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周囲に学校があったり人通りが多かったりすると「特定空き家」に指定されやすく注意が必要。事故が起きれば賠償請求される可能性も (c)朝日新聞社
あきらめるのは早い!実家の空き家ニーズは意外なところに〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170119-00000042-sasahi-life
AERA 2017年1月23日号
年末年始に実家に帰省して、親の老いを感じた人も多かったのではないだろうか。両親の介護や実家の管理、財産の処分、姑問題など、そろそろ考えてみませんか。AERA 2017年1月23日号では「家族問題」を大特集。
野村総合研究所によると、2033年に約3軒に1軒が空き家になる見通しだ。放置すれば「特定空き家」になりかねない。今からできる対策とは。
* * *
「相続した時点で買い手なんてつかないと思っていました。子どもや孫の代まで負の遺産として引き継いでいかなければと」
都内に住む女性Aさん(57)は一昨年の暮れに母を、昨年に父を相次いで亡くし、山口県内にある父母それぞれの実家と埼玉県内の両親が住んでいた家の計3軒の空き家を相続した。なかでも母方の実家は築約100年が経っているうえ、すでに10年近く空き家状態で劣化も進んでいた。冒頭の発言はこの母方の実家についてのものだ。
木造2階建てで建物面積200平方メートル強、土地面積はその2倍という広大な家。空き家になって間もないころに不動産業者を通して800万円弱で売りに出したこともあったが、結局買い手はつかなかった。
「2万円強の固定資産税と、シルバー人材センターに委託している草刈りの料金を、払い続けることになると思っていました」
●空き家バンクで売約
ところが、そんな空き家の売却話が昨夏、とんとん拍子でまとまった。きっかけは相続手続きの際に、空き家の所在地の自治体から戸籍謄本などの書類とともに送られてきた「空き家バンク」のチラシだった。
このまま何もしないよりはとダメもとでバンクを運営する自治体の窓口に連絡。7月に空き家を自治体職員とともに訪れ、外観や内部の写真を撮影し、直後にバンクのホームページ上に物件情報を掲載してもらった。売却希望額は最低額の50万円に設定。すると、掲載から1カ月ほどで買い手が現れたのだ。
残り2軒の空き家のうち、山口にある1軒は親戚に譲渡。
「埼玉の実家は売却してもいいし、今は賃貸のマンションに住んでいるので、引っ越してもいいかなと思っています」
Aさんのように複数軒の空き家を相続するケースは、今後増えるとみられる。夫婦が互いに一人っ子だとすれば、少なくとも互いの実家2軒を相続することになるうえ、親が空き家のまま放置していた祖父母宅を相続するというケースも増えていく。世代を超えた相続が続く負のスパイラルに陥りかねない。
「空き家や空き家予備軍を抱える高齢者に、問題の先送りをさせないよう、若い世代がサポートすることが必要です」
空き家問題に詳しい弁護士法人リレーションの川義郎弁護士はこう訴える。実家が空き家予備軍の場合は親とどう処分したいか話し合い、将来の売却などを見すえて定期的な補修や片づけをすべきだという。
「実家に帰るたびに物を捨てるのを手伝う、壁のペンキの塗り直しなどの補修について話し合うなど、地道な努力を積み重ねることが大切。こまめに対応していれば処分や管理もやりやすくなり、空き家になりにくい。結果的に家の資産価値を高めることになります」(川弁護士)
●処分希望とアピールを
「親の財産の棚卸しをし、全体を把握することも大切です」
こうアドバイスするのは『解決!空き家問題』著者の中川寛子さん。明らかに売れない物件は相続放棄も選択肢に入ってくる。この場合、すべての資産を同時に放棄しなければならないため、他の資産も把握し天秤にかけなければ結論が出せない。
実際に空き家を処分するとなった場合はどうするか。
「空き家を放置しているだけでは、近隣に家を使いたいというニーズがあってもつかめない。売却希望の旨と連絡先を書いた看板を掲げる程度のことでもいいので処分したい土地だとアピールしましょう」(中川さん)
処分方法としては(1)売却(2)更地にしての売却(3)賃貸(4)譲渡(5)自治体への寄付(6)相続放棄(7)解体・放置などが考えられる。
●賃貸には難しさも
「賃貸より、早い段階で売却したほうがシンプル。賃貸の場合、築30年を超え、老朽化しているような物件は、リフォームなどの費用が家賃収入を上回りかねない。2、3年で初期投資や維持費を回収できないものの賃貸はやめたほうがいい」
こう話すのは『どうする? 親の家の空き家問題』著者の大久保恭子さん。
賃貸の場合、家賃の未納などのトラブル解決に時間がかかったり、空室状態が数年続いてしまったりする可能性があり、リスクを伴う。何かあると遠方の実家に戻らなければならなくなるというのも結構な手間だ。
老朽化がひどい場合は解体も選択肢のひとつ。ただし更地にすると、固定資産税が最大6分の1に、都市計画税が同3分の1に軽減される特例が受けられなくなってしまい、税額が上がってしまう。かといって放置した結果、倒壊の恐れがあるなど周辺の生活環境に悪影響を与えかねない「特定空き家」に指定されると、これらの特例が受けられないうえ、行政から補修や解体を求められることになる。
売却や賃貸を希望して不動産会社に相談した結果、断られたり買い手が見つからなかったりする場合は、自治体の運営する空き家バンクに登録し、買い手・借り手が現れるのを待つのも手だ。仲介手数料を得るという目的がある不動産会社と違い、販売希望額が低額のものや、不動産会社が「売れにくい」と判断するものでも扱ってくれる。
「不動産に対するニーズの多様化に、今の不動産業界は対応できていない。不動産会社に『売れない』と言われても、それは今の不動産会社の枠の中で売れないだけかもしれず、あきらめる必要はありません」
と中川さん。たとえば今、空き家を地域の交流の場や保育施設、NPOの活動拠点などにし、街を活性化させようという動きが全国的に広がりつつある。しかしこうした活動のネックになっているのが、使える空き家を探し出すことの難しさ。マッチングができていないだけで、意外なところにニーズはある。
●流通は多様化の流れ
こうしたニーズに自治体として注目したのが東京都大田区。公益のために空き家を使いたい人と、空き家の所有者をマッチングする「空き家等地域貢献活用事業」を2014年12月から行っている。これまでに5件のマッチングが実現し、空き家を英会話サロンやグループホームなどに様変わりさせている。
貸し手・売り手側の情報発信だけでなく、物件を借りたい・買いたい側のニーズをホームページ上で公表しているのは、秋田市を拠点に活動しているNPO法人「住まい安心サポート秋田」。希望エリアと「駐車スペース2台」「事務所開設可能」といった条件や予算などの情報を掲載している。空き家を借りたい、買いたいと同NPOに連絡を取ってくる人は、空き家所有者の実に3倍にも上るという。地方だから空き家のニーズがないと決めつけるのは早計だ。
個別性の高い空き家の魅力を発信できる流通が、今後広がっていくのではと期待するのは前出の中川さん。
「たとえば『家いちば』(http://www.ieichiba.com/)という空き家や古ビルの情報掲示板では、老舗のジャズ喫茶に2千枚のレコード、スピーカー付きという物件が掲載されています。これはこれまでの不動産流通には絶対にのらない情報です」
家いちばは15年10月に運営を開始。全国から寄せられた空き家情報を無料で掲載しており、売買は直接交渉になる。まだ片づけができていない、値段が未定、親の所有、居住中で将来売りたいなど、通常の不動産流通にはのせられないような物件も掲載可能だ。
「流通させる人が知恵を絞れば、空き家はこれから面白くなるはずです」(中川さん)
(編集部・山口亮子)
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