2021年 01月 09日 初詣代わりに、GRF邸の参拝を https://tannoy.exblog.jp/32090715/年始のイベントが軒並み先送りでの中、初日の仕事帰りの初詣代わりに、GRF邸の参拝をしてまいりました。前回が11月末でしたので1か月余のご無沙汰(?)でしたが、その間の変化には毎度のことながら、恐れ入りました。前回の機器構成、配置と全く変わっておらず、各スピーカーの位置調整と、音量、特に単体では聴こえないTW5の音量調整とを精緻にされたとのこと。 これだけでも聴いて行ってよということで、初めに流れたのが、鮫島有美子の『カチューシャの唄』。H.ドイチェのピアノ序奏の硬質な粒立ちと、減衰していく様に思わず、背筋が伸びました。微弱な持続音の鮮度と力感が更なる高みに達した感があります。ピントが完璧に合って細部の情報量が上がり、対象物の手触り感があがるだけでなく、背景の奥行きが深まる、それは前回の感想でもあったのですが、そのレベルが更に進んでいます。 「なんだこれは」という思いの整理がつかぬ間に、鮫島の歌い出し。彼女には失礼ながら、これほどの深い高密度な声質だったとは思いもよりませんでした。その声の響きと、背後のピアノとの距離・間合いと、響きが混じり合っていく姿の現実感は恐ろしいほどです。告白しますと、このCDは昔々買って、30年以上、棚に眠らせていたのです。それが申し訳ないやら、拙宅で聴いた時の落差への恐れやらで、大変複雑な心持です。 その後に聴かせて頂いたのは、L.ポップの『あなたが愛してくださるなら』というスッペ作曲のアリア。流石にポップは歌い手としての表現力の格が違います。でありながら、最初に聴かせて頂いた『カチューシャ』、作詞 島村抱月、中山晋平 作曲という大正浪漫の代名詞の様な曲の素晴らしさに引きずられてしまった様です。『あなたが愛してくださるなら』を、大正時代の浅草オペラとして歌詞を完璧に作り替えた歌謡曲『恋は優しい野辺の花よ』で聴きたくなってしまいました。それほど、鮫島の演奏と再生が素晴らしかったのです。ポップと鮫島がここまで伯仲した音楽として並ぶという体験は、自分の中では天地がひっくり返る出来事でした。 その後は、GRFさんの定番テーマの一つである、マーラーの4番。今日は鮫島盤のDENONのPCM録音スタッフへの敬意を表してか、珍しくインバル盤から始まりました。マーラーの大編成オーケストラになると、さらにこのシステムの力が発揮されます。空間の広がりと空気感、各パートの実在感、言葉で表現できる領域を超えてしまっています。ただ、演奏や録音のレベルの差を、あまりに明確にさらけ出してしまう怖さも更に強くなっています。 同じ曲をクレンペラー盤で聴いた時の、楽想をうねる様に提示してくる表現力、その表現を作り出すオーケストラのドライブ力は、比べること自体が無意味なほどの実力差です。また、ハイティンクのフィリップス旧盤とRCOライブ新盤の間にある20年の録音技術の進歩の一方で、別の録音のオリジナルに近いCDと最新技術のリマスターSACDの技術的後退、等々、様々な落差が白日の下に晒されてしまいます。 最後に聴かせて頂いたのが、ヤンソンス指揮コンセルトヘボウの、『ラヴァルス』。冒頭の霧の流れの様なコントラバスの低弦の響きから始まり、各楽器が輝くよう踊り乱れるこの曲のこの演奏は、このシステムが何をどこまで表現できるのかを分からせてくれました。 仕事始めついでの短時間の立ち寄りではありましたが、ここまでの衝撃になるとは。今年もまた、驚きの連続になることを予感させる「初詣」となりました。本当にありがとうございました。 (因みに、カチューシャの唄は1914年、恋は優しい野辺の花は1915年の初演だったとのこと、同じ時代の空気を想起させるこの2曲のプログラミングは当方の趣味までお見通しの様で、そちらでもまた「恐れ入りました」です)。 パグ太郎 初詣代わりに、GRF邸の参拝を_f0108399_11244249.jpg 仕事が始まったら、年始の「参拝」と言うことで、ご近所のパグ太郎さんが寄ってくれました。嬉しいお年賀ですね! 正月中、SPの位置の微調整に明け暮れて、いい音になったので、少しだけ聴いていただきました。前回はエリー・アメリングでしたが、今日は鮫島有美子の日本の歌のアルバムから、カチューシャを聴いていただきました。聴かせている私自身も驚くほどの良い音です。前後のSPの間に鮫島さんが立っているのですが、声が本当に美しい!そして、声が前に飛んできます。その立体感は、JBLのホーンで聴いているような音の飛び出し方です。今まで、奥行きのある音を追求していましたが、前に出てくるのは、はじめてです。 音が新鮮で、とても切れ味があり、電話で聞いてもその差がわかるほどです。音のふらつきがなくなり、定位がしっかりします。例えとしては少しニュアンスは違うのですが、雪道で二駆から四駆に変わったような安定感です。それはホールで録音した音源ばかりではなく、マルチモノでつくられた録音でも、音の安定性が変わります。 もっとも驚くのは、オーケストラの定位の見事さです。特に低弦のチェロとコントラバスの位置がはっきりとわかります。聞き取るのが難しいヴィオラも位置がわかりますから、今まで聞けなかった音が浮かび上がってきます。「ラヴァルス」のコントラバスの微妙な動きや、大太鼓の叩き方の違いもはっきりとわかります。コンサートホールを支配するグランカッサのスケールがでるのです。 この音は、装置を変えたわけでは有りません。変えたのは、位置調整だけです。今までが1ミリ単位の調整だとしたら、今回は0.1ミリ単位の微調整です。その0.1ミリは触るか触らないかのほどの差ですが、今回はその精度で位置調整を行いました。調整方法は、二つのSPの音・波を合わせるだけです。にじみが無い位置を探すだけなのですが・・。 すると、お互いを打ち消すことがなくなり、音のピントが合ってきます。通常の2つのSPでしたら、コツさえつかんだら誰でも出来ます。私は無指向性のSPを使っているから、比較的簡単なのですが、通常のSPでしたら、その1ミリの調整に角度の要素が入ってきます。まずぴったりと正面を向けた平行法でお試しください。 私の場合は無指向性ですから比較的簡単なのですが、八つのSPの位置をそろえなければなりません。この音は、一つ一つ丁寧に合わせた結果です。調整する量はほんの少しですが、結果は装置を全部変えたぐらい違うのです。オーディオの違う楽しみ方ですね。 https://tannoy.exblog.jp/32090715/
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