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イスラーム国の黒旗のもとに サーミー・ムバイヤド著 シリア現代史から内戦考える
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/187.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 11 月 20 日 04:46:45: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


イスラーム国の黒旗のもとに サーミー・ムバイヤド著
シリア現代史から内戦考える

 「イスラーム国」(IS)の軍事的退潮が明らかになっている。シリア側にある「首都」ラッカにはクルド人中心の勢力が進軍を始め、イラク北部のIS最大都市モースルにイラク軍が迫る。いずれもアメリカが支援している。遅かれ早かれISは軍事的には打倒されるだろう。

 しかし、シリア内戦にせよイラク国内の対立にせよ、問題はそれで終わらない。世界各地でうごめくISのシンパたちが暴力事件をおこす可能性は、今後も十分ある。ISが注目を浴びてから2年半たった今こそ、このジハード主義集団の由来と背景をじっくり考える必要がある。そのために日本語で読める本として最良のものが出た。

 ISはイラクのアルカーイダ系弱小組織がシリア内戦の混乱に乗じて成長し、旧フセイン政権の残党を吸収して軍事・行政能力を高め、両国にまたがる領域支配に至ったものである。これは衆目の一致するところで、ゆえにISは基本的にイラクの問題なのだが、本書はそれをシリア現代史の文脈にきちんと位置づける。著者がシリア人の歴史家ゆえであろう。

 シリア農村部では、ISだけでなく「ヌスラ戦線」として知られた現「シリア征服戦線」をはじめ、多数のジハード主義的反体制派が根強く戦っている。周辺国からの支援や介入はその要因の一つである。またウサマ・ビンラディン以前から連綿と続くジハード主義的思想・運動の、シリア国内での系譜や曲折もある。しかし根本には、アサド政権が農村部や都市郊外を「振るい落とし、腐敗した貧困と無知の中に放置し」て、一定の人口をジハード主義の側に追いやった事情がある。

 そして決定的だったのが2003年のイラク戦争で、その不正義に対する憤りが多くのシリアの若者をイラクに走らせた。その彼らが今日シリアに戻って民兵を指揮している。アサド政権は対症療法的にイスラーム勢力への政策を操作してきたが、ついに破綻して内戦を迎えた。この過程が活写されている。

 ISは、シリアとイラクという(似ていない)双子のバース党政権国の戦乱に生じた、ジハード主義運動の渦からのスピンアウトである。これが今度は欧米や中国など世界各地で疎外された若者たちをもひきつけている。このおこるべくしておこった事態に、アメリカやサウジアラビア、トルコなど何と多くの国々が直接・間接に関与してきたか。その現実にいかに私たちは知らぬふりを決め込んできたか。こうしたことを痛感させられる一書である。

原題=Under the Black Flag

(高尾賢一郎・福永浩一訳、青土社・2600円)

▼著者はシリア生まれの歴史家。

《評》東京外国語大学教授
黒木 英充

[日経新聞11月13日朝刊P.21]

 

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コメント
 
1. 2016年11月20日 10:33:35 : GUmnGslh4w : htgo0rx7euU[2]
>しかし根本には、アサド政権が農村部や都市郊外を「振るい落とし、腐敗した貧困と無知の中に放置し」て、一定の人口をジハード主義の側に追いやった事情がある。

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権力の源泉から放逐されたスンニ派の怨嗟の突出ということだろうが、事はそう簡単なものではないはずだ。

そもそもアサドに代表される超少数宗派であり、スンニからもシーアからも異端視されてきたアラウィー派がシリアで何故、権力を握るまでに力を持ったのか?
そこから見て行かなければ言い方は悪いが、またぞろ片手落ちの問題提起になりかねない。

シリアのスンニ派はもちろん一様ではなく、名家のスンニにとって政体にスンニが冠せられていないことに大いなる不満を持つ者は多いといわれているが(ゆえにイスラム復古運動に噛んできた)、同時に政権に食い込んで良い思いをしてきたスンニ派もおり、それをバアス党が覆うという形をとってきているが、シリアの現政権をたらしめているのはなんといっても軍隊である。

シリア軍自体、主にアラウィー派の兵士や軍属で成り立っており、これに利害を同じくするスンニ派の将校たちが今も離れず支える形を取っている。
そもそもシリア軍は宗主国であったフランスの名残を強く受けており、フランスからシリア独立を戦った国民(とくにスンニ派)は独立後もシリア軍に入隊するのを忌み嫌った。

率先して入隊したのがシリアでは超少数宗派で異端扱いされてきたアラウィー派の子弟たちで、アラウィー派はフランス支配のシリアで支配側に保護される形で少数派である自分たちを護ってきた経緯があり、独立後もフランスからの指示を受けてきた。
そんなこともあり独立後のシリアでアラウィー派は、宗主国に阿ったとして迫害を受けたりもした。

アラウィー派はスンニ派が嫌った軍隊に率先して入隊し力を持ち出すと、同じアラウィー派が結党したバアス党にも入党するなどし、さらに力を持つにいたる。
クーデターでアラウィー派将校のアサドが権力を握って今にいたるが、近代主義をめぐる国家観の位相の対立はシリアに限らずアラブ諸国家の根源的な問題であり、アラブかイスラムかをめぐって争ってきた。

双方成り立つとしたのが世俗を是としたバアス主義も根とするアラブ社会主義運動であり、成り立たずイスラム教徒だけがアラブを統治できるとしたのがイスラム復古運動である。
どちらかからだけでアラブの近代史や国の成り立ちを見てしまうと、為政者や政権はどうしても支配の力学上、悪く見られるのは世の倣いとはいえ事はそう簡単な話ではない。


2. 2016年11月20日 16:43:29 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3316]

イスラムなどの宗教原理主義に限らず、人権思想に基づく自由権、平等権、生存権といった

近現代社会を成立させている幻想を脅かし、社会自体を破壊する動きは今後も止まらないだろう

それが先進国内部での極右国家主義や左派カルトのような、個人の人権を否定するという点では共通する反作用も強化していく

そして、楽観的に考えれば、いずれは愚かなヒトを中心としたシステムから、AIを中心とし生態系を重視した持続可能な世界が生まれるかもしれない

世界とは変化していくものだから、いろいろ面白いとも言える

ま、メインシナリオはヒトの文明と現存生態系の壊滅だろうがw


3. 2016年11月21日 10:39:04 : A2wNebLp76 : cybA5syCp0g[1]
どこの地域にも「ひび」やちょっとした「段差」がある。
そこに「楔」を突っ込んで「対立」に持ち込む奴等の話は?

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