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原発撤退の世界的潮流と逆行 ババ抜きに利用される日本 日米原子力協定に縛られ 長周新聞
福島原発事故の収束の見通しもなく、いまだに10万人以上が避難生活をよぎなくされているなかで、安倍政府は九州電力の川内、玄海、四国電力の伊方、関西電力の高浜、大飯原発などの再稼働をあいついで強行しようとしている。
だが世界的に見ると福島事故を教訓に原発からの撤退が大きな流れとなっている。 とりわけヨーロッパで脱原発のすう勢が強まっている。 すでにドイツは福島事故が起こった年の2011年6月に、2022年までに国内にある17基の原発すべてを閉鎖することを決定している。 最近ではスイスで21日、政府の脱原発政策に対して是非を問う国民投票がおこなわれ、賛成が58・2%で過半数をこえた。 投票結果は法的拘束力を持つ。 台湾でも昨年10月、2025年に「原発ゼロ」にすることを決めた。
世界中が福島事故の教訓を衝撃的に受けとめ、国民と国益を守る最善策として原発からの撤退を選択している。 ところが福島事故を起こした日本の安倍政府は原発撤退どころか、原発輸出を成長戦略の柱にすえて原発再稼働を次次に強行している。 その背後に日米原子力協定に縛られた、対米従属の屈辱的な関係があることが如実に浮かび上がっている。
逃げ遅れて残務整理担わされ 東芝の顛末が物語る事
スイス政府は福島事故を受け、原発を段階的に廃止するとともに、電力需要を再生可能エネルギーで賄う「2050年までのエネルギー戦略」を策定した。 同戦略は、新規の原発建設を禁止し、既存の5カ所の原発については、老朽化により安全基準を満たさなくなった時点で廃炉とするとの方針である。 スイスには原発が五基あり、そのうち1基は19年に閉鎖する予定で、残りの4基については閉鎖の時期は設定されていない。
新法は「エネルギー戦略2050」と呼ばれる。 同戦略をめぐっては連邦会議(内閣)を構成する4党のうち、第一党で財界との結びつきが強い右派の国民党だけが反対し見直しを要求していた。 同党は「コストが高くつくうえ、太陽光および風力発電はスイスの景観に悪影響を及ぼす」として、同戦略の是非を問う国民投票の実施に必要な署名を集めた。
今回の国民投票では、スイスの全26州のうち、反対は4州にとどまった。 エネルギー相を兼務するロイトハルト大統領は記者会見で「国民が新たなエネルギー政策を支持し、原発の新設を求めていないことが示された」と指摘し、新法の一部は18年初めに施行されると語った。
ヨーロッパのなかではすでにドイツが2022までに原発を段階的に全面停止する方針を決定している。
福島事故が起こった翌日の2011年3月12日、ドイツのメルケル首相は「ドイツが大地震や津波に脅かされるわけではない」が「原発の安全性と(放射能汚染からの)人間の保護を第一に置く。 妥協は許されない」と表明した。 同日レトゲン環境相も「原子力は短期的には安いエネルギー源としてあらわれたが、重大事故が起こったときには、損失が大きすぎる」と指摘し、「重大事故を起こした旧ソ連のチェルノブイリの周囲30`圏が今も高い濃度の放射性物質に汚染され、閉鎖地域になっている」として「このような環境的、経済的損失がある」「将来の子どもにまで世代をこえて危害を及ぼすことになるかもしれない」と主張した。 メルケル政府は同年の6月6日、2022年までに原発から撤退する政策を閣議決定した。
イタリアでは、チェルノブイリ原発事故後の87年に一旦は国民投票で原発撤退を決定し90年までに原発を廃止したが、ベルルスコーニ首相が2008年に13年から4カ所の原発建設を発表していた。 だが福島事故後の2011年6月の国民投票で9割以上が反対し、原発建設は不可能になっている。
また、チェルノブイリ事故の放射能被害を直接受けた北欧諸国でも、福島事故を受けて原発撤退世論が高まった。 ベルギーでは福島事故以前に2025年までの原発撤退政策を決定している。 オーストリアでは原発の建設は完了しているが、チェルノブイリ事故後運転されることなく閉鎖されている。
スイス国民議会も2011年5月8日、国内の原発を34年までに順次廃止し、新規立地も禁止する政府方針を賛成多数で決定した。 だが、財界が「経済に打撃だ」と反対し、今回の国民投票となった経緯があるが、過半数の国民が原発撤退の政府方針を支持した。
福島事故を契機にとりわけヨーロッパ各国で原発からの撤退がすう勢となっていることに対して専門家は、1986年のチェルノブイリ原発事故の経験をあげている。 連邦工科大学チューリヒ校で原子力の歴史を研究する専門家は「日本以外で原発事故に対しこれほど大きく反応した地域はヨーロッパのほかにない」とのべ、その要因として「一つは、ヨーロッパでは70年代を中心に、すでに原発の危険性について社会全体で多くの議論がなされてきた。 チェルノブイリ原発事故後、ヨーロッパ全体が脱原発の方向に向かっていった」としている。
ドイツではチェルノブイリの事故をきっかけに原発見直しをおこない、1989年以降、原発の新規立地は中止し、運転開始後32年を経過した原発を順次廃止する方針を決定していた。 それに続いて、福島事故を受けて2022年までに国内の14基の原発を全部廃止することを決定した。 スイスでも、1990年の国民投票で2000年まで新規の原発は建設しないことを決め、1998年には5基を閉鎖している。
なおアメリカでは、1979年のスリーマイル島事故後に計画は次次と凍結され、1980年代後半からは新規の原発建設はほとんどない。
ドイツに続きスイスも 国民投票で脱原発
ヨーロッパでは福島事故後、企業が原発建設から撤退するすう勢も強まっている。
イギリスでは、2013年に原発新設への出資を予定していたセントリカ社が、出資のとりやめを発表した。福島事故を受けた新しい安全対策などの結果、コストが合わなくなったという理由であった。 ガスと電気事業をおこなうセントリカ社はイギリスでの原発新規計画に出資の意向を示していた最後のイギリス企業であった。 政府は外国企業による引き継ぎに期待をかけた。
そうしたもとで2012年10月には日立製作所がイギリスの原子力発電事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を約850億円で買収すると発表した。 日立は、ホライズン社の計画を引き継ぎ、イギリスの2カ所で130万`h級の原発を計4〜6基建設する計画を立てた。 ホライズン社は、ドイツ電力大手のRWEとエーオンの2社が2009年に設立した会社だが、ドイツ政府の脱原発方針を受け、2012年3月に売却する方針を表明していた。 日立がその尻ぬぐいをさせられる格好になっている。
58基の原発で電力の約75%を供給する原発大国フランスでも、福島事故後、原子力大手のアレバが巨額の負債を抱えて経営難に陥っている。 アレバはフィンランドで受注した原発の建設が遅れて経営が悪化し、フランス政府主導で再建が進められている。 なおフランスでは2015年7月に原発依存度を2025年までに50%まで下げることを定めた法律が採択されている。
世界最大の原子力企業を自任するアレバ社の2015年末の負債額は63億ユーロ(約7200億円)にのぼり、政府の資本注入と同時に分社を迫られた。 このアレバの尻ぬぐいをさせられているのが三菱重工業である。 今年4月に三菱重工はフランス政府系のフランス電力公社が筆頭株主の「アレバNP」に追加出資することを決めた。 三菱重工はこれとは別に、アレバの持ち株会社で核燃料の再処理を手がける「ニューコ」にも300億円を出資する方針であり、合計の出資額は700億円にのぼる。
アレバは原子炉の製造だけでなく、ウラン採掘から核燃料の再処理や廃炉技術まで幅広く手がける世界的な原子力総合企業である。 福島事故を機に市場環境は一変し、世界各地で受注の延期やキャンセルがあいつぐなど原発需要低迷のあおりで業績が悪化してきた。 とくにフィンランドで受注した原発建設の難航などで2015年12月期の税引き後利益が20億ユーロ(約2400億円)の赤字を計上したことで再建策が検討され、フランス政府が実質的に約九割出資することになった。 原子炉製造子会社のアレバNPと、その他の主要事業を移した新会社に分けるというもの。 新会社の株式は67%以上をフランス政府が保有し、残りの部分への出資を海外企業に求めており、その要請にこたえて三菱重工が出資する。
三菱重工とアレバの関係は、1991年に核燃料サイクル分野で合弁会社を設立したのを皮切りに、従来から極めて緊密だった。 だがアレバ・三菱連合の旗色は悪く、ベトナムの計画が16年11月、財政難などを理由に白紙撤回された。
三菱が経営難に陥ったアレバにあえて出資するのは、核燃サイクル維持が関連しているという見方が強い。 2018年には、非核兵器保有国の日本がプルトニウムを持つことを保証している日米原子力協定の期限が来る。 日米原子力協定を継続するためには核燃サイクルの旗を降ろせない事情があり、そのためにもアレバとの提携が重要との政治判断が働き、あえて巨額の出資に応じ経営難のつけをかぶると見られている。
さらに深刻なのは東芝である。 「原発ルネサンス」を煽ったアメリカ政府の計略ともいえる政策にのって、2006年に6000億円を投じてウェスチングハウス(WH)を買収した。 だが福島事故以後のアメリカにおける原発の安全審査の見直しや原発撤退のなかで、WHの原発事業は行き詰まり、巨額の損失をかかえこむ結果になった。 子会社であるWHの損失を「親会社」として東芝が丸がかえしなければならないはめに陥り、長年の経営努力で蓄積してきた技術部門も次次に身売りをよぎなくされ企業存続の危機に瀕している。
世界的な原発撤退の流れのなかで、東芝をはじめ日立や三菱といった日本の原子力メーカーがその尻ぬぐいをさせられ、「ババ」をつかまされ、企業の存続も危うくなるという事態に直面している。 東芝や三菱、日立など大手の日本企業が屋台骨を失うほどの尻ぬぐいをさせられているのは、福島事故後なお日本の安倍政府がアメリカの意向を受けて、原発推進の先頭に立っているからだ。
福島原発事故を教訓にするのであれば、日本政府が世界に先駆けて原発からの撤退を表明することこそ誰が見ても正当な道である。 ところが、事故当時の野田民主党政府が「2030年までに原発ゼロ」を閣議決定しようとしたところ、アメリカ政府から待ったがかかり、断念した経過がある。
アメリカ自身は1979年のスリーマイル島原発事故以後、危険な原発からの撤退を進め、新規の原発建設はほぼゼロである。 ところが、日本に対しては日米原子力協定で縛りつけ、福島事故が起きてもなお原発からの撤退は許さず、原発輸出、原発再稼働強行を迫ってきている。
日本の原子炉メーカーは東芝がWH、日立はGE(ゼネラル・エレクトリック)、三菱はアレバの生産ラインを受け持つ関係にあり、技術やウラン燃料など原発の中枢部分はすべてアメリカが握っている。 アメリカの許可なしには日本の原発は動かせないし、また原発からの撤退もできない。 原発輸出は、WHやGEの原子炉を東芝や日立が売り込みに走り、利益はアメリカが絞り上げる関係である。
福島原発事故を教訓にして、安全な原発はなく、国民を守るためには原発から撤退するほかないという決断が世界的に大きな流れとなっているなかで、福島事故を起こした日本の安倍政府が原発推進に拍車をかける異常さが浮き彫りになっている。 福島の二の舞を許さず、子子孫孫のためにもすべての原発をとめるには、日米原子力協定を破棄し、対米従属の鎖を断ち切る以外にないことがますます鮮明になっている。
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