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2月23日CPAC(Conservative Political Action Conference)に出席したバノン氏(GettyImages)
アルカイダはバノン氏が“大好き”、イスラムとの戦い歓迎、テロ正当化
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9059
2017年3月7日 佐々木伸 (星槎大学客員教授) WEDGE Infinity
国際テロ組織アルカイダ系のアルマスラ紙はこのほど、トランプ・ホワイトハウスの黒幕といわれるスティーブン・バノン首席戦略官を顔写真付きの1面トップに掲載。同氏がイスラム過激主義について「キリスト対イスラムの戦い」と位置付けていることを歓迎、西側へのテロ攻撃を正当化した。彼らは「バノン氏が大好き」(専門家)なのだ。
■「イスラム・ファシズムへの世界戦争」
アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)支持のソーシャル・メディアはトランプ氏が大統領に当選した時、大喜びの投稿で溢れかえった。なぜか。イスラム強硬派のトランプ氏が過激派を攻撃してイスラム教徒の巻き添えが増えれば、反米感情が高まり、過激派組織に加わる人間も増えるという理屈だ。
アルマスラ紙の記事も基本的には同じ発想。記事はバノン氏が「イスラム勢力は平和的な手段では止められない」「イスラム対西側との戦いだけではなく、キリスト教とイスラム教の戦い」などと考えていると指摘。
自分たちこそイスラムに対する戦争を仕掛けられており、テロ攻撃などで反撃するのは正しい、と正当化している。ISは「イスラム対十字軍(キリスト教徒軍)」という図式を掲げ、彼らの戦いがイスラムの地を植民地化しようとする西側侵略軍への抵抗運動と訴えて、イスラム教徒の支持獲得を図ってきた。
バノン氏は2014年にバチカンで開催されたセミナーで「西側はイスラム・ファシズムに対する世界戦争が始まる段階にいる」と主張、先月にロシア制裁の見直し疑惑で更迭されたフリン大統領補佐官も「過激なイスラムによって鼓舞された邪悪な人々との世界戦争の最中にいる」と述べている。
トランプ大統領が就任演説で「自由世界」ではなく「文明世界」を防衛すると公約したのも、バノン氏ら大統領の顧問らがイデオロギーや政権の体制ではなく、文明や人種的な概念でとらえる世界観を持っていることが大きな理由だったろう。トランプ氏がロシアのプーチン大統領を評価しているのも、プーチン氏がロシア正教会と極めて近い関係にあることを考えると説得力がある。
つまり過激派にとってトランプ政権は自分たちの主張を補強してくれる存在であり、中でもバノン氏は逆の意味で人気者なのだ。だからトランプ政権が打ち出したイスラム諸国からの入国禁止も「イスラムが攻撃されている証拠」で、入国禁止措置は過激派にとっては「欧米との戦いをアピールするどんな宣伝よりも効果がある」(テロ専門家)ということだ。
■IS壊滅作戦まとまる
こうした中で国防総省はトランプ大統領から指示されたIS壊滅作戦をまとめ、ホワイトハウスで吟味中だ。ワシントン・ポスト紙などによると、基本的な方針はオバマ政権が採用していた枠組みから大きく離れていない。
主な内容としては、現在約500人のシリア駐留特殊部隊の増強、空爆強化、アパッチ攻撃ヘリ、火砲の投入の他、前線に近接したところへの部隊展開、交戦規定の緩和、軍への裁量権付与などが含まれている。特殊部隊が遠方からの砲撃だけではなく、前線での戦闘任務に参加するのかどうかは不明。
軍への裁量権付与については、これまでは緊急の作戦にホワイトハウスなどからの承認を得るのに時間がかかり支障が出ることがあった。しかし今度は現場の指揮官らに大きな裁量権が委ねられることになり、作戦の遂行がしやすくなるという面がある一方、現場が独走しかねないとの懸念も出ている。
もう一つ重要なことは、この新作戦でもクルド人とアラブ人の「シリア民主軍」(SDF)に地上戦を担わせることになった点だ。トルコはクルド人の参加には強く反対してきたが、トランプ政権は引き続きクルド人を地上戦の主力部隊とする見通しで、トルコの不満が残った。
SDF(5万人)は現在、ISの事実上の首都であるシリアのラッカまで約10キロに迫っており、作戦の第1段階である「ラッカ孤立化」は数週間以内に完了する見通し。その後、いよいよラッカへの突入作戦に入る。
イラクのISの最後の砦である北部のモスルの奪回は米軍の空爆支援を受けたイラク軍がすでにチグリス川の東側を制圧し、市の中心である西側の掃討作戦を遂行中。比較的順調に作戦が進んでいるとされ、5月までには奪回が可能との見方も出ている。
モスル郊外ではこのほど、ISの処刑場だったという直径30メートルほどの巨大な陥没穴が見つかった。ある者は背後から銃撃されて投げ込まれ、ある者は生きたまま蹴落とされたといわれる。この穴では数千人がISの手で処刑され、遺体は放置されたままだという。モスル奪回が近づく中で、ISの恐怖と残虐な爪痕も白日の下にさらされようとしている。
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