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コラム:プーチン大統領、唯一の空母をシリアに派遣する理由
Peter Apps
[19日 ロイター] - 秋の強風とスコールに見舞われる北海を、ロシアが保有する唯一の航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」は、南の戦場へと向かった。
ロシアのタス通信によれば、15日、同空母に加え随伴艦7隻が、ロシア北方艦隊の北極海での拠点であるセベロモルスク基地を出航した。同空母らが地中海に向かうのは8回目だ。
こうした遠征は、ロシアの海軍力とその影響範囲を改めて誇示しようとするプーチン大統領の戦略の重要な一部となっている。
だが今回の展開は、これまでとは非常に異なる。
ソ連崩壊の時期に就役した「アドミラル・クズネツォフ」を軸とする作戦遂行能力を高めるためにロシア政府は過去10年間、かなりのリソースを費やしてきた。しかし、米国、フランス、英国、イタリアとは異なり、ロシアは同空母を実戦で用いたことはない。
ただ、その状況も変化しつつある。恐らく最短で2週間以内に、艦上戦闘機Su33とミグ29がアレッポ中心部や他のシリア各地に展開され、前例が破られることになろう。
あるレベルにおいては、ロシア政府としては、特に空母を使う必要に迫られていない。シリア上空で活動する機体を増やしたいのであれば、単に地上配備の戦闘機をシリアのアサド政権派が支配する飛行場に派遣すれば済む話だ。
同じことを実現するにも、空母と随伴艦を派遣するのでは、多くの点で、はるかに面倒だしコストもかさむ。リスクもないわけではない。これまでもロシアの軍艦は憂慮すべきレベルで故障する傾向を見せており、自前のオーシャンタグ(外洋で用いられる曳航用タグボート)を随伴させることも多い。
ロシア政府は明らかに、特別部隊を数千マイルも遠征させ、数週間ないし数カ月間の軍事活動を行うことにより、米国と同等の能力を誇示したいと考えている。ロシアの軍事力の復活を強調するための軍事力行使なのだ。米国その他の国にとっては、シリア情勢の解決に向けた政治的な計算がますます複雑になってくるだろう。
そしてもちろん、北欧の多くの国に対して、ロシア政府は無視できないということを思い起こさせる好機になる。
空母「アドミラル・クズネツォフ」が過去に北海を航行したときは、意図的に戦闘機などをノルウェーの海底油田プラットホーム近くを飛ばした。この威嚇行為により、付近の空域を飛ぶ民間ヘリコプターは着陸を余儀なくされた。今回、同空母がスコットランド沖の公海上で空爆の演習を行う可能性があると報じられている。
英海軍の艦艇は、自国沿岸・イギリス海峡を通過するロシア艦隊の追尾を行うだろう。こうした動きは、両国メディアで盛んに報道される可能性が高い。
ロシア海軍の上級司令官たちは、今回の派遣によって、ロシア各軍の縄張り争いにおける力を高めることを期待するだろう。これまでのところ、最近の軍事作戦(過去2年間のウクライナ、2008年のジョージア、チェチェン、今日のシリア)における栄誉の大半は、陸軍・空軍に与えられている。今こそ、海軍の力を見せ、それと同時に、本当に耐久力のある空母打撃群を育むために必要なスキルと能力を構築するときである。
ロシアは2013年以来、シリア沖に海軍艦艇を常駐させており、米国とその同盟国はすでに、装備を一新したロシア海軍の能力と欠陥を厳密に把握しようとしている。中国も関心を示すに違いない。中国初の空母「遼寧」は、元々はソ連製「ワリヤーグ」、つまり「アドミラル・クズネツォフ」の姉妹艦だからである。
ロシアと中国の両政府は、米国の空母を排除するための兵器にかなりのリソースを投じてきた。実際に、そうしたテクノロジーは、少なくとも独自の空母を運用できるようにするのと同程度に重要だった。とはいえ、米当局者は、最新世代の対艦弾道や巡航ミサイルの性能はまだほとんど実証されていないと述べている。
米国とその同盟国は、敵国空母を排除する独自手段を持っている。また数十年にわたり、そうした戦術を訓練してきた経験値も高い。米海軍は世界中に広く薄く展開されているかもしれないが、それでも、潜水艦、水上艦、地上配備の航空機のいずれであっても、敵空母の排除に必要な十分な戦闘能力を集めることができた。
これからはそれも容易ではないかもしれない。「アドミラル・クズネツォフ」戦闘群の主目的はシリアにおける地上の標的を叩くことかもしれないが、海上の敵に対する自衛力もそれなりに高い。
また同艦には多くの対潜ヘリコプターも搭載されていると報じられており、NATO諸国の潜水艦がこっそり接近することは大幅に困難になるだろう。ロシア側メディアの報道によれば、「アドミラル・クズネツォフ」戦闘群には、ミサイル巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」の他に対潜艦2艦も帯同している。これらの艦を沈めることは可能だろう。だが、NATO側の複数の軍艦も道連れになることはほぼ確実だ。
ロシア海軍の将兵は空母を軸とする打撃作戦には不慣れかもしれない。だが彼らは、1982年に英海軍がフォークランド紛争に参加して以来、対艦ミサイル相手の戦闘を唯一経験した海軍である。
2008年のジョージアとの戦争において、ロシア艦艇の一部とジョージア海軍の艦艇が短時間ながら流血を伴う戦闘を行ったと考えられている。戦闘の詳細はほぼ不明のままだが、少なくとも、戦闘に参加した艦艇は比較的小型のものが多かったわりに、双方の犠牲者が多かったという点は明らかである。
こうした経験はすべて、重要度の高い地上での戦闘、つまりアレッポを中心とするシリアでの今後の戦闘全般に反映されていく。すでに米国は、ロシア及びシリアの部隊による攻勢を止めるだけでも軍事行動(少なくとも、航空機数機の撃墜や航空基地を標的とした攻撃が)が必要かもしれないと認識している。
しかしそれは、ロシア海軍の誇りを賭けたシリア沖での激闘を意味するのかもしれない。だからこそ、現オバマ政権であれ次期政権であれ、そうした戦闘はほぼ確実に回避されるだろう。
ロシア海軍の空母が地中海で攻撃作戦を行うということは、ロシア政府による力の誇示に留まらず、世界の地政学状況をいっそう複雑にする。それこそまさに、プーチン大統領が望んでいることなのだ。
*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。
http://jp.reuters.com/article/apps-russia-idJPKCN12L0EN
アングル:独立100年迎えるフィンランド、ロシアの横やり警戒
[ヘルシンキ 19日 ロイター] - ロシア帝国からの独立100周年を来年迎えるフィンランドは、1917年の独立の合法性について疑義を唱えるロシアの「プロパガンダ」に警戒を強めている。
かつてロシア帝国の一部であったフィンランドは、1340キロに及ぶ国境をロシアと接しており、同国との間には複雑で血にまみれた歴史がある。ロシアによる2014年のクリミア併合と、バルト海での武力による威嚇を受けて、軍事的中立を保つ欧州連合(EU)加盟国のフィンランドは安全保障上の懸念を募らせている。
今月に入り、フィンランドとエストニアは、ロシアの戦闘機が自国の領空を侵犯したと非難。ロシアはまた、ポーランドとリトアニアに挟まれた自国の飛び地カリーニングラードへ核搭載可能なミサイルの移動を開始している。
まだロシア帝国の一部だったフィンランド大公国時代に建てられた政府宮殿の中にあるオフィスで、マルック・マンティラ氏はフィンランドに影響を与えようとする動きを監視する官僚ネットワークを率いている。
同氏によると、フィンランドはロシア大統領府が主導するメディア攻撃の嵐に直面しているという。
「ロシアによるこのような攻撃の狙いは、指導者と市民の間に不信感を生み出し、われわれ自身に有害な決定をさせることだと考えている」とマンティラ氏は指摘。「市民にEUに対する疑念を持たせ、フィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に参加しないよう警告する狙いもある」
フィンランドは1917年のロシア革命時に独立を勝ち取ったが、第2次世界大戦におけるソ連との戦いで危うくそれを失いかけた。冷戦時代には、経済的にも政治的にも西側に近くあり続ける一方、ソ連との対立は避けてきた。
通信当局の責任者も務めるマンティラ氏によると、ロシアのメディアは先月、「血も涙もない」フィンランド当局が「国籍が原因で」同国に住むロシア人の家族から子どもを引き取ったと報じた。
フィンランド政府は、司法手続きのため個々の案件にはコメントできないとしたうえで、このような報道を否定した。だが過去数週間にわたり、この話はロシアで何度も伝えられている。
ロシアのNTVテレビは「フィンランド市民でさえ、自国を子どもを恐怖に陥れる非情で理不尽な国と呼んでいる」と伝えた。
<歴史的人物も標的に>
マンティラ氏は、自身が率いるネットワークが数年前から、フィンランドに対する明らかな情報活動を約20件確認していることを明らかにした。また、「可能性が非常に高い」ケースも約30件あるという。
「組織だった偽りのキャンペーンが行われている。悪いジャーナリズムという問題ではない。中央が支配しているとみている」と同氏は語る。
ロシア大統領府と同外務省当局者からコメントは得られていない。
フィンランドのソイニ外相も、プロパガンダとみられるそうしたロシアの活動を認め、政府は事実に対する誤った情報に反論しているとし、「あらゆる国がプロパガンダに関与するが、独裁国家であればなおさらだ」と語った。
なかには、フィンランドの独立やその歴史的人物に狙いを定めたものもある。
ロシアのサンクトペテルブルクにある大学で6月、フィンランドの最も有名な軍人であり、元大統領でもあるカール・グスタフ・マンネルへイムの記念銘板が掲げられた。
するとその銘板はすぐさま、フィンランドではソ連との戦いのシンボルと見られているマンネルへイムを、人殺しで冷酷なナチス・ドイツの協力者とみなして抗議する人たちの標的となった。
「銘板は何度もおのでたたかれ、赤ペンキを浴びせられた」とマンティラ氏。そもそもマンネルへイムの銘板を掲げるというプロジェクトにフィンランドは関わっていないという。
この出来事は、ソ連の初代指導者レーニン率いるボリシェビキ政権がフィンランドの独立を受け入れる権利のないことを示唆する報道を受けて起きたと、マンティラ氏は考えている。
フィンランドは来年、独立100周年を迎える。それはまた、ボリシェビキ革命(十月革命)の記念日でもある。
(Jussi Rosendahl記者、Tuomas Forsell記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
http://jp.reuters.com/article/finland-independence-russia-idJPKCN12L0V7
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