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熊本県南阿蘇村で、輸送支援を終え離陸する米海兵隊のMV-22オスプレイ。オスプレイには3Dプリンターで製造した部品が組み込まれるようになった(資料写真)。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI〔AFPBB News〕
米海兵隊、ついに3Dプリンター製砲弾を発射 「昨日の技術を明日買う」海兵隊が積極的な理由
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48266
2016.11.2 部谷 直亮 JBpress
9月29日、米海兵隊の隊員向け軍事誌「Marine Corps Times」は、ついに米海兵隊が間接照準の大砲の砲弾を3Dプリンターで丸ごと作ることに成功したと報じた。
米軍は既に3Dプリンターを用いてF-35、F-18戦闘機の金属パーツ、B-52爆撃機の部品、MV-22オスプレイのエンジンナセルの金属部品、エクスカリバー砲弾やICBMの部品、ロケットエンジン本体などを作成し、実際に運用している。だが、砲弾丸ごとを作成したのは今回が初めてである。
これにはどのような意味があるのだろうか。まず、「3Dプリンターで生産された弾薬の試験を実施する海兵隊」と題された「Marine Corps Times」の記事の概要を紹介しよう。
■製造中止部品も重要部品も安価に作成
* * *
先週、米海兵隊・次世代兵站室は、海軍水上戦センターとの協力の下、3Dプリンターにより間接照準で発射する砲弾を作成し、発射・爆発させた。
3Dプリンター担当のクリス・ウッド大尉は、この「間接照準兵器」が迫撃砲なのか、榴弾砲なのか、ロケット砲なのかについてはコメントしていない。だが、この砲弾は、従来の砲弾よりも威力が強力であり、しかも、戦況に合わせて砲弾の種類や性能を変えられることが試験によって示されたという。
ウッド大尉は取材に対して以下のように述べた。
「3Dプリンター技術は、まだ大きなサプライチェーンに取り込まれる段階には至っていない。3Dプリンターは高価であり、技術的にも成熟していない。成熟するまでにまだ10〜20年の年月がかかるだろう。しかし、今、実験や投資を始めなければ、3Dプリンターが成熟したときに、それが何を提供できるかが分からず、できるはずのこともできない」
「製造中止となったパーツ等であれば3Dプリンターの費用対効果は有効である。例えば海兵隊の歩兵戦闘車LAV-25は、2035年まで運用する予定だが、その時には耐用年数を30年以上過ぎている。そうした老朽化した車両の維持整備にはもってこいだろう」
「2〜3時間だけの一時的な使用であっても、戦場で壊れた部品を取り換えられることは大きい。これまでダクトテープ、服のハンガーなどを戦場で応急修理してきたが、3Dプリンターを使った修理が既に実施されている。整備大隊、一部の特殊部隊、歩兵・諜報部隊など約10の海兵隊部隊は、3Dプリンターをすでに装備している」
「重要部品も3Dプリンターで安く作成できることが分かっている。ある部隊は、70ドル以上もする通信機のプラスチックの暗号鍵を、3Dプリンターを使うことでたった2ドルで作ることができた」
■オスプレイ以外にも3Dプリンター製部品の搭載を拡大
海兵隊指導部は、航空部門以外の指揮官にも3Dプリンターを利用するよう訴えている(筆者注:航空部門は最近3Dプリンターの使用が盛んである)。
今月、海兵隊指導部は、製造が古く著作権問題が発生しない交換部品を3Dプリンターで作る際の指針を発表した。指針では、例えば3Dプリンター製部品は、故障時の調査を容易にするため黄色もしくは緑のような明るい非標準色で作ることを定めている。
海兵隊は8月に、3Dプリンターで作成したエンジンナセルのチタンリンク、消火システムのステンレス製のレバーなどを組み込んだMV-22オスプレイを飛行させた。MV-22オスプレイ以外の航空機では来年にかけて、AH-1攻撃ヘリ、UH-1輸送ヘリ、CH-53K輸送ヘリに、3Dプリンターで作成したチタン製もしくはステンレス製の重要部品を組み込んで飛行試験を行うという。その後は、CH-53E輸送ヘリとAV8Bハリアー戦闘機も続く計画だという。
既にF-35ステルス戦闘機は3Dプリンター製部品が数多く組み込まれて生産されている。今後、海兵隊の全航空戦力は3Dプリンター製部品が徐々に組み込まれて稼働していくことになるだろう。
また、海兵隊司令官のロバート・ネラー大将は9月28日の講演で、現代の海兵隊は、「6つの戦闘空間(陸・海・空・宇宙・サイバー・電子)」において「4つの正面戦争(人道援助活動、平和維持活動、武力紛争、電子妨害からSNS上の戦いを含むバーチャル戦)」を実行しなければならないと指摘。その解決手段となる「技術」の例として3Dプリンターを挙げた。
そして、ネラー司令官は、「海兵隊は来年末にはあらゆる海兵隊の歩兵連隊は固有のミニドローンを装備するようになる。しかも、将来的には戦況に応じてミニドローンを3Dプリンタで生産して投入するようになるだろうし、10年後には3Dプリンタで食事を生産するようになるだろう。これらはまさしく兵站に関するすべての常識を崩壊させるが、私はどちらもクールなことだと思っている」との趣旨を発言し、まさしく3Dプリンタが兵站革命であるとも述べたという。
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■海兵隊の姿勢を自衛隊は見習うべき
以上が「Marine Corps Times」の記事の概要である。
海兵隊は、66年以上もほとんど実施していない「強襲揚陸」を重視するなど「保守的」で「頑固一徹」なイメージがある。実際、つい最近も、海兵隊の最高情報責任者(CIO)を務めるデニス・クロール准将にして、「(Windows 10への更新が進まないのは、海兵隊のパソコンが旧式すぎるからだが、その理由は) 我々は昨日の技術を明日買う組織だからだ」等と迷台詞を言っているので、このイメージは間違っていない。だが、その海兵隊ですら3Dプリンターの投入を積極的に進めようとしている。
海兵隊の将兵の数は日本の自衛隊とほぼ同規模である。海外での任務に取り組む一方で予算不足に苦しむ点も自衛隊といい勝負だし、交換部品の入手が難しい旧式兵器にあふれている点も同様である。
しかし、自衛隊の現場部隊では、3Dプリンターの試験的な導入すら進んでいない。
本コラム「中国軍の3Dプリンタ活用は日本より20年進んでいた」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47428)でも指摘したように、もしも東シナ海で中国との衝突、戦争が起きた場合、九州南端から与那国島まで自衛隊の補給拠点がほとんどない自衛隊は、南西諸島に「遠征」することを宿命づけられている。その意味で、低価格かつ即座に現地で補修部品を用意できる3Dプリンターの導入は必須といってよい。
しかも、自衛隊の航空機などの補給はかなり危うい状況にある。というのは、しばしば各基地で起こるのが、部品の不足である。何せ、製造ラインが既に閉じていたり、大した量でもないため、メーカーに発注しても難しかったり、非常に高価であるために予算が下りなかったりで、現場にはなかなか届かないのである。だが、3Dプリンターであれば、こうした問題は解決できる。補修部品を低価格かつ即座に用意できる。
現実的な判断に基づき、使い勝手の良い「道具」をどんどん取り入れていく海兵隊の姿勢は大いに見習うべきだろう。
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