がよくなれば、失業率が下がって、物価が上がるということだ。
 そんなの当たり前で、物価なんか二の次で、まず景気を良くしてくれよ、というのが一般の感想だが、これが深遠でかつ正しい。それなのに、経済学者やエコノミストは、景気よりもインフレ、デフレ脱却、と騒いでいる。それはなぜか。
 経済政策で景気を良くするためには、手っ取り早いのは金融緩和と財政出動である。
 長くなったので、次回は、金融政策と財政政策について、議論するところからはじめよう。

※第4回へ続く。
前の記事:<経済政策大全>第2回 なぜ専門家の政策提言は経済を悪くするのか
小幡績(おばた・せき)
1967年生まれ。慶應義塾大学ビジネススクール准教授。個人投資家としての経験も豊富な行動派経済学者。メディアなどでも積極的に発言。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。著書に『リフレはヤバい』(ディスカバートゥエンティワン)、『成長戦略のまやかし』(PHP研究所)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(東洋経済新報社)などがある。
http://www.gentosha.jp/articles/-/7153


 

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コメント
 
1. 2017年1月31日 22:37:00 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[669]
脱デフレ 金融政策では限界だ クリストファー・シムズ氏 米プリンストン大教授
2017/1/29付
 日銀の金融緩和に限界論がささやかれ、財政支出で物価上昇率2%を目指そうという新理論がわき起こっている。壮大な量的緩和を提唱したリフレ派が「財政拡張派」にくら替えする動きもある。いったいどんな考え方なのか。ノーベル経済学賞を受賞し「物価水準の財政理論(FTPL)」を唱える米プリンストン大のクリストファー・シムズ教授に聞いた。
■インフレで債務軽減 宣言を


 ――日銀が「量的質的金融緩和」を始めてまもなく4年。物価上昇率は2%に届かないままです。日本のリフレ政策は失敗ですか。
 「日銀が大量の資金を供給して金利水準を低く保ったことは、正しい施策だったと思う。ただ日本のように政策金利が下がって(利下げの余地がない)ゼロ金利制約に直面すると、金融政策で物価をコントロールすることは、もはやできない。日銀はその事実を認める必要があるだろう。むしろ最大の失敗だったといえるのは、物価上昇率が2%に達する前に消費増税に踏み切ったことだ」
 ――個人消費がしぼんでしまったというとらえられ方をしました。
 「私が主張したいのはそうではない。増税はFTPLの考え方と正反対だということだ。ゼロ金利制約下で物価上昇を実現できるのは、中央銀行ではなく財政をつかさどる政府だ。政府がインフレを起こすには、むしろ増税での財政再建を棚上げしなくてはならない」
 「物価引き上げに必要なのは、日本政府が政府債務の一部を、増税ではなくインフレで帳消しにすると宣言することだ。政府が2%の物価上昇率目標を掲げ、達成するまでは消費税増税を延期する。しぼんでしまった人々のインフレ期待を高める『サプライズ』につながるだろう」
 ――日銀もインフレ期待に働きかけると主張してきました。「人間の期待」にそこまで期待できますか。
 「非常に難しい問題ではある。ただ、日銀の金融緩和でいえば、首尾一貫した財政の後押しがなかったことが問題なのだ。政府のトップが『インフレを起こす準備ができている。それを債務返済に使う』と言えば、人々の予想を十分に変えることができる」
 「実際、1930年代のルーズベルト米政権は、インフレ期待を起こすことに成功している。前政権下で染みついたデフレ環境を転換するために、金本位制を捨ててドルを切り下げ、財政拡張にも転じ、米連邦準備理事会(FRB)には国債を大量に買い上げるよう求めた。インフレを目指して全ての政策を転換したことで、物価予想はデフレからインフレへと一気に跳ね上がった」
 ――日本は国と地方を合わせた政府全体の債務残高が国内総生産(GDP)の2倍強に達します。
 「逆説的だが、今は投資家にとって政府債務の魅力が強すぎる。投資家は安全を欲しており、国債が最大の投資先だ。この資金の流れを民間投資に向けるには、人々が『国債を持ちたくない』と思うように仕向けなければならないのだ。インフレを起こしてそれで政府債務の一部を返済すると宣言すれば、価値が損なわれる国債の魅力は弱まり、民間投資への資金の流れをつくることができる」
 「もっとも歯止めの効かないインフレは恐ろしいものだ。人々は物価が目標の2%に達して以降、3%、4%、5%と上がっていくのではないかと恐れている。しかし今では金融政策の進化で、インフレを制御する手段が多くある。(民間銀行が中央銀行に預ける)準備預金に付ける金利を操作して政策金利を一定の範囲で保つことができる。財政当局者の信頼性も高まっており、いざとなれば緊縮財政に転じることもできる」
 ――それでもインフレによる実質債務の縮小は国債保有者に損失をもたらします。金融不安を招くリスクも否めません。
 「インフレは国債保有者に負担を強いて利益が減ることになり『インフレ税』と言われればその通りだ。日本にとってインフレによる実質債務の削減が簡単ではないことは理解している。たとえば長期国債に大量の投資をしている日本郵政だ。インフレで長期金利が上昇すれば、保有国債の価値が落ちて資本毀損が発生しかねない。民間金融機関などが抱える大量の長期国債が重荷となって、インフレ政策で金融セクターが萎縮するリスクはある」
 「インフレで日本の政府債務がどれだけ軽減されるか、一方で国債保有者への『インフレ税』によって金融システムにどれくらいの悪影響が及ぶのか、吟味して政策判断することが必要だ。ただ、物価が2%に上昇するとしても、金融機関にはバランスシートを調整する時間があるだろう。金融システムの動揺を防ぐ策は講じるべきだが、急激に事態が悪化するとはみていない」
■物価2%まで増税凍結
 ――健全財政の放棄との曲解も目立つようです。
 「この政策は、財政赤字で生み出された政府債務のすべてをインフレで解消するわけではない。一部をインフレで賄うだけで、物価上昇率が2%に達すれば、段階的に連続的に消費税を引き上げていくことが合理的だと思う。日本は巨額の財政赤字を抱えており、減税などの追加策も不要だ。最終的に増税が必要だとしても、経済に悪影響をもたらす低金利・低インフレが続いている間は増税しないと宣言することが重要だ。政府債務への過剰な資金流入を止め、民間需要を高めることが必要だからだ」
 「その上で改めてインフレ目標の重要性を議論したい。さまざまな歴史的な理由があって、一定の物価上昇が経済成長に多くの利点があることは考え方が一致するところだろう。戦前の世界大恐慌をみればはっきりしている。もっともこの政策が保証するのは、2%の物価目標に到達できるということだ。日本は人口問題など構造的な低成長要因を抱えており、それは別の解決手段が必要になる」
 ――トランプ米大統領は財政拡張を掲げています。
 「トランプ氏の主張は減税で財政支出を増やし、ただただ財政赤字を膨らませる政策だ。人々は米国の将来の増税を見込んでおらずインフレ観測が高まるだろう。ただ『物価上昇が一定に達するまで』という条件をつけなければ財政拡張は歯止めの利かないインフレをもたらす危険がある」
 「もっともトランプ政権の政策はきわめて不確実性が大きい。企業減税は高い確率で実行に移されるだろうが、税制改革案を実際に設計する下院共和党指導部には健全財政を好む『財政タカ派』が含まれ、トランプ氏が公約してきた財政拡張策がすべて実行されることにはならない」
 1942年生まれ。計量経済学とマクロ経済学の大家で、2011年にノーベル経済学賞を受賞した。金融政策が経済に短期的・長期的にどのような影響を与えるかを研究し、マクロ経済分析の基礎を築いた。
 16年8月には米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長らが一斉に集う米ジャクソンホール会議に招かれ「ゼロ金利近傍では金融政策の効き目が薄れるため、インフレを目指した財政支出でインフレ期待を引き上げるべきだ」と講演し、注目を浴びた。日本でも安倍晋三首相の経済ブレーンである浜田宏一米エール大名誉教授がシムズ氏の講演を「目からウロコが落ちた」と評して「ポスト・アベノミクス」の政策運営に影響を与えつつある。74歳。
◇     ◇
FTPLとは

http://www.nikkei.com/content/pic/20170129/96958A99889DE3E0E0E3E3E6E2E2E0E5E2E3E0E2E3E5868893E2E2E2-DSXKZO1221154027012017TZA000-PB1-5.jpg

 財政支出で低インフレから脱するというシムズ氏の主張は「物価水準の財政理論(FTPL=Fiscal Theory of the Price Level)」に基づく。
 FTPLの考え方は(1)政府が財政支出を増やす(2)企業や個人が将来の財政悪化を予測する(3)お金の価値が下がる(4)インフレが発生する――という流れにある。減税や公共投資で需要を積み上げるケインズ政策と混同されるが、FTPLの発想は異なる。
 例えば政府の借金が100兆円あるとする。ただ、残念ながら将来は50兆円分の返済原資しか得られそうにない。政府は個人や企業と異なり借金を踏み倒すことはできない。
 どうするか。通常であれば増税で借金を返そうとするだろう。しかし、FTPLでは増税ではなく、インフレで借金を返そうと考える。50兆円の返済原資をインフレによって名目100兆円に膨らませることができれば、増税しなくても借金は帳消しにできる。
 このメカニズムを応用すれば「政府は増税しません。インフレで借金を返済します」と公約すればいい。個人や企業はその場で「将来は物価が上昇する」と考え、実際には財政が野放図に悪化する前に人々のインフレ予測が上向く――。これがFTPLの考え方だ。
 近代経済社会は金融政策で物価を操作してきた。ただ名目金利がゼロに近づくと利下げができず、政策効果が薄れる。シムズ氏は効果を失った金融政策の代わりに財政政策で人々のインフレ予測に働きかけるよう主張する。
〈聞き手から〉「魔法のつえ」はない
 世界の中央銀行関係者や市場参加者にとって、金融政策の限界論を説くシムズ氏は、皮肉にも最も旬な一人である。ただ、その理論は「連立方程式で形作られ、一般に広めるのが簡単ではない」(シムズ氏)。日本でも学識経験者らがシムズ氏の主張をとり入れて「ポスト・アベノミクス」を模索する動きがあるが、理論はいまだ消化不良で賛否を戦わす議論の土壌が育っているとはいいがたい。
 シムズ氏が主張するのは野放図な財政拡張ではない。増税先送りによる財政悪化とインフレを容認しつつ、ハイパーインフレにならないよう政府・中銀のコントロールは保つという矛盾したような狭い道を進む必要がある。政策は極めて実験的といわざるを得ない。
 シムズ氏は「国債の魅力を弱めたい」とも話した。民間事業への資金の流れを取り戻すためだが、金融機関が国債投資に突き進むのは政府の財政再建を見込んでいるためだけではない。国債をリスクゼロの資産とみなす国際金融規制など、マクロ経済理論からやや外れた要因がそこにはある。低インフレからの脱却には「金融政策と財政の協調」(シムズ氏)だけでなく、政府規制や商慣習の見直しなど全面的な改革が必要になる。
 異次元緩和、マイナス金利、イールドカーブ・コントロール――。アベノミクスでは日銀を中心に先駆的な政策をいくつも試したが、「魔法のつえ」があるわけではない。即効薬ばかりを探し求め、人口減など重たい課題の解決がおろそかになれば、それは本末転倒だ。
(ワシントン=河浪武史) 


2. 2017年1月31日 22:51:19 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3583]

>ハイパーインフレになったら何が困るのか

戦争や災害と違い、金融要因によるインフレは、国内の生産力や資産が毀損するわけではないから、基本、ほとんど全体としては困らない

それどころか通貨安は、国内資産や労働力のバーゲンだから

海外からの購入を増やし、景気(生産、消費)を刺激することになる

一方で、今の英国やアベノミクス直後の日本のように、国民の実質生活水準は一時的に下押しされる可能性は高い

また借金している人々、例えば住宅ローンのある一般国民や政府にとっては借金の価値が保有資産に比べ激減するから有難いだろう

また賃金がインフレ率と同様に上昇するのであれば、預金の少ない勤労世帯には、ほとんど影響はない

一番困るのは、現預金の比率が高く、判断が遅い富裕層

特に長期の固定金利債権を多く持つ金融機関だが、これも日銀特融などで対応は可能

つまり国全体としてみれば、大したデメリットはないが、高インフレになれば、企業活動にとってはマイナスだから

生産性は落ち、実質GDPが一時的に低迷する可能性は十分ある


3. 2017年1月31日 22:58:42 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3584]

ただ個人的には、無理に財政を拡張する前に、単に超長期国債の発行を増やし

日銀に半永久保有させることで、国家債務をマネタイズしていけば

いずれ確実にインフレになるし、それで十分だと思うけどねw


4. 2017年2月01日 05:23:41 : gsnkzXsbjs : 2KRlmHhAvwU[26]
経済理論はもうたくさんだ、票やグラフをどんなに作ろうとも、実態経済とは何の関係も無いだろう。

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