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「引きこもり」するオトナたち 【第272回】 2017年1月26日 池上正樹 [ジャーナリスト]
「引きこもり」本人・両親とも高齢化で困窮、届かぬ救いの手
「引きこもり」の高齢家族が悲鳴
「80・50問題」待ったなしの実態
「引きもこり」の当事者と両親が高齢化し、経済的に困窮する家庭の実態が、調査報告で明らかになった。行政の救いの手は彼らに届いているのか
自治体窓口が対応した「引きこもり」本人に関する相談で最も多かったのは40代の62%で、「経済的に余裕がない」などと、本人の兄弟姉妹から相談を受けるケースも30%に上っていた。
そんな経済的に困窮した高齢化家族が助けを求めている実態が、「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の調査報告で明らかになり、朝日新聞を除く主要新聞やNHKなどでも報じられている。
「引きこもり」本人の平均年齢は「45.3歳」。80歳代の父が8%、母が12%と、如実に待ったなしの「80・50問題」が浮き彫りになったと言える。
報告した調査チームの愛知教育大学・川北稔准教授(社会学)によると、自治体の「引きこもり」実態調査で、40代以上の割合は4割〜5割を占める例が続出。2015年に施行された生活困窮者自立支援法に基づく自治体の相談窓口でも、高齢化した親子の「引きこもり」相談において、年金や介護、暴力など複合化した生活維持のための対応に迫られている実態が判明したとして、40代以上の事例に注目して調査を行った。
調査は、昨年11月、相談窓口が設置されている215の自治体に質問用紙を送付。今回は、今年1月上旬までに回答のあった150窓口のデータを中間報告的に分析した。
報告によると、相談に対応したことがある「引きこもり」本人の年齢について最も多かったのは、「40代」の62%(93窓口)。以下、「30代」、「20代」と続き、「50代」も45%(67窓口)に上っている。
また、相談者で最も多かったのは、「父母」の73%(109窓口)だが、「本人」は46%(69窓口)。とりわけ、本人の年齢が40代以上になると、地域包括支援センターや民生委員といった「関係機関・関係者からの紹介」や「本人の兄弟姉妹」からの相談の割合が高くなった。
「引きこもり」本人の課題は、「人間関係・コミュニケーションに関する問題がある」が80%。「就職活動や、仕事への定着が難しい」が77%と続くが、40代以上になると順位が逆転していて、雇用環境の問題であることが浮き彫りになる。
KHJ家族会の報告会は、約150人の参加者を集め、関心の高さを伺わせた
一方、家族が抱える課題では、「経済的に余裕がない、または困窮している」と回答した窓口が、それぞれ突出して高い。
本人や家族がこれまで利用した相談機関や窓口については、「福祉事務所(生活保護担当部署)」「医療機関」「保健所・保健センター・精神保健福祉センター」が多く挙がった。
実際の相談ケースに応じて、連携を行った相談機関や窓口は、「ハローワークなど就労関係窓口」(49%)、「福祉事務所(生活保護担当部署)」(46%)、「行政の障害担当部署」(37%)、「保健所・保健センター・精神保健福祉センター」(36%)が多かった。
「引きこもり」家族の支援で
変化が見られたのは4割どまり
支援によって見られた変化としては、「就労開始」「自立意欲の向上・改善」「就職活動開始」「社会参加機会の増加」など。40代以上についても、「家計の改善」などの項目は、全年齢に対する比率が高くなっている。
しかし、最も多く回答があった項目でも4割にとどまり、「支援の結果、変化を見るに至っていない窓口も多い」と報告する。
「ひきこもり事例への対応について感じていること」などの自由回答を見ても、「支援を拒む」「居場所や地域でのキーパーソンが不在」「対象者に合わせたゴール設定が難しい」「ひきこもりに関する支援の実績がない」といった現場での課題が挙げられた。
興味深いのは、「ひきこもり支援において、現在は実施していないが、必要性を感じている支援内容」を聞いたところ、「本人の居場所」が57%と最も多く、「家族会・家族教室」(33%)、「ピアサポート」(29%)と続いていたことだ。
一方、「宿泊型施設」はわずか6%にとどまった。
ちなみに、読売新聞が<「大人のひきこもり」平均22年>と報じていたが、特に平均期間の報告はなく、「本人年齢(平均)」45歳から「ひきこもり開始年齢(平均)」23歳を差し引いたものと思われるため、厳密に言えば正確ではない。
今回の報告は、引きこもる本人や家族に対する行政の対応がこれまで上手くいっていなかった現実を、初めてエビデンスとして示したものであり、「引きこもり支援」のあり方について、行政も支援団体も見て見ぬふりをしないで舵を切らないといけない転換点を迎えた調査結果だと言える。
40歳未満を重視、治療対象者扱い
行政の対応が上手くいかない原因
これまでの行政の対応が上手くいかなかったのには、大きく2つの理由が考えられる。
(1)「引きこもり支援」が不登校の延長や青少年の問題だとして「就労」をゴールとする認識で捉えられ、対象者がおおむね「40歳」未満で線引きされてきたこと。
(2)いまだに個人を治療対象者とみなす間違った厚労省研究班の概念が、自治体の精神保健部署で使われ続けていること。10年以上前の「引きこもり分類」では、「精神疾患群」「発達障害群」「パーソナリティ群」の3分類とされていた。
しかし、厚労省の現在の「引きこもり施策」では、従来の「医療対応」中心の反省から「社会的要因」の比重が大きくなっていることを前提に、社会援護局が「生き方丸ごと支援」として「本人支援」「家族支援」や、「我が事・丸ごと」の地域づくりの取り組みに力を入れている。
愛知教育大の川北准教授の調査報告は、「支援機関、窓口の対応への失望」「子育てへの罪責感、本人の暴力などに由来する家族の委縮」「支援機関、窓口の“ひきこもり”理解の不足」などの経験を積み重ねてきて、社会との壁が構築されていると指摘する。しかし、壁があったとしても、違う関係をつくり出すことはできると指摘する。
日本福祉大学の竹中哲夫教授は、親の高齢化、親亡き後の「ライフプラン支援」として、生活上の困り事を一緒に解決するボランティアとしての支援者と連携して向き合う「交流支援者方式」を提案する。
竹中教授によれば、「ライフプラン支援」には、引きこもる人の協力に加え、資産が残される場合でも本人が有効に使えなければ活かされないことなどから、経済生活以外の課題の支援も必要だと指摘。こうした「ライフプラン支援者」とともに、福祉、心理、医療、就労などのピアサポーターを含む「ひきこもり支援者」、引きこもる人の困り事や心配事を頼りになる友人知人のように解決する「交流支援者」が連携していく、3者の関係づくりによる新たな段階に入ったと報告した。
これこそ、地域で孤立しがちな本人や家族が違う関係性をつくり出すきっかけにもなる、コミュニティの発想である。
(ジャーナリスト 池上正樹)
http://diamond.jp/articles/print/115574
「引きこもり回復テキスト」に学ぶ人生やり直しの教訓
「引きもこり」から回復する
ための12のステップとは?
初めて出版された引きこもり版回復テキストは、引きこもる人々に光を与えるだろうか
昨年末、依存症の12ステッププログラムを活用した引きこもり版回復テキスト『ひきこもりアノニマスの12ステップ』が初めて出版された。
同テキストは、もともとアルコール依存症回復の12ステップとして、世界中で回復者を生み出してきた実績のあるプログラムをアメリカから輸入し、「引きこもり」に当てはめた四六版176ページの回復テキストだ。実際に翻訳したものが日本のミーティングにも使われていて、「引きこもり」状態からの回復者も出ているという。
「引きこもり」状態の人が増えていることは、おおむね日本特有の現象であり、世界にも例がない。米国でも「引きこもり12ステップ」のグループや本がないことから、日本で制作することになったという「世界でも初めて」のテキストだ。
原作者は、摂食障害カウンセラーも務める会社員のhideさん(ペンネーム/39歳)で、自助グループ「ひきこもりアノニマス」(以下、HA)の作成委員会スタッフが編集協力して出版した。
HAとは、「引きこもりからよくなりたい」「抜け出したい」「社会生活を再開したい」という人たちのための相互援助・支援グループ。ミーティングではそれぞれの日々の悩みやステップワークの経験などが自由に分かち合われる。
hideさん自身、不仲な両親のもとで育ち、中学生のときに20人くらいから集団暴行を受けて、不登校になった。家でも摂食障害になり、引きこもる状態を繰り返した。
しかし、摂食障害の自助グループで「12ステップ」に出合い、回復と共にプログラムを勉強。今では、米国から同プログラムを手渡すプロバイダーの資格を取得した。
hideさんによると、プログラムは2つのポイントからできているという。人格形成と共同体のプログラムだ。
「自分の自我を育成していく道筋を示すことと、今まで孤独だった仲間に共感を得てもらって新たな力を出してもらうという目的です。これまでHAの仲間たちは、他の依存症の本を読んで実践して、勉強にはなったけど、引きこもりという実態に合わせた本が欲しかったのです。また、他の引きこもる仲間たちにも普及していきたいと考えました」
プログラムの出版化は、長年引きこもり状態にあって1人苦しんできた当事者や回復を目指して勉強する経験者たちのニーズから生まれたものと言える。
なじみのなかった一般の人たちにもわかりやすいよう、ステップ1から3では、「すべてのひきこもりが依存性を持つわけではないが、私たちの多くに、その特徴がある」と指摘。「ひきこもりの囚われから解放されて生きたいと思うのなら、問題を起こす原因から解決していかなければならない」として、「自分を超えた大きな力」を見つけて向き合い、「生き方を変える必要がある」と説明する。
「自分を超えた大きな力」とは、1人では打開できなかったことが、仲間の中に身を置いていることによって、見えなかった違う力を得ることができるということだ。
「自分の気持ちが強すぎると、すべてが見えない。人は1つのことに偏ると、それに支配されてしまって、その他の多くを忘れてしまう。深呼吸して、違う面の自分を見てみると力が抜ける。こうして新しい考え方を得るのが、ステップ1〜3です」(hideさん)
ネガティブな生き方を打破するため
「神」という表現を使っている
依存症の12ステッププログラムを活用した、引きこもり版回復テキスト『ひきこもりアノニマスの12ステップ』
また、テキストに頻繁に出てくる「神」という表現は、宗教の意味ではなく、宗派や信仰の有無にかかわらず、勉強できるという。
「引きこもりだったメンバーにも多いんですが、自分自身の自我が育っていないんです。親が不安定な家庭では、子どものときから自分の気持ちを出したくても、常に親の行動をうかがってピエロになってきた。親に影響された自分を超える力は何かというと、他の言葉がない。自分のネガティブな生き方を打破するために、神という表現を使っていると考えてもらえればと思います」(hideさん)
hideさんも他人とは話したくないし、誰も信用できなかったが、違う視点でミーティングに行ってみようと思って続けていったら、気持ちが楽になった。
「ミーティングの会場で人の中にいると、温泉に浸かるような感覚を得られた。苦しい自分から立ち直ろうと真剣に学んでいる人たちであれば、裏切りや他人を傷つける行為を自分のためにしないだろうと思って、人を信じられるようになったんです」
自我を出し仲間の共感を得る
一般にも役に立ちそうなテキスト
ステップ4〜7では、自分の内面にある恨みや恐れを出していく。hideさんは、依存症の回復者に、お金を取られることもなく自分の過去の話をずっと聞いてもらって、なぜ他人を恨んでなぜ恐れたのか、一緒に分析して考えてもらった。
そして、ステップ8になると、「自分の人間関係に目を向けて、傷つける結果になったパターンを見つけ出す」ことを目指す。4〜7で自分自身の特徴を見つめ、8〜9では人との関係において実際に行動していく。
「身近なところでイザコザがあっても、プログラムがあるのですぐに謝れる。心に決めてあることがあれば、声をかけて相談してみるといった本音の付き合いができるようになっていきました。8〜9で、いろいろな人間関係が回復するようです」(hideさん)
ステップ10以降では、囚われた感情を認識して取り除くことを根気強く実践していく。このプログラムは、「引きこもり関係」以外にも広く応用できる。
「周囲が“引きこもりをやめろ”と否定してしまうのはつらい。むしろ、アルコール依存症でもそうだが、家族自身が12ステップに取り組んでいます。
引きこもりから回復するための支援方法はいろいろあると思いますが、同じ苦しみの仲間たちと集まる共同体と、自分自身を成長させるテキストのような道筋も、参考の1つに取り入れてもらえればと思います」(hideさん)
同テキストは、定価1200円。購入するには、HAミーティングに参加するか、下記のホームページから申し込む。なお、売上はすべて、ひきこもりアノニマスグループによる引きこもり支援活動に使われる。
また、HA発起人の森のくまさん(ペンネーム)が、福岡で「HA福岡グループミーティング」を発足させる予定で、HAミーティングに行ってみたいという参加者を募集している。
問い合わせ先
http://hikikomorianonymous.org
http://diamond.jp/articles/-/113883
引きこもり相談「40代に対応」62% 自治体の窓口
2017/1/22 22:17
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引きこもりの相談を受け付けている全国の自治体窓口のうち、家族会が150カ所を調べたところ、40代のケースに対応した経験があるとの回答が62%に上ることが22日分かった。50代も多く、高年齢化の深刻な状況が明らかになった。
引きこもりが長期に及び40代〜50代になると、親も高齢になり、介護が必要になったり経済的に困窮したりして、親子で「共倒れ」になるリスクがある。国が昨年公表した引きこもりの実態調査では40代以上は対象外で、不登校や若者の就労など、主に青少年の問題と捉えられてきた。対策の見直しが迫られそうだ。
調査は「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が昨年11月〜今年1月に実施。2015年施行の生活困窮者自立支援法に基づく自治体の相談窓口(全国約1300カ所)のうち、地域や人口規模などに応じて選んだ215カ所に質問票を送付。150カ所から有効回答を得た。
引きこもりへの対応経験があったのは129カ所(86%)。本人の年齢(複数回答)は40代が93カ所(62%)と最も多く、続いて30代が78カ所(52%)、20代が69カ所(46%)で、50代も67カ所(45%)あった。
40代以上の場合、父母から相談を受けた窓口が46%と最多で、本人は28%。課題は「就職活動や仕事への定着」「人間関係やコミュニケーション」「経済的な困窮」が目立った。支援の連携先として挙がったのはハローワークや生活保護を担当する福祉事務所、介護施設などで、高年齢の引きこもり家庭特有の多様なニーズがうかがえる。
一方、すべての年代を対象にした自由回答では、「過疎地のため居場所などの社会資源がない」「対象者に合わせた(問題解決の)ゴール設定が難しい」などの悩みもあった。
家族会は主に「40歳以上、期間10年以上」の引きこもりの人がいる61世帯の実態も調査。約半数は支援を受けたものの、中断したことがあった。
調査チームの川北稔愛知教育大准教授(社会学)は「本人や家族の年齢が高くなると問題は複合化する。多様な支援メニューを充実させるとともに、息の長い取り組みが必要だ」と話している。〔共同〕
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ひきこもり、川北稔
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54万人の引きこもりが日本で社会問題に=「中国の未来も同じようなもの」「こういう生活をしてみたい」―中国ネット レコードチャイナ 2017年1月16日 00時00分 (2017年1月18日 00時00分 更新)
15日、中国中央テレビが、日本の引きこもり問題について紹介する番組を放送した。これに対し、中国のネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられた。資料写真。(Record China)
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2017年1月15日、中国中央テレビが、日本の引きこもり問題について紹介する番組を放送した。
番組では、日本には数年から十数年と長期間にわたって外出もせず、家族以外の人とは何の交流ももたない「引きこもり」と呼ばれる人たちがいると紹介。統計によれば、14歳から40歳の引きこもりが全国で54万人いるという。番組では、日本社会は労働力不足であり、しかも少子化となっているため、引きこもりの人たちが労働力となれず、結婚して子供を産むこともしないため、大きな社会問題となっていると伝えた。
これに対し、中国のネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられた。
「日本が自滅するのはいいことだ」
「この人たちはどうやって食べていっているんだ?」
「出かけないなんてあり得ないだろ?買い物に行って食事は作らないとだろ?」
「毎日家でアニメを見て暮らしているんだろうな」
「俺もお金さえあれば引きこもりになるのだが」
「俺も親戚とは誰とも会いたくない」
「中国の引きこもりは54万人どころの話ではないと思う」
「中国も同じような状態になりつつある」
「中国の未来も同じようなものだと思う」
「俺もこういう生活をしてみたい」
「俺はすでに5年引きこもっている」
「俺も似たようなものだな。知らない大都会で仕事以外に社会交流などない」(翻訳・編集/山中)
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http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170116/Recordchina_20170116000.html
「引きこもり」が長引くと社会復帰が難しくなる... 原因はシナプスの委縮にあった?
http://www.agingstyle.com/images/2016/12/as_20161227114553.jpg
社会が不安で離れているとより不安が増すという悪循環に(画像は京都大学プレスリリースより)
京都大学大学院・医学研究科の成宮周教授と、長崎大学の出口雄一准教授らの研究チームは、社会から隔離されると不安が増強されるのは、脳の神経回路が機能不全に陥るためだったとする研究結果を発表した。
2016年に実施された内閣府の調査では、さまざまな要因で就学や就労を回避して自宅に留まる、いわゆる「引きこもり」状態の人は、15〜39 歳で推計54万1000人にのぼるとされている。
そのうち約35%は引きこもり期間が7年以上と長期化している。いったん社会から隔絶すると不安がより増強され、社会復帰が困難になるという。成宮教授らは、不安が増強される原因は、脳機能メカニズムになんらかの問題が生じているためと推測。
他のマウスから隔離して、一匹のみで長期間飼育した、社会隔離モデルマウスを作成し、通常飼育されたマウスとの違いを調査した。マウスの不安感の有無や強弱は、高所に設置された壁のない細い通路を渡る試験によって判断している。
その結果、社会隔離マウスは、大脳の前部に存在する神経細胞の塊「側坐核」から、脳の中心部にある「腹側被蓋野」への神経伝達が機能不全を起こし、不安感が増強されていることが判明。
詳しく分析したところ、側坐核から腹側被蓋野へと続くシナプスの前部が、「mDia」というたんぱく質が作り出す線維に締めつけられ収縮し、神経伝達不全を起こしていることもわかった。また、社会隔離マウスにmDiaの作用を阻害する薬物を投与したところ、不安感が解消され、通常マウスに近い行動をとるようになったという。
成宮教授らは、社会隔離による不安増強のメカニズムを発見したことで、このメカニズムを標的とした抗不安薬の開発が期待できるとし、「今後はメカニズムが精神疾患やアルツハイマー病などにも影響しているか検討し、新しい治療法の開発に繋げたい」とコメントしている。
発表は、2016年11月22日、オープンアクセスの生命科学分野誌「Cell Reports」に掲載された。
医師・専門家が監修「Aging Style」
参考論文
mDia and ROCK Mediate Actin-Dependent Presynaptic Remodeling Regulating Synaptic Efficacy and Anxiety.
DOI: 10.1016/j.celrep.2016.10.088 PMID:27880913
http://www.agingstyle.com/print_window.html
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