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米中対立、実際の戦争に発展するリスク
トランプ氏の挑発発言が火種、80年代の日米摩擦とは異質
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貿易に関して中国から譲歩を引き出すための切り札として台湾問題を使うことを示唆するトランプ次期米大統領の発言は、中国の神経を逆なでしている(英語音声、英語字幕あり)Photo: EPA/Reuters
By ANDREW BROWNE
2017 年 1 月 18 日 11:00 JST
――筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト
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【上海】中国はドナルド・トランプ次期米大統領が敵視している重商主義を発明したわけではない。近隣諸国のまねをしているだけだ。
日本は国内産業を保護する一方、輸出を推進することで豊かになった。韓国も同様だ。両国は自国通貨の為替操作を行い、政界とのつながりを持つ企業連合に有利な施策を雨のように降らせて国内の競争をゆがめた。
だが中国との大きな違いがある。日韓両国は、輸出と投資がけん引する成長を積極的に追い求める台湾やシンガポールなど他のアジア諸国とともに、当時から米国の同盟国であり友好国だった。一方、中国は戦略的な競争相手であり軍事的ライバルである。このことが迫り来る米中貿易戦争の危険度を高めている。
トランプ氏の大統領就任を間近に控えた今、この地域に垂れ込めている懸念は、貿易や領有権を巡る同氏の挑発的な発言が軍事衝突の引き金になるのかというものだ。
筆者の過去のコラム
中国のハイテク保護主義、トランプ氏は勝てるか
中国が破棄した南シナ海のルールブック
中国は慢心で失敗、今度はトランプ氏の番か
ウォール街の投資家はこの危険性を見くびっているようだ。再考したほうがいい。
今回は自動車や半導体、コンピューター、衛星などを巡って日本を相手に戦ったようなロナルド・レーガン政権時代の貿易戦争の再来にはならない。当時の対立は、日本による米国産業の乗っ取りが終わらないという米国側の妄想によって激化した。
外交努力で日米関係への打撃は抑えられた。米軍が駐留する日本は冷戦下のソ連に対するとりでだった。しかも日本は民主国家だ。
米政府にとって韓国との貿易摩擦の緩和にも同様の利害がかかっていた。韓国では数千人の米軍兵士が敵対する北朝鮮とにらみ合っている。
こうしたアジア諸国だけでなく世界各国に対して、米政府は貿易を外交の道具だととらえている。つまり、ミシガン州デトロイトやオハイオ州クリーブランドなどの雇用が外国からの輸入によって失われたのは、パックスアメリカーナ(米国主導の世界秩序)を維持するための代価だったのだ。
「一つの中国」取引発言の重み
だがトランプ氏は中国に限って、このトレードオフに終止符を打つようなシグナルを、非外交的な手厳しい言葉で発している。先週のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、米中関係を丸ごと吹き飛ばしかねないような発言をした。為替操作などトランプ氏が略奪的とみなしている中国の貿易・投資慣行が改善されるまで、中国が主張する「一つの中国」原則には縛られないことを示唆したのだ。
この発言は安全保障・軍事面で深い意味を含んでいる。台湾は地域の火種だ。中国は台湾を不可分の領土だととらえている。「一つの中国」は統一へ向けた政治的な熱望を表現しているだけではなく、中国のアイデンティティーの中核でもある。中国の指導者たちはこの原則を守るために戦うだろう。台湾を失うわけにはいかない。
南シナ海でも同様に中国の国家的決意とプライドが混ざり合っている。
このため次期国務長官に指名されたレックス・ティラーソン氏が、南シナ海の海路に沿って中国が造成した人工島への同国のアクセスを認めないとした発言も、トランプ氏の好戦的な発言を警戒する地域の各国にとっては同じく衝撃的なものだった。これは実際問題として、中国が領有権を主張する海域での海上封鎖を意味する――すなわち戦争行為だ。
ティラーソン氏が先週行われた上院外交委員会での骨の折れる指名承認公聴会でうっかり口を滑らせたのかどうかは分からない。しかしその後、発言の撤回も釈明もない。いずれにしても同氏の発言は地域の不安を高めることになった。
トランプ氏は周囲にいる反中タカ派の意見に耳を傾けているようだ。その中には、ホワイトハウスに新設される「国家通商会議」のトップに指名されたピーター・ナバロ氏も含まれる。同氏は「The Coming China Wars(チャイナ・ウォーズ)」や「Crouching Tiger(米中もし戦わば)」の著者として知られている。これらの書籍で同氏は、公平な競争環境を作るためだけでなく軍事的な対戦相手の能力を鈍らせるためにも、対中貿易制裁の発動を強く訴えている。
日本は円高の容認や、自動車輸出の自主規制、米国内での工場建設と雇用創出などを通して貿易摩擦を一部緩和させた。どういう形であれ日本を脅威だとみなす米国人は今やほとんどいない。中国が日本を覆い隠してしまった。
「日本株式会社」との対決より複雑
中国の新重商主義がもたらす結果は、その経済規模によって増幅されている。
中国の過剰生産品――特に鉄鋼とアルミニウム――は世界市場にあふれている。さらに言えば、あまり知られていないものの、経済の保護主義は習近平国家主席の政治的土台を形成する不可欠な要素になっている。習氏はこれを国家の安全保障政策に結合させ、重要なインフラにテクノロジーを提供する外国のサプライヤーを閉め出している。さらに、米国をますます敵視する好戦的なナショナリズムと結びつけている。
こうしたからくりを解体する試みと比べると、1980年代に「日本株式会社」と対決した米国の取り組みは単純に見える。
トランプ氏のタカ派の顧問らは――いくらか根拠を持って――米国はすでに中国と貿易戦争の渦中にあると話す。
中国側には停戦を求める理由はほとんどない。中国はトランプ氏の当選を、深く分断された米国が危機に陥り、世界の覇者としての時代が終わりに近づいている証しだととらえている。欧州も崩壊しかかっている今、中国は米国主導の世界秩序を作り直す歴史的好機を見いだしている。
世界1位、2位の経済大国同士が衝突するとき、どちら側につくかの選択を迫られることはアジア太平洋諸国にとって悪夢の再来だ。米中間で貿易戦争が始まるのは確実だろうが、それが実際の戦争に発展しないことを各国は願うしかない。
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トランプ氏が台湾問題を中国との交渉材料に使う姿勢を見せていることに中国側では神経を尖らせている(英語音声、英語字幕あり)Photo: EPA/Reuters
By JEREMY PAGE, LINGLING WEI AND CHUN HAN WONG
2017 年 1 月 18 日 10:36 JST 更新
【北京】米国のドナルド・トランプ次期大統領が中国に批判的なロバート・ライトハイザー氏を米通商代表部(USTR)代表に選んだ時、中国商務省は政府系シンクタンクのシニアエコノミストを呼び、「貿易戦争の影響に関する研究を指揮する」よう指示した。
数日後、在ワシントン中国大使館は米国務省に接触し、トランプ氏が次期国務長官に指名したレックス・ティラーソン氏の議会証言についてたずねた。中国が南シナ海に造成した人工島の封鎖を同氏が示唆したのは、「政策あるいは個人的見解」の表明かと聞いたのだ。
中国政府はこうした動きによってトランプ次期米政権に備えていると言えそうだ。次期政権には米中関係を根底からを揺るがそうと決めている気配はあるものの、具体的な政策プランに関する詳細はほとんど示されていない。
次期大統領報道官に指名されたショーン・スパイサー氏は、中国が貿易面で報復措置に出る可能性についての質問に回答を控えた。国務省当局者らは、中国の懸念を受けた米国の対応についてコメントを控えた。中国外務省からのコメントは得られていない。
中国の公の反応は当初こそ抑えめだったが、トランプ氏の13日の発言以来、舌鋒(ぜっぽう)を強めている。トランプ氏は同日ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「1つの中国」の原則に交渉の余地があるとする認識をあらためて強調した。米国はこれまで、台湾を独立国として認めないこの原則を尊重してきた。
トランプ氏の発言を受けて中国外務省は14日、1979年の米中国交正常化を支えている同原則に「交渉の余地はない」と一蹴した。
激しい応酬は不可避と警告
政府系の英字紙チャイナ・デーリーは16日付の社説で、トランプ氏が「火遊びをしている」と警告。「トランプ氏が就任後にこの手を使う気なら、打撃を伴う激しい応酬は避けられないだろう。中国政府には本気で立ち向かう以外の選択肢しかなくなる」と論じた。
中国外務省の華春螢報道官は16日の定例会見で、中国政府がトランプ氏側に直接抗議したかどうか、また、駐米大使など中国の当局者がトランプ氏ないし政権移行チームのメンバーと会ったかどうかを聞かれ、「以前に述べたように、われわれは現政権と次期政権に接触している」とはぐらかした。
しかし事情に詳しい関係者によると、中国の当局者や研究者は水面下で米国側に接触し、トランプ氏や政権移行チームのメンバーがツイッターなどで中国について連発する痛烈な言葉を解釈しようと試みている。
米国防総省の元幹部マイケル・ピルズベリー氏も相談を受けた。トランプ氏のチームに非公式に助言している同氏はこのほど北京を訪れ、中国の国際関係専門家との会合に出席し、市民や軍当局者に会った。
ピルズベリー氏はWSJに対し、「彼らはトランプ氏の顧問らの政策の違いを理解するとともに、伝達手段を確立しようとしている」と述べた。「そして、第1ラウンドは失敗しそうだと感じている」という。
北京訪問でピルズベリー氏が受けた印象は、中国側が譲れない問題にトランプ氏が手出ししない限り、中国はトランプ氏の最大の関心事である貿易や米経済への支援などで交渉することに異存はないというものだ。
ピルズベリー氏は接触してきた相手に、交渉では予想されにくい存在になることを勧めるトランプ氏の著書の1節を紹介したという。
外交官や中国の研究者の話では、中国は予測不可能な相手との交渉には慣れていない。中国政府はむしろ、自らが予想のつかない交渉相手であることや、共産党指導部の真意について米国から問いただされているほうに慣れているからだ。
中国が探るトランプ氏の真意
米戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレーザー氏は、皮肉なことに「中国政府にとって最も意外なのはトランプ氏のこの側面だろう。安定した米中関係が両国の国益かなうとみているため、トランプ氏がなぜ米国の国益に反する行為に出るのか不思議に思っている」と述べた。
グレーザー氏は、中国の関係者がひっきりなしにCSISを訪れ、次期米政権の中国政策について聞いてくると話した。
中国の専門家や外交官は、習近平国家主席の国内での権威は経済減速に対処する能力にかかっているため、不確実性は習氏にとって特に厄介だと話す。
これらの人々によれば、中国政府が最も動揺したのは台湾に関するトランプ氏の発言のようだ。中国は台湾について、必要であれば武力によって、本土と統合すべき省だとみなしている。中国が台湾について確認するまで、駐中国大使への指名が決まったアイオワ州知事テリー・ブランスタッド氏の着任を渋る可能性があるとみるアナリストもいる。
中国は貿易戦争の観測にも懸念を募らせている。経済が一段と減速する恐れがあるためだ。
関係者らによると、この問題に関する研究を中国商務省から依頼された冒頭のエコノミストは中国社会科学院財経戦略研究院の裴長洪氏(62)だ。
ある関係者は「トランプ氏が選んだ閣僚はみな中国に対してタカ派に見える」と述べ、「対米貿易摩擦が激化する可能性に備える必要がある」との見方を示した。
裴氏は、対外投資の使い方や習氏の「一帯一路」構想計画の実施など、貿易や投資に関するアドバイスを政府機関から頻繁に求められる人物だ。
裴氏も中国商務省もコメント要請に回答しなかった。
関係者らによれば、中国の当局者や研究者らは、南シナ海についてのトランプ氏の意向について米国の当局者や研究者に何度もたずねている。
ある関係者の話では、中国大使館がティラーソン氏の発言を巡り米国務省に接触した際、米国の当局者は次期政権発足まで米国の政策は変わらないと請け負い、トランプ政権が自ら軌道を定めるのを待つよう促した。
中国の当局者は米中戦略経済対話といった高レベルの米中会合の継続を確約するよう米当局者に求めてきたという。
阿里巴巴集団(アリババグループ)の馬雲(ジャック・マー)会長は先週トランプ氏と会談し、約100万の雇用創出に協力すると約束した。
中国の崔天凱・駐米大使は12日夜、中国商業連合会がニューヨークで主催した夕食会で講演した。この会には、トランプ氏と面識のあるヘンリー・キッシンジャー元国務長官などが出席。その隣には安邦保険集団の呉小暉会長が座っていた。
崔氏は出席者に対し、「領海を巡る他国の係争について話す時、一部の人たちが慎重になってくれるといいのだが」と述べた。
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習主席のダボス参加、表向きの顔と裏の意図
トランプ氏のツイート攻撃 次の「標的」はどこだ?
中国の対米貿易、切っても切れない関係
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwid_JbZtsvRAhXLmpQKHfjZC9sQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582564392771733870&usg=AFQjCNFVHDKD8I9gYR-Sl67a33XiC-6ydg
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