http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/192.html
Tweet |
中国が尖閣諸島を占領する日 〜最悪のシナリオを公開する 突かれる日本の「法的不備」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50185
2016.11.21 渡部 悦和 現代ビジネス
中国が尖閣諸島を侵攻するときは、200隻以上6000人もの「漁民」を装った準兵士集団が襲ってくる――。そう語るのは、元自衛隊最高幹部の渡部悦和氏。このたび上梓した『米中戦争 そのとき日本は』から日中紛争のシナリオを公開する。
■3.11の時、中露は日本への偵察を強めていた
日本人は今、内憂外患が絶えない困難な時代を生きている。
内憂については、我が国は1000年に一度の地殻変動の大激動期にある。阪神・淡路大震災や東日本大震災等を経験してきたし、今後も首都直下地震及び南海トラフ大震災はほぼ確実に発生する。
我々は発生確率の高いこれらの大震災が引き起こす未曾有の危機に備えなければならない。大震災に対処できる強靱な社会、強靱なインフラを構築する必要がある。
外患は、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境であり、より具体的には中国、ロシア、北朝鮮の存在だ。言うまでもなく、最大の脅威は中国である。
急激な経済発展を遂げ世界第2位の経済大国に上り詰め、そしてその経済力を背景として世界第2位の軍事費を誇る中国は、富国強軍を選択し、中華民族の偉大なる復興を実現しようとしている。
アジア地域から米国を追い出し、この地域の覇権大国になろうとしている。その表れが、東シナ海や南シナ海における領土要求を絡めた強圧的な態度である。日本に対しては、歴史的な我が国への恨みを背景とする敵対的な政策や言動が目立つ。
とくに尖閣諸島問題に関しては、海警局の公船が領海侵犯を繰り返す一方で、中国軍戦闘機はいつ不測の事態が起こってもおかしくないきわめて危険な行動を繰り返している。
ロシアは、ウラジーミル・プーチン大統領のもとで、強いロシアの復活を目的として急速な軍事力の増強を推進し、クリミア併合やウクライナ東部での軍事力行使、シリアでの乱暴な軍事活動を繰り返してきた。我が国の北方領土の返還要求にも依然として応じていない。
北朝鮮は、金正恩独裁体制のもとで核・弾道ミサイルの開発に狂奔し、日本にとっても無視できない存在になっている。
筆者が最も恐れる最悪のシナリオは、同時に生起する複合事態である。
2011年に発生した東日本大震災は複数の事態が同時に生起する複合事態であった。当時の自衛隊は、地震、津波、原子力発電所事故に同時に対処する必要に迫られた上、周辺諸国の情報偵察活動も続けなければならなかった。
多くの日本人は知らない事実だが、当時、自衛隊が大震災対処で忙殺されている間に、その自衛隊の警戒態勢を試すかのように周辺諸国(とくに中国とロシア)が軍事偵察を活発化させた。その姿勢には強い憤りを感じたものだ。しかし、それが我が国周辺の厳しい安全保障環境であると改めて実感したことを思い出す。
筆者が恐れる「同時に生起する複合事態」の一例は2020年に開催される東京オリンピック関連である。この大会に備えてテロやサイバー攻撃への対策が議論されているが、大会直前や開催中の首都直下地震の発生及び対処は考えられているだろうか。
筆者がさらに恐れる同時複合事態は、首都直下地震(または南海トラフ大震災)の発生に連動した日本各地でのテロ活動、もしくは、尖閣諸島など日本領土の一部占領である。
この最悪シナリオは、3・11の大震災の経験に基づく筆者の実感だ。
■日中紛争シナリオ
日中が激突するシナリオは何パターンも考えられるが、本稿では「尖閣諸島シナリオ」「南西諸島シナリオ」の二つについて分析し、いかに対処すべきかを考えてみたい。
いかなる日中紛争シナリオにおいても、非戦闘員ないしは特殊作戦部隊による破壊活動は必ず発生すると覚悟すべきであろう。
平時から中国軍や政府機関の工作員、そのシンパで日本で生活する中国人、中国人観光客が、沖縄をはじめとする在日米軍基地や自衛隊基地の周辺に入っていると想定すべきである。
彼らの目標はまず重要インフラの破壊、さらにハードルは高いが在日米軍や自衛隊の基地、レーダーサイト、港湾に停泊する米海軍や海上自衛隊の艦艇及びC4ISR施設、空港に駐機中の航空機、滑走路を破壊する点にある。
とくに南西諸島で想定される紛争においては、中国軍の特殊作戦部隊が空(ヘリコプターを用いて敵地へ部隊を派兵する「ヘリボーン作戦」。小規模な空挺降下も考えられる)または海から侵入し、破壊活動や重要目標奪取に従事するとともに、ミサイルや航空機の火力発揮を容易にするためのセンサーの役割を果たすことになろう。
中国軍は、こうした破壊活動に先行してサイバー攻撃、米国や日本の人工衛星に対する機能妨害などの作戦も開始するであろう。つまり、紛争開始前後に五つのドメインすべてで中国軍の先制攻撃が実施されると覚悟すべきである。
■「尖閣諸島奪取作戦」
尖閣諸島は、日本の固有の領土であり、日本が実効支配している。しかし、中国は1970年代に突然「尖閣諸島は中国固有の領土だ」と主張し始め、最近は中国の海警局の船が頻繁に尖閣諸島周辺の日本領海を侵犯している。
このため我が国は、海上保安庁を主体に中国の違法行動に対処しているが、日中の活動がエスカレートし、尖閣諸島をめぐるさらに厳しい紛争に発展していく可能性はある。問題は中国の不安定な国内情勢にある。
中国経済がL字型(さらに厳しいh字型の可能性もある)の停滞期に入り、国民の不満が高まっている。さらに2016年7月、常設仲裁裁判所が南シナ海の領有権をめぐる中国の主張を完全否定したが、この裁定を受けて中国国内が非常に好戦的な状況になっている。
このような状況下では、中国が尖閣諸島を占領するシナリオが考えられる。最も蓋然性が高い作戦は、軍隊を直接使用しない「準軍事組織による作戦(POSOW)」である。
中国は常套作戦としてPOSOWを遂行し、米国の決定的な介入を避けながら、目的を達成しようと考える。
準軍事組織による作戦の特徴は、@軍事組織である中国軍の直接攻撃はないが、中国軍は準軍事組織の背後に存在し、いつでも加勢できる状態にある。A非軍事組織または準軍事組織が作戦を実行する。例えば軍事訓練を受け、ある程度の武装をした漁民(海上民兵)と漁船、海警局の監視船などの準軍事組織が作戦を実施するのである。
この準軍事組織による作戦は、南シナ海──ベトナム、フィリピン、インドネシアに対して多用され、確実に成果を上げている作戦である。
尖閣諸島をPOSOWによって奪取しようとする場合、@200隻を超える漁船を尖閣諸島周辺に動員する。漁船には軍事訓練を受けた海上民兵が乗船している。
1隻に20〜30人が乗船していると仮定すると、200隻だと4000〜6000人となる。海上保安庁の監視船のみでこれに対応することが困難なのは、2014年に小笠原諸島周辺に集結した、200隻以上の赤サンゴ密漁中国漁船への対応を見ても明らかだ。
A中国の海警局の監視船が漁船の活動を容易にするために介入してくる。海上保安庁の監視船と中国の監視船のにらみ合いが続く。
Bその隙をついて、漁船に乗船していた海上民兵が尖閣諸島に上陸し占領する。この間、中国海軍の艦艇は領海外から事態を見守る─以上が蓋然性の高い「準軍事組織による尖閣諸島奪取作戦」のシナリオである。
以上の推移で明らかなように、この作戦には軍事組織である中国海軍艦艇が直接的には参加しない。日本側から判断してこの事態は有事ではなく、平時における事態(日本政府の言うところのグレーゾーン事態)であり、海上自衛隊は手出しができない。
尖閣諸島に上陸した漁民を装った海上民兵を排除するためには大量の警察官などの派遣が必要となる。法的根拠なく自衛官を派遣することはできないからである。
中国の準軍事組織による作戦は、日米に対してきわめて効果的な作戦となるだろう。なんといっても日本の法的不備をついた作戦であり、自衛隊は手出しができない。
一方、米国にとっても準軍事組織による作戦に対して米軍が対応することはできない。つまり、こうしたケースの場合は米軍の助けを期待することができないため、これらの事態の対処は当事国の日本が単独であたらなければならない。
戦争が始まると、米軍は日本から兵器・部隊をいったん退避させる?
渡部 悦和(わたなべ・よしかず)
ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー、元・陸上自衛隊東部方面総監。1978年東京大学卒業、陸上自衛隊入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。2013年退職。本書が初の著作となる。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。