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米中のあいだで曖昧なコウモリ外交を繰り広げる一方、「日本は弱い国だから何でも言うことを聞く」と思っているフシがある韓国。今回、日本は簡単に強硬姿勢を取り下げるべきではない Photo:YONHAP NEWS/AFLO
日韓通貨スワップ交渉、日本は強硬姿勢を貫くべき理由
http://diamond.jp/articles/-/115873
2017年1月30日 清談社 ダイヤモンド・オンライン
厳しい経済状況の韓国が、日本との通貨スワップを望まないと言うのはなぜか。実は韓米中3カ国の問題だった。2つの大国の間を揺れ動く韓国のしたたかな戦略。日本はまたしても振り回されるのか?(取材・文/清談社)
■慰安婦問題で初めて
強硬な姿勢を取った日本政府
釜山の日本総領事館前に慰安婦少女像が設置されたことで、日本は2015年12月の「慰安婦問題日韓合意」の精神に反するとして、対抗措置に長峰安政・駐韓大使と森本康敬・釜山総領事の一時帰国を履行した。これは今までの韓国に対する姿勢と比べれば強硬な措置だと言える。それに加えて通貨スワップ再開協議を中断し、次官級日韓ハイレベル経済協議も延期した。
15年の「慰安婦問題日韓合意」は「不可逆的」な最終合意で、今後は非難し合うのを控え、「新しい日韓関係」を築く努力をしようというものだった。
日本は最後のおわびを述べ、元慰安婦を支援する財団に10億円を拠出した。ところが2016年12月30日に新たに慰安婦少女像が設置されてしまった。
朴槿恵(パク・クネ)大統領の代行を務める黄教安(ファンギョアン)首相が記者会見で「民間が設置した。政府が関与してあれこれ言うのは難しい状況だ」と述べたことで「不可逆的」がやはりというか、いとも簡単に覆された。
設置を黙認した形になった韓国政府に対する抗議として行った「一時帰国」という強硬措置は、これまで韓国に謝り続けてきた日本が「慰安婦問題日韓合意」を盾に、ついに拳を振り上げたということである。「国際的な合意を守れない国を信用できない」として、通貨スワップ協議も中断した。
■通貨スワップは日本に
何のメリットもない
ところで、この日韓通貨スワップ協定は、本当に必要なのか?「対抗措置」とした日本だが、メリットがあるのか。愛知淑徳大学教授、真田幸光氏に聞いた。
「日本に必要かどうかと言われれば、必要はありません。日本にはメリットはほぼありません。そもそも韓国はスワップ再開を望んでいないと言っている。日本にもメリットがないのですから、必要ないのです。日本が通貨危機に陥る可能性はまずないでしょう」
仮に円が破綻したとしても、世界で使えないウォンをもらっても何の意味もない。円ウォンスワップは、日本から韓国への一方的な恩恵ということだ。ではなぜ協議の再開を韓国は望まないのか。
「韓国がいらないと言うのは、日本に対してではなく、中国を見て言っています。日本と早々にスワップを再開すると、中国がじゃあウチのスワップはいらないね、と言い出しかねない。韓国は中国に対して、スワップ延長してくれなければ日本と結んでしまうよ、というカードをチラつかせているのです」
日本人が考えるより、韓国と中国の関係は密である。韓国企業の市場が中国本土に徐々に移行する中で、中国への擦り寄りを強めているのである。それが米中の関係悪化とともに冷え込んでいるという。
「朴槿恵大統領は、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の在韓米軍配備を認めました。中国は自国を狙う兵器の承認は絶対ダメだと圧力をかけていた。だから中国は怒って、報復すると韓国を露骨に脅している。今後韓国が通貨危機に陥っても、中国は通貨スワップを発動しないのではないかと韓国は警戒しているわけです」
■米中を怖がる韓国だが
日本は「言うことを聞く国」扱い
韓国では、マスコミも中国を悪く書くことはほとんどないようだ。それほど韓国は中国が怖いのだ。その中国の圧力を受けて、在韓米軍の望むTHAAD配備を長い間保留にしていた。しかしTHAAD配備を許可しなければ、今度は米国から怒られる。中国に怯えながらの受け入れだったのだ。
「一方で南シナ海の主権問題では事実上、韓国は中国側に立った。そのように韓国は反目する米中に曖昧なコウモリ外交をしているのですが、韓国の2国間通貨スワップの約7割が中国。経済は完全に中国頼みです。慰安婦合意で米国の圧力に屈したと忸怩たる思いがあるので、今後は一層中国寄りになる可能性もあり、国の舵取りは厳しくなるでしょう」
トランプ大統領が誕生し、米国がこれから中国に対してどのような態度に出るか未知数。韓国は米国との通貨スワップをなんとしても再締結しようとするだろうが、経営者でもあるトランプ大統領が今の韓国に価値があると思うだろうか。一方、懸命に日本叩きをしているのは、日本を商売相手として認めているからに他ならない。
もはや韓国に真摯に向き合っているのは日本だけなのである。しかし韓国は、日本など眼中にないようだ。
「韓国は日本を弱い国だと思っています。だから日本のスワップ協議を再開しておけば、米中にそっぽを向かれても、まだなんでも言うことを聞く日本があると考えている。保険をかけているのです。日本には頭を下げなくても中国の人民元を借りると言えば慌ててスワップに応じると高を括っているのです。また、謝れと言えば、いくらでも金を出すと考えています」
慰安婦像を自国のみならず海外にも設置しているのは、そのひとつずつを日本との交渉に利用するためなのか。それならば数は多いほうがいいという戦略なのかもしれない。
■スワップは助け合いの双務契約
信用がなければ成立しない
あっけなく約束を反故にするようでは、国際的な信頼はどんどんなくなっていくだろう。麻生太郎財務大臣は「約束した話が守られないなら、貸した金が帰ってくる可能性もない」と話し、スワップの早期再開に否定的だ。しかし、この発言を暴言とする向きもある。
「貸した金も返ってこないというのは、暴言ではないですね。韓国経済はかなり追いつめられていますから。韓国の銀行はドル不足に陥っていて、邦銀などからドルを借りています。何かの拍子に韓国の銀行が1行でもデフォルト、債務不履行となれば、韓国すべての金融機関が取引を打ち切られる可能性が高い。スワップを結んでいれば、日本がバックについているということで極端なウォン売りは起こらないでしょうが…」
日本は今まで何度も韓国を経済的に救済している。しかし、それは韓国ではほとんど報じられていない。それどころか日本のせいで状況が悪化したと批判するのが常だ。
「この先も韓国が変わることはないでしょう。2011年に日本がスワップを700億ドル積み増しし、辛うじて通貨危機を乗り切ったことがありましたが、1年も経たないうちに手の平を返して大統領が竹島に上陸した。さらに慰安婦問題を蒸し返し、天皇陛下に謝罪を要求。韓国は恩を仇で返すばかりです。そして約束を守らない。2国間スワップは助け合いの双務契約です。信用がなければ成立しないのです」
では、今回の対抗措置という名の制裁も効き目がないのだろうか。
「確かに韓国は強硬姿勢に驚いています。でも日本はすぐに解除するとも思っているので、それほど心配していないでしょう。大統領が交代し、左派政権が誕生して米国にTHAAD配備を認めないと言えば中国がスワップを延長してくれるので、日本は不要になる。そうすればまたやりたい放題になる。日本政府は今後のことを考えて、簡単に制裁を解除しないことが求められます。通貨スワップは経済問題ではなく、政治問題です」
JNNの世論調査によれば、韓国への対抗措置発動後、安倍内閣の支持率が67%に急上昇したという。振り上げた「一時帰国」の拳をすぐに下ろせば、この支持率がどうなるか。今回ばかりは「不可逆的」に解決がなされなければ日本国民は納得しないだろう。
◆真田 幸光(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授(研究科長)。1957年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒。81年、東京銀行入行。韓国・延世大学留学を経てソウル、香港に勤務。97年にドレスナー銀行、98年愛知淑徳大学。現在に至る。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍。
著書/「早わかり韓国―文化が見える・社会が読める」(日本実業出版社)「世界の富の99%を動かす英国王室、その金庫番のユダヤ資本」(宝島社)など多数。
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