© 平成20年 [伊勢雅臣]. The Globe Now: 哀しい中国工作員 http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h20/jog563.html 中国の秘密工作活動は、有為の青年たちの夢を 断ち、自らの健全な発展の芽を摘んでいる。 H20.09.07 ■1.長野を埋め尽くした赤い中国国旗■
4月26日、長野の町を赤い中国国旗が埋め尽くした。産経 新聞はこう報じている。[1] 長野市の北京五輪聖火リレーは、3000〜4000人 もの中国人留学生がコース沿道や式典会場を埋めつくすな か、「中国、頑張れ」とのシュプレヒコールが響き渡った。 ・・・ 組織化されたような応援の一方、沿道ではチベット支援 者の前をふさぎ、振り向きざまに「中国はひとつだ」と吐 き捨てる中国人留学生の姿も見られた。ある在日チベット 人は沿道で中国人留学生に囲まれ、「うそつき」呼ばわり されたという。 海外での聖火リレーの中国人留学生の応援をめぐっては 「体を使って相手の動きを封じ込めていいが、暴力は振る わない」などの指南書が参加者に配られた。中国人留学生 たちは「応援は自発的だ」と口をそろえ、チベット問題に は「別問題」と一様に口を閉ざした。ある留学生は「私た ちは理性的に愛国心を表現している」と中国政府と同じ言 葉を繰り返した。 中国の工作機関が、その動員力を垣間見せた瞬間であった。 ■2.「日本にいる中国のスパイは数万人規模」■ オーストラリアに政治亡命した中国の元外交官・陳用林が米 国議会で証言したところによれば、 ・オーストラリアだけで中国の工作員は千人以上いる。ス パイ防止法のない日本には、その数倍以上いるのは常識。 ・専門教育を受けたプロの工作員(基本同志)によってリ クルートされ、金銭を受け取って工作に協力する者(運 用同志)は、その数倍から10数倍いる。 とすると、日本に潜伏するプロの工作員は数千人規模、さら にその協力者は数万人規模ということになる。日本のある公安 関係者は「末端の活動家や協力者を含めると、日本にいる中国 のスパイは数万人規模に達するのではないか」との見方を明ら かにしているが、よく符合する。 留学生からの「運用同志」のリクルートがいかに行われるか、 東北の有力国立大学の博士課程に在籍していた陳慧文(仮名) が明らかにしている。陳は研究内容を盗んで中国に送った事が 発覚し、取り調べを受けたのだが、その過程での自白である。 実は、先生方は知らないかもしれないが、日本の主要な 大学には、学部生や大学院生、研究員を中心とした中国人 留学生の組織が作られています。年に1〜2回、東京の中 国大使館の教育処から幹部が派遣されてきて、大きな大会 を行い、中国政府や共産党の重要な指示を伝えられます。 [2,p156] ■3.中国大使館教育処の指示■ 中国からの国費留学生は政府から学費や生活費を出して貰っ ており、かつ政府機関から身元保証を受けている者が大半だ。 さらに国費留学生は、将来は中国に戻って政府系機関に就職す る者が多い。だから、中国大使館に命ぜられたら、会合に参加 せざるを得ない。 1年前の会合で、教育処の幹部が「諸君の所属している 研究機関や研究室での研究内容を具体的に提出してほしい」 と言い出したのです。しかも、「論文などの具体的な形に なっていれば、なお良い」ということでした。[1,p157] 陳の所属する研究室は画期的な超合金の開発を行っていた。 陳は大使館からの指示に従って、研究室のパソコンから論文の 原稿を盗み出し、大使館の幹部に渡した。それが上海の大学に 送られ、米国の学術雑誌に発表されたのである。この論文に注 目したドイツの大手自動車会社が、自動車ボディ用のプラスチッ ク合金の共同開発を持ちかけたという。 自分たちの研究内容が盗用されたことを知った東北の大学は、 上海の大学に抗議し、結局、中国側もそれを認めざるをえなく なって、米国の学術誌に論文取り消しを求めた。 陳は、研究データを盗み出したことは認めたものの、あくま でも中国大使館の指示に従っただけで、上海の大学への受け渡 しには関わっていないと主張。「日本での研究を続けさせてほ しい」と涙ながらに懇願したという。 まじめで勉強熱心な陳は、とても盗みをするような人物には 見えなかったという。しかし、大使館の指示に従わなければ、 国費も打ち切られ、帰国しても就職の道を閉ざされる。陳には 盗みをするより他に道はなかったのであろう。 ■4.「デンソー」中国人エンジニアの産業スパイ活動■ 中国人による産業スパイ事件として有名なのは、米国で逮捕 された2人の情報技術者の件だ。2006(平成18)年12月、カ リフォルニアのシリコン・バレーにあるIT企業で働く中国人 技術者2人が、中国政府が推進するハイテク研究発展計画のた めに、マイクロプロセッサの設計情報を盗み出したとして逮捕 された。二人は容疑を認め、経済スパイ法違反の適用を受けて いる。 同様な事件が日本でも起きて、産業界を震撼させた。大手自 動車部品メーカー「デンソー」のエンジン関連部門で設計を担 当していた中国人エンジニア林玉正(仮名)が大量の設計情報 を中国に送っていた事が発覚したのだ。 平成18(2006)年の10月から12月にかけて13万件以上 のデータが引き出された結果、社内のコンピュータ・システム がたびたび異常停止した事が、発端だった。コンピュータの通 信記録から、林の仕業と判明した。 会社側は林を追求したが、林は「私は何もしていません」と 突っぱねた。「それでは、君の家に行って確かめさせて貰うよ」 と言うと、「そこまで疑うのなら、勝手にすればいいでしょう」 マンションの前で、林は「散らかっているので、ちょっとの 間、外で待っていて貰えませんか」と一人で部屋に入った。し かし、林は30分しても出てこなかった。ドアを叩くなどして、 ようやく部屋に入ると、パソコンはハンマーで叩かれたように 壊されていて、ハードディスクのデータ復元も無理だった。 翌日、林は出社せず、中部国際空港から北京に高飛びした。 ■5.「まるで絵に描いたような工作員の経歴だ」■ デンソーは林を横領容疑で警察に告発した。約2週間後、自 宅前で張り込んでいた刑事が、帰ってきた林を逮捕した。 愛知県警の調査で、林は自宅のパソコンから大量のメールを 送受信していたことも判明した。また、この数ヶ月で日中間を 3往復もしており、重要な情報を中国側に手渡していた疑いが 強まった。 林の経歴も明らかになった。1986(昭和61)年、北京の大学 卒業後、ミサイルやロケットなどを開発する中国国営の軍事関 連会社に勤務。1990(平成2)年に企業派遣の留学生として来日 し、都内の工学系大学を卒業して、2001(平成13)年にデンソ ーに入社した。 デンソー側は、林の来日前の経歴を全く知らなかった。林が 経歴書に書かなかったからである。林は入社前から、デンソー のハイテク技術を盗み出そうとしていたのだろう。 林は在日中国人の自動車技術者が集まる「在日華人汽車工程 師協会」の副会長も務めていた。対日工作に詳しい公安幹部は こう語る。 軍関連企業を経て、日本に留学、在日中国人グループの リーダー的存在というのは、まるで絵に描いたような工作 員の経歴だ。 ■6.渡り歩く工作員■ しかし、パソコンが破壊されていたため、愛知県警はデータ が盗まれた確証を得ることができず、林を処分保留で釈放した。 その後、林はどこに姿をくらましたのか不明である。いまご ろ何食わぬ顔をして、別の日本企業に潜り込んでいる可能性も ある。 経済産業省が、平成18(2006)年秋、製造企業357社から 回答を得たアンケート調査では、全体の36%の企業が技術流 出が「あった」、あるいは「あったと思われる」と答えている。 しかし、ほとんどの日本企業は産業スパイの被害にあっても 公表しない。法整備も不完全なため、警察に被害届を出しても、 犯人が逮捕され、十分な処罰を受ける見込みもないし、企業イ メージを悪くさせるだけだからだ。 ■7.「北京の両親や兄弟に何があってもしらないぞ」■ 日本での中国人留学生は「運用同志」のリクルート対象とさ れるだけでなく、逆に民主化運動や法輪功などに携わった場合 は、弾圧のターゲットとされる。 東京都内の大学に留学している王偉(40歳、仮名)は、平 成17(2005)年1月に「民主主義研究会」(仮名)を立ち上げ、 月に1回の割合で、10人ほどのメンバーが集まり、議論をし てきた。自由な日本社会では、中国にいる時のように、周りの 目や耳を気にすることなく、「共産主義の転覆」といった発言 も飛び出していた。 王は会合での議事録を「民主主義研究会」のホームページに 逐一、掲載した。中国本土からも賛同のメールが寄せられるよ うになり、自分たちの活動が中国の民主化に役立っている、と の満足感を抱いていた。 勢いを得た王らは、中国人留学生を対象に「中国民主化セミ ナー」を企画した。日本の政治学者やジャーナリスト、そして 中国本土からは「反政府団体」とされている中国民主党幹部2 人を招いて、「中国の民主化の行方----共産党一党独裁放棄へ の道筋」をテーマに座談会を行うこととした。 ところが、メンバーの一人がこんな事を言い出した。 実は1週間前に、「中国国家安全省の張」という奴から 電話があって、「セミナーを止めろ。お前の仲間にも止め るように伝えろ。もし、止めないのならば、北京の両親や 兄弟に何があってもしらないぞ」と言ってきた。 すると、もう一人のメンバーも: なにっ、お前もか! 俺にも同じような電話があった。 俺の場合、昨日、お袋から電話があって、国家安全省の奴 らが親父やお袋と会って、「お前の息子が日本でやってい ることを止めさせろ。まじめに勉強するように言え」と言っ てきたというんだ。 ■8.「君たちの身の上に大変なことが降りかかりますよ」■ そこに王の携帯電話が鳴った。 中国国家安全省の張です。二人には伝えてあるのですが、 君たちの計画しているセミナーを中止してほしいのです。 中止しなければ、君たちの身の上に大変なことが降りかか りますよ。 国家安全省がどうして王の携帯番号を知ったのか。仲間に裏 切り者がいるのか。それでも王は、こんなことでセミナーを止 めたりはしない、と自信満々に答えた。 しかし、「大変なこと」は二日後に起こった。王がアパート に帰る途中、一方通行の狭い道を猛スピードで突進してきた乗 用車にはねられたのである。警察の現場検証では、ブレーキを かけた痕も認められなかったという。 王は1カ月も入院し、他のメンバーも王を避けるようになっ て、セミナーも中止せざるを得なくなった。王は退院してから も、複雑骨折をした左足を引きずるようになった。中国政府が 日本の文部科学省に申請していた奨学金も支給されなくなった。 日本に留まることもできず、やむなく王は中国に帰った。 北京に帰っても、公安要員に常に尾行された。大学の研究室 に戻ろうとしたが、教授から「大学の共産党委員会から、君の 面倒は一切見るなと言われているのだ」と断られた。就職先を 見つけようと、いろいろな会社を回ったが、いったん採用とさ れても、かならず2、3日後に取り消しの通知が来るのだった。 いまや王は両親のアパートから一歩も外に出ない生活を送っ ているという。 ■9.自国民を不幸にする工作活動■ このように、日本には数千人のプロ工作員がおり、彼らが数 万人規模の中国人留学生などを操って、技術を盗んだり、日本 での民主化運動の情報を集めたりさせている。だから、長野に 数千人の中国人留学生を送り込むことなど、造作もないことな のである。 日本政府や日本企業として、これらの工作員による技術盗用 や暴力行為を厳重に取り締まるべきなのは、言うまでもない。 同時に感ずるのは、現在の中国政府の工作活動が、いかにその 国民を不幸にし、かつ人材を無駄にしているか、ということで ある。 超合金の開発に携わっていた陳は論文の盗み出しを命ぜられ、 民主化活動を志していた王はテロのターゲットとされることで、 それぞれの道を断たれてしまった。デンソーの設計エンジニア までなった林にしても、プロ工作員にされていなければ、もっ とまっとうな道を歩めたはずである。 これらの青年たちの能力をそれぞれの志す分野で自由に発揮 させれば、中国としても独自の技術開発や健全な社会発展に役 立てられたはずである。 結局、独裁国家・中国はその秘密工作活動によって、自国民 を不幸にし、自らの健全な国家発展の芽を摘んでいるのである。 (文責:伊勢雅臣) ■「哀しい中国工作員」に寄せられたおたより
浩さんより かれこれ20年ほど前の大学院在学中にちょうど天安門事件 が起き、同じ研究室に在籍していた友人の中国人留学生3人の 苦悩を目の当たりにしたことを思い出しました。 民主化を要求して、党・政府の対応に抗議するデモに出かけ たいらしいのですが、おそらくデモの様子はビデオ撮影されて ブラックリストにのる可能性が高く、私なども短慮を諫めたも のです。王さんのような弾圧の対象となった例は、当時も多かっ たことでしょう。結局、中共は自国民を傷つけ、長期的に見れ ば国益も毀損しているわけです。 さて、米国大統領選挙に向けた共和党・民主党両党の大会を ネットなどで見ましたが、保守・リベラルの違いはあっても、 自国への誇りを訴えている点では各候補は共通していました (アメリカを呪う牧師の言葉を信じていないとすればですが)。 日本の状況はまるで正反対ですが、その中にあって、すでに5 百有余回を続けれおられる貴講座の活動に心より敬意を表しま す。 ■ 編集長・伊勢雅臣より アメリカの政治家の国益への奉仕ぶりは立派ですね。それを 評価する国民の徳性が表れたものでしょう。 http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h20/jog563.html
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