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「マクドナルドの肉の正体が明らかに」の根拠は そもそもの裁判がなかった?
https://www.buzzfeed.com/kantarosuzuki/mcdonalds-pinkslime-debunk?utm_term=.vjwGK6Q3B#.ogo1JxGZv
2017/01/25 17:53 Kantaro Suzuki鈴木 貫太郎 BuzzFeed Japan
「イギリスの有名シェフが、マクドナルドを相手取った裁判で勝訴し、『肉』の正体が判明した」というニュースがSNSで話題になっている。
インターネット上で拡散されている記事には、イギリスの有名シェフが、マクドナルドを相手取って裁判を起こして勝訴。その裁判で、マクドナルドのハンバーガーに使われている「肉」の正体が判明したと書かれている。
■マクドナルドの『肉』の正体について、こう断言している。
イイタメ / Via iitame.com
「本物の肉の代わりに、食用肉から出たくず肉、腱、脂肪、結合組織を混ぜたものから成るペースト状の生地と、アンモニアから作られたものを使用していたことが証明されました」
しかし、記事には、裁判の申し立て内容や判決日、どこで裁判をしたのかなど詳細については、全く書かれていない。裁判で「証明」された「肉」がどこに流通しているのかも書かれていない。
不明確な情報が含まれてる記事だが、大きく拡散している。
エンゲージメント数(シェア、いいね!などのリアクション、コメントの合計数)を測るツール「BuzzSumo」で、この記事を確認すると、FacebookとTwitterで計6万6千件以上のエンゲージメントを獲得していた。
「マックこわい」「安さには原因がある」「これが本当ならマック行けない」などと、マクドナルドに対して否定的な反応が出ている。日本で報道されないため、「報道規制がされたのではないか」との憶測も広がった。
■過去に肉の品質を問われた米マクドナルド
Tristan Fewings / Getty Images
話題となっている記事「イギリスの有名シェフがマクドナルドに勝訴!裁判によって『肉』の正体が明らかに」は、ネットメディア「イイタメ」が1月19日に配信した。(1月26日現在、アクセス不可)
記事に登場するジェイミー・オリヴァー氏は実在の人物で、イギリスの有名シェフ。2010年、米国のTV番組で、クズ肉や内臓などを水酸化アンモニウムで殺菌した加工肉(正式名称:Lean finely textured beef)が、ファストフード店で使われている事実を批判した。
当時、アメリカの法律では禁止されていなかったため、米マクドナルドでも、こうした加工肉が使用されていた。テレビ番組の反響を受け、米マクドナルドは2011年にアンモニアで消毒した牛肉を、翌年には、この加工肉の使用を取りやめると発表した。
■「肉」に関する誤った情報
イイタメ / Via iitame.com
「今までに何度も『使用をやめる』と発表していたにも関わらず、今回の勝訴により、使用されていた事実が証明されてしまいました」という記述がある。
この内容が正しければ、米マクドナルドが使用中止を発表した2012年以降、オリヴァー氏が、どこかの裁判所に提訴したことになる。
BuzzFeed Newsが日本マクドナルドに取材すると、「米本社に確認しましたが、そういった裁判があったという事実はない」「日本では、この加工肉が使われたこともない」とメールで回答があった。
日本マクドナルドの回答によれば「肉の正体が判明した」とイイタメが報じる根拠になった「ジェイミー・オリバー氏による訴訟」自体が存在しないことになる。
■「参照元からまとめたもの」
イイタメの記事は「今までは噂レベルであった事が、裁判で勝訴した事により証明されたわけですから、自己責任で食べるようにしなければいけません」と強調。「間違っても、子供に食べさせてはいけませんね」と、読者の不安を煽っている。
BuzzFeed Newsは「イイタメ」に、記事に書かれた事実関係について問い合わせると、こんな回答が来た。
「マクドナルドの記事ですが、私たちも参照元からのまとめたものです」(原文ママ)
訴訟の詳細や事実関係を確認せず、インターネットにあった情報を集め、記事を書いたことを認めている。
■参照元のサイトも拡散
イイタメが参照した記事が、ニュースサイト「TRT Japanese」だ。
TRT Japaneseは1月16日、「ジェイミー・オリヴァーがマクドナルドに勝った、肉の正体が明らかに」という記事を配信。しかし、この記事にも裁判の詳細は書かれていない。
23万フォロワーを持つタレントのフィフィさんがリツイートしたこともあり、5万3千以上のエンゲージメントを得て拡散した。
TRT Japaneseの記事が出て3日後に配信されたイイタメの記事の書き出しは、TRT Japaneseのものと酷似している。イイタメが認める通り、TRT Japaneseの記事を下敷きとしたことは明らかだ。
上が「イイタメ」、下が「TRT Japanese」 イイタメ / TRT Japanese / Via iitame.com trt.net.tr
イイタメの記事の基になったTRT Japaneseの記事は、どのようにして書かれたのか。BuzzFeed Newsは、TRT Japaneseに情報の裏付け方法などを問い合わせたが、まだ回答はない。
なお、イイタメが参照元として提示したサイトには、Twitterまとめサイト「Togetter」、IT系ニュースサイト「Gigazine」もあるが、いずれも裁判の詳細については報じられていない。
事実関係が不明確なイイタメとTRT Japaneseの記事は、インターネット上で拡散され、多くの人の目に止まる状況だ。その影響力は、公式サイトのアニメ動画をしのぎ、「マクドナルド」という単語が見出しに含まれた記事として、過去1年間で1番目、2番目に多くエンゲージメントを集める事態となっている。
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