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福島第二、全基廃炉へ 東電社長、知事に方針伝達
2018年6月14日 夕刊 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018061402000289.html
東京電力ホールディングスの小早川智明社長は十四日、福島県庁を訪れ、内堀雅雄知事に、福島第二原発(同県楢葉町、富岡町)の全四基を廃炉とする方向で検討すると伝えた。「このままあいまいでは復興の足かせになる」と理由を説明した。東電が第二原発の廃炉について方針を示すのは初めて。
二〇一一年の東日本大震災で事故を起こした福島第一原発は既に廃炉作業を進めており、福島県内の東電の原発十基が全て廃炉となる。これ以外に東電が保有する原発は柏崎刈羽1〜7号機(新潟県)だけで、東通原発(青森県)は建設がストップしている。
小早川社長は第一原発事故による根強い風評被害や住民の帰還が進まない状況も踏まえ、第二原発を廃炉とすることで「第一原発の廃炉とトータルで地元の安心に沿うべきだ」と語った。
内堀氏は「廃炉は福島県民の強い思い。全基廃炉とするよう要請する」と話した。会談後の会見では第二原発の廃炉方針について「(廃炉に向けた)重要なスタートになる」と語った。
小早川社長は会談後、記者団に「廃炉の具体的なスケジュールはこれから考える」と述べ、工程などは明言しなかった。
内堀氏は県内原発の全基廃炉を公約として掲げていた。今秋の知事選に再選を目指し、近く出馬を表明するとみられ、全基廃炉に一歩前進した成果を見せたい考え。
会談では、第一原発事故の対応拠点として使われてきたサッカー施設「Jヴィレッジ」(同県楢葉町、広野町)の復旧工事完了を報告した。
◆遅きに失した決断
<解説> 東京電力が福島第二原発を廃炉する方向となったのは当然のことで、むしろ決断は遅きに失したとさえ言える。
東日本大震災で津波に襲われた後、東電は発電機能も含めて福島第二の復旧作業を進めてきた。福島県からは廃炉を求められながらも、「検討中」を繰り返してきた。だが、福島第一原発事故で、今なお数多くの福島県民に避難を強い、普通の生活を奪った東電が、再び福島県で原発を稼働させられる日が来ると考える方がおかしくないか。
住民への損害賠償や除染がある程度進んだのは確かだが、原発事故が奪った生活基盤や地域社会が元の形に近づいたとは到底言えない。海側の浜通りでは「復興」と称し、ショッピングセンターなど箱ものが建設ラッシュ。だが、避難指示が解除された後も、住民帰還は進まない。安心して暮らせる状況にはまだないことが大きく影響している。
福島第二は大事故を回避できたものの、外部電源が生きていたなど幸運に恵まれたことが大きい。東北地方の太平洋側は、津波のリスクが非常に高い。福島第二はいずれも運転開始から三十年超。東電が再稼働を目指すとしても、新たな津波対策などに長い年月が必要となる。その間に、原則四十年間の運転制限に触れる。技術的な面からも福島第二の廃炉は当然と言える。 (編集委員・山川剛史)
<福島第二原発> 福島県楢葉町と富岡町に立地する東京電力の原発。炉心溶融事故を起こした福島第一原発の南約12キロにある。4基あり、第一原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)で、いずれも出力は110万キロワット。1982〜87年にかけて営業運転を開始した。東日本大震災の発生時は4基とも運転中で、第一原発同様、地震と津波の被害を受け、1、2、4号機は一時的に電源を喪失し冷却機能を失ったが、復旧。炉心溶融などは免れた。再稼働のために新規制基準に適合させるには多額の投資が必要な上、地元が強く反対している。
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