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【寄稿】
トランプ氏がシリアの悪夢を終わらせる方法
ロシアとの協力を実現させる唯一の方法はシリアの連邦化
シリア北部のアレッポをパトロールする政権側の部隊(14日) PHOTO: AFP/GETTY IMAGES
By MICHAEL O’HANLON
2016 年 12 月 19 日 10:28 JST
――筆者のマイケル・オハンロン氏はブルッキングス研究所のシニアフェロー
***
米大統領選挙中、ドナルド・トランプ氏の外交政策に関する見解の多くは二転三転した。次期大統領に選出されてからもトランプ氏は予測不可能なままだ。だがトランプ氏のシリアに対する直感的な発言は、バラク・オバマ大統領が失敗した戦略に取って代わる実行可能な代替案の予兆かもしれない。
オバマ大統領の姿勢――過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いとシリアのバシャール・アサド大統領の追放に同時に集中しながら、米国のリソースをほとんど振り分けていなかった――はこの人道上の大災禍を止めるどころか封じ込めることさえできなかった。2011年に内戦が始まってから、シリアの人口の約半分は住む家を追われ、約50万人が死亡した。内戦は、かつてイラクの4分の1を掌握し、欧米諸国を標的に攻撃を仕掛けていたISにつけ入るすきを与えた。ISは弱体化しつつあるものの、ISおよび国際テロ組織「アルカイダ」と同調するシリア国内の勢力は敗北からはほど遠く、内戦に終わりは見えない。
トランプ氏は対シリア政策について、ISの早急な打倒を目指し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と手を組むことを優先すると表明している。アサド大統領を権力の座から追放するいかなる試みも先送りされることになるだろう。ヨルダンへの最近の渡航で私は、IS打倒を図りながら同時にアサド大統領の追放を目指すより、このアプローチのほうが現実的というのが大方の見方であることを知った。ISとシリアで活動するアルカイダ系組織による差し迫った脅威を考えれば、こうした戦略は訴えるものがある。
だが、このアプローチは別の危険もはらんでいる。アサド氏がシリア全土に安定をもたらす人物として正当な統治者になるためには、同氏の手はあまりにも血で汚れている。国内で多数派を占めるスンニ派の多くの分派から軽蔑されてもいる――それも正当な理由があってのことだ。5年もの間、彼らは自分たちの住む地域が「たる爆弾」や「炸裂弾」による攻撃を受け、同胞たちが食べ物や医療、学校、仕事を奪われていく姿を目の当たりにしてきた。米国がISを倒したとしても、そうした戦闘行為によって権利を奪われた人々の辛苦につけ込んで、今度は別の過激派組織が得をすることになるだけかもしれない。新たなジハーディスト(聖戦主義者)の波が次に生まれるのは確実であり、戦争も続くのだ。
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シリア北部の反体制派の拠点アレッポをロシアが後ろ盾となっている政権側の部隊が制圧。トランプ氏の対シリア戦略はどうあるべきか。米外交評議会のシニアフェロー、マックス・ブート氏が解説(英語音声、英語字幕あり)Photo: European Pressphoto Agency
テロリスト組織一掃を目指したロシアとの協力がうまくいくのは、米国がその後の計画を持っている場合に限られる。その計画はシリアのスンニ派、クルド人組織、そしてトルコやヨルダン、レバノン、イスラエル、ペルシャ湾諸国が受け入れ可能なものでなければならない。また、何であれ米国とロシアの新たな軍事協力態勢が発表されると同時に、その計画も公の場で説明される必要がある。特に、スンニ派アラブ人とクルド人に対し、大量殺人を行ってきたアサド政権の統治下で暮らす必要のない代替案が約束されなければならない。家族や大勢の近隣住民たちを殺害してきたリーダーに敬意を払わなければならないような状況に二度と彼らを置いてはいけない。
全土を自治区に分ける連邦制
和平を実現するために、シリアは自治地域を数多く設ける必要があるだろう。選択肢の一つは、全土を自治区に分ける連邦制だ。あまり望ましくはないが、少なくとも受け入れ可能な代替案は、全体として中央集権国家でありながら、一部に自治地域を設ける方法だ。イラクでクルド人居住地が四半世紀にわたって機能している仕組みと同じようなものだ。
理想はアサド大統領の追放だ。しかし、最近の戦況とロシアの関与を考えれば、アサド氏の追放という見通しは今のところ現実的ではない。それよりも現実的なのは、アサド氏が新たな連邦制の下、ひとつの自治地区を治めるという体制だ。
あまり望ましくはないが、スンニ派とクルド人の居住区が二度とアサド氏による直接的な統治を受けず、アサド氏の部隊が配備されることはないという条件のもとに、アサド氏が大統領に残るというのも可能だ。
だが、反体制派が拠点としていたアレッポの陥落は状況を複雑にした。アサド氏はシリアの都市部を実質的に支配しており、それを自ら手放す可能性は低い。ここに考え得る2つの道がある。1つ目は、戦況が変わり国内の一部主要都市を再び争奪戦の場にするまで、穏健的反体制派を武装強化する方法が考えられる。だが、トランプ氏はそうしたアプローチに関心はないようだ。
2つ目の選択肢は、主にスンニ派とクルド人のために新たな土地で文字通り街を再建する間、穏健派には限られた治安支援のみ与えるというものだ。これは中国が主要都市をゼロから作り上げた方法だ。内戦終結と再建支援の見通しがあれば、アサド氏とロシアはこの選択肢を支持したくなるだろう。追い詰められているアサド氏は今支配している地域を堅持するかもしれないが、それ以上は統治力を広げないよう説得することは可能だろう。
国際平和維持部隊と各国の役割
この取り決めは交渉によって成文化され、国際平和維持部隊によって守られるべきである。この中に現在シリア西部に展開しているロシア部隊と、北部のトルコ部隊を含むことは可能だ。アラブ諸国と南アジア、欧州の各国も貢献できるだろう。米国は後方支援および進行中のテロリスト対策のほか、全体的な指揮統制で手助けできるだろう。
スンニ派およびクルド人の自治地区の治安は地元の警察組織が担うことにし、さらに国際社会が直接支援して軍隊に準じる部隊を結成・訓練・武装させてもいいだろう。こうした部隊にはごく限られた重火器しか必要ないとしておけば、アサド氏と交渉しやすいだろう。諸外国の勢力は反体制派に首都ダマスカスや、他の自治政府が中枢を置く都市を攻撃する武力を与えるのを止めることで合意し、治安関連の支援を正規かつ十分な監視下にある地元警察や保安隊のみに提供する。
この新生シリアのための外国の支援は主として自治地区に提供されるべきだ。そうすれば新たな各自治政府に対する国際的な影響力が増す。一方、欧州や米国、湾岸諸国からのそうした援助が、アサド氏や同氏の仲間たちが支配していた地域にも流れていくのをアサド氏が見たいのであれば、スンニ派とクルド人の自治を受け入れるだけでなく、アサド氏の中央政府での将来の役割を迅速に削減する計画にも本気で取り組まなくてはならない。
多くのシリア人は連邦制という考えが気に入らないだろう。国の半分を中央政府が統治し、残り半分を3つか4つの自治区に分けるという考えさえも好きになれないだろう。だがそうした取り決めは恒久的なものである必要はない。より権限の強い中央政府を再建すべきかどうかの検討を10年以内に義務づける条項を盛り込んでもいい。
自治地区の境界線をどこに引くかといった詳細の多くは、和平協議の中で話し合うことができる。だが大きな展望の作成はすぐにとりかかるべきだ。ロシアとの協力と新たなシリアの創生という2つの計画を組み合わせれば、トランプ氏はこの悲劇的な内戦についに終止符を打つ大統領になれるはずだ。
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イスラム国 兵器製造の現場
過激派組織「イスラム国」(IS)の武器製造拠点とされているモスルで、大量の迫撃砲やミサイルが発見された。ここ数年でISの武器製造能力は格段に向上し、モスルでの戦いに向けても数千発のロケット砲が製造された見られている。
2016 年 12 月 19 日 08:04 JST
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An Iraqi army convoy traveling near Mosul, the likely hub for Islamic State weapons production, according to the U.S.-led coalition in Iraq.
A mortar-production facility near Mosul.
A mortar round made by Islamic State.
Researchers estimate that Islamic State built thousands of rockets in the build-up to the battle for Mosul.
A launch rail made by Islamic State forces.
Scrap metal near an ordnance-production facility in Gogjali.
Combined ignition and propelling cartridges for mortar rounds.
Islamic State makes rockets in several ‘huge’ factories, an Iraqi Defense Ministry spokesman said.
Rocket bases found in Qaraqosh.
Detonating devices for mortar rounds.
Potassium nitrate, a raw material in the production of munitions, from a Turkish distributor.
A detonating fuse for a mortar round found in Gogjali.
Islamic State maintains a regionwide monitoring system to ensure that a mortar round manufactured in one plant will be able to be fired from a mortar tube made elsewhere, researchers said.
Damaged buildings in Qaraqosh, in northern Iraq.
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関連リンク:
「イスラム国」特集
http://jp.wsj.com/articles/SB11484601320931144569304582505423272440472
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