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トランプ政策の保護・排他主義は米GDPを3.3%縮小させる
http://diamond.jp/articles/-/115917
2017年1月31日 週刊ダイヤモンド編集部
米ニューヨークダウが2万ドルを超えるなどトランプ相場が続いている。しかし、株価上昇の主因は世界経済回復。保護主義と排他主義の負の面が顕在化すれば、市場の動揺は避けられない。
大統領に就任すれば、政策が少しは穏健な方向に軌道修正されるだろうという期待は完全に裏切られた。
トランプ米大統領は就任演説で「保護が偉大な繁栄と強さにつながる」「国境を取り戻す」と高らかに宣言した。TPP(環太平洋経済連携協定)離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉、メキシコ国境沿いでの壁建設など、就任直後から矢継ぎ早に“看板政策”を実行する動きを見せている。
保護主義と排他主義が米国経済の足を引っ張ることは確実だ。
みずほ総合研究所とみずほ銀行は、中国からの輸入品に45%の、NAFTA構成国であるカナダとメキシコからの輸入品に35%の関税をかけた場合の輸入額の変化を試算した。2014年を基にすると、4099億ドルほど輸入金額が増加する。これは、米国のGDP(国内総生産)の2.2%に相当する。輸入額が増加する分だけ、米国のもうけであるGDPは縮小する。トランプ氏の政策は、こうした負の面も併せ持つ。
犯罪歴のある不法移民の国外退去も、重要政策の一つだ。米国の現在の失業率は4%台後半。これ以上労働力を増やせない“完全雇用”の状態にあるとされる。この状態で労働力を強制的に減少させれば、経済にマイナスになる。「200万〜300万人とされる犯罪歴を持つ不法移民を退去させれば、米国経済は1.1%縮小する」(小野亮・みずほ総合研究所主席エコノミスト)とみられる。高関税と合わせ、3.3%の縮小となる。
■円安株高は負の側面見ず
一方、市場は、顕在化していない保護主義や排他主義の負の面をまだ織り込んでいないようだ。1月25日に米ニューヨークダウは史上初めて2万ドルを超えた。トランプ氏の大統領選挙勝利後の世界的株価上昇は、インフラ投資、減税といったトランプ氏の財政政策による景気拡大を見込んでいるためと説明されることが多い。
しかし実は、「昨年後半以降の米国をはじめとする世界経済回復が株価上昇の原動力」(窪田真之・楽天証券チーフアナリスト)という側面が強い。米国のISM製造業景況指数は、昨年7月は景気の拡大・縮小の分かれ目である50を下回る49.7だったが、その後12月には54.7まで上昇した。
勝利確定によって、トランプ氏という不透明要因の影響が小さくなったために株価は上昇。景気拡大期待を素直に反映した米国金利が上昇し、円安も進行した。
市場に警戒感がないわけではない。1月11日の大統領選後初の記者会見で保護主義や排他主義を主張すると、米国株は足踏みし日本株は下落した。加えて、保護主義を反映したドル高けん制発言もあり、円は対ドルで上昇した。
インフラ投資、減税など市場が好む政策が実現に向かえば、一段の株高、ドル高もあるだろうが、保護主義、排他主義のマイナス要因が顕在化すれば市場が動揺するのは確実である。現状の株高、ドル高円安基調は、いい面だけを見た結果にすぎない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部)
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