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佐久間ダム湖に砂丘のように貯まった土砂(2010年筆者撮影)
「老朽ダム維持管理」の時代でも、必要性の怪しい新規ダム建設は止まらず
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170128-00127071-hbolz-soci
HARBOR BUSINESS Online 1/28(土) 16:20配信
◆既存のダムの維持・再生の時代に突入
安倍政権が「経済再生と財政健全化の両立を実現する」と謳った2017年度予算。ダム事業予算は2016年度から93億円増額され、1518億円となった。「ムダな公共事業」が特に多いと批判されるダム事業予算だが、2017年度はどういったことに使われるのだろうか。
国土交通省の水管理・国土保全局が発表した一覧を見ると、近年、顕著な一つの傾向が見える。既存のダムの「再編」や「改造」事業だ。予算で言えば2割弱に過ぎないが、件数で言えば約3分の1にのぼる。ダム公共事業は「老朽ダムの維持管理時代」に突入しているのだ。
例えば「天竜川ダム再編」(中部地方整備局)は、ダム湖に堆積した土砂を取り除く事業を意味する。天竜川上流2つのダムは土砂で埋まり、ダムとしての機能を失っている。山から出てくる土砂は、3つ目の佐久間ダムに全量が流れ込んで堆積している。そこで佐久間ダムを持つ電源開発株式会社によって掘削や浚渫が行われる一方、砂を下流のダムに送る「排砂トンネル」の建設などに国の予算をつけてきた。
こうした予算を水管理・国土保全局は「公共施設のストック管理・適正化」などの名称で確保してきたが、2017年度では新たに「既設ダムの更なる有効活用方策を示す」として「ダム再生ビジョン」の名で予算獲得を求めている。今後も老朽化ダムの維持管理にかかわる費用は増大していくことだろう。
◆必要性の怪しい、新規ダム建設の見直しも進まず
一方で、少子高齢化や過疎化が進む地域も含めて、必要性に疑問が持たれている全国の新規ダム建設計画も止まろうとはしていない。八ッ場ダム、思川開発、設楽ダムのように建設差止などが訴訟で争われた事業もあるが、いずれも住民が敗訴。現在も成瀬ダム、霞ヶ浦導水、木曽川水系連絡導水路などで裁判が行われている。
また、道府県が進めようとしているダムも別途ある。中には、長崎県の石木ダムのように、新たな水需要が見込めない地域であることが明らかな地域で、農家など13世帯の土地家屋を強制収用して進めようとしているダムもある。
かつて旧民主党政権下では、こうした状況を変えようと2009年12月にダム検証が始まった。一般傍聴をさせない「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」を通じて、現在までに84ダム中25ダムの中止が決定している。
水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表はこう批判する。
「中止ダムは、ダム事業者の意向によって中止になったものがほとんど。適切な検証が行われた結果によるものではありません。現在、建設が問題になっている多くのダムは『中止』ではなく『継続』となっており、ダムの見直しをするはずであったダム検証が事業推進にお墨付きを与える道具になってしまった」と批判する。
安部政権は2016年8月の概算要求時に「優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化する」との方針(2016年8月2日閣議了解)を発表したが、ダム事業に対してはまったく目が行き届いていない。維持管理時代に突入しているダム事業、もうこれ以上必要性の怪しいダムに税金をつぎ込んでいく余裕はないのではないか。<取材・文・撮影/まさのあつこ>
ハーバー・ビジネス・オンライン
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