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Vサインをするイラク軍兵士(GettyImages)
IS指導者、徹底抗戦呼び掛け、新段階に入ったモスル奪還作戦
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8134
2016年11月4日 佐々木伸 (星槎大学客員教授) WEDGE Infinity
過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者アブバクル・バグダディが2日、音声メッセージを公表、「神の敵に対するジハード(聖戦)を弱めるな」とイラク軍のモスル奪還作戦への徹底抗戦を呼び掛けた。バグダディ自身の声明は約1年ぶりで、ISが追い詰められていることが一段と浮き彫りとなった。
■”トルコ侵攻を”と檄
バグダディは昨年12月26日、支持者や戦闘員に対し「ロシアと米主導の有志連合の空爆はISを弱体化させるのに失敗した」との音声メッセージを出して以降、沈黙を続けていた。このため、バグダディが米空爆による負傷が原因ですでに死亡しているとの観測も出ていたほどだ。
バグダディは今回のメッセージで「この戦争はお前たちのものだ。名誉にかけて自分たちの土地を守る価値は恥辱の中で撤退するよりも何千倍も尊い」と強調。「川のように不信心者の血を流せ」と戦闘員を鼓舞した。
さらにトルコ軍に対して「怒りの炎を解き放て」として、戦闘員らにトルコへの侵攻を要求、トルコの安全を恐怖に変えるよう呼び掛けた。また不信心者の国々に加担するサウジアラビアのサウド王家や軍、政府などの標的を攻撃するよう求めてもいる。
バグダディがほぼ1年の沈黙を破って音声メッセージを公表したのは、ISがモスル攻防戦で劣勢になり、前線から逃亡する戦闘員も相次いでいることから、あらためて組織の引き締めを図るためという意味もある。トルコやサウジへの攻撃を起こすよう要求したのも、モスル攻撃の矛先を鈍らせるための陽動テロを呼び掛けたものと見られている。
モスル奪還作戦は、クルド人武装組織ペシュメルガが北部から、イラク軍の対テロ特殊部隊とペシュメルガが東部から、第9機甲化師団などイラク正規軍が南部から、そして西部からはイラン支援のシーア派民兵「人民防衛隊」がそれぞれ迫っている。
その中で対テロ特殊部隊が1日、市の東端、コクジャリ地区に突入。国営テレビ局を確保し、奪還作戦は親局面に入っている。IS側はこれまでのモスル周辺の戦闘などで戦闘員ら約1000人が殺害されたもようだが、わな爆弾を張り巡らし、自爆車攻撃、トンネルを使ったゲリラ攻撃などで激しく抵抗を続けている。しかも市中心部にいたる道路には戦車や車両を阻止するため分厚いコンクリート壁が築かれており、イラク軍側の進撃を妨げている。
■暗殺の情報収集に躍起
イラク軍や米軍は無理をせずに障害を1つずつつぶして進撃を続ける方針だが、ISは最終的には市を分断しているチグリス川の東側を放棄し、市の中心部である川の西側に立てこもるのではないかと見られている。西側は通りが狭く、戦車などの通行を阻止しやすいからだ。
しかも国連によると、ISは「人間の盾」に使うため撤退したモスル周辺の村々から数万人の住民を強制的にモスル市内に移動させた恐れがある。「人間の盾」として米軍などに空爆させないよう使うためと見られている。モスルにはなお約150万人に上る住民がとどまっているとされ、米軍は住民の死傷者をいかに最小限にするか苦慮している。
米軍はIS戦闘員の抵抗と士気を削ぎ、早期奪還を成し遂げるため、指導者バグダディの拉致・暗殺を大きな目標に掲げている。その任務は主に、イラクに駐留している約6000人の米軍部隊の中で、北部クルド自治区のアルビルに拠点を置く300人規模の特殊部隊に委ねられている。
この目標達成には、バグダディの居場所の特定が不可欠だ。このためモスルのIS有力幹部の拘束も検討中。また戦死したIS戦闘員の所持していた携帯電話や所持品に手掛かりがないか、徹底的に調べている。バグダディの潜伏先はISでも一握りの側近しか知らないトップ・シークレット。これまでの情報では、バグダディはモスルやシリアのISの首都ラッカなどを転々とし、同じ場所に長時間とどまらないようにしていることが分かっている。
米軍はISの通信や携帯電話の会話を24時間態勢で傍受しており、バグダディは命令や指示に当たっては携帯電話などを使わず、クーリエ(運び屋)を使って伝達しているようだ。モスル奪還の戦闘激化で、極秘に続けられてきたバグダディの拉致・暗殺作戦も一気に強化されてきた。
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